INTERVIEW

2002年の煽動、音楽が繋ぐこれまでと現在。ZOOZ始動インタビュー

2019.10.17

小倉 陽子小倉 陽子

2019年6月、ZOOZ(ズーズ)という新しいバンドが誕生した。敢えてこのように紹介するが、メンバーはThe biensのナカムラユウヤ(Vo/Gt)、TheStoneThatBurnsのアベヒロキ(Gt)、ミスタニスタのジョーザキJAPAN(Ba)、そして発起人であるEmu sickSの16ビートはやお(Dr)という、4人で構成されている。

 

2015年前後にそれぞれのバンドで、別の道を目指すお互いの活動を見守りながら、ゆるやかに交わってきた彼ら。共通となるルーツは、学生であった彼らをバンドという表現へと駆り立てたムーブメント、2002年前後に勃興した「ポストパンク・リヴァイヴァル」だ。当時多くの若者を魅了した「ポストパンク・リヴァイヴァル」を羅針盤に、2019年に新しいバンドとして新たに船を漕ぎ出した。

 

ひとつのバンドメンバーとなった彼らが、急速に近付きながらも互いへのリスペクトを失わないのは、彼らの音楽との距離感そのものだろう。これは再出発などではなく、自分たちを動かしてきた過去を尊び、音楽を信じ、真っ直ぐ今に向き合っていく彼らの全く新たな挑戦なのだ。

ポストパンク・リヴァイヴァル "リヴァイヴァル"という羅針盤

ーー:

ZOOZがどのように結成されたかを最初にお伺いしようと思うのですが、きっかけはEmu sickS(以下:Emu)の活動休止だったんですよね。

16ビートはやお(以下:はやお):

そうですね……僕個人が音楽と向き合う上で思うところがあって、脱退を申し出た結果、活動休止ということになったんですけど。今後どうしようかと考えたときに、前々から「Emuとは別のバンドもやりたい」という気持ちがあったので、活動休止が決まったのを機に動き出したんです。

ーー:

それはEmuではできない音楽を、別のバンドでやりたかったんでしょうか?

はやお:

僕は大学生のときにポスト・パンクやニュー・ウェイヴ、ポストパンク・リヴァイヴァルに傾倒して、ドラムプレイもそういった音楽に影響を受けているんです。Emuもそういう音楽をルーツにしているんですけど、近年はメロディに重きを置いた歌モノ路線にシフトチェンジしていたので、もっと自分のルーツに寄った音楽をやりたいという気持ちはありました。

ーー:

ZOOZを始めるにあたって、どうやってこの4人が集まったんですか?

ナカムラユウヤ(以下:ユウヤ):

はやおには2016年までThe biens(以下:biens)のドラムサポートをしてもらっていたんですけど、かなり久しぶりに突然連絡がきて「ユウヤさん、バンドやりません?」って言われました。その時Emuが活動休止することも知っていたし、僕はbiensの活動が止まっていたので、それも見て声をかけてくれたのかなと思っています。

ジョーザキJAPAN(以下:ジョーザキ):はやおさんが「こんなバンドをやりたい」っていう企画書のようなものを作ってきて、僕たち一人一人にプレゼンしにきてくれたんですよ。

ユウヤ:

メンバー候補を聞いたとき、アベさんの参加は難しいだろうと思ったんですけど「アベさんがやるんやったら絶対やる」って返事したら、一週間ぐらいで「アベさん決まりました!」って連絡がきて。

ーー:

イベントのブッキングみたいですね(笑)。はやおさんは最初からこの4人で、ってイメージしていたんですね。

はやお:

そうですね、でもTheStoneThatBurns(以下:TSTB)は活動を続けているし、僕もアベさんは絶対メンバーにはなってくれないと思っていました。

アベヒロキ(以下:アベ):

僕とはやおは、人間性もこれまでのバンド活動の方向性も大きく違うんですけど、元々のルーツはすごく近いと思っていて。理想とする音楽は一緒だなと出会った5~6年前から感じていたので、これまで別々に活動しながら、やっと今繋がったという感じが嬉しかったですね。

ーー:

ユウヤさんやジョーザキさんのバンド活動はそれぞれどうでしたか?近しいものは感じていたんでしょうか。

ユウヤ:

僕は大学生のときにArctic Monkeysばっかり聞いていたんですけど、日本でいうとthe telephonesやPILLS EMPIRE、Psysalia Psysalis Psycheといったポスト・パンクやニューウェイヴをリヴァイヴァルしたバンドがたくさん出てきた頃で、そういう音楽に憧れてバンドをはじめたんです。

アベ:

biensはポストパンク・リヴァイヴァルの頃の音を、一番真っ直ぐ鳴らしているバンドですよね。

ジョーザキ:ミスタニスタでの僕はキャラとかテンションの感じから対バンの人が音楽の話をしてくるということがほとんどなかったんですよね。biensやTSTBは自分たちの格好良いと思う音楽を突き詰めるようなバンドだったんで、そんな人たちとまさか一緒にやるとは想像していなかったです。

ーー:

ZOOZはポストパンク・リヴァイヴァル “リヴァイヴァル”というテーマを掲げて活動されていますが、ポストパンク・リヴァイヴァル自体が本当に幅が広くて、マインドもサウンドもひとくくりにするのが難しいジャンルじゃないかと思っていて。ZOOZの目指す音楽はどのような音楽でしょうか。

アベ:

ポストパンク・リヴァイヴァル “リヴァイヴァル”という言い方をしていますが、ZOOZって名前が「2002」年を表していて、必ずしも元にしているのがポスト・パンクということではないんです。ジャンルっていうよりその時代に僕たちが好きだった憧れの音楽を、バンドの音に取り入れているということです。

ジョーザキ:僕はZOOZの中で一人だけ年齢が下なので、他の3人みたいにあの頃のサウンド、って感じではないんですけど、兄がユウヤさんと同い年で、僕は兄の影響で洋楽を聴いていたので、自分の根っこを揺らすものはありますね。

アベ:

3人にとっては大学時代に影響を受けた音楽だけど、ジョーザキはあの頃僕たちが持っていた音楽への探求心とか好奇心を今一番持っていて、新しい音楽として怒涛の勢いで吸収しているし、うらやましいくらい格好良いものに対して愚直ですよね。プレイに反映させるまでも早いです。

はやお:

僕、歴史学の勉強をしていたんですけど「過去の営みから今の自分達を再構築する」って歴史学的作法にも通ずるところがあって。自分のこと見失いがちな社会の中で、音楽で自己表現していこうって思ったときに、自分たちが熱狂したものをリヴァイヴァルすることが有効なのかなと。

自分が一番影響を受けた音楽であり、自分が一番格好良いと思ったポストパンク・リヴァイヴァルを追求することで、懐かしさや新しさによって色んな世代の人に届く音楽ができるんじゃないかと思うんです。だけど、メンバーの格好良いは幅広いし、活動していくうちに色んなことができてしまうので、最終的なゴールだけはポストパンク・リヴァイヴァルに置いておこう、ということですね。

アベ:

ポスト・パンクやニューウェイヴって、常に新しいことを取り入れて発展してきたジャンルだと思うので、そのマインドや活動も含めて僕たちはポストパンク・リヴァイヴァル “リヴァイヴァル”という単語で共有しています。

言葉にならない格好良さと、言葉で共有したバンド活動への思い

ーー:

私は自分が格好良いと思った音楽を言葉にしたいと思って目下格闘中なのですが、バンドの人たちが、自分たちの鳴らす格好良いをどういう言葉で共有しているのかずっと興味があるんです。ZOOZの皆さんはそのあたりどうされてるんですか?

はやお:

文系だったんで言葉とも向き合ってきたんですけど、やっぱりどんなに尽くしても音楽って言葉にならないところがあって。もちろん、できる限り努力するんですけど。

ユウヤ:

僕が軸になるリフとかメロディとかをスタジオに持っていくんですけど、それを弾いたりスタジオで即興で鳴らしたりしているところに、各々がセッションしてきて出来上がる、ということも多いですね。格好良いものができるときってセッションしながら「ああ、今の良かった!」って掴み取っていくことがあるので、そういうスタジオでのやりとりを録音しておいて後で再構成する、というようなことはしています。

ジョーザキ:3人はそれこそ聴いてきた音楽も近いものがあるから、感覚であの頃のアレ、みたいな共有はできるので、僕は今それに必死でついていっている感じですね。

ーー:

この音にそのリズムを重ねたら格好良い!みたいな感覚ってどうやったら育てていけるんでしょうね……。

アベ:

僕たちに関しては、ZOOZを始めるとき4人でたくさん話をしたんですよ。それぞれの好きな音楽の動画のURLとかをLINEに貼りまくって、お互いのこれが好き、これが格好良いっていうのをとことん共有していたので、ユウヤくんが持ってきたものに対しておおよそ外すことなくそれぞれのパートを提案できています。

ーー:

それぞれの「好き」や「格好良い」を実際の音や動画で共有するということですね。

アベ:

それ以外にも最初にたくさん話はしましたよ。「格好良さ」についてという限定的なものではなく、お互いの思っていることを言葉にすることは意識して取り組みました。バンドに対する思いとかやりたい音楽、どのくらいのペースでやりたいとか、お金の話まで。それぞれもう5年とか10年それぞれでバンドをやってきているから、そこで感じたバンドの面倒くさいことも全部、とにかく飲みに行ったりLINEしたりして、正直に話し合いました。

ーー:

それはなぜ話そうっていうことになったんですか?

アベ:

僕以外のメンバーのバンドが思うように動けていない状態だったのもあり、今後の活動の中で問題にぶつかった時、同じように止まってしまうのはもったいないと思ったんです。バンドって、問題を言葉にして共有しなくなったことで積もり積もったものが、どこかのタイミングで爆発して急に立ち止まってしまう。今新しいバンドを始めることは年齢的にも決して早いスタートではないので、止まらないためにたくさん話して共有すれば、これまでバンドにかけてきた時間も生かせるかなと思ったんです。

負担じゃないバンド活動ってないんですよ。その楽じゃない部分をネガティブな気持ちが超えてしまわないように、始める前に精算することが大事だと思ったんです。

ーー:

4人でたくさん話して共有した、ZOOZの活動について一番大切なものってどういうことなんですか?

はやお:

僕は音楽で生活できるとは思っていないんですけど、「認められたい」と「自己表現がしたい」というのは譲れなくて。そのことは一番最初に話して賛同してもらった上で始めているとは思います。

ジョーザキ:自分たちの生活を破綻させないで、できる範囲でどこまで遠くを目指すか、というのは最初に提示してくれていたので、そのためにはどうしたらいいかという土台の上で話ができたと思います。

ユウヤ:

僕は自分が格好良いと思う音楽をやり続けていたいんですけど、ただ単に続けるだけじゃなく、やるからにはたくさんの人に聴いてもらえるようにする、ということは擦り合わせました。そういう努力もした上で、聴いてくれた人からレスポンスがあることは自分たちの自信に繋がるんですよね。

メンバーともお客さんとも、音楽で繋がりたい

ーー:

ZOOZにとっての認められるって具体的にはどういうことだと思います?

はやお:

シンプルに「うお~~格好え~!!!!!」なんですけど、その上でオーバーグラウンドに立って勝負したい。

ユウヤ:

自分たちの思う格好良さで越境できるような、音楽をつくりたいです。具体的には海外のフェスに出たい。やっぱり僕らが憧れている海外のバンドと肩を並べたいとは思います。

アベ:

4人で共有して一致した「圧倒的に格好良くてヤバい」バンドのひとつに、僕たちもなりたいですね。「格好良いけど、あんまり売れていないな……」っていうネガティブな気持ちが活動に悪影響を与えるなら、それは圧倒的ではなくなってしまいますからね。

ジョーザキ:聴く人を選ばないで、誰かの刺激になったらいいと思います。格好良い音楽をやるのは大前提として、知っている人をどうやって増やそうかっていうことを並行して考えているところです。

はやお:

今は各々がやってきた音楽活動で関わりを持ったお客さんや関係者の方が興味を持ってくれていて、貯金を切り崩している状態なんですよ。もちろん今までの音楽活動を認めてくれていた人が、今ZOOZのことも格好良いって言ってくれることは大切だしありがたいのは当たり前なんですけど、その上で新しい人たちにもっと知ってもらわないと、と思っています。

ジョーザキ:はやおさんが自身のブログに「今までEmuのドラムとして自分のこと慕ってくれていた人でも、ZOOZのこと義理で観てくれなくてもいい」というようなことを書いていて。お客さんとの向き合い方が格好良いのと同時に、どれだけZOOZの音楽に自信を持っているんやって思いましたけど(笑)

はやお:

お客さんが音楽じゃなくて人に付いてくるっていうのは健全な在り方じゃないと思うんです。義理で観にきていただくのは申し訳ないし、ZOOZの音を聴いてみて本当に格好良い、好きだって思ってくれたらCD買ったりライブ観にきてくれたらいいです。

音楽で繋がっているからこそ、音楽で距離感を変えても僕はなんとも思わないです。いつかまた音楽で交わることができればそれは嬉しいし、お客さんも僕たちもそこはお互い無理しないっていうのが本当の信頼関係なのかなと思います。

ーー:

はやおさんが音楽に向き合いたくてZOOZを始めた、っていうことがお客さんとの距離にも現れているし、メンバー同士もそうやって音楽で繋がっているんだなって感じました。

はやお:

最初にアベさんが好きな音楽を共有することを提案してくれて、お互いに格好良い音楽を紹介し合うことは今も続けているんですよ。

ジョーザキ:教えてもらう音楽は今まで知らなかったものもあるんですけど、それを「知らない」っていうことに対して誰もバカにしたりしないので、恥ずかしいと思うことなく新しい音楽を吸収できています。

ユウヤ:

僕は普段よく聴く音楽から逸脱したものを探したりすることってないんですけど、メンバーが薦めてくれた音楽を聴いて新たに格好良いなって思うことはあるし、そこから影響受けて作曲するようになりましたね。

ーー:

ZOOZを始めて、音楽の聴き方は変わりました?

はやお:

僕はドラムのない音楽を聴くようになりました。「最悪、ドラムってなくてもいいよね、リズムを担うのはドラムじゃなくてもいいし」って、最近はドラムの存在意義を考えています。

アベ:

それこそ僕たちが好きなポスト・パンクやニューウェイヴのアーティストって、そうやって「このドラムのビートはシンセに置き換えていいんじゃないか」って疑いながら変化し続けて、それが今やスタンダードになっていると思うんです。過去に音楽が好きで音楽と愚直に向き合ってきた人たちがやってきたことを、今の僕たちもやろうとしているのかなと思います。

はやお:

ドラムの存在自体に危機感を感じているのもあるんですけどね。相対的にドラムっていう楽器を捉えないと、リズムなんて機械が刻めてしまうので、人力である意義を常に考えています。

ユウヤ:

僕は電子音も好きですけど、人間がやっているからこそ誰かが欠けたら音がガラっと変わってしまう中で、バンドでせーので音を出すって尊いことだなって思うんですよ。このドラム、はやおが叩いたら格好良いだろうな、って思いながら曲を考えるのも楽しいですし。

ーー:

メンバーとの関係性も、バンド活動の魅力ということですか?

ユウヤ:

誰とやるかは重要ですね。バンドみたいな人間関係って他にないじゃないですか。だからこそメンバーのためにもより長く、一人でも多くの人に届くように格好良い音楽をつくりたいなって思えますよね。

ジョーザキ:ミスタニスタが活動休止してからZOOZをはじめるまでの間は、音楽のことで納得のいかないことが自分の中で多くて、自信を失っているところがあったんです。でもはやおさんが「格好良いバンドやろう!」って誘ってくれてZOOZをやり始めて、全員がこのバンドのこと心から格好良いって言える環境があって、普段の生活にも自信が出てきました。

 

今まで音楽の話ができる友達ってなかなか増えなかったんですけど、今は周りに音楽の話をしてくれる人しかいないから、音楽をすることがすごく楽しいです。

アベ:

初ライブからの数ヶ月で普通のバンドの一年分ぐらい進化しているんで、1回1回見逃さないで欲しいですね。見た人にはその変化も必ず伝わると思うので。

はやお:

メンバー同士が本当にリスペクトし合っているので、すごく純度の高いバンド活動ができていると思うし、もう後には引けないなって思っています。

GOODS

トップへ