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京響プレミアム 岸田繁「交響曲第二番」初演

2018.11.27

乾 和代乾 和代

いよいよ今週末に公演が迫った、岸田繁交響曲第二番の世界初演。2016年12月に初演を迎えた岸田繁交響曲第一番(通称シゲイチ)と同様に、今回も京都で初お披露目となる。岸田は自身のロックバンドくるりとしても、今年の9月に12枚目のアルバムをリリースしたばかり。まさか、第一番の初演から、約2年という短いタームで、新曲を聴くことができるとはと驚かされた。しかし、2017年には、NHKのニュース番組用に「宿はなし(オーケストラバージョン)」、NHK-FMくるり電波のテーマ曲「2017年の行進曲」を、そして、サントリー1万人の第九にゲストバンドとして出演するだけでなく第35回開催記念曲として「ほんの小さな出来事のためのファンファーレ」を書下ろすなど、バンド活動と並行しながら作曲家としてもハイペースで新曲も世に送り出していることを考えると、うなずける。

 

さて、この世界初演だが、バンドのライヴで例えると「新曲やります。」と同義語だ。観客はどんな音楽が演奏されるのか全く知らないということになる。実際のライヴであれば、何度か聴くうちに、曲の全容をつかまえて楽しむことができるが、この第二番の公演は、12月2日の京都、12月4日の名古屋、来年3月30日に初演のCD発売記念公演として開催される東京の三回のみ。真っ白なままで知らないことに飛び込み、感じる面白さもあるが、少し予備知識があることで、違う面白さに気づくことができたりもする。公演がさし迫り、いろいろな情報が出揃った今、第二番を心ゆくまで楽しむためのポイントを5つご紹介させていただきたい。

岸田繁交響曲第二番を楽しむための5つのポイント

①イラストから音楽をイメージしてみる

第一番と同様に、第二番のチラシのイラストレーションを担当したのは、池田早秋。ともに動物と楽器をモチーフにしているが、ダイナミックに描かれたザトウクジラが多種多様な動物や楽器たちを引き連れている第一番に対し、第二番はカモシカの二本の角が、樹冠のように伸び、鳥や魚、ティンパニーやクラリネットなどの楽器が編み込まれている。

 

交響曲は基本的に4楽章から成るものが王道だが、その流れを大きく飛び出し5楽章から成る第一番は、イラストにも描かれている木管楽器とホルンが印象的だった。今回も、どこまでこのイラストが楽曲とリンクしているかはわからないが、このイラストから、第二番をイメージしてみるのも面白いだろう。

②もう、演奏されている曲を聴いてみる

初演でパンフレットを開くまで、全貌が謎につつまれていた第一番と違い、今回の第二番は演奏曲目のプログラムが事前に発表されている。第一番初演時の第一部では、くるりの楽曲である“ワンダーフォーゲル、“ばらの花”、“街”、“虹”、“ブレーメン”、“ARMY”、“宿はなし”と、馴染みあるメロディーで再構築された“Quruliの主題による狂詩曲”が演奏された。

 

今回の第二番の初演第一部では、岸田が新たに書き下ろした新作2曲と、第二番にもおそらく影響を与えたであろうバルトーク、ショスタコーヴィチ、ヴィラ=ロボスという作曲家3名の曲がそれぞれ演奏される。予習という意味では、音源を聴くことができるこの3曲を聴くことで、演奏曲目に馴染みができるだけでなく、もしかしたら第二番とのつながりに当日気づくことができるかもしれない。

岸田繁「交響曲第二番」初演 当日プログラム

 

《第一部》

Ⅰ. 岸田繁:弦楽五重奏のための古風な舞曲『あなたとの旅』(管弦楽版)

Ⅱ. バルトーク:ルーマニアンフォークダンス

Ⅲ. ショスタコーヴィチ(バーチャイ編):室内交響曲Op.83a 第1楽章

Ⅳ. ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第4番 第2曲

Ⅴ. 岸田繁:オーケストラのための序曲「心の中のウィーン」

 

《第二部》

岸田繁:交響曲第二番

第一楽章 アレグロ・コン・モート  ロ短調

第二楽章 アダージェット・パストラーレ  ニ長調

第三楽章 ジーク・アラ・バロッカ  ニ長調

第四楽章 アレグロ・モデラート  イ短調

バルトーク「ルーマニアンフォークダンス」

③プログラムから妄想してみる

今回はさらに、第二番の楽章などの構成も発表されている。注目したいのが、各楽章につけられた音楽記号だ。まず、第一楽章の“アレグロ・コン・モート”。アレグロは“陽気で快活に”という意味を持ちテンポはBPM132程度、それに、コン・モートという“動きをつけて、速く”という意味がつくので、テンポ感的にはくるりの “ワンダーフォーゲル”くらいのイメージ。そして、ロ短調(Bマイナー)は、チャイコフスキーの白鳥の湖の“情景”と同じ調。切なく、メランコリックな雰囲気ではじまるのかもしれない。

 

第二楽章は、ロ短調から一転、ニ長調つまりDメジャーに調が変わる。クラッシックの有名曲でいうと“よろこびの歌”でよく知られているベートーヴェン“交響曲第9番 第4楽章”と同じだ。明るく、祝祭的な音楽になる予感がある調である。速度記号の“アダージェット”はBPM66程度、くるりの楽曲でいうと“ジュビリー”が近いだろう。そして、“パストラーレ”は“牧歌風の、田園風の”という意味を持つので、ベートーヴェン“交響曲第6番”『田園』のように牧歌的で、“アダージェット”楽曲として知られるマーラー“交響曲第5番 4楽章”のような穏やかな楽章になりそうなイメージである。

 

第三楽章に示されているのは、速度記号でなく舞曲の名前。“ジーク”は多分フランス語の“gigue”と同じだと思うのだが、16世紀、バロック時代に流行った8分の6拍子や8分の12拍子の速いテンポの舞曲のことだ。バッハの“管弦楽組曲第3番 第5楽章”が同じ形式の舞曲である。きっと、軽やかにはねるような三連符が印象的な、華やかで心躍る楽章になるのではなかろうか。

 

そして、第四楽章“アレグロ・モデラート”は、BPMでいうと108くらい。くるりの楽曲でいうと“ハイウェイ”くらいだろうか。調子もイ短調(Aマイナー)に移行し、陰りを感じる音階になる。ここまで、いろいろと推察はしてみたが、あくまでも各楽章の入り口の情報である。転調だけでなく速度もころころ変わるくるりの楽曲のように、それぞれの楽章がどのように転がっていくかはわからないが、いろいろと妄想を膨らませながら、演奏会当日を迎えるのもいいのではないだろうか。

④作曲者の意図を読み解いてみる

今回は、事前に「岸田繁 交響曲第二番を聴くまえに」と題した、岸田繁のインタビューが掲載されている。どのようにこの第二番が作られたのか、楽曲の中身についても触れられているので、もっと、具体的なイメージを持って聴きたい方には、ぜひとも一読していただきたい内容だ。

 

合わせて当日演奏されるである曲の一部分も岸田が作曲している様子と合わせて「交響曲第二番」初演ティザーとして公開されている。今、公開されている音がどの楽章のどの部分かは知らされていない。もちろん、本番は前作と同様に広上淳一による指揮で、京都市交響楽団によって演奏されるので、また違って聴こえるだろう。映画の予告編をみるような気分で、少し第二番の音に触れてみるのもいいだろう。そうすることで、作曲者の意図が見えてくるかもしれない。

「交響曲第二番」初演 ティザー

⑤これまでの作品を聴いてみる

第一番初演のアンコールでは、“管弦楽のためのシチリア風舞曲”と本編でも演奏された“Quruliの主題による狂詩曲 Ⅳ 京都音楽博覧会のためのカヴァティーナ”が演奏された。新曲のオンパレードとなっている今回のアンコールはどの曲なのか、前回のように岸田繁と京都市交響楽団とのコラボレーションを聴くことができるのか、思いを馳せながらこれまでの岸田繁の楽曲を聴いてみるのもいいだろう。

岸田繁「交響曲第一番」ダイジェスト

さてさて、ここまでいろいろと話をしてきたが、やはり初演の一番の楽しみは、作曲した本人と同じタイミングで、新曲がこの世に誕生する瞬間に立ち会えることだろう。第一番のときも、舞台上ではあったが、音楽が人の耳に初めて触れるという体験を同じくさせてもらった。今回のコンサートの冒頭では、岸田と広上による曲目紹介も行われるという。早くもCD化されることがアナウンスされているが、録音されるのは名古屋公演。そういう意味でも、京都の世界初演はプレミアムなものになるだろう。見逃せないこの公演に、ぜひ、皆さん足を運んでいただきたい。

INFORMATION

日時

2018年12月2日(日)

open 15:00 / start 16:00

場所

京都コンサートホール

料金

[全席指定] ¥6,500円

※未就学児入場不可

チケット

チケットぴあ Tel:0570-02-9999 Pコード:125-072

ローソンチケット Tel:0570-084-005 Lコード:52968

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楽天チケット

 

※お問い合わせ YUMEBANCHI(平日 11:00~19:00)06-6341-3525

京都公演 ホールプレイガイドオンラインチケット 24時間購入可

※要事前登録(無料)

詳しくは京都コンサートホールWebサイトより

お問い合わせ

京都コンサートホール

075-711-3231

(10:00~17:00 第1・3月曜日休館)

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