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集大成という名のスタートライン-ナードマグネット主催フェス『ULTRA SOULMATE 2019』ライヴレポート

2019.09.16

マーガレット 安井マーガレット 安井

私たちが始まりと呼ぶものは、しばしば終わりであり、終えるということは始めるということ。結末は我々の出発点なのだ。(T.S.エリオット『四つの四重奏』より)

ライヴの全てが終わり、イベントスタッフが会場の片づけを行っている姿を観ながら、僕はアメリカの詩人T.S.エリオットの一節を思い出していた。

 

2019年8月4日の大阪城野外音楽堂。雲ひとつなく、太陽が照り付けるなかで開催されたナードマグネット初の主催フェス『ULTRA SOULMATE 2019』。昨年はバンド史上初の両A面シングル『FREAKS & GEEKS / THE GREAT ESCAPE』を発売し、秋の風物詩的サーキット・イベント『MINAMI WHEEL 2018』では念願であったBIGCATのEggs STAGEに立ち、会場を超満員にさせた。2019年に入ってからは2ndアルバム『透明になったあなたへ』を発売し、本作を引っ提げての主催フェスとなる。この日以降は全国14箇所をめぐるレコ発『だいそうさくツアー』も控えており今関西でも一番勢いのあるバンド、といっても過言ではないだろう。

 

そんな彼らによる『ULTRA SOULMATE 2019』はトラブルにも見舞われながらも、ソウルメイトたちの見事なアクトの数々と、ヘッドライナーであるナードマグネットの観客の琴線を揺さぶるライヴに心打たれっぱなしの一日になった。最初にライヴレポートの結論を言う。『ULTRA SOULMATE 2019』はナードマグネットというバンドの活動開始から13年間のすべてが詰め込まれた集大成であり、これから先の未来への期待を感じさせるフェスであった。

ウルトラなソウルメイトたちの饗宴

DENIMS(Photo:石崎祥子

フレンズ(Photo:石崎祥子

大舞台のULTRA STAGEと、後方の芝生エリアを利用したSOUL STAGEの2ステージで13組のアーティストが熱のこもったステージを披露した。イベントタイトルにも冠したソウルメイトという言葉の通り、ナードマグネットと深い親和性のあるバンドが揃っている。BaconやDENIMS、愛はズボーンなど何度も共演しているバンドや、結成当初に根城していたライヴハウス、扇町para-diceで共演していたASAYAKE 01やTHE YANG。そしてレーベルメイトでもあるcinema staffといったバンドが名を連ねていた。

 

またあまり共演歴がないバンドでも、爽やかでアーバンなサウンドを野音に届けてくれたフレンズの三浦太郎(Gt)はナードマグネットが敬愛するバンドHOLIDAYS OF SEVENTEENのリーダーであり、2017年リリースしたミニ・アルバム『MISS YOU』表題曲“MISS YOU”楽曲をナードマグネットと共作した過去がある。一方ファンキーでダンサブルなサウンドを会場に巻き起こした、夜の本気ダンスとは一度も共演がなかったが、西田一紀(Gt)はDAISY LOO時代に何度も共演をした旧知の仲だ。そしてSOUL STAGEラストに登場し、ブルージーで哀愁漂うサウンドと中山卓哉(Vo)の身を削るスリリングなアクトで会場を沸かした愛しておくれの前身バンドは、ナードとは何度も対バン経験のあるグッバイフジヤマである。

Transit My Youth(Photo:ai-berry

teto(Photo:石崎祥子

一方ナードマグネットと縁のあるバンドだけでなく、ナードマグネットが期待する若手のバンドもソウルメイトとして呼んでいた。SOUL STAGEに登場した、Transit My Youthはメンバー全員20代ながら堂々とした演奏を繰り広げた。抜けの良いサウンドと爽快なコーラスワークにはPassion Pitのようなアンセムを感じさせる。今回は機材電源が落ちてしまい、楽器の音が全く出なくなるトラブルがあったが、そんな中でアカペラで演奏した“a vista”は『ULTRA SOULMATE 2019』のハイライトの1つであった。また結成3年ながら既に大型フェスにも出演する存在になったteto。パンクが持つ初期衝動と歌謡曲のもつメロディアスさをサウンドにちりばめて、ボーカル小池貞利が何度も観客席に飛び込んで歌うステージングは多くの観客の心に刻み込まれたに違いない。

 

このように『ULTRA SOULMATE 2019』は誰もがナードマグネットと何らかの関わりがあるバンドで構成されており、活動期間の13年間を一日かけて振り返れるフェスでもあるのだ。そんな中で、私が特に印象に残ったアクトはSOUL STAGEのトップバッターを飾ったBaconであった。

窮地を好機に変えたBaconとKANA-BOON

Bacon(Photo:ai-berry

開場時間とほぼ同時にスタートしたBacon。まずは“Kids alright!“を演奏。まだ観客がまばらの中で軽快ながらも力強いギター・サウンドが野音の青空に響く。そんなBaconのライヴを一目観ようとステージまで走ってくる観客もいる中、次の曲に行こうとした矢先にトラブルが発生。なんと機材電源が落ちてしまい、楽器の音が全く出なくなってしまった。しかし、そんな状況をまるで見越したかのように「俺たちにはこういう時のための曲がある」とこうどたくや(Vo / Gt)が言って、披露したのはBacon唯一のアカペラナンバー“ポラロイドカメラ”。マイクなしで、メンバーたちによる歌のハーモニーにトラブルが起こったとは思えぬほど観客は大いに盛り上がる。

 

アカペラで披露される中で機材トラブルが解決し「俺たちはトラブルには負けません。これが19年の実力や!」と、こうどたくやが言うと再スタートを切った曲は“ByeーBye little shcool girl”。以降は彼らの代表曲“風待ち”や7月に発売されたベストアルバムから“スタンドバイミー”を披露。ラストにはBacon随一のダンスナンバー“踊り狂ってもいいぜ”をドロップ。「今日はこの景色を絶対忘れません」と言い、観客の歓声と拍手の中でライヴは終了。活動19年、ナードマグネットの先輩格であり、関西パワーポップ界の重鎮といってもいいBacon。トラブルさえも味方につけ観客を楽しませたライヴは、底力を感じさせるものであった。

小泉貴裕(KANA-BOON)(Photo:石崎祥子

古賀隼斗(KANA-BOON)(Photo:石崎祥子

Baconの以外で印象的だったライヴをもう一つ上げたい。それは夕闇迫る野外音楽堂に登場してきたKANA-BOONである。飯田祐馬(Ba)が不在で、サポートを入れた今回のライヴ。冒頭“1.2.step to you”からライヴはスタート。その後“ないものねだり”、“シルエット”と代表曲を惜しげも無く披露。会場からはオーディエンスの拳が上がり、シンガロングが巻き起こる。

 

そしてMCでは谷口鮪(Vo / Gt)がナードマグネットの思い出として7年前のオーディションの話を語った。2012年に開催されたKi/oon Records20周年を記念した『キューン20 イヤーズオーディション』に、関西からはナードマグネット、KANA-BOON、そして今回KANA-BOONのサポートとして入っていたヤマシタタカヒサ(Ba)が所属するシナリオアートの3組が受けていた。それを受けて「あの頃から僕たちの人生が変わってナードマグネットと7年間会えなくなっていたけど、続けていれば再開できる」と語り、その後は“バトンロード”、そして今年6月に発売された最新シングル“まっさら”を披露。「まだまだ楽しくバンドをしていきたい。今度はナードを誘ってライヴしたいです」と谷口は語り、ステージを後にした。

KANA-BOON(Photo:石崎祥子

BaconとKANA-BOON。1組はナードマグネットの先輩、1組はナードマグネットの戦友。「この2組に感動したのはなぜか?」と考えると、絶体絶命でも戦える力をみせたことではないか。Baconは電源トラブル、KANA-BOONは長年連れ添ってきたメンバーの不在。正直、双方ともに不測の事態であったし、窮地に立たされたと考える。しかしナードマグネットのため、危機的な状況でもライヴを行い、観客を興奮させる素晴らしいアクトを披露してくれた。そしてこれはナードマグネットの現状でも同じことが言える。

 

活動13年。その道のりは決して平坦なものではなかった。バンドをやり始めた頃の状況を、須田亮太はこのように語っている。

天才でもないし、カリスマでもない。そのようなことを散々思い知らされた果てに、僕も今の形にたどり着いたので。だからSuperfriendsとよく対バンしていた頃と、今とでは音楽性が違うんです。前はもっと捻くれてグチャグチャな音楽で「俺の中には何かあるはずだ」ともがいていたんです

挫折と葛藤の中で生まれた、愛と開き直りの音楽 - Superfriends塩原×ナードマグネット須田 パワー・ポップ対談 –

結成当初は「才能がある」「何者になれる」と希望をもってバンドをやり始めたが、自分たちよりも凄いバンドを目の当たりにし、希望は脆くも崩れ去り、辛酸を舐め、まさに窮地に立たされた状態であった。しかし投げ出さずに音楽を続け「自分が好きを貫く」という姿勢で取り組み続けた結果、徐々に知名度は上がり、最終的には今日の野音へとつながった。長い道のりだったが、決して無駄ではなかった。この日のナードマグネットのライヴはそのことを物語っていたと感じる。

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