INTERVIEW

VOGA第15回本公演『直観と情熱』記念 VOGA代表・近藤和見インタビュー

2018.11.04

岡安 いつ美岡安 いつ美

1997年、維新派に在籍していた近藤和見と草壁カゲロヲを中心に創設された舞台芸術集団・VOGA。昨年創立20周年を迎えたVOGAはこれまでライブハウスやカフェ、神社などの野外空間を演劇空間に作り上げ、他に追随を許さない舞台を作り続けてきました。そんなVOGAが11月3日より大阪市立芸術創造館にて新作パフォーマンス『直感と情熱』を創り上げる。

 

今回アンテナでVOGAをはじめて取り上げるにあたり、VOGAのこれまでと今、そして最新公演についてまで幅広くお話を伺ってきました。

わかるようで、わからない。でもわかる。それがVOGA

ーー:

昨年創立20周年を迎えたVOGAですが、近藤さんが在籍されていた維新派の手法をベースにした演劇をずっと続けていますよね。まずなんでこの手法を選んだのか、そしてこの手法を続けている意味ってなんなのでしょう?

近藤和見(以下、近藤):

多くの人がやっていることに元々興味がないんです。うちはこういう風にやります、っていうのがいいと思っていて。いくら言葉で伝えても、最終的には見ないとわからない・伝わらないようなものを作りたいんです。あとは鑑賞者としては作っていなくて、作り手として自分が面白い、自分が見たいと思うものを作っているだけなんです。自分が見たことないとか、わけわからんし評価しにくいだろなあというものが最終的にはできますね。ただ、わけわからんけど、わかるってものを作ることは目指していて。

ーー:

まさに『わけわからんけど、わかる。すごい!』と昨年見た公演で思いました。

近藤:

最終的にはお客さんが見るものなんで、わからないだけではダメで。なんとなくわかる、っていう風に感じられるように工夫はしています。英語の音楽はしっかり理解できるわけではないけど、なんか許容できるじゃないですが。なんとなくいい、と言える。ただそれが全く別の言語になると理解ができないことに拒否反応すら出ることがあると思います。結局どちらもわかってはいないんですがね。演出家としてはその塩梅が大切だと思って、作品作りはしています。

ーー:

その塩梅って、なんでしょう。

近藤:

『飛躍』と『抽象化』が肝ですね。抽象化することで広く人に関わる話になって、伝わるようになる。VOGAの近藤和見から40代男性、そこから中年男性と段階を経て抽象化していくと、幅が広がるんです。ちっぽけな一個人でも、どれだけ普遍的な存在であるかが面白いんです。そこを極端に抽象化する意味での飛躍。抽象化したものは虚構ではなく現実なので、伝わりやすくなるんですよね。そこが僕なりのリアリティの追求の仕方なんですよね。今回の舞台では宇宙や物質の話から入るので、極端ですけどね。

ーー:

なるほど。この20年で変わったことって何かありますか?

近藤:

もちろん始めた頃とは、全然違うものになってるとは思いますよ。……うーんでも変わってない気もするし、その質問は難しいなあ。

ーー:

やってることはずっと変わっていないって意識なんですかね。

近藤:

そうですね。初めた頃は、今より感情的に作っていたかもしれない。昔の作品の方が感情がないように見えるって言われていましたが(笑)今の方が感情が見えるけど、今の方が感情を入れて作ってはいないんです。

ーー:

感情がないということですか?

近藤:

いや、感情を元にはしていないという感じですかね。嬉しいとか、悲しいとかそういう感情をコアに据えなくなったというか。

ーー:

人から言われて気づく変化ももちろんあるかと思いますが、近藤さん自身は今のVOGAをどういう状態であると思っていますか?

近藤:

今は真面目かな(笑)。初めのころはチンピラの集まりみたいなもんだったしね。役者って人も多くなかったしなあ。顔が面白いからスカウトしたり、この子が変なことしたら面白いだろうなって思ってやったりとかもあったんですよ。今は技術面でも進化してきている感覚はあります。

VOGAの作品の一貫したテーマは、『私は何者か』ということ

ーー:

この前、最新公演の稽古場を見せていただいてありがとうございました。VOGAの舞台がどのように作られるか垣間見れて貴重な体験をしました。

近藤:

稽古場って見ていてどうでした?面白くなかったでしょう(笑)

ーー:

すごく不思議でした。事前に台本を見せてもらっていて、VOGAの台本が楽譜であることは認識していたんです。

VOGAの台本
ーー:

台本の冒頭にはステートメントがきちんと記載されていて、各シーンの冒頭にはそのシーンのBPMが記載されていて、4拍子の箱の中にドットとセリフが書かれていて。その台本と、最終のパフォーマンスの形はどんなものかイメージはついていたので、「なるほど、これが台本ね」と思って眺めていたんです。稽古場ではっとしたのは、台本には振り付けや演出については書かれていないわけで……。

近藤:

台本だけで完結しないのは当たり前ですね。他の劇団とかだったら、演出家も振付家も別でいることが多いので、台本を元にそういった人たちが演出や振りを付けていくんです。

ーー:

近藤さんは脚本、演出、振付の全てをご自身で担当されていますよね。最終全てが組み合わさった絵が常に近藤さんには見えていて、その状態で台本を書かれているのかと思ったら途方もない作業だなと思いました。

近藤:

すべて最後まで決まっているはずなのに、台本書くのが遅いというね(笑)むしろ決まっているから遅いのかもしれない。

ーー:

全部が決まっているから、遅いんですか?

近藤:

音響、照明、役者のやること以外は同時に考えているので、台本の段階でも細かく調整をするんです。1シーンごとの絵は見えているけど、複数人でやる作業を1人でやってるので時間がかかります。

ーー:

ぱっと見ただけでは内容を理解するのにも時間がかかりそうですし、何より難しそうに見えます。

近藤:

仮に何かすごい物質を作る方法や手順が公開されていたとしても、誰もやらないことってあるじゃないですか。公開された時点で誰でもできることって実は世の中に多いと思うんですけど、VOGAのパフォーマンスもその一種だとは思っています。誰でもできるけど、ハードルは高い部類だとは思っていますが。

ーー:

ありがとうございます。それでは今回の公演について伺いたいのですが、何か掲げているテーマって何かありますか?

近藤:

今回の公演に限った話ではなく、VOGAの作品の一貫したテーマは、『私は何者か』ということなんです。今回も「お前は誰だ」「私は誰だ」と問うシーンもあります。登場人物それぞれも自分が何者かを理解していないんです。だから、劇中で「私は誰だ」と問う。普段は役柄の造形と意味を深めるために「私は誰だ」と問うてみたりしています。虚構である劇中の登場人物たちがお互いに「お前は誰だ」と問い合うことで虚構がひっくり返ることをイメージしています。劇中では虚構たちも悩んでいるんです。

ーー:

なるほど。

近藤:

毎回似たような言い回しを使ってますが、ストーリーや設定が変わることで見え方が変わるんです。エピソードとしても必要になるシーンもあります。同じ立場の役者同士がそれぞれに向かって「お前は誰だ」と問うシーンもあります。鏡に向かって問答するような。

ーー:

自分の本質を見つめるため、でしょうか。

近藤:

見つめるというかは、その問答を通して自分の本質になっていくんです。なぜが止まるまで、なぜを続ける行為を舞台上で繰り広げます。

過去作品の一部を抜粋した動画。VOGAの表現の変遷がわかりやすくまとまっているので、VOGA作品を見たことがない方はぜひ一度見ていただきたい。

VOGAの舞台は音楽にも耳を傾けてほしい

ーー:

稽古では役者一人一人の特性を見て、決めていた振りを役者に合わせて変えていくのを見せてもらって少し驚愕しました。台本を書いて、ここまで細かく振りをつけて、近藤さんの頭の中はどうなっているのかと……。

近藤:

でしょう。通しで完成したものを見るときは味わい深いものがあります。

ーー:

VOGAの振りって、独特ですよね。やっぱりそれに役者さんが慣れるのには時間がかかるのでしょうか。

近藤:

能力の部分ももちろんあるけど、価値観の部分も大きいかな。美意識の問題というか。人選するときにはわからないけどね。セリフがうまいだけでもダメだし、身体能力が高いだけでもダメ。物事に対して丁寧であるのが一番かな。

ーー:

近藤さんの思う丁寧とは?

近藤:

テーブルのここからここまでを拭いておいて、って頼んだ時に隅から隅までをきちんと拭けるかというかんじかな。その人が思う丁寧が、例えば自分の手の届く範囲を丁寧に拭くことだとしたら、それだとちょっと丁寧さが足りないと思う。

ーー:

私的には、脚本や演出に対する理解力がVOGAの表現には欠かせないかなと思っていました。台本も、表現も一筋縄ではいかないと思っていたので……

近藤:

理解力は必要ですよね。理解していないと丁寧にはできないと思いますし。

ーー:

なるほど。VOGAの舞台に立つ役者へは求められるレベルも高度なんだなと改めて思いました。次に伺いたいのが、VOGAの音楽について。近藤さんはご自身で音楽も作られていますが、制作のどの段階で音楽は作られるのでしょうか。

近藤:

普段は台本を書きながら並行して音楽も作っていきます。今回はまだそこにまで手が回っていない状況で、おそらく10月になってから1日2曲ずつくらい上がっていくと思います。

ーー:

1日2曲?!すごいです……。制作の流れとしては、台本を作っていきながら、振りを考え、稽古で指導しながら、曲を作っていくと。ものすごい作業量ですね……。いろんな役を担っていますが、それってどれも誰かに教わったわけではないんですよね?

近藤:

そうそう、音楽は特に自己流。中学くらいからギターをやってて、その流れで宅録にはハマった感じ。音楽以外は明確に教わったわけではないけど、維新派にいたときに現場で見てきたものを活かしています。

ーー:

普段インスピレーションで取り入れているものはありますか?

近藤:

VOGA Bar ホワイエで流れているBGMのプレイリストにアンビエントの曲を何百曲と入れていてそれを日々聞いています。その一要素を取り入れたりもしてますね。

ーー:

音楽を誰かに頼む、ということにはならなかったのですか?

近藤:

自分で作るのが一番早いと思って、頼んでないですね。高い精度で作品を理解してもらうのに割く時間もお金もないっていうのも大きいですね。頼むとしてもメンバーになってない人だと無理だと思うし。あと、自分で曲作るのむっちゃ早いんですよ。

ーー:

曲作りでは悩まないのでしょうか?音楽を専門でやられているわけではないので、一番苦労するのではないかと思っているのですが。

近藤:

全然。ただ楽しいだけなんだよね。

ーー:

それじゃあ余計に他の人に頼む必要がない作業、ということなんですね。

近藤:

もし音楽を作るメンバーを入れるとしたら外国の人がいいかなとは思っています。音楽に色がない人、というか。

ーー:

なるほど。VOGAにとっての音楽はあくまで表現の一要素、として捉えているのでしょうか。

近藤:

そういう側面ももちろんあるけど、音楽が好きな人が聞いたら「お、気が利いてるやん」って思えるポイントも散りばめているので、ぜひ音楽にも耳を傾けてもらえると嬉しいです。

表現の手応えを探しながら進む、次の10年

ーー:

20周年を迎えて、これからの10年で挑戦したいことはありますか?

近藤:

ごろっと劇的に何かを変化させるようなことが性格的にできないので、毎公演ごとにそれまでと違う要素を少しずつ入れていって試しながら表現の手応えのようなものを探しています。現場を使って検証している感じですね。

ーー:

実験ではなく、検証なんですね。

近藤:

こうやったら盛り上がるとか、お客さんはこういうのが好きっていうセオリーは残念ながらあるんですよね。だからあえてそこをハズしたものを入れていれていますね。作家としての挑戦でもあります。こういう挑戦を続けないと続かないっていうのもありますね。「〇〇しかない劇団」と言われたらそこで終わりなので、表現への挑戦は続けないといけないんです。

ーー:

確証がない表現が、常に頭に浮かび続けてる状態なんですか?

近藤:

そうですね。それを人に話すと面白がってくれるのもあり、アイディアはたくさん持っていますよ。ハズしになるようなアイディアをやり続けている劇団ももちろんあるんですけどね。そればっかりでも長続きしないので、バランスが大切だとは思っています。

ーー:

続けること、アイディアが湧き続けること、って本当に才能だなと最近よく思います。

近藤:

自分はそれ以外の選択肢がない、っていうのが大きいんですがね。

ーー:

選択肢がないということは、辞めようと思ったこともないのでしょうか。

近藤:

一度もないです。常に第一優先で続けてきていて、不都合があれば周りをずっと変えてきていたから。

ーー:

VOGAを続けるために。

近藤:

そうですね。自分の置かれた環境も、表現の方法論も自分で選んできたから、すごく最適化されているところはありますね。実際脚本だけ書いていても、音楽だけ作るだけでも満足できないんです。全部合わさって自分の作品として異様な世界を作り出せているんだと思います。

ーー:

これだけのことをお一人でやっていて、物足りないんですね。

近藤:

自己主張が強いんですよね。多分楽器一つで参加するだけだったら、寂しいと感じるはず(笑)

ーー:

20年やってきて、自分の思う形を作ってきている状況にありながら。

近藤:

まだまだやることがあるんですよね。時間が足りない。自分でどんどんむずかしくしていっているのもあるけどね。振り付けも今の10分の1くらいしかつけてなかったし。『Vector』っていう作品まではほとんど振りもつけてなかったんですよ。それ以前の作品を見てもらえばわかるけど、振り付けもほとんどなくて、お芝居って感じがすると思います。

ーー:

まだまだやりたいことがたくさんあって、それを一つずつ形にしているんですね。次にやりたいこととかありますか?

近藤:

宝塚で言うような“専科”を作りたいな。踊りだけの人とか、何かに特化した人を集めたいですね。今は役者が全部を担っているけど、限界もあると思っていて。今は役者に一挙手一投足まで教えていて、なかなか稽古が進まないから大変で。ダンサーさんを入れてやった『Digitalis』のときにはシーンの流れとコアになる部分の振りをつけて、あとはダンサーさんに振りを考えてもらったんだけど、上手に振りをつけてくれて面白いなと思ったのがあります。ただ役者はセリフを言うので、もちろん役者も必要なんです。専科の人がいたら表現のクオリティも上げられるので。

ーー:

最後の質問なのですが、次の10年で近藤さんはどんなことを実現させたいと考えていますか?

近藤:

海外公演をやりたいです。試す、って意味でね。数年前からは外国のとある街で公演することをイメージして作品作りはしています。今回の公演もそこに向かう手順の一つです。ぜひ実際に足を運んで観ていただければと思います。

VOGA第15回本公演『直観と情熱』

日程

2018年11月3日(土)~7日(水)

公演日時

11月
3日(土) 12:00/17:00
4日(日) 12:00/17:00
5日(月) 14:00/19:00
6日(火) 19:00
7日(水) 19:00
受付開始は開演45分前 開場は開演30分前

料金

3,800円(前売/当日共)

全席自由・日時指定

チケット

①VOGA Webshopにて
 >【前売】WEBチケット購入 https://voga.base.ec/items/12552599
②VOGA foyerで購入(各日20:00~25:00)
京都市中京区上大阪町518-21 大久ビル4F
Tel:075-285-2652
③メールでご予約
  E-mail:info@lowotarvoga.net
①お名前 ②お電話番号 ③日時 ④枚数 
をお書きの上、お送りください。
④電話予約:Tel:050-3556-0462(Office VOGA)

会場

大阪市立芸術創造館
〒535-0003 大阪市旭区中宮 1-11-14
TEL:06-6955-1066

アクセス

Osaka Metro 谷町線「千林大宮」駅下車 4番出口より南西へ徒歩10分
京阪電車「森小路」駅下車 西出口より西へ徒歩10分

注意事項

※開場後、前売券をお持ちのお客様からご入場頂きます。
※未就学児のご入場はご遠慮頂いております。
※公演中止時以外のチケット払い戻しはお受け致しません。
※半券をお持ちの方は、当日券を「半券割:半額(1900円)」でご鑑賞頂けます。満席の場合はご容赦下さい。

キャスト

草壁 カゲロヲ / うめいまほ / 長谷川 りか / 佐藤 敦子(以上VOGA)
岩本 苑子(少年王者舘) / 菅 一馬 / 吉﨑 加奈(舞夢プロ) / 久保 健太 / 無糖 新十郎 / 尾形 柚香(かまとと小町) / 羽室 ミユ(かまとと小町) / 笠原 湧 / 岡崎 叶大 / 大石 智也

スタッフ

演出・脚本・音楽・振付=近藤 和見
舞台監督=河村 都(CQ)
美術=今道 鮎美
映像=吉光 清隆(PLAYSPACE)
照明=大沢 安彦
音響=高田 文尋(ソルサウンドサービス)
音響オペレート=丹治晴奈(エスエフシー)
機材=ソルサウンドサービス
衣裳=山口 禮子、樹下 由紀
表紙絵=Misato Iwamura
情報宣伝=齋藤 秀雄/森宗 香土巳(ISSO inc.)
舞台写真=井上 嘉和(井上写真事務所)
制作=水波 流/永井 ゆきこ/齋藤 秀雄/片山 知音
制作協力=ルーク伊藤/岡野 万里子/渡辺 綾子/前田 紀美枝/MAGASINN KYOTO

HP

https://lowotarvoga.net/

GOODS

トップへ