COLUMN

アンテナ的!ベストムービー 2018

2019.01.01

川合 裕之川合 裕之

今年もさまざまな映画話題作が並ぶ粒ぞろいの1年でした。

 

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』では「大変なこと」になったり、『カメラを止めるな!』は話題になったものの蓋を開けてみれば興行収入は7位と、2位の『名探偵コナン ゼロの執行人』に3倍引き離されてしまっています。結局何が良くて何が面白かったの? そうした疑問を解消スべくマグナム本田、川端安里人、京都みなみ会館 吉田館長、そしてアンテナライターの川合が2018年のベストランキングをお伝えします。

京都みなみ会館 吉田由利香 館長のベストランキング

1.『凱里ブルース』

2.『レディ・バード』

3.『きみの鳥はうたえる』

4.『アンダー・ザ・シルバーレイク』

5.『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

 

コメント

「次回作も待ち遠しい!と思える映画を5つ選びました」

1. 『凱里ブルース』

1989年生まれの中国人映画監督ビー・ガンが、2015年に撮った長編処女作。今年、もっとも衝撃と刺激を与えてくれた作品です。シネ・ヌーヴォにて特別上映されていたので鑑賞。スクリーンの中では、電車、バイク、ミラーボール、時計などのモチーフが随所に映し出され、人や風景がグルグルと行ったり来たりを繰り返す。物語の時系列は霧の中で曖昧となって行き、まるで夢の中に沈み込んでいくかのような113分間でした。

 

朦朧とした意識の中で、主役の男と共に旅をしてきた私は、電車の窓越しに映し出されたラストシーンの現象に、訳も分からず涙を流しました。ビー・ガン監督の最新作『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』の公開が待ち遠しいです。

2. 『レディ・バード』

あのグレタ・ガーウィグの単独初監督作品ということで、見る前から「私絶対に好きだろうな」とは思っていたが、もう本当にドンピシャ。拗らせ系青春少女時代のアレコレがあるあるすぎて、もしこの作品に出会うのがもっと若い頃だったら、きっと恥ずかしさで頭を抱え込んでしまっていただろう。母娘の不器用な関係性に共感しすぎてしまい、最後は号泣。『君の名前で僕を呼んで』で、今年最高に眩しかったティモシー・シャラメが、今作では情けなく残念なイケメンを演じていた事も印象的。

 

大好きなシーンは、レディ・バードが18歳の誕生日に、ポルノ雑誌とタバコを買うところ。彼女の次回作『若草物語』では、レディ・バードを演じたシアーシャ・ローナンと、ティモシー・シャラメが再びグレタとタッグを組むとのことで超期待。

3. 『きみの鳥はうたえる』

三宅唱監督による本作は、函館を舞台にした男女3人の一夏の物語。まるで自分が4人目の仲間としてその場に居合わせているかのような、絶妙な距離感のカメラワークに、居心地の良さを感じました。今まで観た中で、一番最高のクラブシーンがそこにはあり、本当に一晩中遊んだかのような心地よい疲労感が私を包み込んでくれます。スクリーンの中では、特にこれでもかというほど、石橋静河の魅力が爆発していた。

 

そんな本作を監督した三宅唱の最新作は、山口情報芸術センターによる映画製作プロジェクト「YCAM Film Factory」の第4作目。山口県の中高生たちが出演する爽やかな青春映画との事です。

4. 『アンダー・ザ・シルバーレイク』

『アメリカン・スリープオーバー』『イット・フォローズ』のデヴィッド・ロバート・ミッチェルが、LAの〈シルバーレイク〉を舞台に、都市伝説やら美女やらに翻弄される男を描いた何ともジャンル分けし難い一作。

様々な映画へのオマージュがふんだんに散りばめられており、ニヤリとしてしまうシーンの連続。どんどん何を観せられているのかよく分からなくなってくるのだが、突如リスの死体が落っこちてくる冒頭のシーンから既に爆笑しており、とにかく楽しめました。物語の伏線回収が当たり前に行われるだろうと思うのは、観客の怠慢でしか無いのでしょう。

 

フクロウ女のビジュアルがドンピシャに好みで、最高でした。

5. 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

前作の『タンジェリン』を全編iPhoneで撮影した事により注目を集めたショーン・ベイカーが、今度は打って変わって35mmフィルムで撮り上げた1本。

 

彼の描く世界はいつもとてもカラフルですが、今回もフロリダの輝く太陽とファンシーな色合いの下で暮らすファンキーな母娘の姿を描いています。インスタ映えするこの街には、どうしようもない暗い現実が影を落としている。6歳の少女・ムーニーの底抜けの明るさだけが救いだったのだが……というお話。ラストシーンでカメラはiPhoneに切り替わり、少女たちは夢の国を駆けて行きます。この魔法のような瞬間が映し出された画面を、私は不安げに見守る事しかできなかったのです。

マグナム本田のベストランキング

1. 『アンダー・ザ・シルバーレイク』

2. 『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』

3. 『ザ・プレデター』

4. 『君の名前で僕を呼んで』

5. 『ブリグズビー・ベア』

 

コメント

「観賞後, 映画って本っっっ当にいいものですよね!と言わざるを得なかった作品です」

1. 『アンダー・ザ・シルバーレイク』

「オールタイムベストを3本挙げよ」と言われた場合、私は必ずキャロル・リード監督『第三の男』を挙げることにしています(「映画通ぶりやがって!」と思ったみなさん、安心してください。残りの2本は『スーパー!』と『死霊のはらわた2』です)。

 

そこから派生した作品も大好きで、「『第三の男』発『ロング・グッドバイ』(ロバート・アルトマン監督)経由シルバーレイク行き」とでも言うべき本作は嫌いなわけがありません。

 

この3作はラストで主人公が「勝ち誇ったように煙草を吸う」という共通点があるのですが、その勝ち誇り方が『第三の男』と『ロング・グッドバイ』には「試合に勝って勝負に負けた」感があるのに対し、本作は「試合にも勝負にも勝っちゃいない」という点に非常に現代的なものを感じました。そして引用される数々のポップカルチャーもその軽薄さを暴いているようで、その実「軽薄さこそがポップカルチャー最大の魅力である」という批評眼が貫かれており、感心も得心もしたのでした。それを象徴するような中盤の『オズの魔法使い』的な薄っぺらい書き割り丸出しの背景の中、主人公がソングライターの城へ向かうシーンが私の今年のベストシーンです。

2. 『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』

間違いなく2018年最狂、そして最凶。

 

赤くザラついた映像に乗るヨハン・ヨハンソンのスコアは劇場の椅子に磔にするが如く私の眼をスクリーンから放させてくれませんでした。そして昨今は半笑いで語られることの多いニコラス・ケイジ起死回生の演技も素晴らしく、悲劇の果てにブリーフ姿で酒をあおりながら咆哮するニコケイに人間の根源的な悲しみを感じ、「悲しみの果てに 何があるかなんて 俺は知らない」という歌に対し、「悲しみの果てにはトラのTシャツとブリーフとやたらビザールな斧があります!」と応えようと思いました。

3. 『ザ・プレデター』

雑な脚本、悪趣味ギャグ、あんまり消えないプレデターと欠点が数多くある本作ですが、それを補って余りある主人公達「ルーニーズ」(イカれた奴ら, という意味)のブロマンス的魅力に終始ニヤニヤ笑いが止まりませんでした。ジェームズ・ガンがディズニーから干された今,『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.3』の監督を任せられるのはシェ-ン・ブラックしかいない!と思わせてくれる、今年最高の関係性萌え作品でした。

4. 『君の名前で僕を呼んで』

家族であれ恋人であれ、人が人を愛することの美しさのみを抽出し、最後に一滴の悲哀を加えた作品であり、マティーニに加える僅か3mlのベルモットがマティーニをスウィートにもドライにもするが如く、「人生においても一滴の悲哀があるか、またどんな種類の悲哀かでその人の味が変わるよのう……」などと思いつつ天を仰ぎました。原作小説を映像化する上での脚色面も素晴らしく、それについては同アンテナ内の解説記事をお読みくださると幸いです。

 

『君の名前で僕を呼んで』 アンチ・バイブル ~21世紀のルネサンス~

 

因みに私はマティーニを飲んだことありません。好きな酒はウーロンハイです。

5. 『ブリグズビー・ベア』

ルーク・スカイウォーカーとして、高い技術を持つ声優として、幾重もの意味のあるマーク・ハミルのキャスティングに唸らずにはいられませんでした。

 

「創作すること」の歓びに満ちた作品であり、一応は、いや「一応」などつけずともミュージシャンである私は全肯定されているような多幸感に浸れました。

シネマジプシー川端安里人のベストランキング

1. 『ファントム・スレッド』

2. 『恐怖の報酬 オリジナル完全版』

3. 『ジャネット、ジャンヌ・ダルクの幼年期』

4. 『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

5. 『アンダー・ザ・シルバーレイク』

 

コメント

「映画を1万本以上見てきた自分が今年映画館でたまげた5作です」

1. 『ファントム・スレッド』

今年最も芳醇で上品で美しい映画。いかにもポール・トーマス・アンダーソン監督らしい完璧な撮影にテンポ感にただただ酔いしれるだけで「あぁ、良い映画を見ているなぁ」と陶酔に浸っていると時節車移動のシーンや幽霊の登場などでギョッとさせられる。それに加えて名優ダニエル・デイ=ルイスの素晴らしい幕引きとなる引退作であること、RADIOHEADのジョニー・グリーンウッドの幽玄な音楽ともはや完璧としか言いようがないですね。

2. 『恐怖の報酬 オリジナル完全版』

まぁ、1977年の映画なんですけどオリジナルバージョンが劇場でかかるのは今年が初めてということで堂々のランクイン。もはや海外からソフトを取り寄せるしか見る方法がないのかと思われていた幻の傑作がこうして日本で劇場公開されるのはうれしい限り。とにかく「本当に人死んでんじゃないの?」と思わせるようなオープニングから激辛激渋なラストまでもはやアクション映画というジャンルに殺されてしまった活劇を堪能できる1作。今にも暴雨の中今にも崩れ落ちそうな吊橋をトラックがよろよろと進むというCGに満ち溢れた今では想像のできないようなDIY精神溢れるクライマックスにはこの映画を今映画館で観れるという感動に涙が出ました。

3. 『ジャネット、ジャンヌ・ダルクの幼年期』

間違いなく今年一番とんがっていた映画。キワモノとしてはこれがダントツの1位で、個人的にはフランスの隠れた天才にして大変態ブリュノ・デュモンついに突き抜けたなという感じ。タイトルの通りジャネットという少女がジャンヌ・ダルクになるまでの物語をミュージカルで描くという映画なんですが、ヘビメタというかツーバスがドコドコと鳴り響く中少女ジャネットが歌い踊り暴れる、それがまるで宗教画のように極めて抑制され移動すらほぼしない画面の中で展開されるというなんとも奇妙な一作。癖になります、やられました。

4. 『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

スピルバーグと言えばもちろん『レディ・プレイヤー1』も良かったは良かったけど、それでもこの映画のガチ感というかスピルバーグのこの映画に対する心意気の前では霞みますね。あんな大統領が登場しちゃうような今だからこそ見るべき映画とも言えますけれど、横暴な権力に知性と文章で勝負に挑むこの物語を評価せずに一体何を評価したら良いんだという感じ。もちろんスピルバーグなので撮影やらユーモアやらなんやらは最高水準です。 

5. 『アンダー・ザ・シルバーレイク』

あの『イット・フォローズ』から首を長くして待った甲斐がありましたデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の新作、この人やはり只者ではないですね。ヒッチコックやニコラス・レイから産み落とされたリンチやデ・パルマ経由の21世紀型LAノワールはそのジャンルが持つ“世界の得体しれなさ”という魅力を十二分に堪能できるだけでなく、パルプ・コミックや8ビットのゲームといういかにもな世代的遊び心を忘れることなくミックスして見事なまでに現代の観客を煙に巻くことに成功している大傑作だと思います。

アンテナライター・川合のベストランキング

1.『ネクスト・ロボ』

2.『素敵なダイナマイトスキャンダル』

3.  『INCREDIBLES2』

4.『きみの鳥はうたえる』

5.  『軽い男じゃないのよ』

1.『ネクスト・ロボ』

劇場公開ではなくサブスク限定なのですが、Netflixで製作されてそのまま独占配信されたものです。心のある戦闘ロボと子供の交流――。一見するとベイマックスの焼き増しみたいですが、微妙~~にテーマが異なっていて味が違います。またアクションの描写も同作に劣らず、日本をリスペクトしてくれた制作陣の愛が画面いっぱいに広がって居ます。

 

ちょっぴりネタバレなのですが、「ジャックニコルソンのあの映画」みたいなあのラストは正直僕には意外としか言いようのない着地。まだまだ配信中なので是非見てください。あ、油断していると普通に泣きます。

2.『素敵なダイナマイトスキャンダル』

『きみの鳥はうたえる』もランキングにいれさせてもらったのですが、とにかく今年は柄本佑さんですね。「あ、この俳優さんこんなに格好良いんだ」って思わされた1作。

 

やっぱり時期が時期なのでとにかく平成平成って語り口になりがちだけど、昭和のエネルギーも忘れがたいよねと思わせる一作でした。菊地成孔の担当した音楽も素敵。

3.  『INCREDIBLES2』

続いてはピクサー作品。邦題は『インクレディブル・ファミリー』です。

 

さらっと流れる悪役の主張に思わず納得させられてしまったのがポイントです。「テレビやネットで偽物ばっかり見やがってよ、それでいいのか?」というのが今回のヒールの言い草。特に僕はインターネットを通じて仕事をしている立場の人間なので、思う所があったり。だとしてもファシズム的な支配はダメだと思うし、う~ん……。でも結局僕らがいま見せられてるのって「映画」だしさ……。

 

同じピクサーなら『リメンバー・ミー』も悪くなかったし、むしろ流してしまった涙の量ならこっちの方が多いかも。ただピクサーアニメの技術でしか実現しない時間的・空間的なアクションが本当にヤバい!と思いこちらを選出。イラスティガール(オカン)がバイク一丁で列車追いかけるシーケンスとか興奮しっぱなしで。誰にでも分かるけど他よりもスゴイを体現するスタッフの裏側にも感動したというか。

 

あ、バイクアクションといえば韓国実写映画の『悪女』も痺れましたね。

4.『きみの鳥はうたえる』

動作のひとつひとつまで見逃せない、言葉の節々まで聞き逃せない。そんな作品でした。物凄い密度で情緒に関する情報が画面に詰め込まれていて、さらにそれに個人的な感想や誰しもが持つ経験みたいなものが上乗せされるはず。なのでもう表面張力ギリギリどころか溢れてドバドバのえげつない情報量の作品ですよね。

 

余談ですがこの映画の柄本佑に影響されてこの夏、無地の白いTシャツを5枚くらい買ってそればっか着てました。

5. 『軽い男じゃないのよ』

これもNetflix映画です。実は他紙でNetflixのオリジナル映画を紹介する連載させてもらってるので、僕は普段から意識的にオリジナルには目を通していますが、やはりこれは圧倒的でした。Netflix映画の中では突出してるし、他の劇場公開作にも負けてません。

 

今年ヒットした『カメラを止めるな!』なんかもメタフィクションで視点が変わりますけど、『軽い男じゃないのよ』もまたそんな「視点コロッと」系。この映画のすごいところは「あれ?この自分の認識って間違ってる?」と思わせるところ。鑑賞者の視点を180度変えることができた点ですね。日本の作家なら村田沙耶香の手法にも(同じじゃないけど)通じるところがあるかも。

 

映画製作は団体戦。身体もそうだけどやっぱり資本が資本。今後もNetflixから目が離せません。というか離したくても目が離れません……。

来年は……?!

さて、来年はどんな映画を見ることができるのでしょうか。話題作が控えるなか、まだ知らないけど素晴らしい映画もたくさんあるはず。2019年も映画は止められませんね。

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