INTERVIEW

【実は知らないお仕事図鑑 P5:音響ケーブル職人】タケウチコウボウ / 竹内良太

2019.08.02

乾 和代乾 和代

世の中には、なくてはならない存在でありながら、あたりまえすぎてその存在価値を意識せず享受しているものがたくさんある。エレキギターやベースを弾いている人が何気なく使っている “シールドケーブル(以下シールド)” もそのひとつではないだろうか。しびれるようなギターリフに感動できるのも、シールドがアンプに繋がってフロアに音を届けているから。大抵が真っ黒で黒子のように目立たないシールドに “アソビゴコロ” というスポットをあてたのが音響機材をオーダーメイドで作成、販売している “タケウチコウボウ” の竹内良太だ。彼の作るシールドは実にカラフルで個性的。好きな洋服を選ぶみたいに、何を選ぼうかとワクワクしてしまう、そんなアソビゴコロに溢れている。でも、なぜ彼はこのようなシールドを作ろうと思ったのだろうか。その答えの先にあったのは、“スタイルを定めない” 新しい働き方だった。

バンドのために、シールドを作ったことがきっかけ

ーー:

竹内さんは、今、Webサイトを中心に  “タケウチコウボウ” という名でオーダーメイドの音響機材、主にシールドを作り、販売されていますが、ご自身でも音楽をされているんですよね。

竹内良太(以下:竹内):

はい。大学生の時にサークルに入って、卒業後もバンド活動は続けていました。ハナマウイというスタジオで働いていた時、常連さんと仲良くなってLLama(ラマ)というバンドに入ることになったんです。もともとはギタリストでしたが、そのバンドでトランペットを吹くことになったんです(笑)。正直、小学校の時に1年くらい吹いたことがあっただけでしたが、トランペットを買って3,4ヵ月ぐらいで、東京でフルアルバムのレコーディングをしましたね。いい経験をさせてもらいました。

MODULATION BEYOND THE DOMINATION / LLama

ーー:

トランペット奏者として活動していたのに、なぜシールドを作ろうと思ったのでしょうか。

竹内:

スタジオで働いていた時に、シールドを修理することがあったんです。バンドメンバーにも「シールドを作って欲しい」と言われ、やってみたらいい感じにできてしまって(笑)。それを繰り返しているうちに、頼まれることが増えていきました。

ーー:

今、販売されているカラフルなシールドはどのようにして生まれたんでしょうか。

竹内:

「普通にシールドを作るのはおもしろくないな」と感じたことがきっかけです。たまたま、今タケウチコウボウで販売しているようなカラフルな色を組み合わせたシールドを作ったんです。それを見た、浜田 淳(Lainy J GrooveのBa / Vo)に「めっちゃ、いいやん!これをちゃんとしたものにしたほうがいいよ」って言われて。しばらくしたら浜田から「じゃ、ロゴができたから。これでやれば」って、ロゴと店名が入った名刺を渡されて……。その時にすごくいい感じにデザインしてくれたんで、今もそのまま使っています。それが、6年前くらいになるんですが、それから気持ち変えてしっかりやろうと思いました。

タケウチコウボウのロゴマーク

シールドはマイノリティーな存在だから、おもしろい

ーー:

実際に、シールドを作る仕事をはじめてどうでしたか。

竹内:

実際に、仕事としてはじめてみると、知人やバンド仲間レベルでしたが「いいじゃん」って言われていました。シールドのできがいいということだけでなく、シールドづくりをメインにがんばっているというニッチでよくわからない感じがおもしろかったようです。そんな時、知り合いに「”サウンドメッセ”という関西の楽器フェアに出店しないか」と声をかけられたんですね。気軽な気持ちで出店したんですが、楽器フェアに来る人は、今まで自分がいたバンドマン界隈の人たちとは、世界が違ってびっくりしたことを覚えています。その時に楽器業界の人や、普段の生活では出会えない人たちとも知り合うことができて、そこから、仕事の依頼が増えました。積極的にシールドを作ることがおもしろくなってきて、やるからにはがんばらなきゃなって。今思えば、それが本格的なタケウチコウボウのスタートって感じです。

タケウチコウボウのカラフルなシールド
アソビゴコロあふれる、こたつコードを使ったレトロなシールド
ーー:

竹内さんはシールド作りのどんなところにおもしろさを感じているのでしょうか。

竹内:

シールドって音楽を作る中で比重は軽いですが、ゼロじゃ音楽を作るのが無理なものだと思うんです。音を鳴らすために必要なものだし、こだわろうと思えばまだまだこだわれる余地がある。そんなマイノリティーな存在であることがおもしろい。

ーー:

タケウチコウボウが現れるまで、“シールドで遊ぶ” という概念はなかったんでしょうか。

竹内:

最初はみんな「このシールドを使ったら、音はどうなん?」って音質を気にするんですよね。例えば、シールドの見た目をこだわるとかではなく。そういう意味で、まず選ぶ基準の一番を「シールドの見た目」においたのは、僕がはじめてだったのかもしれません。だから、「シールドで遊ぶような、おもしろいことができたらすごいのでは」という思いで作っています。

ーー:

こだわっている音のポイントはありますか。

竹内:

シールドはギターだけじゃなく、ベースやキーボード、レコーディングマイクにも使われます。でも、ギタリスト向けのシールドを作るとギタリストしか楽しめないし、キーボード向けだとキーボーディストしか楽しめない……。だから、そういう音の縛りにとらわれるのはもったいないと思っているんです。だから、僕はどんな楽器でも使いやすいシールドを作りたいと思っています。

ーー:

では、どのような基準でシールドの価格設定をされているんでしょうか。

竹内:

目安は、誰でも手に入れやすいぐらい。やっぱり高かったらみんな手を出しにくいし、何より、高いシールドを買うならいい楽器を買ってくれって(笑)。僕的には、「可愛い!この色のシールドをください!」みたいなところから興味を持ってもらえるのが嬉しいので。カラーもたくさんあるし、組み合わせでいろいろと選べるから、気軽にとっかえひっかえして欲しい。もちろん、それを裏切らないだけの品質のものを作っています。

非効率でも、一人ひとりの要望に合わせてシールドを作りたい

ーー:

基本的にオーダーメイドなんですよね?

竹内:

はい。色と色を組み合わせてパッケージ化して販売してしまうと、みんな組み合わせた色の中で、どれがいいかという選び方になってしまうと思うんですよね。最初から悩んで欲しいんです。

ーー:

今、カラーバリエーションはどれくらいあるんですか。

竹内:

例えば、ケーブルの色とキャップの部分を選んで、2種類の組合せになるので63種類くらいですかね。シールドは価格的にも安価なので、オーダーメイドなんてやっていたら、たいした仕事にはならないですけが、あえてこだわりたいなと。時間はもらうけど、お客さんの納得いくものを作りたいと思ってやっています。

ーー:

シールドを作るのにどれくらい時間がかかるんですか。

竹内:

シールド1本に、30分くらい。お客さんの要望によって配線の仕方が変わるので、一概には言えませんが。お客さんのオーダーに関してはどこまでも話をするようにしています。そういう対応をシールド1本、1本にしていると、効率はよくないんですけどね(笑)。

 

 

音響機器の配線というのは使う人の環境、例えば、趣味でやっているような人やライヴをがっつりやるような人、機材がたくさんある人、知識がない人、ある人などのように、人により大きく必要なものが変わります。だから、お客さんの求めているものを提供することは、実は結構シビアだったりするんです。大半の人は市販品を使うので、長さや音はある程度妥協したりすることも多いと思いますね。でも、そこは気持ち悪いくらいマッチするものを提供したいという職人的こだわりと、そうやって普通は適当に考えがちなシールドにもいろんなこだわりをもってみるとおもしろいよ、ということを伝えたいという気持ちでそうしています。だから、一人ひとりに合わせてオーダーを聞く部分は、非効率でも大切にしたいんです。

おもしろいって思ってもらえることが、モチベーションになる

ーー:

今、している仕事以外に、これからやりたいことはありますか。

竹内:

自分で作った楽器を使って、音楽作品を作りたいと思っています。打ち込みで

はないですが、自分で改造した楽器だとか、ギターとかではなく音の出るおもちゃみたいなもので、何かしら自分の作品をつくるような活動もしていきたいですね。

 

基本的に、タケウチコウボウってなんでも屋さんなんですよ。シールド以外も、なんでも引き受けていているんです。例えば、今出川堀川のstudio INOというレコーディングスタジオの立ち上げにも参加していて、解体や配線、壁の防音処理などを手伝いました。音楽が役に立つか立たないかといえば、役に立たないと思っているから、やっぱり自分がおもしろいと思うことをしたいんです。

ーー:

竹内さんが思う“おもしろさ”ってなんですか。

竹内:

いい意味での裏切りみたいな、タブーに踏み込むとか、意外性とか、そいうのかな。

ーー:

自分の作品で音楽を作ることは、もうはじめているんですか。

竹内:

そうですね。まともな曲にはならないかもしれませんが、前衛的なことをしようと思っています。聴いた人の目が点になるみたいなことをしたいんで(笑)作品に使う楽器、おもちゃも作っています。基本、「これ使えるの?」みたいなものを使って音楽を作っていきたい。いい曲を作って発表したいというよりも、単純に人を喜ばせたい。おもしろいって言ってもらえるようなことをやりたいというのが僕のモチベーションなんだと思います。

竹内さんが作っている音の出るおもちゃのひとつ。目は光るようになっている。

仕事のスタイルを定めていないから、仕事を続けることができる

ーー:

シールドを作る仕事は、得意分野だと感じているんでしょうか。

竹内:

経験と自信はありますが、得意と思ったことはないですね。もちろんシールドを作ることだけでなく、ギターも、トランペットも自分にすごく向いていると思ったことはない。でも、自分でやったことに関しては僕発信なので、そこに関してはやったもん勝ちですし、上手いも下手もない。非効率的でも、自分のやりたいことを自分なり試行錯誤することが好きですね。自分が思った通りの仕事しかしたくないんです。

ーー:

まだまだこの仕事をやっていきたいですか?

竹内:

やりたいですね。まだ、やりたいこともいっぱいあるし。自分がはじめたことなので、いつでもやめられると思っているんです。定年があるわけでもないし(笑)

ーー:

今、竹内さんは自分がやりたい仕事をされていると思いますが、多くの人ってやりたいことができないっていう悩みを抱えていると思うんです。でも、竹内さんはそこを気にせず、ご自身がやりたいこと、できることをフラットに捉えている気がします。

竹内:

確かに、今の仕事のスタンスが一番スマートだと思っています。自分的にも無理がないですし、やっていて楽しい部分も多いですね。

ーー:

最後に、竹内さんにとって、仕事とはなんですか。

竹内:

「よくわからない」ですかね。答えがでてこないという意味ではなくて、仕事ってよくわからない、現実感がないからこそがんばれると思います。答えがでていることをやっていると絶対に続かない。よくわからないから、納得してやれている。「仕事ってこういうものであるべき」と思わない方が、自分が納得して仕事ができると思うんです。僕は、仕事のスタイルを定めてないから仕事を続けることができているんかなって思っています。

タケウチコウボウ

 

音響機材にも“アソビゴコロ”をコンセプトに色とりどりの音響ケーブルを主に販売している。Webサイトにて、色、コネクタの形状、長さなどお客様の要望に合わせたオーダーメイドのケーブルの作成を受け付けている。京都のワタナベ楽器、大阪梅田の三木楽器では店頭での取り扱いもある。

 

主な使用アーティスト

 

おとぼけビ~バ~、Homecomings、Turntable Films、my letter、Lainy J Groove、Sawa Angstrom、片山ブレーカーズ、騒音寺、空きっ腹に酒ほか多数。

 

公式オンラインSHOP

 

https://takeuchikoubou.stores.jp

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