Soft Laws
Easy Yoke

2017.09.27

やまさき みちおやまさき みちお

僕がEasy Yokeに出会ったのは、2014年の事である。

このアンテナの編集長でもある堤くん率いるAmia Calva主催のサンマソニックというイベントだった。その時に彼らのステージを観たときの印象は僕なんかよりも若いのにずっと大人びていて(落ち着いている)、5人組なのにオーケストラを率いているかのような音表現をしていて感心した記憶がある。

 

それから2年の時を経て、本作『Soft Laws』は発表された。とりあえず、”Soft Laws”の意味を詮索し何かこのアルバムを表現するヒントがあるのかと思ったが、遠回りしそうなので率直な感想を述べていこう。

 

冒頭、アルバムタイトルでもある”Soft Laws”。スピーカーからトレモロ音が液体のように流れ出し、それがそのまま柔らかく気化していくようでイントロには持ってこいのナンバーだ。言葉先行というより「音先行なのだな」と印象づくイントロで美しい幕開けである。

 

そしてそのまま流れるように2曲目、”強い目眩”が男女のコーラスで始まり彼らの歌が始まる。このおおらかなメロディはアメリカのバンド”beirut“を彷彿とさせるが、あちらの音は乾いていて、こちらの音はしっとりと濡れている。

京都の盆地特有の気候に由来するのかは分からないが僕はそう感じた。歌詞に出てくる路地の子供達の情景などから、河瀬直美の映画”沙羅双樹”が浮かぶ。あの映画にもあるずっと強い太陽の日差しを浴びている感じもこの音とリンクするのかもしれない。中でも「七色の亡霊が手を引く~」という歌詞がとてもファンタジックな表現でグッとくる。音を作る人は少なからず、住んでいる気候や環境が影響すると思っている。弦楽器、管楽器、鍵盤、全ての音が自然現象のそれを上手く表しているのがわかる彼らの代表曲だろう。

 

3曲目の”No Dolphin”は水が跳ねるようなシンセ音とリバーヴが聞いたギターの音が印象的で、個人的にアルバムの中で最も好きな曲である。POPで優しいAメロに対しBメロの切ないマイナーメロディ展開がたまらなく、終盤には音が炭酸シューゲイズしていく。

 

彼らの歌詞は頭に意味で入ってくるというより、音イメージとして美しいコーラスとともに楽曲に溶け込みながら入ってくる。そういう意味では歌が自立してある、というより楽器としての役割を果たしているのだと思う。この曲はそれをすごく感じて、ただただ気持ち良い。

 

次の”虹を知らない”は序盤、静かなピアノと歌で始まりアコースティックのままいくのかと思いきや中盤、天気が変わったように歪んだギターの音で目が醒める。一旦、変わった天気は落ち着きを装いながら後半さらなるエモーショナルな歌を花咲かせるのだ。

 

最後の”ボート(Acoustic)”は、今までの芳醇な音を削ぎ落とし、前曲で上がりきったテンションを落ち着かせるようなシンプルな楽曲。アコギとピアノと歌で後書きのようにアルバムを締めくくる。全体的に聴いているときちんと起承転結のあるコンセプトアルバムで、一つの長いストーリーのある曲を聴いていた印象だ。ミドルな曲調ばかりなのだが、意外にも一曲一曲が短い。

もっと引っ張れるところはあるのに引っ張らないことにより飽きずにあっという間に聴けてしまう好盤だ。

 

Easy Yokeは5人組だが、Portisheadのような大人数のオーケストラを従えたライブを観てみたいなと思った。この緻密なアレンジを施された楽曲群と美しいコーラスワークを聴いていたら、当然の事だと思う。

 

最後に個人的にこの盤との相性が良かった盤としてBeirut 『The Rip Tide』Soft Machineの『Six』Spectrum『Soul Kiss』などを挙げておきたい。

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