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【SXSW2018】日本のミュージシャンの世界への接近と、各国のショーケース

2018.03.21

堤 大樹堤 大樹

SXSW2018の所感

昨年に引き続き2018年も無事にSXSWを取材することができた。

 

改めて少しSXSWのことを紹介させてもらうと、アメリカはテキサス州、オースティンで3月に一週間かけて行われる街をあげての巨大なショーケースだ。日本ではITの祭典として紹介されることが多いが、その実、スタートは音楽のイベントとしてスタートしており、現在では音楽・映画・インタラクティブに、コメディ・ゲームと幅広いジャンルを取り扱っている。この期間はあらゆる場所やお店でオフィシャル、アンオフィシャル問わずイベントが行われ、世界中から人が集まることになる。

 

重要なのはあくまでインディーのショーケースとしての側面が強いこと。

 

どのジャンルでも売出し前の”これから”のものが出展され、ミュージックにおいては今キている若手バンドが多数出演し、その年の世界のフェスの行方を占うものになっている。昨年度で言えばフジロックに出演したThe Lemon Twigsの名をあげればわかりやすいだろうか。コーチェラ・フェスティバルや、グラストンベリー・フェスティバルなどの世界中のフェスを騒がした彼らは、2017年度のミュージック部門でアワードを取っている。

The Lemon Twigs

アンテナでは昨年度からこのSXSWのミュージックを取材している。世界の音楽市場の動向や、日本のインディーミュージシャンが世界にどのように受け入れられるかを見ておきたい……というかっちょいいことは建前で、日本ではなかなか見れないアーティストがたくさん出演するし、ただ純粋に音楽と酒にまみれて一週間を過ごしたいってのが本音ではある。そんなわけで今年もSXSWが始まる3/9から終了の3/17にかけオースティンへ滞在してきた。

 

その中で感じたのは、昨年以上に日本のバンドが世界のマーケットに接近してきているということだ。

日本のアーティストが国外へ拠点を移していくケースが今後も増加しそう

今更なにを言ってんだって感じだが、今の時代は誰しもがYoutubeやSoundCloudなどで、どこにいても様々な国のアーティストの作品に触れることができるようになった。これは改めて考えると本当にすごいことで、ほぼノーコストで色々な国の人に聴いてもらえるし、リアクションも得られるのでアーティストからしてもその恩恵は非常に大きい。こうなってくると自国外のマーケットを求めて、国外への進出を目指すのは自然の流れのように感じるが、日本は他国に比べるとその流れが来るのが遅かったように思う。最近ようやくその流れが日本にも来たように感じた。

 

日本バンドの国外への進出というと、近年で言えばthe fin.の成功が記憶に新しい。彼らは2015年と2017年にSXSWに出演、当初より国外を意識したサウンドメイクが印象的なバンドだったが、評価を十分に得た上でイギリスへ拠点を移している。

 

その流れは日本でも今後のスタンダードになるはずだ。その証拠に今年SXSWに出演しているバンドを見渡すと、DYGL・yahyel・TENDOJIと海外のインディーシーンから強く影響を受けているミュージシャンが名を連ねている。彼ら自身も今年SXSWへ出演したことで、ある種の自信、手応えを感じたはずだ。刺激も十分に感じ国外への進出へ意識が高まったに違いない。

yahyel
TENDOJI

もうひとつ今年ポイントをあげるとすれば、男性主体のバンドの出演が増えたことだ。

 

というのも、SXSWで受けてきた日本のミュージシャンは少年ナイフに始まりガールズ・バンドや、ビジュアル系、インスト、ハードコアが多く、いわゆるバンド形態の男性がメインボーカルを取るバンドは少なかった。そのような中で、今年は上記3バンドに加えドミコも出演。近年では最多の出演ではないだろうか?この流れが今年だけで終わってしまうのか、来年度以降も続くのは気になるところ。個人的には世界的に活躍する男性主体のバンドを見てみたいと思っているので、この流れに多くのバンドが続くことを願っている。

※余談だが、地元の人気レコード店Waterloo Recordsで名前の札があったのはenvyが唯一である。

インタラクティブの拡大も追い風である

日本企業がインタラクティブで存在感を増しているというのは、アーティストに取ってもチャンスだろう。ただまだまだ日本の場合インタラクティブとミュージックの連携はさほど取れておらず、少しもったいないように感じる。今年はPanasonicのワンダーラボ大阪がオースティンの地元のバンド、Peelander-Zのイエローとタッグを組み、ライブペイントやTシャツを作成していたが、それくらいしか見受けられなかった。

 

参考にしたいのはドイツのショーケース。同一の会場でお昼にピッチ、夜はライブという形態を取っていて、昼も夜も人気だった。お互いに違うマーケットを持っているものの、一緒になって自分たちのショーケースをお互いに盛り上げる姿は純粋に楽しそうだし、SXSWならではの光景に思える。

 

日本のショーケースでももし連携が取れるのであればさらにおもしろくなりそうだ。インタラクティブでもミュージックにも力を入れているSONYあたりにも期待をしたい。

Panasonicワンダーラボ大阪のブース

日本以外の国のショーケースはどうだったのか?

日本以外の国もそれぞれが国や地方をあげてショーケースを用意している。イギリス、カナダ、ドイツ、スペイン、イタリア、アフリカ、韓国など、今年はそんな世界各国のショーケースを見て回った。

 

その中で集客に困っていなかったのは、イギリスとドイツのショーケースくらいだったように思う。いくつか要因はあるだろうが主な理由としては、音楽の質がよかったことはもちろんだが、どちらも英語で歌うアーティストがメインだったことが大きいように感じた。逆に自国語で歌うアーティストが多かった国のショーケースやアーティスト(ヨーロッパ・南米)は、どこへ出演をしても、集客には苦戦をしている。

 

「本当に良い音楽をしていれば言語なんて関係ないよ」という意見があるのも理解しているし、必ずしも英語でなければ受けないというわけではないのはもちろんだ。しかし世界のマーケットを視野に入れるのであれば、この言語の壁は思っていた以上に大きいのかもしれない。

Superorganism(イギリス)

実際に人気のショーケース(音楽メディア・企業)に出演していたのは、ほぼ英語で歌うことができるアーティストのみだ。今後日本以外にも活動の場を求める場合は、アーティストはそういったことも考慮していく必要がある。

SXSWへの出演、大切なのはその後

今年日本から出演して最も熱かったアーティストは、SXSWに二度目の出演となるCHAIだろう。昨年度の段階でもそれなりの手応えは感じていたはずだが、今年は大きな飛躍の年となったはずだ。その人気は素晴らしく、3/17(土)のホテルベガスへの出演時には日本人のお客さんがほとんど見られなかったにも関わらず、大歓声で迎えられ、ライブでは会場全員の拳を突き上げさせていた。SXSWでの手応えに加え、アメリカでのCDもリリースし、海外エージェントへのアピールは十分だったように感じる。

CHAI

「SXSWは目標にする場所じゃなくて、通過点。何度も出演をする場所ではない」

 

地元の人にこんな言葉を聞いたことがある。そう、あくまでSXSWは見本市。若手がプロモーターや、レーベルへのアピールする場所なのだ。大切なのはその後の動きである。昨年度出演したおとぼけビ〜バ〜は今年コーチェラへの出演を決め、この一年でSXSWから1ステップ以上ステージをあげることができた。彼女たちにとってもSXSWが通過点であったことは間違いない。これこそがショーケースとしての正しいSXSWの姿であり、主催者の望みだろう。今年出演したいくつかのアーティストも、二度とこのステージに戻ってくることはないはずだ。

 

今年その気概を持って出演したバンドがどれくらいいたのだろうか?少々疑問に残る。今年出演したバンドの活動、来年のSXSWの出演者に引き続き注目していたい。

アンテナ取材チームが見たアーティストのプレイリスト

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