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【SXSW2019】「ボーダーを越えていく」いまの時代のインディーミュージックのあり方

2019.06.13

長井 和裕長井 和裕

SXSWミュージック・フェスティバルの取材テーマに「いまの時代のインディーとは何か?」を与えられた。先に断っておくと、私は音楽の造詣が浅い。長年音楽イベントの運営を手伝っているものの、バンドはしてこなかったし、知識やルーツにも弱い。その視点なりで答えを見出してみよう。

 

そもそも、インディー音楽を最初に認知したのはいつだろうか?と思い出してみる。すると、BUMP OF CHICKENやGOING STEADYがグイグイ来ていた2002年が思い浮かんだ。BUMP OF CHICKENはメジャーデビューをしていたわけだけど、片田舎に暮らす自分にとっては、聞いたこともないバンドのCDが音楽番組のランキング上位に突然と現れたこと、最寄りのCDショップのレンタルコーナーにもまだ並んでいないことに興味を駆り立てられていた。知らなかった音楽を、大勢の人が支持しているのだ。

このときに、インディーとは、誰もが知っているわけではない(=局地的に知られている)音楽の定義付けが自身にされたように思う。誰もが知っているわけではないが、知る人ぞ知る音楽であり、誰もが知るには、大衆的な場が必要であった。

SXSWのミュージックフェスティバルでは、2000組を超えるアーティストが参加する “大衆の場”のようなものかもしれない。名の知れ渡ったアーティストやベテランアーティストも参加するが、そのほとんどはまだ聞いたことのないアーティストである。当日を迎えるまでに、レコードをディグるかのように公式のWebサイトやプレイリストをあさり目星をつけていく。また、事前に狙っておいた目当てを見る流れで、当日知り、目にしたアーティストも多数存在する。

 

今年のSXSWで特にお気に入りで紹介をしたい2トップはこちら。

FRITZ

オーストラリアのニューカッスルを拠点とするTilly Murphyのソロプロジェクト・バンド。オーストラリアの飲食物やアーティストのショウケースであるオーストラリアハウスで彼女のライブをみてドハマリし、会期中の3回のライブすべてに足を運んだ。今年の一押し枠。

浮遊感あるサウンドの「Biggest Fool In The World」が心地よい。

Ferris & Sylvester

イギリスを拠点とするIssy FerrisとArchie Sylvester 男女デュオ。SXSWのアプリでプッシュするメッセージをもらい見に行く。昨年の一押しとして紹介したJade Birdのライブでオープニングアクトを務めていたことをあとから知り、ツボにハマるわけだと納得をする。ふたりのやりとりやMCからは思わずふふっと笑顔になってしまう。例えるならばハンバートハンバートのライブの雰囲気に近いかもしれない。

 

2組とも日本を発つ前にはノーマーク。現地で知り、目にしたアーティストである。この感覚は、かつての「ランキング上位に突然と現れた知らない音楽」との出会いに近いものがあった。FRITZは別のお目当てのライブの流れの中で、Ferris & SylvesterはSXSWアプリでレーベルマネージャーからメッセージをもらって知ることができた。

 

さて、「いまの時代のインディーとは何か?」のテーマに戻ってみる。やはり、過去の自分が定義した「誰もが知っているわけではない」は、インディーの考え方としてあると言える。しかし、2002年はアンテナを巡らす手段がまだ乏しかった。インターネットはまだまだ発展途上、テレビやラジオがメディアの中心だった。届ける手段がなく、知る人ぞ知るで留まった音楽も多くあるのだろう。

 

現在では、SpotifyやYoutubeを使えば世界中の音楽と繋がることができる。SXSWに参加する多くのアーティストはインターネット上に楽曲を公開しているし、SNSを通じてメッセージやツアーの様子も伺える。昨年のSXSWを経てウォッチしているJade BirdのSNSからは、精力的にツアーを重ね、ついにメジャーデビューするに至ったことをリアルタイムに知ることができた。FRITZもSNSから新曲の配信が始まったこと、とある日のライブの様子が届いてくる。

 

アーティストは世界中の誰かを対象に音楽を届けることができ、リスナーは世界中の音楽の中から新しい出会いを掴むことができる。「誰もが知っているわけではない」が、「世界中に開かれている」のだ。これこそ「いまの時代のインディーのあり方」ではないだろうか。

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