ダイニングバー DEN-EN

2020.02.14

岡安 いつ美岡安 いつ美

取材当日も、バーカウンターからは活気のある笑い声が聞こえていた。

 

ダイニングバーDEN-ENは、三条河原町を少し下ったVOXビルの地下1階にある学生をメインターゲットとしたお店である。店内の壁面には学生が描いた絵が飾られ、約100名以上収容可能な広いフロアでは、ダンスバトルイベントや、学生映画の上映会も行われているそうだ。

 

80年以上学生と向き合ってきたDEN-ENが、今どんなことを考え、京都の街にコミットしていこうとしているのか。そして京都の学生とどのように関わろうとしているのか。話を通してわかったのは「学生が大人になる前に、何かに情熱を持って打ち込める場所」として、DEN-ENが機能していることだった。今回は、渉外を務める古澤一融さんにお話を聞いた。

住所

〒604-8031

京都市中京区河原町通三条下ル大黒町44 河原町VOXビルB1

電話

0120-0716-88

定休日

なし

HP

http://denen1939.net/

学生と関われる仕事を探して行き着いたDEN-EN

古澤一融さん
ーー:

古澤さんはいつからDEN-ENに関わられているのでしょうか?

古澤:

3年前です。渉外のようなポジションとして働いています。飲食店にはなかなかないポジションだと思いますが。

ーー:

きっかけはなんだったのでしょうか。

古澤:

関東生まれなのですが、京都に住むようになって学生たちと何か発信していければいいなと考えていました。そんな折にDEN-ENの存在を知って働き始めた感じです。

ーー:

なるほど。学生にフォーカスするようになったきっかけを知りたいのですが、京都で学生生活を過ごされたのでしょうか?

古澤:

僕は東京で音楽の専門学校に通っていたんです。東京でDJイベントを主催したり、ライブイベントを企画したりしながら、音楽に関わり続けたいなあと思って過ごしていましたが、漠然と東京でなんかやることに違和感を感じて。東京って物がありすぎるから、そうじゃない環境で何かを作りたかったのかな、と今は思います。

ーー:

そして京都に移住したと。

古澤:

はい。関東に住んでいた頃の仕事をやめたタイミングで京都に来ました。京都に来てからはすぐに音楽イベントのスタッフをしたりして、音楽イベントを通じて街を変えることが面白いと感じていました。

 

当時はCD屋で働いて、音楽に関われていればいいと考えていたんです。でも、CDが売れず、自分が働いていたお店が潰れたりする現状なども目の当たりにしていて、音楽に対して少し諦めを感じていました。そのあとは音楽とは違う畑のエンタメ業界で4年間働いて、DEN-ENに入りました。

ーー:

DEN-ENに入社を決められたきっかけは何かあったのでしょうか?

古澤:

京都に住み始めた時からVOX HALL(以下、VOX)には遊びに来ていたのですが、DEN-ENがVOXと同じビルに入っていて、さらに親会社が同じとは知らなかったんです。求人にあった「学生」と関われるということに惹かれて、あとは「大学を回って営業する」という項目があったんですよ。飲食店なのに営業?というポイントにも目が止まりました。

ーー:

今は「渉外」をされているとおっしゃっていましたよね。営業も兼ねているのでしょうか?

古澤:

そうですね。お店を知ってもらうために、大学に行って部室をノックしてチラシを配る……ようなこともしていました。お店の昔ながらの営業方針だったので、今ではやりづらいことが多かったのも事実です。僕が入ってからは、VOXの店長でもありDEN-ENの統括店長でもある有堀と話し合って、ライブハウスのブッキングのような手法で営業をするようになりました。

ーー:

ブッキングのように?

古澤:

はい。昔と今の違うポイントってやっぱりスマホなんですよ。今の大学生は連絡のやりとりをスマホでするのが当たり前。なのでまずはうちのお店を使ってくれた学生の子達、例えば幹事とかが中心なのですが、そういった子と直接話をして、「次の予約はLINEでしてくれていいから」と伝えてLINEを交換するんです。そういうことを一年くらいひたすらしていました。

ーー:

リピーターを獲得する、ということがメインだったのでしょうか。

古澤:

そうですね。初対面の大人に抵抗がある子たちもたくさんいるので、一度会ったことがあるという事実は安心してもらえる材料にもなります。そういったサイクルを3年ほど続けて400〜500人ほどとLINEを交換できました。

ーー:

500人!それはすごいですね。新規でお客さんを獲得するためには何かアプローチはされていないのでしょうか?

古澤:

イベントの開催を通じて、新しい学生がお店にやってきてくれています。これまで映画とダンスのイベントを開催して、新しく繋がりも獲得できました。お店の営業ではなくて「イベントに出ませんか?」っていう誘いであれば、部室にも行きやすいんですよね。そういった意味でもイベント作りには力を入れています。

 

イベントを通じてこのお店を知ってもらって、サークルの飲み会に使ってもらうという流れはこの一年くらいで確立できました。

ーー:

飲食店の営業ではなく、確かにブッカーのような立ち振る舞いですね。

古澤:

統括店長もお店の予約をブッキングと言っているくらいです(笑)

 

イベントに収益性を求めていなくて、京都から新しいカルチャーを発信したいという思いのもと運営しています。面白いことをやり続けて、それが結果として店の利益に結びつけばいいなと考えています。

ライブハウスとの接点を感じるリユースカップ。店で使用されているそう。

「責任は僕が取るし、失敗してもみんながやりたいことをやろう」

ーー:

学生主体のイベントはどのようなきっかけで始まったのでしょうか?

古澤:

2018年に『いつまでも世界は…』というライブサーキットで、うちの店も初めて会場として参加させていただいたんです。その時、ただイベント会場として貸すだけでは面白くないなと思って、そこでライブの間の時間で映画を上映する企画を立ち上げました。当時京都造形芸術大学の映画学科に通っているスタッフがいたので、その子と、あとはうちを使ってくれていた佛教大学の映画部と、同志社大学の映画サークル・F.B.Iに話をして、合同上映会を行ったのがきっかけでした。そのあとに、合同上映会をイベント付随ではなく、単独でやりたいと学生が言ってくれて、イベント化した流れです。

 

僕は学生がやりたいと言ったことは止めない方針なので、彼らが描いたイベントのサポートをして、2019年にも合同上映会を開催しました。参加してくれた大阪大学の子が「鳥取大学の映画を絶対上映したい」と言ってくれたりして、参加団体も増えたラインナップになりました。

ーー:

イベントの運営はどれくらいお手伝いをされているのですか?

古澤:

2018年に行った合同上映会については、学生が主導で僕はほとんど口出ししていません。みんながやりたいことをやろう、と伝えました。それでトラブルも起こったりしていましたが、僕は失敗することが大事だと思うんですよ。大人になったら失敗ってできないじゃないですか。失敗をしないようにリスクを排除して、計画をするようになる。失敗できることは学生の強みです。責任は僕が取るし、失敗してもみんながやりたいことをやろうと、全てを学生たちに任せました。

ーー:

能動的に動ける学生がいること、その子たちがのびのびとイベントをできる環境を作れていること、どちらも素晴らしいなと感じました。

古澤:

昔、目上の人に自分が一生懸命やりきったことを「失敗だった」と一蹴されたことがあったんです。確かに内容はお粗末で、うまく行っていなかったかもしれないけれど、それが失敗の一言で片付けられたことが悔しくて。だから学生が一生懸命やることを「失敗」と僕は言いたくないんです。失敗は学びになって、その人にとって必ずプラスになると思うんです。失敗はすごく大事だし、その失敗の責任を負ってあげるのが、大人の役目なんじゃないかなと最近よく考えます。

ーー:

大学生のときにそういった環境があることが、羨ましいくらいです。

古澤:

ただ、サークルは毎年代替わりするので、失敗は当事者の学びにしかならなくて、イベントとしては継承されないんですよね。学生の映画カルチャーがもっと盛り上がるためにも、イベントとしてのクオリティをあげないといけないという課題も2018年が終わって感じたので、2月に開催されるイベントの仕切りの部分に関しては、僕も入って作っていっているところです。今はイベントを運営する上での型を完成させて、それを学生たちに渡していく流れにしたく奔走しています。

学生は、本気で熱量を持てる最後の期間。それを発揮できる場所を作りたい

ーー:

なぜ学生の映画カルチャーを盛り上げたいと思ったのでしょうか。

古澤:

学生映画って、プロの作品と顕著に差が出るものだと思うんです。単純にお金もかけられないですし。いい作品を作りたくても、それを作れる環境がない。大学側の規制も年々厳しくなってきているんですよ。学生を取り巻く環境が厳しいのは事実なんです。

 

学生の映画カルチャーに限らず、学生達が持っているスキルを伸ばせる環境や場を作れるように動くのが僕の仕事だと思っています。

ーー:

身近に大人の味方がいるのって、それだけで心強いですね。

古澤:

僕は大人の中でも権力がないので、頼りないですが……。

ーー:

「僕が責任取るから好きにしていいよ」って言葉は、なかなか言えないですよ。

古澤:

学生たちがこれからの時代を作っていくんです。だからこの子たちが新しくて、面白いことができると僕は信じて、それができる場所を提供するだけです。

ーー:

25才以下の若者とかではなくて、学生に限定しているのはなぜなのでしょうか?

古澤:

学生は、本気で熱量を持てる最後の期間だと思うんですよね。過去に京都学生祭典で『そでふれ!』っていうよさこいを見たんですが、全力で踊って、声を出している学生たちを見て、そんなことを考えさせられたんです。大人になったらあんな熱量で何かを表現することって、僕には絶対にできないと思ったんですよ。それにすごく感動して。

 

そんな学生たちが、熱量を持って何かに取り組めるタイミングで、それを発揮できる場所は大人が作らないといけないと思っています。学生の時にそれができなかったら、一生できないと。

ーー:

確かに、学生の時ほど熱量を持って何かに取り組めたことは私自身ないようにも思います。

古澤:

でしょう。僕はやりたいことをこれからもやり続けていきたいし、そういう環境は自分で作っていきたいです。

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