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超絶技巧は必要ない!物件ファンの森岡友樹さんに聞く心を打つ文章を書くための思考のステップ 言志の学校 第2期レポート① ライティング編

2019.06.20

川合 裕之川合 裕之

フリーペーパーとZINE を作りたい人のための言志の学校の第2期が開講し、13名の生徒が会場のMTRL KYOTOへ集まりました。

 

わたしたちアンテナと、フリーペーパー専門店只本屋が共同主催する『言志の学校』は、講師陣の授業を参考にしながら、全4回の期間内に1冊の作品を自分で作り上げて流通させるまでがゴールです。作品制作をサポートすべく、ライティングやデザイン、印刷や流通といった紙の製作に関わるエキスパートを毎回ゲスト講師にお迎えします。

 

初日にお迎えしたのは、webサイト「物件ファン」のチーフファンを務めるほか、アート方面や地域活性などで多角的な活動をされている森岡友樹さんと、京都で「おもしろ印刷」を掲げる京都の印刷屋さん、修美社の3代目の山下昌毅さんのお二人です。

 

この記事では、物件ファンの森岡さんの講義の一部をお伝えいたします。表現には「好き」が必要。好きを言語化して突き詰めれば、さらなる高みから「好き」の景色を望めます。表現は生活をより豊かにしてくれるものなのですから。今回、森岡さんには表現の基礎となる「好き」を培う方法を中心に伺います。

 

物件ファンの優しくて丁寧な語り口とは裏腹に、「好き」のためには徹底的にシビアな姿勢を貫く森岡さんのお話です。

講師プロフィール

森岡友樹

香川県生まれ。大阪芸術大学在学中に村上隆氏に見出され現代美術作家として国内外での展覧会へ出展。アートイベントGEISAI立ち上げに参加。写真家としても受賞歴も。間取り図を楽しむ間取りストとしても活動。イベント「間取り図ナイト」で全国ツアー開催。ITベンチャー、広告代理店等での勤務を経た後、離島にてゲストハウスの立上げ、地域活性等も行う。物件ファンの立上げに参加し初代編集長に。他にもうどんを打ちながら国内+欧州行脚するなど。共著に「間取り図大好き!」。今後はうどん本の執筆予定とのこと。

「僕は文章が下手」、物件ファンの森岡さんの思考法とは?

「僕はライターという肩書を名乗ったことは人生で一度もなくて、むしろ文章は下手です。いまだに物件ファンの記事で読者から誤字を指摘されてしまうようなこともありますし」

 

照れくさそうにはにかみながら、弁解するところから森岡さんの講義ははじまりました。

 

「今の仕事は全部「好き」から始まっています。文章は上手ではないですが、それでも好きで書いた僕の文章を評価してくれる人がいてくれたんです」、そう森岡さんは語ります。いわずもがな物件ファンは不動産や間取りへの偏愛の塊だということが読んでいてありありと伝わりますし、好きが高じてうどん本の出版も予定しているのですから。

好きだから今の自分の仕事がある。そう振り返る森岡さんは、文章の技巧的な話ではなく、「好き」という気持ちが「表現」に繋がるというお話をしてくれました。今回はそんな森岡さんの好きを見つけて生み落とすまでのプロセスを教えてもらいます。

表現は、「好き」で人の心を震わせるもの

「そもそも、なんのためにフリーペーパーやZINE を作るんですか?」 講義が始まって早々に森岡さんの口から飛び出したのはこんな高次元の質問でした。つかの間の沈黙。参加者はすっかり虚をつかれてしまいます。

 

森岡さん曰く、それは表現するため。そして良い表現は、人の心を震わせるもの。だから、そのためには好きなことを書かないといけないんだとか。でも、好きなことをみつけるのは意外と難しいのかもしれないというところから講義が始まりました。

「好き」ってなんだろう?

たしかに、「好きなことを書いていいよ!」「なんなら製作費も出すよ!」と突然言われて何を作るかあなたは即答するのは難しいこと。 私たちの頭の中の「好き」という感情は、私たちが思っている以上に曖昧で具体性に欠けていることがしばしばです。

 

たとえば、地域を本当に活性化させたいのなら、その地域にナイキやシャープのような大きな企業を作ればその目的は達成されるはず。でもどうして自分たちで起業せずに、お店を作ろうとしているの?少し意地悪な問いですが、お金があれば解決できるはず。その答えは、きっと自分が満足できる地域にしたいからではないでしょうか。だから自分の好きなお店を作る。

自分は何が好き?どうして好き?どんな風に好き?じゃあ自分はどうしたい?と、手順を踏んで、自分と向き合って深く「ダイブ」することで自分の好きの正体を突き止めることができるのです。逆にダイブしないと自分の目的が曖昧になってしまいます。

意外な「好き」が、きっとある

森岡さんの「好き」といえばもちろん間取りや不動産ですが、自己紹介ではこんな場面も。意外な「好き」を見つけるメソッドのひとつは、自分の年表をつくってみることだったみたいです。

 司会:

これまでいろいろな活動経歴や好きなことがチャートにされて並んでいますが、表の中で「うどん」が大きな面積を占めているのはシュールですね。

森岡さん:

そうなんですよ。僕は香川県出身だから気付かなかったんですけれど、人よりも何倍もうどんが好きだったみたいで(笑)。当たり前すぎて気付かなかったんですけれど、最近ようやく気付いて公言するようにしています。

なるほど、身体に染みつくほど当たり前になっていることや、もはや習慣化してしまっていることこそ、自分の好きなのかもしれませんね。そしてそれはひょっとして、案外「自分だけの」好きかもしれないのです。

 

そうした物事こそが、アウトプットするべき題材であり、それが実現したときにこそ人の心を震わせる表現が生まれるのです。筆をとる前にまず「好き」を見つけることが、良い表現の第一歩なんですね。

 

ためしに自分年表を作ってみるのも面白いかもしれません。当たり前過ぎて見えていなかったものや、好きだと思っていたけれどさほど好きではなかったものが具体的に見えてきます。これまで勝手に自分にかけていたバイアスを解きほぐす良い機会です。いまはそれほどだけれど、確かにこれも好きだったよな、ということも掘り起こすことに意味があります。

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