5kai
5kai

2020.01.21

辛川 光辛川 光

5kai - 5kai

京都で結成され、現在は東京を拠点に活動する5kaiは松村了一 (Gt / Vo)と太田 (Ba)で構成されている。正規ドラマーはおらず、ライブ、レコーディングにおいてはNUITOなどで知られるSEI NAGAHATAや、Amia CalvaやOASで活動するワカマツがサポートドラマーを務めている。

 

オリジナリティ溢れる彼らの音楽を知らない人たちに紹介するため、敢えてジャンル分けをするとしたらPost-Punk, Post-rock、そしてそれらを包括し、Alternative-Rockになるだろう。時にタイトに刻まれるが、一転ブレイクを挟み、圧倒的な開放感を奏でるリズム隊。流行りの電子音を用いず楽器本来の音で叩くことにこだわり、基本に忠実なようで実は拍子を支配しビートを前後に動かすことのできるドラムが特徴だ。ドラムに関しては「無加工という加工」という表現が私にはしっくり来る。そのドラムに絡むBa.太田のローミッドを主軸とするベースライン。そしてGt.松村が奏でるプレゼンス成分の多い、張りの聴いたハイ寄りのギターサウンドが脳を震わす。バンドアンサンブルにおいて音の空白、隙間をうまく使い、緊張と弛緩を数分間の中で表現する。並べた言葉では収まりきらない様々な演奏スタイルを持つバンド、それが5kaiである。

2018年3月11日に出されたセルフリリースCD『5kai』によって彼らの研ぎ澄まされた感性が世の中に知れ渡ることとなった。M2”no supply”ではスネアドラムが拍を無視したかのように後ろノリにリズムを取り緩みを表現する一方、ギターとドラムは同フレーズをほぼオンタイムで弾き、緊張感をつくる。しかしサビの部分では一転してスネアはオンタイムで刻まれる。曲全体を通して、リズムの緊張と緩みが相まって曲の輪郭がつくられているのだ。M3 “church”では、ギターがアルペジオを用いて浮遊感を表現しており、リスナーを揺らぎの世界へと誘う。M9 “ポートレイト”はMVも制作されており、京都の劇団 ”安住の地”の岡本昌也が痛切で強烈な存在感を示した。叫び絞り出されるような歌が多い5kaiの楽曲の中でも、この曲は比較的歌詞を鮮明に聴くことができ “人並みの生活、人並みの幸福、人並みの肯定。貶めるわけでもなく肯定し続ける、後悔の数々、期待と裏切り” など過去の体験、平均的な生活を送る他者への憧れを抱きつつも、”I’ ll be my self”と歌い、我が道を行くことを示唆するなど、作詞者の心中に内在していた思いが淡々と呟かれている。

”ポートレイト”のMVが公開された時、筆者はカナダにいた。当時大学院に在籍していたのだが、なんとなく自らの意思で敷いた人生のレールから外れてみようと海外に赴いた。幸運なことにコミュニケーションに困ることはなく生活を続けていたが、どこか面白みを感じられなくなり、路上で弾き語りをしたり、北米最悪と言われるスラム街、イースト・ヘイスティングストリートを散歩し、至るところに放置されている注射器、路上生活者たちを目撃したり、ふらつく人々に現地で購入したギターとペンを差し出しペインティングをしてもらったりと普通の海外滞在では経験し得ないことを体験しようとした。そんな海外生活の合間に公開された”ポートレイト”のMVを視聴して、そこに映る光景とスラム街の様相が脳裏で重なり、さらに上述した歌詞が胸に入り込んだのもあって、私はイースト・ヘイスティングスを歩きながら幾度となくこの曲を再生し続けた。この曲は自らの人生を俯瞰し、他者との繋がりの再認識、また、これからの人生を再設定するきっかけになった。「凡百な生き方はしたくない」という強い意志を曲から得られたのだ。一般的な見方では”ポートレイト”、また総じて5kaiというバンドは前向きな思考にシフトさせる曲やバンドとは言えないかもしれない。だが、曲の捉え方は人それぞれなのである。不思議な体験だったと今、本稿を書いていても思う。

 

5kaiは古着屋ハラノムシと共同制作したロングTシャツの販売や、本作『5kai』においても手作りの長方形のCDデザインを作成するなど、DIY精神に富んだ物販を展開している。音楽以外の随所にも散りばめられている彼らの感性をそれらを通して受信することもリスナーの楽しみの一つになるであろう。

 

拠点を京都から東京へと移したあとも注目イベントに多数出演し、着実に知名度を高めている彼らだが、定期的に結成の地である関西でもライブを行っている。ツインドラム、シンセサイザーを採用するなど常に新しく、自分たちの考える最適表現を模索し続ける彼ら。その世界の広がりを私たちは目撃するはずだ。あなたも彼らの音楽を通して、そこに生まれる「揺らぎ」を体感して欲しい。

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