INTERVIEW

バンドでも1人でも、パレードみたいに楽しくしたい! ― さとうもか、加速する活動の手ごたえを語る

2019.12.25

吉田 紗柚季吉田 紗柚季

入江陽と組んだ出世作『Lukewarm』(2017)から3年弱がたち、ライブのほか楽曲提供や客演参加も精力的にこなしているさとうもか。来年の1月22日に発売される3曲入りシングル『melt bitter』から、彼女はついに入江のプロデュースから卒業する。かわりに今のさとう自身を支えているのが、彼女が今も住んでいる岡山のミュージシャンたちだ。それぞれも短くはないキャリアを持つ彼らとのバンド編成は、昨年から少しずつ、岡山県外でも披露される機会が増えてきた。SNSなどでかねてよりバンドメンバーへの愛を語ってきた彼女だから、今回のリリースはまさに念願叶ってのものだろう。

 

今回アンテナでは、初のツアー『さとうもかランド』を終え、大きなターニングポイントを迎えつつあるタイミングでさとうに話を聞いた。着実に活動規模を広げている彼女だが、これまでの音楽メディアへの露出は決して多くはない。音楽家としての出発点やライブ演出へのこだわりなど、彼女について一番詳しく知ることができる記事になったのではないかと思う。取材場所は、さとうが月例ライブを開催していたこともある岡山市のカフェ&ライブスペース〈城下公会堂〉。県内外・国内外のたくさんのミュージシャンを日夜招聘しており、岡山の音楽シーンを語るうえでも欠かせないスポットだ。さとうにとっては今年から彼女のマネジメントを担っているスタッフたちの拠点でもあり、『melt bitter』をリリースするレーベルも同じ建物に入っている。

 

かつてアプリ版GarageBandで自分の声を重ね続けていた彼女は、今やすっかり暖かなベッドルームから抜け出している。待ち受けていたジェットコースターのような日常を、すぐそばで伴走してくれる仲間がいるということが、どれほどありがたく心強いか。彼女の言葉の端々に、そんな思いがにじんでいたように思う。

写真:岡安いつ美(10月26日@ボロフェスタ2019)・筆者(取材風景)

ショーとしても楽しめる、パレードみたいなライブを目指そうと思った

ーー:

新作のリリースも控えているんですが、まずは最近のことからお聞きしたくて。今年の5月から7月にかけて回っておられた『さとうもかランド』ツアーが全12公演とのことで、初めてのツアーにしてはかなり長いですよね。仙台や山形といった初めて行く場所も含め、全てご自分でスケジュールを組まれたとのことですが、いかがでしたか?

さとうもか(以下:さとう):

今までよくライブに行っていた会場の方とか、ちょうどそのタイミングで声をかけてくださった方とかにお願いをして組ませていただいて。新幹線とかバスの移動ばっかりで体力は使ったんですけど、初めて行く場所でも知ってくださっている方がいるのは嬉しかったです。

『さとうもかランド』ツアースケジュール
ーー:

ツアーが終わった直後の8月に、京都でライブを拝見しました。とても堂々としたパフォーマンスをされていたなと感じて。それはここ2年の長いスパンでも抱いていた印象なんですが、『Lukewarm』(2017)以降、ライブをするときの感覚に変化はありましたか?

さとう:

元々私は人前で歌うのがあんまり得意じゃなくて、家で作る方が好きだったんです。だから、『Lukewarm』を出すくらいまでライブがすごく苦手で。

ーー:

どういうところが苦手だったんでしょう。

さとう:

ライブをする空間そのものというか……。映画館とかもそうなんですけど、「ずっとその場にいて音楽を聴かなければいけない!」みたいに、時間が決められていて身動きがとれない感じがちょっと苦手でした。でも、ずっと苦手なままでいたくないなと思ったので、ある時から呼んでもらったライブはなるべく全部出るように心がけてみたんです。そうしたら、だんだんライブが楽しくなっていって。

ーー:

きっかけになるような出来事があったんですか?

さとう:

確か……ちょうど『Lukewarm』を出したあとすぐに、東京で『Erection』※1 っていうライブに出演させてもらったんです。そのときはまだほとんど東京でライブをしてなかったのに、お客さんがみんな私の曲を知ってくれていて、一緒に歌ってくれたんですよ。「えっ!」ってすごく感動して。それから楽しくなっていきました。

ーー:

それは嬉しいですね。もかさんは昔からライブでピアノとギターを両方弾いていますけど、『Merry go round』が出てからは、さらに“歌う女”をミュージカルっぽく踊りながら歌うパフォーマンスをするようになりましたよね。なぜああいった演出をしているんでしょう。

さとう:

3, 40分くらいのライブセットの中でずっと同じことをしていると、お客さんは面白くないんじゃないかと思うことがあって。

ーー:

「ずっと同じこと」というのは「ひたすら歌うこと」ということですか?

さとう:

そうです。好きで聴くアーティストだったら良いんですけど、そんなに知らない方のライブで似たジャンルの曲が続くと、退屈になっちゃうときが私にはあって。私のお客さんにはそう思ってほしくないんです。自分にできることを考えたら、私はギターもピアノもできるし、トラックを流すこともできる。じゃあ全部やれば、1人だけどパレードみたいにできると思って。

ーー:

1人パレード(笑)。

さとう:

ディズニーランドのパレードって、何も知らなくても見たら楽しくなるじゃないですか。今回のツアーを始める前くらいから「それを目指そう!」って思うようになって。だからツアータイトルも『さとうもかランド』にしました。アルバムのタイトル(『Merry go round』)にもかけてるんですけど、聴くだけじゃなくてショーとして楽しめる時間にしたいんです。

ーー:

踊りながら歌っているもかさんを見ると、パフォーマーのような側面が強いなあと思うんです。ライブをしているときの自分って、肩書きで言うとなんだと思いますか? 「シンガーソングライター」と呼ばれることが多いと思うんですが。

さとう:

どうなんだろう……考えたことがないかも。「シンガーソングライター?なんかな?」っていう気持ちはちょっとあります。でも「パフォーマー」って呼ばれるほどパフォーマンスもできないし。ミュージカル映画が好きなので、セットリストがひとつの映画みたいになるようにストーリーを作って、っていうこだわりはあります。

ーー:

それは昔からなんですか?

さとう:

セットリストにはずっとこだわってますね。そうしないと自分が面白くないのかもしれません。結局、自分のライブを一番聴いているのは自分だから。

ーー:

ステージ演出について、かなりこだわりを持っておられるんですね。マイペースにMCをしているもかさんを見ただけだと、あまりそういった印象は抱かないかもしれません。

さとう:

MCだけは全く組み立てないようにしているところがあります。その日の空気に任せて、「神のみぞ知る」的な。単に準備ができてないのもあるんですけど(笑)。

ーー:

私にとってはそのゆるさも楽しみの一つです(笑)。


※1:自由が丘広小路商店街が主催するフリーイベント。自由が丘駅付近のコインパーキングで不定期開催されており、これまで田我流やKID FRESINO、G.RINA、okadadaらが出演している。

多分、1年で500個くらいボイスメモを録ってるんです

ーー:

作曲にスマホのGarageBandをよく使っていると聞いたんですが、デモや自主音源は全部それで作っているんですか?

さとう:

ほとんどそうです。パソコンもあるんですけど、操作するときの質感とか、一瞬でできる感じとか、スマホの方が好きで。

ーー:

CMソングなどのクライアントワークもしていますし、自主制作盤にもかなりの曲数が入っていますよね。“Weekend”や“ネオン”のように、流通には乗っていないけどライブでよく演奏されている良い曲もたくさんあって。シンガーソングライターとしては多作なほうではないですか?

さとう:

ギターを弾きながら適当にメロディーを歌って、っていうのを毎日、当たり前みたいな感覚でやっています。小学生のときから歌手になりたくて、6年生くらいのころにボイスレコーダーを買ってもらったときからずっとそうなんです。メロディのアイデアは全部ボイスメモに録音して、良いと思ったやつだけ残していて。多分、1年で500個くらいボイスメモを録ってるんですよ。

ーー:

500個!本当に息をするように録ってますね。

さとう:

そう。こんな感じで。

さとう:

“めちゃくちゃいい”、“めちゃくちゃいい”、“いい”、“いい”、“かっこええ”、みたいなタイトルの録音ばっかり(笑)。タイトルをつけてないものは、「特に……」っていう感じの録音です。

ーー:

「良い」か「普通」のどちらかなんですね(笑)。

さとう:

特に良かったものは大体記憶に残ってるので、時間を置いてから聴き返して、それを元に曲の形にしていきます。

ーー:

録音が好きなところから出発しているあたり、弾き語りのシンガーソングライターというよりは、宅録アーティストやトラックメイカーに近い気質をお持ちですよね。実際に HOTEL DONUTS や Tsudio Studio さんをはじめ客演もたくさんされていて、ヒップホップとも接点を持っているのがすごくおもしろいなと思います。そういった方と一緒に制作をしていてシンパシーを感じることはありますか?

さとう:

なんとなく、弾き語りがメインの人よりも何かが合う感じがします。何かはよくわからないんですけど……。でも、パソコンが本当に苦手で(笑)。大学に入ったときに最初に受けたのが Cubase ※2 を使ったDTMの授業だったんですけど、パソコンがいるって知らなくて買ってなかったんですよ。 「いるから買いに行って!すぐに!」って先生に言われて、買いに行ってから教室に入ったら、もうみんなソフトのインストールをしているところで。

ーー:

買ったのをそのまま持っていったんですか!セットアップは……。

さとう:

何もせずに!(笑)。昔からあんまり使ったことがなかったので、みんなインストールしてるのに私はパソコンの使い方から分からなかったんです。入学したばっかりでまだ友達も多くないから、周りの人に聞きまくるのも申し訳なくて。それから苦手意識が強くなってしまったのかも……。

ーー:

それはトラウマになりますね……。


※2:世界でトップクラスのシェアを誇るDAWソフト。中田ヤスタカをはじめ多くのアーティストが愛用し、DTMを学べる学校機関でも広く用いられている。

根っこは一緒だけど引き出しが違うから、一緒にやっていくのがすごく面白い

ーー:

『さとうもかランド』ツアーの後くらいに、バンド編成でレコーディングをしているって話をしていましたよね。次回リリースの表題曲“melt better”がそれにあたるとのことですが、バンド編成は昔からやりたいと思っていたんでしょうか。

さとう:

ソロをはじめた頃は全く考えてなくて、とにかく曲を作ってSoundCloudに上げるのが目的、みたいな感じで活動していました。

さとうもか“左耳のネコ”(2015年公開)

ーー:

さとうもかバンドでドラムを叩いているかねもとまさや ※3 さんは、ドラマーとして岡山で10年以上活動をされている方ですよね。もかさんとはどういう経緯で知り合ったんでしょう?

さとう:

キムさんとは高校生のときに出会いました。ソロを始める前にやっていた、とあるユニットでママ2 ※4 に出たときに当時のキムさんのバンドと一緒になって。その時から「いつか何かやるときがあったら手伝うよ」って言ってくださってたんです。なので、大学生のときにもデモ音源のドラムを叩いてもらったりしていました。

ーー:

じゃあ、かなり長い付き合いなんですね。

さとう:

はい。キムさんが最近までやっていたバンドのメンバーともだんだん仲良くなっていって、その中の一人がしょうたさん(中川翔太 / Ba)です。2人にお願いして一緒にバンド編成をはじめたんですけど、やっているうちにキーボードの人にもいてほしくなったので、高校のとき一緒にバンドをやっていた子(小川佳那子 / Key)にも入ってもらって今に至ります。

ーー:

ソロをはじめる前からライブハウスには出演されていたんですね。そもそも、高校時代からのバンドやユニット活動を経て、宅録にのめり込むようになっていったのはなぜですか?

さとう:

うーん……。かつては moka&canon というユニットもやっていて、その相方のきゃのん ※5 とだと「2人じゃなきゃできないことをやってるな」と思えたんですけど、それ以外の活動だと、なんとなく、1人でできることを何人かでやっているような気持ちになるときがあったんです。「こうしたいのに」って思ってしまうこともあったし。でも、重ね録りだったら「全部自分でできる!しかも何十人にもできるやん!」ってことに気づいて。それで「録音最高!」って思うようになりました。

ーー:

今のバンドメンバーとやっているときはどうでしょう?

さとう:

今のバンドメンバーは、それぞれが好きな音楽の核は近いと思うんですけど、好きなジャンルは全然違ってて。私は昔のジャズが一番好きなんですけど、おがわっちはピアノの先生もやってるので、元々めちゃくちゃクラシックの人なんです。キムさんやしょうたさんはロックに詳しいし、最近の音楽もたくさん知ってるし。根っこは一緒だけど引き出しが違うから、一緒にやっていくのがすごく面白いんです。

 
 
 
 
 
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ーー:

そういえば、ここで行われた『さとうもかランド』ツアーのファイナルを見たとき、かねもとさんが“ばかみたい”を少しネオソウルっぽいタイム感で叩いていたのが印象的でした。バンドで新曲を合わせるときもGarageBandでデモを作って持っていくんですか?

さとう:

GarageBandで作るときもあるんですけど、バンドメンバーに弾き語りで聞いてもらって、そのまま演奏をつけてもらうことが多いです。あと最近は、4人の楽器を機材につないで重ね録りして、全員でデモを作るような方法でも作ってるんですけど、それがすごく楽しくて。去年まではあくまでサポートをしてもらってるつもりだったんですけど、ちょうどツアーが終わった後くらいから、4人で1つみたいな気持ちになっています。

ーー:

ツアーはファイナル以外すべてソロアクトでのライブでしたが、バンドとソロで一番違うところはなんですか?

さとう:

ソロのときは、1人でバンドの音を全部出すぐらいの気持ちでやってます。ギターもあり、ピアノもあり、トラックもあり、ダンスもあり、っていうのをまんべんなく出していって、1人だけど4人いるくらいの気持ちで楽しんでもらえたらなって。バンドのときは自分が4人の中の1人なので、「みんなで一緒に作った波に乗るぞー!」っていう気持ちです。メンバーそれぞれのいいところも見てほしいし。


※3:アプリ開発者としての顔も持つかねもとは、かつてライブナビゲーションアプリ『OTONOTO』の代表を務めていた人物でもある。アンテナが2015年に敢行した、彼への『OTONOTO』取材記事はこちら


※4:CRAZYMAMA 2ndRoom 。岡山駅付近にあるキャパ200人ほどのライブハウスで、若手ロックバンドのツアー公演や地元の学生バンドのライブが盛んに行われている。


※5:かねこきわの 。岡山出身のシンガーソングライターにして、さとうの長年の親友。現在は東京で活動しているが、さとうとのユニット・moka&canon でのライブも不定期で行われている。


強い岡山愛があるつもりはないんですけど、ずっといるってことは好きなんだと思う

ーー:

これからの活動について、今考えておられることはありますか?

さとう:

とりあえず、バンドの活動も増やしていけたらなと思っています。もかバンドのみんなは他にお仕事があるから、ずっと一緒ってわけにはいかないんですけど。ソロでも、本当にいろんな音楽をやっていきたくて。広く浅くではないんですけど、ジャズみたいなのもやりたいし、ロックみたいなのもやりたいし、ヒップホップみたいなのもやりたいし。全部のジャンルをできるようになりたい。最終的にどうなりたいかまでは……最近はそこで悩んでるんですけど(笑)。曲はずっと作り続けると思うので、良いものを出していきたいですね。

ーー:

最近はバンドメンバーで東京に遠征されたりもしていますが、これからも岡山を拠点にしていく予定ですか?

さとう:

はい。上京を考えたこともあるんですけど、もかバンドや岡山のスタッフが私のことを本当によくわかってくれているんです。だから今、すごくやりやすい環境でやれてるなっていう安心感があって。電車とか新幹線で移動するのも結構好きで、歌詞を作る時間に充てたりしています。

ーー:

地方在住だとどうしても移動がネックになってきますが、あまり苦には感じていないんですね。

さとう:

ツアーは『さとうもかランド』が初めてなんですけど、気がついたらライブが4日連続になっていたようなことは前にもあったんです。そのときはまだ事務所にも入ってなかったので、バスとかホテルとか、全部自分で手配をするのがすごく大変でした。いろいろこなしているうちに、なんだか本当に強くなっていったみたいで、あまり苦に思わなくなりました。旅芸人みたいな(笑)。

ーー:

パフォーマーじゃないですか(笑)。

さとう:

とはいっても東京の友達も増えてきたので、上京したらしたで良いことも絶対あるだろうなと思います。そこまで強い岡山愛があるつもりはないんですけど、でもずっといるってことは多分好きなんだろうなって。晴れてるし。

ーー:

岡山は本当に雨が降らないですよね。

さとう:

雨、めっちゃ嫌いなんです(笑)。

さとうもか『melt bitter』

 

 

2020年1月22日(水)発売

レーベル:Sound Sketch, Inc.

¥1,500+税

 

1. melt bitter

作詞作曲:さとうもか 編曲:さとうもかバンド

2. ひまわり

作詞作曲:さとうもか 編曲:ESME MORI

※花王 ニュービーズ WEB CM曲

3. かたちない日々

作詞作曲:さとうもか 編曲:小川佳那子

 

インストア・イベント

 

2020年1月26日(日)13時~、15時~

HMVイオンモール岡山店(5Fハレマチ・ガーデン)

2020年2月1日(土) 15時~

タワーレコード難波店(5Fイベント・スペース)

2020年2月7日(金)18時半~

タワーレコード名古屋パルコ店(西館1Fイベント・スペース)

2020年2月8日(土)19時~

タワーレコード新宿店(10Fイベント・スペース)w/butaji

2020年3月27日(金)19時~

タワーレコード福岡パルコ店(店内イベント・スペース)

 

さとうもか Official HP

 

https://satomoka.work/

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