INTERVIEW

【もっと身近なクラブカルチャー】vol.2:mogran’BAR

2020.03.24

阿部 仁知阿部 仁知

連載『もっと身近なクラブカルチャー』第二回の今回は、京都二条Live House nanoのレギュラーイベントでボロフェスタの夜の部でもお馴染みのmogran’BARを紹介。自身のイベントだけでなく幅広く様々なパーティーに顔を出す、関西クラブカルチャー界隈のハブ的存在の426(よーじろー)さんに、パーティーやクラブカルチャーへの思いを聞きました。

クラブに行ったことはありますか?日常の中でモヤモヤする時、どうにもやりきれない気持ちを抱えている時に、大音量の音楽を浴びながら踊っているとなんだか気分がスッとする。そんな体験ができる場所がクラブです。この連載では、主催DJの言葉を交えて関西の魅力的なクラブイベントを紹介していきます。「なんだか敷居が高そうだな」、「僕なんかが行ってもいいのかな」と感じている人も身近に感じられるように。そして、あなたが音楽ライフの新たな一歩を踏み出せるようになれば幸いです。

日時

毎月1回どこかの土曜日または日曜日

18:00〜22:00

場所

京都二条Live House nano

京都市中京区押小路通西洞院東入ル二条西洞院町632-3

出演

mogran’BAR crew

426 / AKAAKAYA / 横地潤一 / Hasegawa Tomohiro / Higu / MIW / LADY GAYA / BABBI

+GUEST DJ , GUEST LIVE

料金

無料(要1ドリンクオーダー)

Twitter

mogran’BAR

nanoをにぎやかすチャージフリーのデイタイムパーティー

ーー:

早速なんですが、426さんが思うところのmogran’BARの魅力を教えてもらってもいいですか?

426:

まずなんといってもチャージフリーなことですね。チケット代を設けていた時期もあったんですが、今は「このゲストをチャージフリーで観られるんや」っていうところに力を入れていて。過去の出演者でいえばKONCOSに出てもらったり、あとは仲良くしている神奈川県逗子市のHalf Mile Beach Clubだったり。でも一番すごいなって思ったのがnever young beach。今みたいに売れる前の彼らがD.A.N.を連れてきて出てくれるっていう。今考えたら意味がわからないですが(笑)。

ーー:

それでチャージフリーはアツ過ぎる……。あと時間設定がフレンドリーですよね。終電までですか?

426:

基本的に22時まで。スタートは18時からが基本なんですが、たまにバンドが2組出る時は早めたりとか。

ーー:

そこはやっぱりクラブに慣れていない人への導入みたいな意識があるんでしょうか?

426:

住宅街の中という土地柄もあるんだけど、「終電までに帰れると入りやすいかな」って意識はあります。自分としてはオールナイトも好きだけど、どちらも良さがあるし。

ーー:

僕もそうなんですけど、426さんもオールナイトの魅力もよくわかっていると思うんです。その中でデイタイムの魅力ってなんだと思いますか?

426:

そうですね、翌日のことが心配にならない。単純だけどそれは大きいと思います。オールナイトだとどうしても帰れなくなってその場に居続けなきゃいけなかったりもして、体力や心理的なしんどさは絶対あるので、気楽に来て帰れるっていうのはいいと思います。あと仕事や学校帰りに気軽に来ることができるとか、いろんな層を受け入れられることもすごく魅力的。チャージフリーにしてるから、その分一杯飲んでくれたら嬉しいなと。

ーー:

スタンプカードもありますもんね。あとnanoはバーカウンターにいるまぁこさんもとても気さくだし、お菓子をもらえたりして入りやすい感じもあります。

Live House nano

426:

お酒を飲んでると口が寂しくなりますからね。お菓子選びも楽しみながらやってます。あと最近nanoの機材が進化して、音が優しくなったんですよ。大音量の中でも喋ったりできる。そんな風に過ごしやすい環境になってきていると思います。

 

よく来るお客さんに聞いたんですが、スタンプカードはめっちゃすぐ溜まるらしいですよ。スタンプ10個でドリンク1杯無料。僕はイベントをする時絶対お店の人に「今日のお酒の売り上げどうでしたか」って聞くんですよ。「お客さんが入って盛り上がってよかった」だけじゃなくて、お店としてもいい感じを目指していて、その辺はウィンウィンじゃないと。きっちりとお店にも還元できて、僕らもいいパーティーができたらそれでいい。そこは心がけています。

無料のスナックとスタンプカード
ーー:

逆にmogran’BARがきっかけでnanoに入り浸るなんてこともありそうですね。確かにお互いがいい気持ちでやれるのが一番だと思います。それはうまくできている実感はありますか?

426:

ある程度は。僕ら自身もよく飲むんで(笑)。nanoは外でちょっとチルできるスペースがあるし、上の□□□ん家(ダレカンチ)でだらっとしてからまた来てもいいし、本当にみんな好きなようにやっていますね。

□□□ん家(ダレカンチ)

ーー:

上でご飯を食べながらちょっとまったりして、また戻ってくるのもいいですね。いろんな選択肢がある。

426:

好きなタイミングで帰って来てくれたらいいし。

ーー:

あとボロフェスタによく出てるじゃないですか。mogran’BARのごちゃごちゃした感じもよく合っているなと思うんですが、ボロフェスタに出続けていることへの思いはありますか。

426:

もちろん土龍さんのご好意というのもあって、信頼はしていただけてるのかなとは思います。僕らは時間も守ってちゃんと締めるので(笑)。でもボロフェスタはやっぱり楽しいですよね。京都の代表的なフェスだし、そこで働くボランティアの方々もみんなしっかり高い意識を持って動いていてすごいなと思います。ラインナップも毎年いいし、KBSホールのステンドグラスは毎年見ないとなって思いますね。METROの夜の部によく出るんですけど、楽屋でお会いしたことのないバンドと挨拶させてもらったりとか、そういう交流の場にもなっていますね。

多種多様なDJとバンドのクロスオーバーで一期一会の夜を

ーー:

mogran’BARはクルーが8人と大所帯なのもあって、DJもゲストライブもバラエティに富んでいますよね。多くのクルーがいることは強みになっていますか?

426:

そうですね、例えばうちのTomoh(AKAAKAYA)がSECOND ROYALのパーティーでDJをしていたので、その繋がりでゲストを呼んだりすることもあります。クルーがそれぞれ活躍している場所があって、そんな中で月一回集まるって感覚ですね。Higuは東心斎橋のSTOMPによく出入りしてるし、LADY GAYAはMETROや木屋町界隈のパーティーでもプレイしているので。mogran’BARはその月に出られる人が出ようという感じなので、それぞれの生活の中で緩やかに楽しんでます。その中で、長くやってるとどうしても内輪感が出てくるので、ゲストを呼んで新しいお客さんを呼び込もうとはしています。

ーー:

内輪感って難しいですよね。その場所に行ったら誰かがいるから行くってのもあるし。何か気を付けてることはありますか?

426:

僕がパーティーをやる上で「来た人全員と乾杯する」というのはずっと心がけています。内に引き込むとかではないんだけど、そうすることで話のきっかけになったりするので。やっぱり来てもらったからには「今日は楽しい夜だった」と思ってもらえるようにしたいなと思ってます。

ーー:

主催のパーティーに限らず426さんはいつでも誰にでもウェルカムな感じがありますよね。

426:

やっぱり初めて来る場所って緊張するし、ましてや一人で来たら「どうしよう」となっちゃうので、そこで主催側の誰かが話しかけてくれるとちょっとホッとするものはあるかなと。

ゲストのSUMASIGAO(左)と426(右)
ーー:

ライブだけでなくDJの選曲もかなり多種多様だなって思うんですけど、何かこだわりはあるんですか?

426:

「これがいい!」って思うものですかね(笑)。元々はロックが多かったんですけど、今はディスコやハウスが多いです。ただ僕自身のモットーでもあるんですけど、DJに選曲は強要しない。自分がいいと思うものをかけてくれて盛り上がったらそれでいい。僕ら自身楽しんでますね。だからフルメンバーが参加した時はジャンルがぐちゃぐちゃでカオスなことになるんですが(笑)。

ーー:

でもそれも面白いっていう(笑)。J-POPや懐メロも色々かかって、いい意味で区別がないですよね。ジャンルや国籍というよりもっと広く捉えている感じがします。

426:

強いていうならポップミュージックかな。流れの中で自分の得意なものをどう打ち出していくか各々そこで歩み寄るって部分もあって。逆にいえばそのDJを信頼してるんで、決まりごとなくやれるんですよね。安心して任せてます。

ーー:

クラブのノリとライブのノリは若干違うと思うんですが、mogran’BARではうまい具合に混ざっている感じはありますか?

426:

そうですね、難しさも感じるからこそ、そこは心がけてますね。タイムテーブルも僕が組んでるんですけど、「このライブだったらこの人の得意分野だから前のDJを任せる」とか、そういうことは毎回考えていますね。バンドもその方がやりやすいだろうし。そういう意味で、幅広いメンバーがいていろんなバンドと繋がれるのはうちの強みかなと思っています。

ーー:

426さんご自身のDJのスタイルやこだわりは何かあるんでしょうか?

426:

自分が飛び抜けたセンスがあるとは思っていないので、他の人がやらないようなことをやってますね。最近なら、中国語の曲をかけるのにハマってます。2018年の『クレイジー・リッチ!』という映画があるんですけど、そのサウンドトラックが全編中国語なんですよね。そこにMadonnaの“Material Girl”やColdplayの“Yellow”の中国語カバーが入っていて、その影響でハマりだして。

ーー:

この前もJ-POPだったりいろんな中国語カバーをかけてましたよね。「こんなのどこから見つけてくるんだ?」と思ってますが(笑)。中国で日本の曲をカバーする文化ができつつあるんですか?

426:

僕がかけるのは90年代の曲が多くて、あっちでもその頃の曲がカバーされているみたいですね。でも最近の曲はほとんどない。僕は「いつ星野源のカバーが出るんだ!」と思ってるんですが(笑)。

ーー:

星野源があったら最強ですね(笑)。今アジア圏の音楽シーンが分け隔てなくなってきていていい流れだと思っているんですが、その中で中国語カバーをかけてるのは先取りしてる感じがありますね!

426:

楽しくてやってるだけでそんな意図はないけど(笑)。

ーー:

mogran’BARも結構長くやってると思うんですけど、印象に残っていることはありますか?

426:

衝撃を受けたのはSEX山口さん(通称:セク山)のDJ。ヒップホップの現場でよくやってる方なんですけど、その方のJ-POPのプレイがすごく面白くて。僕はプレイに笑える要素が何個かあればいいなって意識しているんですけど、セク山さんのDJはもちろんうまい上に要所要所で笑いを入れてくるので、それは衝撃でしたね。

ーー:

そこらへんからご自身のプレイでもユーモアを大切にするようになったんですね。

426:

かっこいいプレイを見たら家で真似てみたりして。ただ同じ音はなかなか出せないですけどね。実際現場でも繋ぎ方だったり真似てやったりするけど、全然はまらない。なんでかわからないけど「この人がかけるこの曲」ってのがあってすごいですよね。

ーー:

その場のマジックというか、雰囲気とかタイミングってありますからね。DJの方々はすごいなっていつも思ってます。

426:

そうそう、やっぱりその瞬間なんですよ。だからパーティーの感覚としては「その日その夜がいい夜になればいい」と思ってやっています。

決まりごとが多い世の中だからこそ、クラブの中だけでも自由に

ーー:

426さんとの出会いはあまり思い出せないんですけど、多分梅田のKARMAでやってた頃のCLUB SNOOZERで気さくに話しかけてくれて、僕も自然と通うようになったのは覚えてます。分け隔てなくフレンドリーなのは、やっぱりレジデントとして以前に、クラブカルチャーの人間としてっていうのもあるんですか?

426:

ありますね。クラブってやっぱりどうしても「盛り上がらないといけない」とか「ナンパがある」とか「チャラい」とか、そういうイメージがあるじゃないですか。でも僕らがやってるところはそうではなくて。どちらかというと誰もが思い思いに過ごせる場所をつくることを心がけています。遊び方がわからないって人は多いんですよ。行ったら行ったでどう過ごせばいいのかって。自由だけど、自由だからこそ何をしたらいいかわからない。

ーー:

確かに初めてだと戸惑うところはあるかもしれませんね。

426:

でも横の人の真似をするとかでもいいんですよね。二十歳くらいの時にクラブジャズのパーティーに一人で通っていたことがあって、何をするわけでもなくただ一人で踊ってたんですけど、すごく踊りの上手い人がいてその人の真似をしてみるのが楽しかった。

ーー:

「こういうことをしたら浮いちゃうかな」って感覚は取っ払っていいですよね。むしろ淡々とわけのわからない踊り方をしてる人がかっこいいなって思ったりもする(笑)。僕は結構そういう人に勇気づけられたりしてます。なんでもいいんだって。

426:

これだけ外が決まりごとが多い世の中なんですから、クラブの中だけでも自由でいいよなって思いますよ。

ーー:

そういうのが好きで僕も通ってるんだろうなと改めて思います。坂本慎太郎のディスコの曲があるじゃないですか。あの感じだなあって思います。

426:

そうそう、踊る必要すらなかったりする。風営法の規制があった時に実際に警察が現場に来て、「踊ってましたか?」って聞かれたことがあって。そうしたら僕はその意味がよくわからなくて「踊るってなんですか?」って聞いたんですけど、向こうも答えられなかったんですよ。クラブの「踊る」の定義ってまったくないし、みんなで振り付けを真似てるわけでもないし。

ーー:

どんなに珍妙な揺れ方をしてても、それも受け入れてくれる場所がクラブだなって思いますね。mogran’BARはそういう場所にできてる実感はありますか?

426:

やれてると思います。毎回自由なバイブスが交錯して、僕らでも想像がつかないものになるので、お客さんのいろいろな姿が見られて楽しいです。

Live House nano
ーー:

関西に来ている海外のアーティストは「大阪が一番だ!」とか結構お世辞じゃなく言ってくれてるような気がして、クラブカルチャーの盛り上がりから繋がる部分もあるんじゃないかなと僕は感じているんですけど、426さんはどう思いますか?

426:

Superorganismのオロノとかも言ってましたね。ただライブに来ているお客さんとクラブにいるお客さんはどっかで分断しているようには感じてて、その部分を交わらせていきたいなとは思っています。

ーー:

例えばThe xxとかが来た時に現場にいるような人たちが、もっと自然とクラブに来たら面白いですね。そこで交流して「この前行った〇〇も楽しかった!」みたいな話ができたらいいなって。

426:

そういう場を作ることですね。昔はライブの終演後を狙って「こういうのやってます」ってビラ配りもしてたけど、今は条例とかの関係でそれができないってのもあるし、改めて地道な努力をしていかなくてはと思います。今はその分SNSとかで情報発信をしていますね。

ーー:

SNSがあるとこういう場の作り方も違ってきますか?

426:

そうですね、SNSがきっかけって人もいるので。アクションを起こしてくれた人にはなにかしら反応するようにはしてて、ちょっとでもそれで親しみを持ってもらえたらいいなと思っています。

ーー:

なるほど。僕としても一緒に盛り上げていけたらと思っています。最後に今後の展望を聞かせてもらえると。

426:

2020年の1月で333回を迎えたんですよ。それで個人的な話になるんですけど、自分が426なので426回を目指したいです。8年後!

ーー:

426さん記念回ですね!

426:

まあでも、いつ誰が来ても「その日の晩は楽しかった」と思ってもらえる場にはずっとしていきたいですね。今の緩やかな感じのまま続けられたらいいなと。それはチャージフリーでやらせてくれるnanoのご好意だし、土龍さんやまぁこさん、スタッフのみんなの協力でできている場なので、それを10年20年と続けていけたら幸せでしかないよなって。あと、僕が15年くらいずっと遊んできた分、クラブカルチャーに対して恩返しができたらと思っていて。今二十歳くらいの若い人たちが遊べる場所をなくさないように努めていきたいです。

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