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【吉田紗柚季の見たボロフェスタ2018 / Day2】The Chorizo Vibes / CASIOトルコ温泉 / KONCOS / TENDOUJI / The Songbards / butaji

2018.11.07

吉田 紗柚季吉田 紗柚季

京大西部講堂にルーツを持ち、おそらく全国有数の強い個性を放つ手作り文化祭フェス・ボロフェスタ。今年はKBSホールに場を移してからちょうど10年目だという。いろいろな出し物や主催陣のキャラクターなどたくさんの語り口で愛されてきたが、そもそも1つの建物に4つのステージが凝縮されているという規模感だって独特ではないか。四条河原町ばりにごった返す人々。何度も開け閉めするホールの重い扉。フードエリアの隅で立って食べるご飯。そんな大自然のフェスとは真反対の不便さもまた、ボロフェスタの大切な醍醐味だ。

 

筆者はフェスやサーキットで常に歩き回りながら過ごしているので、ステージ間の距離が近いという単純なありがたさも来るたび感じている。開会式や出し物の楽しさはもちろん、なるたけたくさんライヴを見たい──そんなシンプルな欲求で歩き回るだけでも十分その“濃さ”を楽しむことができる、それがボロフェスタのラインナップなのだ。今回も以下で取り上げたほか1アーティストでも多く見ようと歩きまくった結果、2日間の参戦で完全に足をやられてしまった。

The Chorizo Vibes

ザ・チョリソー・バイヴス、略してチョリバイ。大阪を拠点に活動する4人組メロコアバンドだが、インド音階やラテンのリズムを取り入れたミクスチャーな楽曲スタイルが特徴だ。“百鬼夜行”での神門勇(Gt. / Sax. / Cho.)の猛々しいパフォーマンス、続く“ヴェーダ”で「(日本を)インドにしてしまえ!!」と“日本×インド”の先達にあやかる野口僚平(Gt. / Vo.)の煽りににわかに会場が沸く。

 

会議室の面影を残す街の底STAGEにおよそ似つかわしくない轟音。おそらく地上にまで響いているのだろう、演奏中にもどんどん人がやってくる。「出ていいのか!?」と野口が言った通りのアウェー環境だからこそ、彼らの一筋縄ではいかない、でもあくまで底抜けに明るい曲たちが痛快だ。メロコアというフォーマットをより広い層に向けて拡張しつつ、最後にバニラ求人の広告ソングを熱演して盛り上げてしまう茶目っ気。より裾野の広いフェスで有り続けるボロフェスタの精神からすれば、そんな彼らはむしろうってつけのアクトにも思えた。

 

Photo:岡安いつ美

CASIOトルコ温泉

街の底が転換に入ったので、つかの間ながら地上でPolarisを拝見。戻ってくるとすっかり満員になっているではないか。シーケンサーで四つ打ちや民謡を流して歌いまくるお祭り女ユニット・CASIOトルコ温泉の出番だ。客電が落ちるより早くゆるりと鳴らしはじめたのは、1952年のヒット演歌“ヤットン節”のカヴァー。のんびりしたトラックとエコーを効かせた3人のコブシ回しに、思わずこちらまで歌いたくなってくる。さらに“びわ湖わんわん王国”や“メタルディスコ”で頭を振り乱しながらシャウトするMTG、それを見て大笑いするPKNYといった調子で大騒ぎが続くが、一転MCになるとほぼ平熱の雑談に。MTGの愛猫オサムの話、この日のちやじの飲酒量(ウイスキー一本)、MTGの別名義アルバムの宣伝などなど……観客のまばらな笑い声も妙に心地よい、居酒屋のようなくつろいだ空気が出来上がっていた。

 

最後に「あと2分だけ下さい!」と言って流し始めたのは“にんげんっていいな”。叫び散らされるデタラメな替え歌に一番の歓声と笑い声が沸き起こる。思う存分に浮かれ倒した、まさに祭りなステージだった。

 

Photo:Yohei Yamamoto

KONCOS

直前のクイーンSTAGE・ミツメの川辺素から「次は何度も対バンしているKONCOSです」という紹介を受けて登場したKONCOS。昨年共にツアーを回った盟友からゼロ距離でエールが送られる、そのステージ配置と出演順がなんともニクい。フロアの方も開始前から彼らを待ち望むムードに満ちていて、もちろん、古川太一(Key. / Ba. / Vo.)がデザインしたボロフェスタ公式Tシャツを着ている観客もたくさんいる。当サイトの土龍氏との対談を読んでくれた方もいるだろうか。

 

「下北沢からやってきましたKONCOSです」という古川の言葉とともに始まった1曲目は“月待つ島まで”。ラングレン・マナーのジャジーなコードが前のめりにビートを刻み、歓声とともに会場の温度が上がるのを感じた。古川も鍵盤とステージ最前を行き交いながら観客のテンションに応え、早くも熱意の応酬が始まっている。ソリッドなファンク“Fantastic”ではモッシュが起きていたし、古川が「京都の音楽好きのみんなと、京都の文化にリスペクトを込めて!」と語って演りはじめた“Morning Glow”、この「パーティは終わらない!」のフレーズをオープニングムービーで耳にした者はみな、否応なしに胸を熱くしたことだろう。続く“The Starry Night”で、満を持して背後のカーテンが開帳。手拍子とともに華やかなステンドグラスが姿を現し、古川はステージを飛び降りてフロアを歩きながらラップを繰り出した。

 

最終ナンバーは新曲のラブソング“I Like It”。ラブソングといっても恋慕の歌ではなく、身の回りのあらゆるものたちへの愛の歌なのだという。ふたたびフロアに降りて一直線に歩いていく古川に合わせて、前方にいた人々がさっと道を作っていく。まるで音楽がほんとうに言語であるかのような彼らと観客の阿吽の呼吸っぷりは、東京と京都をつなぎ合わせる架け橋として、KONCOSが京都シーンに欠かせない存在であることをありありと物語っていた。

 

Photo:岡安いつ美

TENDOUJI

急いでロビーに出てみれば、地下に向かって長〜い行列が伸びている。入場規制だ。なんとか入れたは良いものの、酸素が薄い。身動きが取れない。ちょうどセッティングを終えた当人=TENDOUJIの誰かの「めちゃくちゃあつい」というつぶやきが聞こえた。

 

“Getup”、“D.T.A”、そしてタイトなグルーヴが際立つ“Kids in the dark”でフロアをひとしきり温めたあと、モリタナオヒコ(Gt. / Vo.)の「どういう場所でやるかは聞いてきたので、アゲアゲなセトリにしてます!」との宣言ににわかに歓声が沸く。リリースを間近に控えたシングル曲“Peace Bomb”のサビでは、廊下に続く人たちまで勢いよく手を上げているのが(ギュウギュウなので辛うじて)見えた。

 

「会場に着いた時点で来年もまた出たいって思ってました!」と熱意あふれるMCのあと“GROUPEEEEE”をかまして〆。観客それぞれが自由な間合いで楽しめるパーティ・ロック・チューンが彼らの魅力だが、居るだけで汗が吹き出すこの環境下では嫌でもアドレナリンが出てくる。周りの歓声も次第に大きくなっていくのがわかるくらい、熱狂のアクトだった。

 

Photo:ヤマモト タイスケ

The Songbards

転換のあいだtoeを見てからまた街の底に戻ってきた。神戸のライヴハウス・シーンで飛ぶ鳥を落とす勢いの4人組・The Songbardsの出番が始まるからだ。やはりいつもの彼らのライヴと比べれば、温度も湿度もかなり高いこの場所。“ハングオーバー”のドラミングもいつにないくらい力強く響く。とはいえ、松原有志(Gt. / Vo.)と上野 皓平(Gt. / Vo.)のボーカル2人はマイペース。MCで「神戸の人います?」と問いかけたところ手を上げたのが3人(筆者含む)で、「京都は関西なのでホームのつもりでいたんですけど、実はそうでもないのかもしれない」とのつぶやきに会場のあたたかな笑いが返ってくる。

 

リリースされて間もない2ndミニアルバムから披露した“Inner Lights”は流麗なメロディラインとドラマチックな展開をもった名曲で、街の底をきっちりと彼らのムードに染め抜く強度を持っていた。気持ちBPMを抑えた”春の香りに包まれて”とアンセム”太陽の憂鬱”ではすっかり独壇場。どんな場でも誠実さを絶やさない彼ららしいしたたかなステージだった。

 

Photo:Yohei Yamamoto

butaji

とっぷり夜も更けたジョーカーSTAGE。butajiこと藤原幹の弾き語りが始まったのは、壁越しにtofubeats「水星」のあのイントロが聴こえてくる中でだった。遠くから夏祭りの喧騒を聞くかの如きうら寂しさに、低く柔らかく、かすかな枯れ味を帯びたバリトン・ヴォイスがしっとりと寄り添ってくれる。まさにこの時間帯のこの場でなければありえない情緒。直前にチューナーを壊してしまったとのことで、アコースティック・ギターのピッチと歌がぶつかる様もまた、この場限りのアクトの生命力となっていたように思う。

 

7月リリースの新作『告白』の収録曲を中心に、“抱きしめて”や“あかね空の彼方”といったバラードのほか、ソリッドなR&Bナンバー“奇跡”もギターのビートに置き換えて披露したこの日の彼。歌の抑揚でホールから出てきた人々を片っ端からつかまえ、オーディエンスがみるみる増えていく。未発表だというあまりにもストレートなラブソング“中央線”も、ロビー全体が息を飲むハイライトであった。言葉数の少ない彼に代わって最後に土龍が登場し、音源の入手手段(手売り)等案内しつつ締めくくる。フェスのひとつの醍醐味が、ボロフェスタならではのステージ割でいっそう際立った特別な一幕だった。

 

Photo:Yohei Yamamoto

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