INTERVIEW

自分たちで責任を取り続けられる企業であるために。FREITAGの創業者Markus Freitag来日インタビュー

2020.01.22

堤 大樹堤 大樹

FREITAGの京都店が、繁華街である四条河原町から少し外れた六角・柳の馬場通りにオープンした。銀座・渋谷・大阪についで日本では4店舗目。世界中の町を知り尽くした彼らは、古い文化と新しい潮流が混ざり合う古都の魅力をどのようにとらえているのだろうか。またSDGsなどという言葉が古臭く感じるほど、当たり前のようにサスティナブルなエコシステムの構築を行ってきたFREITAGは、今なにを見すえているのか。オープニングパーティに合わせ来日した創業者のひとり、フライターグ兄弟の兄マーカス・フライターグに伺った。

バッグ販売以上の何かを京都の店舗で提供できたらおもしろい

ーー:

まずはじめにFREITAG京都店のことについて教えてください。フライターグは出店する場所をすごく大切に選んでいますよね?なぜ、フライターグの4店舗目を京都に選んだのでしょうか。

マーカス・フライターグ(以下、マーカス):

ひとつは、私たち外国人にとって、京都はとても“日本的”だと感じられる場所だからです。京都は日本の古さと新しさが共存する良い例だと思っていて、そこが好きなんです。もうひとつの理由は、単純に店舗にふさわしい場所を見つける事ができたから。条件に合う物件を見つけることは簡単ではないんです。いくつかの都市を探してみて、良い物件が見つかった時は機会を逃さないようにしています。

ーー:

古い物と新しい物が混ざる街が京都だと先程おっしゃっていましたが、どういった物や瞬間にそのことを感じますか?

マーカス:

D&DEPARTMENTは良い例です。日本の伝統的な商品を、古い建物を生かしたお寺で販売しているという組み合わせは新鮮なコンセプトだと感じます。京都の人々の暮らしもそのひとつかもしれません。例えば古い建物を改装した新しいカフェがあったり、古い街並みで暮らしながら、若い人達がモダンなファッションをしていたり。

ーー:

そういった京都の街の特徴を、FREITAG・京都店でどのように体現しようと考えていますか。

マーカス:

そのことはあまりお店のコンセプトとしては考えていません。スイスの工場をそのまま京都に持ってきているので。偶然ですが、バッグを陳列する棚が京都の碁盤の目のような地図と似ていますが(笑)。店舗には産業的な要素を残すようにしています。例えば、フライターグの企業カラーでもあるインダストリアルグリーンと呼ばれるスイスの工場で古くから使われている色を使用したり。床に配したマークも工場で使われているものと同じですね。どことなく、ワビサビを表しているかと。

FREITAG京都店
ーー:

場所に合わせて店舗をつくるのではなく、スイスをそのまま各都市にドッキングしていく感じなんですね。あと京都店の特徴になりそうなもので言えばFactory(DIYコーナー)がありますが、こちらは設置の意図はありますか?

マーカス:

こういったDIYコーナーがどのように機能するのか試してみたいんです。チューリッヒにはDIY専門の店舗(FREITAG SWEAT-YOURSELF-SHOP)がありますが、そこで作れるのはバッグだけなので、ここは小さなアイテムも作れる最初の店舗になりました。

ーー:

FREITAGとしてバッグを販売することから、多くのユーザーが手を動かして物を作ることへ事業の照準がフォーカスしているのでしょうか。今までより一歩踏み込んだ関係づくりというか。

マーカス:

私たちにとっても新しい取り組みなので、皆さんの反応やDIYが目的で店舗に来る人たちがいるのかも知りたい。また個人的には、今後はその方向へ移行していきたいと考えてはいますが、商品を作って販売することとは違うスキルやプロセスが求められるので、簡単ではないでしょうね。だから、現状はあくまでもオプションとして考えています。今はユーザーが何を求めているのかを知る段階です。

FREITAG京都店 DIYコーナー(※2020年1月記事公開時点でDIYコーナーの稼働については未定。今後の展開はFREITAG公式の発表をお待ちください。)
ーー:

FREITAGの最大の魅力は、私たち一人ひとりがその大きなストーリーの登場人物になれることだと感じています。今までの「購入者」からさらにもう一歩踏み込んだ関係になれることは、よりその魅力が伝わりやすくなりますね。

マーカス:

確かに。FREITAGとユーザーとの関係性は、現在の段階でも他のブランドに比べて強いと思います。

ーー:

個人と企業との関係が発展し、コミュニティという形に育てば、それはFREITAGが京都にできる新しい提供価値になりそうです。

マーカス:

はい、バッグ販売以上の何かをこの場所で提供できたらおもしろいですね。もしスペースが必要ならばぜひストアマネージャーに聞いてみてください。スイスの店舗では7年前からある雑誌社に、編集者がジャーナリストを招いて彼らの取材内容を発表する場所を提供しているんです。バッグとは全く関係なく、あくまでも場所を提供するだけなので、当日はバッグを片付けてスペースを用意しています。

 

私たちは、ユーザーにより高品質のコンテンツを提供することと同じくらい、考えを共有し、また人々とネットワークを構築することが大切だと考えているんです。結果としてジャーナリストが取材内容を報告して、多くのメディア関係者が集まるような機会になっています。私たちはメッセンジャーバッグを作ってきましたが、元々はジャーナリストが取材してきた記事を運ぶための物ですからね。それにジャーナリスト自身もバッグは必要です。

ーー:

インタビュー本の中に、「F-CrewはFREITAGの文脈に属している人が選ばれる」と書いてありました。京都のF-Crewにはどのような接点を見出したのでしょうか。

マーカス:

大切なのはどのようなマインドセットを持っているかです。私は店舗や商品よりも、ブランドの価値が大切だと思っていますが、それはF-Crewや我々チームが持ち合わせている価値観が合わさってできるもの。私たちのユーザーは、決して安くはないエコロジカルな商品に魅力を感じてくれている。彼らのマインドセットとの共通点がないといけないですね。またユーザーの年齢もデザイン的な好みも様々なので、F-Crewにも多様性が必要です。

3つプロジェクトがあれば恐らく1つは失敗に終わる。でも失敗から学ぶこともある。

ーー:

他にも本について気になったことがあったので、いくつか聞かせてください。「日本の消費主義はスイスに比べて強い」と仰っていましたがこれはどのような意味でしょうか。

マーカス:

日本の消費者はヨーロッパに比べると、ブランドとの結びつきが強く長いように思います。例えば日本にいる私達の商品のコレクターは、長期間、場合によっては生涯に渡って支持してくれています。国毎の違いというよりは、個人と企業との間の強い関係性だと思いますが、日本のユーザーは商品の名前ひとつをとっても、その由来にとても関心がありますし、彼らは何でも知りたがる。名前の由来なんてヨーロッパでは聞かれたことがないですから。

ーー:

商品ひとつひとつのプロダクトにストーリーが詰まっているということを伺っています。社内ではどのような方法でストーリーを決めていくのでしょうか。

マーカス:

商品によって違います。ユーザーからのアイディアだったり、デザイナーの意図だったり、F-Crewからの意見だったり。ストーリーがあったほうが、新しい商品を発表する時の助けになりますから。

ーー:

今ちょうど一つ持ってきていただきましたが。

マーカス:

あるスーパーマーケットがFREITAGのコピー商品を販売したことがありました。どう対処しようかと悩んだ時、私たちもコピー商品を作ろうと考えて彼らのショッピングバッグを真似て制作したんです。それが私たちからの彼らへの回答でした。いつもこのようなストーリーがある訳ではないのですが。

ーー:

ちょうどマーカスのお気に入りのストーリーを教えて欲しいと聞こうと思ったのですが、今のが一番のお気に入りでしょうか。

マーカス:

そうですね。私の原点のひとつに「問題や挑戦が必要なことほど、モチベーションを高めてくれる」という考えがあります。コピー商品の登場によって我々の売り上げが奪われてしまう可能性も考えられましたが、逆転の発想で対処しました。だからこのストーリーが好きなのかもしれません。

ーー:

どうやってそのマインドセットを手に入れたんでしょうか?

マーカス:

学校を卒業した後の4年間、展示会などを運営する会社でインターンシップを経験しました。良い案が思いつかない時もユーザーを獲得するためには常にアイディアを提出しなければいけない。仕事を得た時でも、どう対応すべきか日々格闘が必要でした。でもそんな状況が心地良かったことが今の自分に影響したのかもしれません。困難な状況に置かれることで、クリエイティブな思考が促され、他者とも協力しあうことに繋がります。私のマインドセットがどこで確立されたかと聞かれたら、その時の経験があると言えると思います。その状況を決して恐れないこと、「今はまだ答えがわからなくとも、今晩アイディアを思いつくかもしれない」、そう考えて過ごしていました。但しいつもこの考え方で解決できる訳ではなく、3つプロジェクトがあれば恐らく1つは失敗に終わるでしょう。でも失敗から学ぶこともあります。大切なのはどう対処するかだと思います。

ーー:

「決して恐れないこと」と言われてましたが、つらい時はないのですか?

マーカス:

ありますよ。あなたも分かるでしょう?(笑)。ただ挑戦を続けることです。誤った方向へ向かっているとわかった時は、足を止めて別の道に進んでもよいのですから。

ーー:

そういった時に弟さんの存在は大きかったのかもしれませんね。違う視点を持ったパートナーとして。

マーカス:

弟だけにかかわらず、私の考えに疑問を投げかけてくれる誰か、インスピレーションを与えてくれる誰かが近くにいることはとても大切です。

リスクを避けていては、新しい解決策は見つからない

ーー:

FREITAGを語る上で欠かすことのできない「Sustainability」について少し聞かせてください。今日本でSDGsの考えが少しずつ浸透してきました。ただ、個人的には多くの企業がその本質的な意味を理解していないように感じています。

マーカス:

私もそう思います。

ーー:

私たちはFREITAGの取り組みからどのような事を学んでいくべきでしょうか。

マーカス:

多くの企業にとって、今までの慣例を変えることは難しいと思います。特に企業が大きければ大きいほど、彼らは失敗を嫌うだろうし、全体のシステムを変革したりリスクを伴うことをするのが難しくなる。だから、実験的な取り組みを一からできる小さな場所を設けることが必要なのではないでしょうか。FREITAGの事業は実験的な取り組みから始まり、会社へと成長していきました。規模が小さければ多少のリスクを犯すことができるのです。リスクを避けていては、新しい解決策は見つからないので。

ーー:

FREITAGがホラクラシー化したのは、大きくなる組織の中で実験場を維持するためのものだったのでしょうか。

マーカス:

そうではありません。私たちは以前から養成所のような役割を果たす小規模なチームを作っていて私もそのチームに属しています。そこは、誰かが日々の業務とは違う新しいことをしたいと思った時に発表ができる場所です。企業は常に成長し続けるべきであると思っていますが、常に経営者の方針に従って進むような組織では、経営者なしでは何もできなくなってしまう。だから実験場を設けるに至りました。ただ新しいアイディアを募る一方で、私達はバッグは作り続けていかなければいけなかったのです。それゆえにホラクラシーを確立させました。

ーー:

もう少し詳しく教えてください。

マーカス:

FREITAGの目標のひとつは、私たち兄弟がいなくても進み続ける企業であることなのです。ホラクラシー化をしたのは、自分たちで成長を続け、学び続けることができ、自らが責任をとれる企業であり続けるため。ホラクラシーを導入してから3年が経ちますがうまく進んでいますし、F-Crewにとっても刺激的でモチベーションが与えられる環境だと思います。もし彼らが、やりたいことや変えたいことがあるならば、2週間毎に開かれるミーティングの場で発表する機会が与えられています。その場で彼らの考えを聞き、問題がなければ実行に移す。それに伴って新しい職種や役割が必要となる場合には、役員会議を経て決定された新しいポジションを社内で公募します。FREITAGの社員は上司に言われた仕事をするのではなく、F-Crew自らがキャリアを提案するのです。

ーー:

「自分たちがなにかを変えられる」という自負が「責任をとる」というマインドを育むんですね。

マーカス:

そうです。そしてもうひとつの特徴としては、ホラクラシーを導入してから会議で議題となり話された事項については、会議に出席していない社員達にもすぐに公開するようにしていること。我々は200名以上の社員を抱える大きな組織になりましたが創業当時の精神を持ち続けるべきであると思いますし、ホラクラシーの構造がその精神を支えています。

ーー:

ありがとうございました!

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