COLUMN

【ダブリンと少年】第一回:はじめましてダブリン

2020.02.11

佐々木 明日華佐々木 明日華

こんにちは、こんばんは。初めまして、佐々木明日華と申します。94年生まれ、京都生まれ京都育ち。絵を描いたり写真を撮ったり、たまにデザインの仕事をしたり。社会人になって結構経つのにいまだに青臭さが抜けなくて、よく大学生に間違われます。アイルランドへの留学をきっかけにアンテナで記事を書かせていただくことになりました。

 

自分は今アイルランドの首都ダブリンに語学留学に来ています。滞在はビザの決まりで最大8ヶ月と決まっており、もうすぐ半分の4ヶ月が経つというところ。留学することになったきっかけは、母からの言葉でした。転職を考えていた去年の春頃、今後の相談も兼ねて母と話していたとき、「せっかくだから海外に行ってみたら?」と母に提案されたのです。母は幼い頃海外に数年間住んでいた経験があり同じ経験をさせてあげたいと思ってくれていました。

ただ、自分の家がそこまで余裕のある家庭ではないことは自覚していたし、海外に行くことイコール「お金がたくさんかかること」としか捉えていなかったせいで海外旅行に行こうと思ったこともない。以前の自分のままなら断っていたかもしれません。確かにお金はかかるけど、それだけじゃない。今の自分はそう考えることが出来ました。思い返すとここ数年間、思い立ったが吉日という言葉を身で表すかのように動いていたし、物事にはタイミングがある。そのタイミングが今でした。そうして初めて自分の人生で海外に留学するという選択肢が生まれ、最初はとにかくネットで調べ、エージェントに話を聞きまくり、最終的に留学先として辿り着いたのは、アイルランド。

 

自分にとっては全くと言ってもいいほど馴染みのない国。今まで知る機会もなかったし、これから知りたいと思う機会もない気がする国。そんな国がもしかしたら自分の生活する国となるかもしれない。自分の想定していなかったところからポンと出てきた選択肢が、とても面白く感じました。正直、他にもビザが取りやすかったり、ヨーロッパ圏で英語を使う国だからだったり、日本人が少ないからだったり、いくつか理由はありますが、最終的には面白いと思った感情に従って決定。そして実際に来てみた今、後悔はしていません。

少年を探して

はじめに少しだけダブリンの紹介をしておくと、人口は約136万人でアイルランド全人口の30%程が集中する首都です。ダブリンの中にはシティセンターと呼ばれる市街地があり(京都でいえば河原町)、自分は今その付近で生活しています。そして特に人通りが多い場所では落書きがたくさん目に付きます。壁にはもちろん、電柱、ポール、ゴミ箱などいたるところに描かれています。

ダブリンで生活し始めたころ、一つの落書きと出会いました。

この落書きは語学学校に通いはじめた初日、オリエンテーションとして街歩きに出かけた際にたまたま見つけて写真に撮っていたもの。このときは「あ、可愛い落書きだな」くらいにしか思っていませんでした。でも気がつくといろんな場所に同じ落書きがあるんです。今通っている語学学校は授業が午前中だけなので、よく美術館に行ったり、写真を撮りに行ったり、買い物に行ったりしていて、そのついでに街をぶらぶらするのが日課になっています。その中で見つけたら写真を撮るようになりました。

 

この落書きを勝手にBoyシリーズと呼んでいます。Boyの共通点は頭の3本の毛とBoy.というサイン。見つけるのが楽しくなって、終いにはboyを見つけるために探しに出歩く自分がいました。1週間前に見たときにはなかった場所に新しく描かれていたり、同時に壁が塗り替えられてなくなっていたりと、身近なところでリアルタイムで変化していく面白さ。そして一つ一つ絶妙に表情が変わっているところが良い感じにコレクター心をくすぐってきます。増えていくに連れて、描かれる場所も遊び心が出てきて、ますます見つけるたび嬉しくなり、Boy探しにのめり込んでいきました。

生活と共存するグラフィティ

11月頃から自分のInstagramのストーリーにもアップし始めると、それを見た友人からも目撃情報が入り、日に日に写真に納めたBoyの数は増えて行きました。その頃、Boyと同じようにいろんな場所で描かれている(もしくは貼られている)他の落書きやポスターにも気付き、instagramで作者を探して見つけたことがあります。同じようにBoyの作者を見つけられるかもと思い、調べてみるが見つからず。なんなら映っている投稿さえ1枚も見つからない。誰が何のために描いているのか?なぜ描き始めたのか?単独で描いているのか、複数で描いているのか?探せば探すほど知りたくなっています。もしかすると作者が活動を始めたタイミングと自分がアイルランドに来て探し始めた日は近いのかもしれない、そんなことを思いながら今でも探しています。

 

ダブリンに限らずアイルランドには壁全体に描かれるウォールアートから、グラフィティ、小さいステッカーのようなイリーガルなものがたくさん街のあちこちにあります。スプレーペンキで描かれた落書きの一種で、特に個人や集団のマーク(目印)とされるものを描いて回る行為、またはそれによって描かれたものをグラフィティの一種でタギングというらしく、おそらくBoy.はそれにあたるよう。日本では器物損壊罪として処罰の対象となるし、海外でもきちんと罰せられるらしい(海外は寛容だと思っていた)のですがこちらは日本とは比べ物にならないくらいの落書きが生活の一部になっているかのように街に溶け込んで残っています。

アイリッシュの友人によると、このようなグラフィティは小さい頃から常に身近にあったと言います。消されずに残っているだけで、もちろん中には外観を損ねるようなものもあるし、アートと捉えられるものもある。ギャングの縄張りを意味するものもあれば、社会への反対意思の表現、ただ単にアーティスティックなものだったり意味も様々。実際に行ったことはないですが貧困層や犯罪の多い地域にはグラフィティも多いと聞きます。そこに住んでいる人からすれば元々在ったものだし、身近なものなのだろう。でも外から来た自分にとって、それは日本にいるときに日常でなかった光景。誰かしらの何かの思いが目に写り込んで来る生活は刺激的で面白い。

 

留学が始まって4ヶ月、もちろん最初は新しい環境の変化にわくわくしたものの、語学留学で来ているからこそ勉強を疎かには出来ないし、旅行ではないのでお金をセーブするため遊びに行くことも少ない。多少慣れた頃には生活がマンネリになりがちになっていました。そんな中見つけたBoyの存在は今ではささやかな日々の楽しみの一つ。通ったことのある同じ道でもBoyを探し始めてからだとまた違った見え方をしたり、新しい道を通ってわくわくしたり、誰かとのコミュニケーションのきっかけになったりと、留学に来てすぐとはまた違う楽しみが増えています。Boyを探し始めたことはある意味ここに住んでいる自分だからこそ見つけることが出来たこと。Boyも追い続けつつ、ダブリンで生活している自分だからこそ見つけられたものを届けて行けるよう、探して行きます。

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