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ナノボロフェスタ 2018 ライブレポート

2018.09.06

吉田 紗柚季吉田 紗柚季

ようやく暑さもやわらぐかと思いきや、まだまだ強烈な日差しと熱風が幅を利かせていた8月末の京都。それでも汗と笑顔にまみれた音楽文化祭の足音が今年も近づいています。そんなわけでこちらは8月25, 26日に開催された、ボロフェスタのプレイベント・ナノボロフェスタのライブレポートです。

おなじみ二条nano、喫茶マドラグ、昨年からのLive&Bar 夜想に加え、今年はさらにタベルトマル二条城 Okatteも参加。閉店してしまったラクボウズはイベントスペース兼居酒屋の□□□ん家(ダレカンチ)に生まれ変わり、ナノボロ史上最多5会場での開催となりました。そして変わったのは会場構成だけではなく、ラインナップを見るだけでも今年は特に関西勢の多さが目につきます。特に2日目・26日のnano出演者はオール関西出身。旧友の結婚式とカブって泣く泣く26日のみ参加となった筆者のピックアップ・レポートと、2日分たっぷりの写真たちをお届けします。

もはやホームのin the blue shirt、万感のセトリで挑むHomecomings…徒然ピックアップ・レポ

朝に地元を発ち、荷物を片付け二条にたどり着いたころにはすっかり開演時間オーバー……気を取り直して最初に向かったのは喫茶マドラグ。遠目に見ても満員だとわかるガラス張りのドアから、男女二人組デュオ、花柄ランタンの大名曲“まなつのまじっく”が漏れ聞こえてきます。すでに宴もたけなわだったようで、続く9月1日発売のカセットの表題曲“POOL, BLUE, POOL”と“DOOR”の2曲で終幕となってしまいました。短い間ではありましたが、アルバム『まともな愛のま、まほうの愛のま。』発売から約1年、たくさんの人に囲まれたぷき(うたと小物)のよく通る歌声からは、この頃の二人の充実ぶりがありありと感じられました。

続いてnanoに移動、ちょうど始まったのは初の全国流通盤『ショーケース』を出したばかりのRibet towns。6月に拝見したアバンギルドでのレコ発以降、ツアーを経てよりしなやかに逞しくなったバンドのグルーヴが印象的でした。十六分連符のフレーズが目まぐるしく駆ける“ベッドタウン”や“メトロ”、5拍子ながらも力強くオーディエンスのステップを誘う“アメジスト”など、9人分の音が一つのうねりになったそのスピード感は、彼らの曲たちが紛れもないダンスミュージックであることを示しているかのようでした。

御池通を下って夜想のドアを開けると、開演前のはずなのにマイクを通した話し声が。フライング気味に雑談を始めていたアリムラことin the blue shirtは、今年のナノボロ唯一、そして歴代の中でも数少ない関西ビートシーンからの刺客です。近年様々なクライアントワークもこなしている彼を一目見ようと集まった人で、フロアは移動もままならないほどパンパンでした。屈託のないMCを合間に挟んだそのトラックの、特に切り刻まれたボーカルサンプルを支えるコードワークの流麗さは、ロックバンド勢との隔たりを超えたポップソングとしての魅力を感じさせます。アウェイとは思えないほどの笑顔とともにマシンの前を跳ね回りながらプレイするその姿につられ、観客たちのダンスや歓声もどんどん大きくなっていくさまが痛快でした。

 

日の傾きつつある17時、喫茶マドラグではじまったのは毎年恒例日本インディミュージックガイド。飯田仁一郎・岡村詩野・ゆーきゃんの三名が、今年もそれぞれ持ち寄ったインディーミュージシャンのMVを見ながらわいわい話し合います。特に目立っていたのが、ゆーきゃんが紹介した富山のベテランアーティスト大谷氏と石川浩司(exたま)のユニット・ホルモン鉄道。“オシャレな太陽”のMVで半裸でバカンスを決め込む二人の姿に観客が大いに沸きました。岡村詩野が本日休演のメンバー経由で仕入れたという京都のラッパー・Astral SwaggyのドラッギーなMVとダーティなラップもまた、関西音楽シーンにおける新しい潮流を感じさせる白眉といえたでしょう。

nanoステージで2日間を締めくくる大トリはHomecomings。「今や京都を代表するバンドと言ってもいい」という店主モグラの口上とともに、満員の観客にあたたかく迎えられて登場しました。1曲目は映画「リズと青い鳥」主題歌でもある最新曲“Songbirds”。最初のMCでは畳野彩加(Vo,Gt)と福富優樹(Gt)が大トリとしてステージに立てる喜びをしみじみと語り、続く「この日のためのセットリストを考えてきたので」という言葉で観客が一気に沸きます。そして“HURTS”、“PAPER TOWN”、そして“I WANT YOU BACK”と、2014年から2015年にかけての初期の曲を立て続けに披露。「ここまで激しい曲ばかりやること最近なかったので」(福富)と言いつつも、確かな年輪の感じられるバンドサウンドと畳野のボーカルの力強さは、かえって新鮮さを感じさせるほどでした。アンコールで披露されたのは、こちらもあまりお目にかかれない“平賀さち枝とホームカミングス”名義の名曲“白い光の朝に”。京都のバンドの中でも高い出演率の彼らにとって、ホームといっても過言ではないナノボロフェスタ。アルバム発売を控えた今、あたたかな観客、会場、スタッフとともに原点に立ち返る記念すべき場がそこにありました。

もはや“ナノ”な“ボロフェスタ”ではない

今年のラインナップでは関西勢以外にも、20代の若手アーティスト達の躍進が特に目立っていました。25日の本日休演、ギリシャラブ、Easycome、26日のベランダ、in the blue shirtはいずれも20代半ばで、一昨年あたりからめきめきと頭角を表してきた顔ぶれです。同時にゆ〜すほすてる、突然少年、ARSKNといったさらに若い世代にも例年以上にスポットが当たり、実際に現地で見かけたお客さんの世代もより若くなっているのを感じました。さらに特筆すべきは、私が拝見した限りどのアクトでも一定以上の客入りがみられたこと。特に前述のin the blue shirtと、都合で少ししか見られなかったメシアと人人、そして大トリHomecomingsは圧巻のギュウギュウぶりでした。ただこれは、今年の例に漏れずとても暑かったこの日、例年見かける会場周辺で喋っているお客さんたちの姿がなかったこととも関係しているのかもしれません。しかしいずれにせよ、今年のナノボロはこれまで以上に“プレイベント”の枠を大きく飛び越えたものとなっていました。若手のフックアップを力強く引き受けるそのスタンスこそが、独立した一つのサーキットフェスとしてのナノボロの魅力だと感じられたのです。

 

本祭ボロフェスタは10月26日(金)、27日(土)、28日(日)の3日間にわたって開催。Homecomings、Moccobond、賑やかしを努めたアイアムアイなどナノボロ出演勢を含めた圧巻の顔ぶれが揃いつつあります。この汗と笑いの手作り音楽文化祭を、今年も皆様お見逃しなく!

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