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□□□ん家(ダレカンチ)

2020.02.11

マーガレット 安井マーガレット 安井

京都市は二条城辺りの住宅街にあるLive House nano。その2階にイベントスペース&居酒屋□□□ん家(ダレカンチ)がある。2018年8月8日にオープンして以来、バンドマンや地域の人、サブ・カルチャーが好きな人で、日々にぎわっている場所だ。店内を見渡せば、1,000冊以上はあるマンガが棚に並び、イベント掲示板には今後開催する予定のイベント案が所狭しと掲示されている。そして居酒屋としてだけでなく、日によってはトークイベントや麻雀、ボードゲームといった各種イベントが開催されている。

 

まさしくイベントスペース&居酒屋であるこのお店のオーナーはミノウラヒロキさん。ボロフェスタ主催メンバーでありながらマジシャンとしても活躍するミノウラさんだが、そもそもは将来、地元である淡路島でフェスを開催したい思いから、ボロフェスタのスタッフに入り、その後nanoのスタッフとして働いてきた人物だ。そんな彼がなぜイベントスペース&居酒屋である、このお店をやり始めたのか。そして□□□ん家の信念と今後の目標について語ってくれた。クロスカルチャーの宿木的な存在である□□□ん家を知れば、あなたもこのお店に行きたくなるはず。

INFORMATION

住所

〒604-0041

京都府京都市中京区押小路通西洞院東入ル二条西洞院町632-3 2F

営業時間

18:00-26:00

定休日

月曜日

お問い合わせ

075-254-1931

HP

https://japanese-izakaya-restaurant-10542.business.site/

Twitter

https://twitter.com/darekanchi?s=20

「卒業したら何やりたいんだろう」と考えたときに、地元である淡路島でフェスをやってみたいなと思いました

ーー:

まず□□□ん家のオーナーになる前の話を聴きたいのですが、ボロフェスタスタッフの座談会で「いつか地元の淡路島でフェスがしたいんです」と言われてスタッフに参加したと発言されていました。なぜフェスを開催したいと思ったのですか?

ミノウラヒロキ(以下、ミノウラ):

大学を卒業する前に「俺は将来、何をやりたいんだろう?」とずっと考えていて。それと同時期に家族関係で色々あり、実家に戻ることがありました。そこで、たまたま『絶望に効くクスリ』※を読んだんです。そしたらスマッシュの日高正博さんが「やりたいことをやるというのが、その人のモットー」という話をしてて、ふと高校の頃に自分で音楽イベントを作って、楽しかったことを思い出しました。それで将来、地元である淡路島でフェスをやってみたいと考えるようになりました。

※『絶望に効くクスリ』
週刊ヤングサンデーに連載されていた山田玲司著のドキュメンタリー対談漫画。山田玲司が様々な現場でそれぞれの人生を歩んできた人々を訪ね、絶望が先立つ世の中に効く“クスリ”を探して回るストーリー。

ーー:

なぜ高校生の頃に音楽イベントを開催したんですか?

ミノウラ:

淡路島は音楽に対して、厳しい場所だったんです。僕が高校生の頃、文化祭とかでもバンド禁止で、軽音楽部とかも無かった。そこでバンドやりたい音楽好きが集まって、スピーカーやマイク、アンプなど音楽機材を全部買い、公民館で音楽イベントをやったんです。

ーー:

そこまでして、音楽イベントをやりたかった理由って何だったんですか?

ミノウラ:

友達にカッコいいところを見せたかった、だけだと思います。淡路島ということもあり、皆があんまりロックを知らなかった。カラオケ行っても流行のJ-POPしか歌わないような感じで、それを聴きながら「もっとカッコいい音楽あるんだけどな」と思っていました。だから友達にロックを教えたかったし、それを手っ取り早く伝えられる方法がライブだった、というのはありますね。

ーー:

高校の頃の音楽イベントをやった経験からフェスをやりたいと思い、ボロフェスタのスタッフに入られたと。

ミノウラ:

そうですね。僕はその頃、バンドもやっていて。当時Live House nanoのブッキングやってたchoriさんが僕たちのことを呼ぼうとしてくれたんですが、予定が合わず僕が弾き語りでnanoに出演しました。その時にnanoの店長であるモグラさんに「僕は音楽をやり続けるのではなく、フェスが作りたい」と話をしたんです。そしたら「ボロフェスタ手伝ってみる?」と言われてスタッフになりました。

 

それで初めてボロフェスタを手伝った時に、当時nanoのスタッフだったBAA BAA BLACKSHEEPSのディノさんが辞めるタイミングだったんです。それでモグラさんが後任を探していて、ボロフェスタの片づけしている時に「ミノウラ、おまえnanoで働かんか?」と言われて。それで後先考えずに「働きます」と言い、nanoで働きはじめました。

ーー:

ミノウラさんは企画屋UTAGE』(現在、充電期間中)の代表をやっていましたが、それはnanoで働いていた頃に始めたんですか?

ミノウラ:

いや。『企画屋UTAGE』をやり始めたのは大学生の頃です。今で言うYouTuberのはしりみたいなことをやっていました。今でも「UTAGEでやりたかったメモ」が残っていて、「川に魚流してつかみどり大会をしよう」や「段ボールで海に出てみよう」とか書いてありました(笑)。他人から見たら馬鹿みたいなことだけど、それを仲間内で真剣に語り合い、企画を立てることが面白かったんです。

(□□□ん家は)違うカルチャーが混ざることで、新しい交流が始まる場所でありたい

ーー:

それでnanoで働かれていたあと、なぜ□□□ん家という居酒屋をやろうと思ったんですか?

ミノウラ:

正確に言うと居酒屋ではなく、イベントスペースを作りたかった。30歳までに一度、店をやりたいと思ったのと、京都に面白い場所を作りたいと考え、nanoを辞める相談をしました。それからイベントを出来る場所を探したのですが、借りるのが難しくて。

ーー:

なぜですか?

ミノウラ:

イベントスペースを借りると言っても、商業施設、店舗、事務所、とお店の形態によって、やれる内容が変わってくるんです。だから不動産屋と話しても、なかなか上手く話が進まない。そこで形態的には居酒屋ということにして、中にイベントスペースを作ろうと考えて、この形式に至りました。

ーー:

京都はイベントスペースが少ないんですか?

ミノウラ:

ライブハウスをどう捉えるかですが、僕のイメージするイベントスペースはLOFT/PLUS ONE(ロフトプラスワン)なんです。違うカルチャーが混ざることで、お客さん同士の新しい交流が生まれる。そういうお店は京都には少ないという印象です。

ーー:

大阪だとロフトプラスワンWESTとかありますからね。

ミノウラ:

そうですね。僕は「いろんなジャンルの人が繋がれば面白いことが起きる」と思い、そのきっかけ作りをする人間でいたいと常に思っています。このお店も、音楽だけにこだわらず、様々なカルチャーが好きな人が集まり、情報交換ができる場所にしたかった。だからお店を始めての1年間は敢えて、音楽イベントだけはやりませんでした。音楽イベントをやれば、nanoの常連客や、ミュージシャン界隈の人だけしか集まらない。そうなるとコミュニティーが狭まるし、いろんなお客さんが楽しめなくなる。

ーー:

なぜnanoの2階にお店をオープンしたのですか?

ミノウラ:

最初は大宮や出町柳で物件を探していましたが、なかかな見つからなかったんです。そしたらnanoの2階が空き店舗になると話を聞いて「ここでやりたいことを試したら、僕を知っている人も来るし、情報も広まりやすい。効率がいいのでは?」と思ったんです。モグラさんは「ホンマにここでいいんか?ホンマの意味で独立と違う気がするぞ」と言っていましたが(笑)。

近場で気を使わないメンバーに声をかけたら、ほぼ店員がバンドマンになった感じです

ーー:

□□□ん家はバンドマン中心で運営されていますね。

ミノウラ:

近場で気を使わないメンバーに声をかけたら、ほぼバンドマンになった感じですね。

ーー:

メンバーにはライブ会場ですずみん食堂としてフードを出店されていたすずみんさんや、夜の本気ダンスのマイケルさん、シンガロンパレードの晨さんなどがスタッフとして参加されていますね。

ミノウラ:

この中では一番関係性が浅いのは、すずみんで。僕がマジシャンとして出演したイベントで出店していて、帰り道に電車で話してそこからですね。ご飯がとても美味しいし、管理栄養士の資格もある。それに音楽界隈の人たちにも知られている存在なので、一緒にやってくれたら心強いと思い、誘いました。

 

晨は大学時代の同級生で、同じ軽音部だったんです。わりとどんなタイミングでも一緒にいる存在で、晨がいれば「俺は気が楽やな」と思い誘いました。

ーー:

マイケルさんは?

ミノウラ:

彼は夜の本気ダンスに入る前からの飲み友達だったんです。大学時代に他大学とのジョイント・ライブを企画してて、彼は大学同士の連絡、調整の係で交流がありました。しかもお酒が好きで、仲良くなって2人で何度か朝まで飲んだりしました。それでお店が出来る前から「もし店を出したらマイケルにも相談する」と言ってたんですが、バンドが忙しいはずなのに「手伝うよ」と言ってくれて。今もスタッフとして働いてくれています。

ーー:

夜の本気ダンスのファンの方も来られるんですか?

ミノウラ:

凄いですよ。京都MUSEでワンマンがあった時、全席ファンで埋まりました(笑)。もう聖地巡礼みたいな感じですよ。マイケルはライブだから当然スタッフとして入っていませんが、青森や広島、仙台等全国各地からファンの人たちが来てくれました。

 

あとマイケルがスタッフとして入る日は、お店をオープンする直前に情報をツイートしているんです。事前に伝えると目当ての人ばっかりになるし、他のお客さんの対応が出来なくなるので。だけど先日、オープン直後のツイートをみて、九州から新幹線に乗ってきてお店に来た人がいて。

ーー:

それは凄い(笑)。

ミノウラ:

次の日、仕事なのに半休を取ってお店に来てくれたんですよ。改めて、凄い人気だなと思いますし、ファンの人には感謝しかないです。

1年目は安全にやり過ぎた感じはあるので、ここから崩して「ヤバい場所」だと思われたい

ーー:

「イベントスペースとしてやりたかった」とお話しされていましたが、居酒屋としてコンセプトはありましたか?

ミノウラ:

そこまで考えていなかったです。実はフードもここまでたくさん出そうと思っていなくて。本当は缶詰を置いて「勝手に食べて!」くらいにしたかったのに、お客さんに「これ出して!」「あれ出して!」と言われ、試行錯誤しながら作り続けたらだんだんメニューが増えてしまって(笑)。たぶん僕は元々ツッコミ気質の人間で、お客さんからリクエストを言われやすいタイプなんだと思います。ただお客さんが何でも言いやすいことはプラスだと思っていて。

ーー:

言いやすいことがプラスとは?

ミノウラ:

この場所は「好きなことを好きと言える場所」というコンセプトにしていて。好きなことを言いだせない空間ってあるじゃないですか。「え!?この〇〇知らないの?全然駄目だよ」と知識でマウントを取るとか。そういうの僕は嫌いなんですよ。誰もが「これが好きだ」と気軽に話していいし、そこに知識の度合いは必要無いと思っています。

 

そういう意味では、□□□ん家は言いやすい環境であるため、お客さんが気軽に好きなものを教えてくれるんです。そこにイベント掲示板があるじゃないですか。あれも好きなことがあれば、話し合いのできるイベントをお客さんがいろいろと書いてくれるんです。それでイベントを開催すると、俺の知らないことを勝手にお客さんが教えてくれるんですよ。例えばプロレスナイトで新日本プロレスのことを2時間近く話すんです。僕は全然、プロレスは知らないけど、とても面白いし、知らない知識を教えてもらえる。これって、得しかなくて、とてもありがたいと思っています。

ーー:

イベントの話が出ましたが□□□ん家では毎週のようにイベントが開催されますね。この掲示板に貼られているイベントにミノウラさん発信のイベントはありますか?

ミノウラ:

僕がやりたいと思ってアナログゲームイベントを開催することもありますが、掲示板に貼ってあるイベントに関しては全てお客さんが考えたイベントです。そもそもお客さんが誰でも自由にイベントを企画できる場にしたかったんですが、「自由にイベント出来るよ」と口で言ってても、なかなか企画が集まらなかったんです。

 

それである時、お客さんが「掲示板作ってみたら?」と言ったんです。「アナログでいいかも」と思い、作ったところ、お客さんがイベントのアイデアをドンドンこの掲示板に貼ってくれたんです。それで集まったイベント案に面白かったら「正」の字を書いていく投票式にして票数がある程度集まったら開催するようになりました。

ーー:

本当にいろんなイベント案がありますね「将棋ナイト」や「バンドマンの女ナイト」とか。

ミノウラ:

バンドマンの女ナイトは1回やりましたけど、なかなか危険ですよ。バンドマンの元カノや奥さんが集まって、バンドマンあるあるを言うんです。「急に高い物を買いがち」とか(笑)。ただ今年はより際どいカルチャーや、ディープなものにも挑戦したいと思っています。

ーー:

「ディープなもの」というのは?

ミノウラ:

この間、お客さんの友達でタケシくんという人がいて。どうやらその子が関西で一番イルミナティに近い男らしいんです。彼に都市伝説の話をしてもらおうかなと考えています。あと、ゆ~すほすてるの江川謙太(Vo / Gt)がこの間、店に来てくれて。それで「最近、こんな本読んでいるんです」と紹介してくれたのが『雑草で酔う』という本で、合法にトリップできる雑草を探すという内容なんです。これが面白かったので、実際に雑草を集めてトリップできるか試してみようと思っていて。

ーー:

雑草ナイトですね(笑)

ミノウラ:

合法だし、それで酔っぱらった感じが得られるなら面白いかなと。そもそも僕はニッチな世界を覗きたいし、体験してみたい欲がある。そしてこの場所も「実験的なことをやってなんぼ」だと思っています。1年目は店としての形を作ることを優先し、無難に行き過ぎたかなと思っています。ここから徐々に崩していって「ヤバい場所」だと思われたいです。京都にはそういう場所はあまり無いと思うし、本当にインタレスティングな意味での面白い話がこの場所で聴けるようになれば、良いのかなと思っています。

ーー:

□□□ん家としての次のアクションは。

ミノウラ:

居酒屋としてでなく、イベントスペースとして認知されたいと思っています。ヤバいイベントなどの、はみ出す側はこっちがやるので、お客さんにはこの場所を自由に使えることを示していき、お客さんが考えたイベントでスケジュールがたくさん埋まればと良いなと思います。

 

あと、場所と場所が混ざって何かをやり出すことが必要だと感じています。この場所は□□□ん家の色が出るので、ここにはない色のある場所とタッグを組んで、いろんな人達が混ざりあえば、今以上に面白いことができると考えています。

ーー:

目星をつけてるお店とかありますか?

ミノウラ:

梅湯の湊三次郎さんとかは1度お話してみたいです。あとREDIY(リディ)というクリエイティブセンターをやっている株式会社めいの扇沢友樹さんとか、普段から仲良くしている劇団『安住の地』の岡本昌也とかは自分たちの場を持っている人たちなので、そういう人たちと話したいなと思っています。それと僕自身の活動としてはいつか淡路島でフェスを開催したいというのがあります。

 

僕は2013年ごろ、GROWLYの店長の安齋智輝さんと「ライブハウスで面白いことがしたいね」と話をし、『パニックバカンス』を一緒にやり始めました。そして去年『パニックバカンス』を終了し、淡路島でのフェス開催に向けて準備を始めています。いつ出来るかわからないですけど、淡路島の人たちを一緒に作る立場に巻き込んで、音楽だけではなくいろんなカルチャーが体験できるフェスにしたいと考えています。

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