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紙とインキも表現のうち!修美社の山下昌毅さんに聞く印刷の奥深さと面白さ 言志の学校第2期レポート② 印刷編

2019.06.20

川合 裕之川合 裕之

フリーペーパーとZINE を作りたい人のための言志の学校の第2期が開講しました。

 

わたしたちアンテナと、フリーペーパー専門店只本屋が共同主催する『言志の学校』というこの学校では、ライティングやデザイン、印刷や流通といった紙の製作に関わるエキスパートを毎回ゲスト講師にお迎えします。講師陣の授業を参考にしながら、全4回の期間内に1冊の作品を自分で作り上げて流通させるまでがゴールです。

 

その第一歩として、13名の受講生たちはまず物件ファンの森岡さんに「表現は愛だ!」という極意を教わりました。

超絶技巧は必要ない!物件ファンの森岡友樹さんにきく心を打つ文章を書くための思考のステップ 言志の学校 第2期レポート① ライティング編

森岡さんと交代ですぐに次の講義がスタート。修美社の山下昌毅さんへとバトンが渡されます。「印刷」って何となく口にしているけれど、一体印刷って具体的に何をしているの?現場のプロが分かり易く分解して解説してくれました。

講師プロフィール

山下昌毅

 

1978年生まれ、京都府出身。2006年、家業の印刷会社の修美社に入社。デザインから印刷、加工までを経験して、印刷の世界にはまり込む。現在、印刷物が出来上がるまでの印刷設計や、紙と印刷の可能性を広げるイベント企画、商品企画など。2018年、活版印刷機を自社工場に復活しKAPPAN縁日を開催。

修美社

印刷ってなにしてるの?答えは「版」にあり

データを印刷所に送った後、印刷所でどのように印刷がされているか知っていますか?まだまだ広く知られていない印刷について学びます。

 

印刷所が主にやってくれる作業は ①印版、②印刷、③加工 です。これは家庭でやるのはなかなか難しいところ。そもそも家庭用のプリントと何が違うの?その答えは「版」にあります。

 

スピーディーに大量につくるために「版」を作って、これにインクを付けて紙に写すことで、大量の印刷に対応しています。

実はこの「版」の種類によって、印刷の味が変わってきます。

印刷にもいろいろ? 代表的な4つの印刷方法

「印刷」とひとくちにいってもいくつかの手法に細分化されます。

 

今回山下さんは、4つの代表的な印刷方法を紹介してくれました。オフセット印刷、凹版印刷、凸版印刷、孔版印刷の4つの方法を解説していきます。

①オフセット印刷

平版印刷とも呼ばれる印刷方法。現在、世界中の最も多くの紙媒体で採用されています。水と油の反発関係を利用することで版にインキをつけていきます。

②凹版印刷

凹んだ溝の部分にインキを擦り込んで、その上に紙を置いて圧をかけて複製する印刷方法のことです。精密で綺麗な反面、版の複製が難しいというデメリットも。そうした理由でお札の印刷には凹版印刷が採用されています。

 

また別名グラビア印刷とも。そうです、あの「グラビア」です。雑誌巻頭のグラビア印刷カラーページによくセクシーなポートレートが掲載されることから、この種の写真が「グラビア写真」と呼ばれるようになったという経緯があります。

③凸版印刷

ハンコのような凹凸のある版の凸部分にインキをつける方法。所謂「活版印刷」ですね。日本では昭和30年頃までの主流がこの凸版印刷。近年ではわざと圧をかけ過ぎることで、へこませることがブームにもなっているそう。

④孔版印刷

リソグラフという機械により版に穴(孔)を空けて、その版にインクを通していくスタイルのことです。あの「プリントゴッコ」も孔版印刷の一種。シルクスクリーン印刷とも呼ばれています。Tシャツを作るときのあのシルクスクリーンです。

この孔版印刷が出来る印刷所は世界で200か所ほど。どこもZINE をつくっているスタジオなんだとか。日本ではレトロ印刷さんが採用していることでも有名です。

『言志の学校』第三回レポート -デザインとは? 印刷って何? –

※デジタル印刷

オンデマンド印刷とも。レーザープリンターで仕上げる技術で、ZINE などの小ロット印刷は、多くが安価なこのデジタル印刷です。

印刷にもバリエーションがある!

オフセット印刷かデジタル印刷を選択する人が大半ですが、選択肢としてそれ以外の手法があるということを知っておくとよいそうです。印刷の手法を知ることで、その印刷物の完成形をイメージしやすくなります。最後のイメージを持つことは、執筆や編集・デザインの助けになってくれるはずです。

 

それだけで表現の幅がぐっと上がります。凸版印刷や孔版印刷を使わなくたって、知らないからやらないのと、知っていてやらないのとでは表現に雲泥の差が生まれるのです。

色はインキの組み合わせで作ります

印刷の色にも秘密があります。入稿されて、それはすぐに印刷できるわけではありません。まず、画像の色データをCMYKに置き換える必要があるのです。

 

CMYK、つまりシアン(藍)、マゼンダ(紅)、イエロー(黄)、ブラック(黒)の4つですね。CMYKが何の略か?ときかれて即答できる人は多くないかもしれませんが、「シアン」や「マゼンダ」という言葉を耳にしたことのある人は多いのではないでしょうか。

 

これによって、大抵の色はたった4つの版を重ねて印刷するだけで再現することができるのです。

再現できない色がある?

CMYKのメリットは、4色の組み合わせで簡単にさまざまなバリエーションの色を低コストで出せることです。安価なCMYKインキで4つの版を作る。こうすれば、原価を下げて工数を減らすことができるのです。

しかし、実は、このCMYKは万能ではありません。再現できない色が存在するのです。こうした色は「特色」(special color )と呼ばれていて、CMYKよりも複雑な行程を経て再現します。

費用はかかってしまいますが、そういう時こそチャンスです。簡単に作れないものだということは、それだけ人と違うということなのですから。どんな色であっても、細かい調節を重ねて、ときに紙質などとも相談しながら丁寧に印刷屋さんが出したい色を目指して再現してくれます。しっかりと相談すればきっと印刷屋さんは叶えてくれます。臆せずに表現したい色で彩りましょう。

紙もいろいろ!

もちろん紙質も選ぶことができます。

 

イメージに近い印刷物をそのまま印刷所に持ち寄って相談したり、印刷所の紙見本を見ながら決めていきます。

 

webでは表現できませんが、ツヤツヤの紙と柔らかい紙では読み手の受ける印象も変わってきますよね。自分の表現したいものに寄り添う紙を、予算の範囲でセレクトしましょう。

そうはいっても触ってみないとイメージがわきませんよね。実際に紙のプロダクトに触れてみるのが一番です。本棚を引っ掻き回したり、書店で触ってみたりするのがよいでしょう。ちなみに、修美社さんのPrinting Lab には、特異な紙でできた製品がずらっと並んでいますよ。

山下さんのオススメ:「紙名手配」

オンラインで紙をディグるなら 株式会社梅原洋紙店が運営する「紙名手配」というサイトがぴったりなのだとか。ほぼすべての紙の特徴が網羅的に記載されているサイトを山下さんが紹介してくれました。現場のプロのお墨付きです!

組み合わせて遊ぼう!

版の種類、紙の種類、紙のサイズ、インキの種類、加工の方法。仮にも(もしも仮にも!)それぞれ2パターンしかないにしても、それだけでも32通りの選択肢があります!

 

版の種類は上に述べたように4種類。紙のサイズは自由ですし、紙とインキの種類については無限と言い切ってしまっても過言ではないでしょう。それらの組み合わせから得られる選択肢の数は……?

 

そうなんです。印刷には文字通り無限の選択肢があるのです。

 

印刷は情報を実際の紙にする手段だなんて矮小化して考えるのはもったいない。クリエイティブの塊です。まったく知見のない状態から、印刷についても意識を向けるのは難しいかもしれませんが、是非とも頭の片隅に置いておいてください。

 

とにかくいったん自分で家で作ってみて、あとからデータを印刷所に持って行ってもよいのですから。

次は編集とデザインの授業

紙面の内容やビジュアル、そしてその「モノ」のイメージが固まってきたところで、この日の講義は終了です。

 

次回の講義は小学館で『this』や『Maybe!』の編集長を務める小林由佳さんと、paragramのグラフィックデザイナーの赤井佑輔さんを講師にお迎えします。編集とデザインを学んで、さらに作品の具体度を底上げしていきます!

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