INTERVIEW

私たちがアンテナをやる理由。【ライター・川合編】

2018.07.13

宮ノ原 幸佑宮ノ原 幸佑

アンテナメンバーがなぜ「アンテナ」を始めたかを掘り下げるインタビュー第四弾。今回は主に映画についてのコラムを書き、TAKE OUT!!などのイベント企画も行う、ライターの川合裕之にインタビューしました。大学卒業を機に、若くしてライターという仕事を選んだ川合。アンテナへの思い、客観的に書くことへのこだわりなど、ライターとしての今の考えを伺いました。

僕がアンテナに居る意味、アンテナが僕に要る意味

ーー:

ではまず、アンテナに入った経緯と今のアンテナでの主な活動を教えてください。

川合:

2017年の5月頃に入りました。その頃はまだ大学生で、就活とライター応募と同時進行で行なっていて、そんな時にたまたまアンテナをみつけて応募しましたね。今は映画についてのコラムを書いたり、イベントの企画を行なったりしています。

ーー:

では就職活動もライターに近いような出版社などを目指されていたんですか。

川合:

そうですね。編集者や映像分野を目指していましたが、ことごとく縁がなくて(笑)。それならもうライターでいこうと思い、今はライターをしています。

ーー:

なぜそこでライターになろうと思われたんですか。

川合:

最初はフィクションなどを書いていて、いわゆるライターというものにはあまり興味はありませんでした。でも理屈っぽく生きてきたから、文章くらい簡単に書いてお小遣い稼ぎできないかなと思ったんです。自分が得意なことの中でもライティングは一番まともなスキルなんじゃないかなと、当時は大まじめに思ってました。今考えると無謀ですけどね(笑)

ーー:

ライターをやっていて楽しいことや辛いことはありますか。

川合:

「届いた時」が楽しいというか嬉しいですね。全く知らない人にコメントもらったり、「あ、あの記事の人?」みたいなリアクションもらえるとびっくりしますね。

辛いことはたくさんあります!たくさんありすぎて言えない!でもこれは辞めるまで絶えないんだろうな。でも辛いことがあったとしても、書くのは楽しいから好きです。たとえ辛かったとしても、僕には書くスキルしか無いと思っているので辛いくらいじゃ辞められませんしね。

ーー:

ライターとしての課題を教えてください。

川合:

まだ読者が見えてないってのが課題ですかね。半径10メートル以上向こうの人の顔すらわからないような状態なので。

ウェブという媒体で書くと、不特定多数の人に発信することになりますよね。それに対して、難しいことを書けば、特定の人だけが興味を持つだけになってしまいます。まだ自分の読者は誰なのか、誰に向けて文章を書いているのかをわかっていないです。

ーー:

すでに幾つかの媒体でライターをやられていますが、アンテナでライターをやる意味をどこに感じていますか。

川合:

僕はまだ入って1年くらいですけど、1年だけでも数え切れないほど沢山のことを教えてもらいました。「読者を想定する」「時に割り切る」「どうやっていろんな人と付き合っていくの」とか、「まず決めることを決める」みたいなモノの考え方とか。ライターという職業に限らずどこでも通用するようなスキルを育ててくれているなと。

まだまだ僕は発展途上ですけれど、もらった分は返さないとなと思ってます。わけてもらった武器を使ってアンテナに奉公したいなと。僕も新しい武器振り回すの楽しいですし。これが僕がアンテナに居る意味、アンテナが僕に要る意味です。

客観性で勝負してやる

ーー:

では次に川合さんのコラムのメインでもある映画についてお伺いします。映画は元からお好きだったんですか。

川合:

元からすごく映画が好きだったわけではないんです。見始めたきっかけは、ただ大学に入って暇になったからで。ただ、大学の授業の中で、映画の作家性や背景を指摘する面白さを知って映画について考えることにはまりましたね。

ーー:

「物語の面白さを文章で伝える」ということは読書感想文のようなものですかね。

川合:

いや、今の僕は読書感想文は悪だと思っています。本を読んで「こう思いました」ってどうでもいいんですよ。そこには客観性が全くないんですよね。読書感想文は自分の体験と物語に共感性をいかに見出して書けるかっていう、一種のゲームに思えます。文学の教育上よくないと思います。(笑)

ーー:

では川合さんは自分がどう思ったというよりも「この映画はこう言っているんじゃないか」というような客観的な視点を伝えようとしているんですか?

川合:

「どう思った」ということは僕も書きますが、客観的なポーズはとってほしいです。でも「どう思った」って書いている人は自分のことを客観的だと思っているんですよね。

ーー:

なぜそこまで客観性を大事にされるのですか。

川合:

シンプルに共感ベースしか価値尺度がないのは嫌ですよね。例えば『スリービルボード』を観て、主人公に共感できるところがあるかと言ったら、たぶんほとんどないんですよ。共感だけだと楽しめる部分が少ない。だから映画を楽しむためには、客観性が必要だと思っています。

僕は大学の文学部なんかでずっと主観を排除する訓練を受けてきたので、客観ベースの方がどうしても書きやすくて。意外にそういうライターって周りに多くないので、それならいっそ流れに身を任せて客観性で勝負しようと思いました。

映画を観て紐解く、そして伝わるところに伝える

ーー:

ではそういった「客観的な視点」での映画の面白さを読者に伝えたいと思う理由はなんなのでしょうか。

川合:

まずひとつは「こんな視点もあるよ」という問いかけですよね。みんなが客観的な視点を持っている方がハッピーじゃないですか。

ーー:

みんなが客観的な視点を持つことでハッピーになるんですね。

川合:

いやみんなが持ってしまうと僕の仕事がなくなっちゃいますね。(笑)でもどこかで客観的な視点の面白さが伝わるといいなと思っています。映画について書くって、「観て・考えて・書く」というように三回美味しいんですよ。だから書くっていうのもあります。読者からの反応が欲しいとか自分の感覚を共有したいとかは全く無いですね。自分の一番読みたいものを書けるのは自分しかいないというか、書くことで自分の考えていることを整理できるという良さもあります。自分のために書いているという感覚は強いですね。なので、伝わる人に伝わればいいと思っています。

ーー:

それは映画批評をしたいということには繋がりませんか。

川合:

そこまでの経験値があるとは思っていません。もちろん批評的な考え方は好きです。ただ作品の中で完結させて考えたいです。歴史的背景や知っていて当然の情報は必要ですが、映画に映る情報が全てだと思っていて。センター試験の国語の小説で登場人物の気持ちは?って問題があるじゃないですか。あれでも解答を筆者が否定すればそれは物語の中の情報では無くなりますよね。

ーー:

それでは目指されるところは作者の意思や主張を紐解くということでしょうか。

川合:

いやそこまでは遡れないと思っています。監督にインタビューするのも野暮なんですよ。その時間を作品を観る時間にあてて、作品から何かを読み取ろうとするべきなんです。例えばもし『ダイハード』の監督がこの映画のテーマは「愛」だと言ったとしても、理解できる人は多くないんじゃないですか?だから作家のバックグラウンドと作品は必ずしも一致しないと思っています。1800円払って映画を観て、さらに他の情報を調べないといけないなんてフェアじゃないんです。2時間なら2時間で、その時間内に映画は伝えるべきだと思っています。

ーー:

川合さんの映画コラムは、『ちはやふる』などのエンタメ作品についても好意的に述べられることが多いですよね。

川合:

第一に面白いものについてだけ書くようにしています。僕はエンタメ作品でも、裏に社会的背景などが見え隠れするとテンションが上がるんです。ディズニー作品もそうですよね。『ズートピア』や『ファインディング ニモ』にも人種や障害の問題を背景にしています。そういったものには惹かれますね。

ーー:

川合さんのコラムには、必ずユーモアを入れられているように思いました。

川合:

そうですね。読者の間口を広めるという意味でも、ユーモアを入れて面白くした方がいいかなあと。

 

ーー:

特に書く際に気をつけていることはありますか。

川合:

書く前にひとつの視点を決めています。他の記事を見て調べながら、誰も言っていない視点で書くようにしています。例えば、『アベンジャーズ インフィニティーウォー』では「ハルク」に注目して書いてみました。本作の幾つかのコラムを読みましたが、「ハルク」だけに注目して書いている人はいなかったので。

ーー:

参考にしている雑誌やライターはいますか。

 

川合:

ユリイカとかは好きですね。特集が映画のときは、しっかり作品を紐解いていますよね。でもこれってウェブ向きじゃないんですよ。しっかり背景や構成を書き込まないと、その紐解きはできないんです。パッと見ることを求められているウェブでそれをやるのは難しいんですよ。僕もユリイカとかで書けるようになれたらいいなぁ。(笑)

ーー:

目指しているライター像はありますか。

川合:

マイナーだけど、知ってることがその人のステータスになるような文筆家になりたいですね。できれば、昔のインディーバンドみたいな。サッカー部でもラグビー部でもない高校生が、クラスで騒いでるやつに対して「いやお前、川合裕之知らんやろ」って心の中で反抗できるような存在に。

 

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