COLUMN

俺の人生、三種の神器 -金子ゆか ①カセットテープ編-

2020.03.30

金子 ゆか金子 ゆか

▼俺の人生、三種の神器とは?
人生の転換期には、必ず何かしらきっかけとなる「人・もの・こと」があるはずです。そのきっかけって、その当時は気づけないけれども、振り返ると「あれが転機だった!」といったことはありませんか?そんな人生の転機についてアンテナ編集部で考えてみることにしました。それがこの「俺の人生、三種の神器」。
折角なのでもっとアンテナ編集部員ひとりひとりのことを知ってもらいたい!そんな気持ちも込めたコラムです。これから編集部員が毎週月曜日に当番制でコラムを更新していきます。どうぞお楽しみに!

私の人生には大きな山も谷もない。しかし暮らしの中で大事にしてきている物事があって、それが人生の道しるべとなっているし、転機として作用しているのではないだろうか。
音楽(歌うこと)、奈良(今の暮らし)、人との繋がり……大まかにこの3つが私にとって大事にしてきている物事と言える。まずは音楽・自分の表現活動のきっかけとなった出来事を「カセットテープ編」として綴ってみたいと思う。

シンガーソングライターになりたい

小さな頃から歌うことが大好きだった。BoAや倉木麻衣、モーニング娘。をよく歌っていたけれど、「自分で演奏して歌うこと」に興味を持ったのは、中学1年生の時の文化祭で先輩のバンドを見たことがきっかけ。幸いすぐに誕生日を迎えて、1万円程度のアコースティックギタービギナーセットを両親に購入してもらった。

 

ちょうどその頃、17歳でデビューしたYUIに出会い、影響されやすい私の将来の夢はもちろんシンガーソングライター。ミュージックステーションにYUIが初登場した時に、デビュー曲の”feel my soul”をあぐらをかいてギターを弾きながら歌う姿や、テレビ画面に映し出される手書きの歌詞テロップが印象的だった。

当然のように路上ライブにも憧れたので、私もギターを担いで近所の公園へ。外で大声を出して歌うのは気持ち良い。時にはピアノが上手な友人とオリジナルソングを作って自分たちを褒め合ったりした。

はじめてのデモテープ

漠然とそんな遊びを続けていたのだけれど、中学3年生の時にラジオ番組SCHOOL OF LOCK!で十代のための音楽フェス「閃光ライオット」が開催されると知り、友人とのユニットで迷わずエントリー。文化祭で歌を披露したり、公園で犬の散歩中のご近所さんに聴いてもらったりするうちに、自分の実力がどのくらいなのかを知りたいと思っていたのだ。

 

しかし中学生の素人2人には立派なデモテープを作る術はなく、手にしたのはカセットテープ。広くて暖房のききにくい音楽室で、とにかく何度も巻き戻して演奏し直した記憶が今でもよみがえる。録音機とどういう距離で演奏したら聞こえ具合は良いのか。マイクを通しているわけではないので、自分の声と友人の声のバランスはどうなのか。そもそもグランドピアノの音が大きすぎるじゃないか……と。人に「ちゃんと聞いてもらう」というのはとても根気がいることだと感じた。外で自分が気持ち良く歌っているついでに通りがかりの人に聞いてもらうこととは訳が違う。

 

結果はというと2年連続で応募したが、1年目はデモテープ音源審査落ちで2年目はスタジオ審査落ち。中学卒業間近の思い出作りと言ってしまえばそれまでかもしれないが、他人へ届けようと初めて「音楽制作」した日々が宝物だ。

歌っては聴いての繰り返し

宝物の日々から10年以上が経った。歌う内容や目的は年々少しずつ変化しながらも、私は今も変わらず歌い続けている。カセットテープを何度も巻き戻したように、今でもスマホに向かって、歌っては聴いての繰り返し。歌詞の聞こえ具合を確認したり、曲の印象を確認したり。私はずっと同じ事をしてきたんだなと思った。

 

ゼロから何かを作ることはとても大変で、さらに大人になると自分の内なる部分をさらけ出すのは怖いと感じることが多い。でも、そんなことを知らなかった十代の私が先にそのハードルを下げていてくれたのだと思っている。本当はテレビに出るような大物になりたかったかもしれないし、バンドをしたかったかもしれない。過去に思い描いた形はすでにおぼろげだけれど、歌って自己表現を続けてこれたことが幸せだ。きっとこれからもずっと歌っては聴いての繰り返しの日々が続くのだと思う。

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