ナードマグネット
透明になったあなたへ

2019.09.10

アンテナ編集部アンテナ編集部

ナードマグネットに出会う前の人生を思い出せないな。

 

そんなことをふと思ったのは8月末の夜。渋谷のセンター街。フル・アルバム『透明になったあなたへ』を引っ提げた、ナードのワンマンライヴを観た帰り道のことだった。ナードマグネットの何が、そんなに私の心を掴んで離さないのか。答えはこのアルバムそのものだと気付いた夜でもあった。

 

カセットテープを巻き戻したノスタルジックな“Intro”から始まったかと思えば“アップサイドダウン”、“FREAKS & GEEKS”、“バッド・レピュテイション”と畳み掛けるようなアッパーチューン。この流れはナードマグネットの攻め気を強く感じる。最高潮のボルテージのまま聴こえてくるのは、切ないメロディーに乗った柔らかい歌詞。アルバムのタイトルともリンクしている“透明になろう”は世界で一番優しい、ウォールフラワーのためのアンセムだ。

ここまでで既に分かるのは、ナードマグネットは世の中に生きづらさを感じている人の味方だということ。はみ出し者の私と一緒に飛び跳ねて騒いで、時には手を繋いだまま何も言わずにただ隣にいてくれる。これはそんな音楽が詰まったアルバムなのである。そして、ロック・ファンなら誰でも反応してしまいそうな大胆なアレンジのギター・リフから始まる『I’m Not Gonna Teach Your Boyfriend How to Dance with You』に、彼らが敬愛する The Wellingtons へ捧げた『Song for Zac & Kate』。どちらもカヴァー曲でありながらナードらしさも存分に楽しめる。音楽を心から愛しているからこそ魅せられる技だ。

 

“虹の秘密”家出少女と屋上”などの新曲が並ぶ中で、後半の“テキサス・シンデレラ” “COMET”は、特に古い曲。これらが違和感なく混ざり合っていることで、ナードが軸はブレずに進化していることを感じる。アルバムの締めくくりは爽やかさと、切なさが同居している“THE GREAT ESCAPE”と“HANNAH / You Are My Sunshine”の2曲。息苦しい世の中を駆け抜ける疾走感と、誰もひとりぼっちにさせない希望の光のような歌詞が気持ちいい。

ナードマグネットに出会う前の人生が思い出せないくらい、すんなりと私に馴染んだ強くて優しいアルバム。10年と言わず20年後も30年後も大切に聴いていたい。

 

息が詰まりそうな街の片隅で、期待外れの物語を生きているあなたにも届きますように。

寄稿者:吉原菜々子

 

 

プロフィール
1997年生まれ。東京在住のスタイリストアシスタント。「衣 食 ロックンロール」が生活の基盤です。

 

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