COLUMN

『永遠のなつやすみ』からの卒業 - バレーボウイズ解散によせて

2020.10.16

マーガレット 安井マーガレット 安井

2016年の冬ごろだと思う。HOLIDAY! RECORDSの植野秀章さんから誘われて、彼のイベントを観に行ったときの話だ。場所は心斎橋HOKAGEという小さなライブハウスで、フロアにはお客さんが20人くらい。そのイベントのトップバッターは京都のバンド。演奏がスタートした当初は「やたら編成がでかいな」「演奏も抜群にうまいというわけではないな」と思っていた。だがライブが進むにつれ、メンバー一人一人がまるでこの瞬間を謳歌しているかのように、初々しくってみずみずしい音を鳴らしていた。まるで音と楽しむ「音楽」という字を体現する感覚を覚え、引き込まれていった。演奏後に改めてタイムテーブルをみて、彼らの名前を確認した。そこにはこう書かれていた、「バレーボウイズ」と。

バレーボウイズは京都精華大学の学園祭「木野祭」の出演のため、前田流星(Vo)、ネギ(Gt / Vo)を中心に結成された男女混成7人組バンドだ。サウンドは昭和歌謡やフォーク、パンク、アイドルソングなどミクスチャーし、歌はメンバーのうち4人がユニゾンで歌うスタイルであった。しかし、彼らの肝は合唱スタイルでも、昭和歌謡をミクスチャーした音楽でもなく、「永遠のなつやすみ」というコンセプトであった。

 

バレーボウイズは浮かれ気分で何の責任も負わずに羽目を外せる音楽を作りたいと思っていた。私が彼らのライブを初めて観たときに体験した「音楽を地で行くようなバンド」という感覚はそんなコンセプトが要因だともいえる。その後、音楽ファンや評論家から高い評価を得ていき、ライブオーディション『TOKYO BIG UP!』ではグランプリ、「FUJI ROCK FESTIVAL 2017」にはROOKIE A GO-GO枠で出演する。

 

輝かしい実績も積み重ねてきた彼らだが、昨年僕がインタビューした時には、彼らは自分たちの武器にしてきた 「永遠のなつやすみ」から脱却しようと考えていた。

ネギ:ただ最近は “永遠のなつやすみ” がバレーボイズの中で変化してきていて。初期衝動で突き進むだけでなく「僕らの音楽って何だろう」、「自分たちはどういう音を鳴らすバンドなのか」と、細かいところをメンバーと一緒に見直しながら音源を作ろうとしています。そうなるとただただ夏休みを謳歌しているだけではいけなくなる。(永遠の夏休みの終わりと始まり – バレーボウイズが語る自身の成長と自主企画『ブルーハワイ』について –

昨年、リリースされた配信&8cmCDシングル『雨があがったら / セレナーデ』では彼らの特徴であったユニゾンメインで合唱的なアプローチではなく、各ボーカルメンバーによるソロパートを設ける工夫もみられ、新しい一面をみせる作品となった。だからこそ、Twitterでバレーボウイズが2015年の秋から5年という長い「“なつやすみ”を終わらせる」と発表したことのショックも大きかったし、悲しかった。

 

楽曲制作を主に担ってきたバンドの中心人物であるネギの「自身の音楽活動をより私的に進めていきたいので脱退したい」という申し出を受け、メンバー間で話し合った結果であった。

 

ネギはバレーボウイズ結成当初から弾き語りでソロ活動させ、今年からは別バンドであるWANG GUNG BANDをスタートさせている。WANG GUNG BAND始動のニュースを見て、私はバレーボウイズではできない楽曲、例えばネギ自身のボーカルが活かせる曲をやろうとしているのだと思った。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文がバンド活動と平行して、Gotchとしてのソロ活動も積極的に行っているみたいに。だが、結果的にネギはバレーボウイズを去ることを選んだ。

僕はネギの気持ちを理解はしていない。ライブハウスで何度か話したくらいだし、昨年インタビューに関わった。それだけの縁である。だがそのインタビューで一つわかったことがある。それは彼にとってバレーボウイズはみんなと一緒に活動をするバンドというよりかは、自分の作品を見るスタンスに近かったということだ。

ネギ:出来ることなら、僕はバレーボウイズを観客として観たいんです。自分が関わって発案したものが、ステージの上で形になるところを想像したら「幸せだろうな」と常に思っています。だからライブ中でも「僕も下に降りて観客と一緒に歌いたいな」と思う瞬間が何度もあって。ただ現状それはできないので、一歩引いた立ち位置から「あ、いいな」を感じたいです。(永遠の夏休みの終わりと始まり – バレーボウイズが語る自身の成長と自主企画『ブルーハワイ』について –

この一歩引いて、自分たちのバンドを見る姿勢はバンドマンよりも、プロデューサー的なスタンスであったように感じる。そう考えると、徐々に大きくなくなる自分のバレーボウイズとは違って、音楽家として私的に音楽を進めていきたいという気持ちも分からなくはない。

 

ただ一つ断言できることがある。それは終わりがあれば、始まりがあるということだ。それにバレーボウイズのメンバーはほぼ全員、デザイナー、イラストレーターなどのアーティスト活動も行っている。彼らがこのまま音楽という創作活動をやめて何もやらないとは、僕には到底思えない。

 

そういえば解散を発表した文章には何度も「大人になりゃしねぇ」、と彼らの代表曲である“卒業”のフレーズが引用していた。

別れを惜しむただそればかりの毎日さ
こんなことだから いつまでたっても 大人にゃなりゃしねぇ

(バレーボウイズ “卒業”)

バレーボウイズは長かったなつやすみを抜け出して、それぞれに新しい旅路が始まる。別れを悲しむ暇なんてない。全員が大人にならないといけないのだ。そして全員が個々の活動に余裕もち、またみんなで音楽がやりたくなったら、みんなで集まって肩肘張らずに「永遠のなつやすみ」のような音楽をやってくれたらな、とファンとしてはそうなることを願ってやまない。

 

最後にバレーボウイズへ。あなたたちと出会ってからの4年間、とても楽しい夏休みでした。もう会えなくなるのか、また会えるかはわからないけど、とりあえずこれからもあなたたちの音楽を聴き続けます。今まで素晴らしい音楽たちをありがとう。

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