あなたわたし抱いたあとよめのめし
おとぼけビ〜バ〜

2018.03.20

山口 将司山口 将司

飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃を続ける京都発4人組ガールズバンドおとぼけビ〜バ〜、配信限定でリリースされた目下の最新作。

 

「よめのめしオンザ三角コーナー」

 

という、情景を喚起しまくるパンチラインをあっこりんりん(Vo)がシャウトして始まるこの曲は、溜まりに溜まったルサンチマンをドスとPOPとセンスで塗り固めて豪速球で叩きつけて来る、今のおとぼけビ〜バ〜が持つ武器を存分に活かしきったキラーチューンに仕上がっている。

 

おとぼけビ〜バ〜は2009年に京都の立命館大学ロックコミューンにて結成された。途中ベーシストの脱退や、メンバーの就職などもあり活動が停滞した時期を過ごすも、ヒロちゃんがベースに加入した2014年以降は精力的に活動を展開。2015年には京都磔磔にてワンマンライブを成功させ、2016年にUKツアーを敢行。2017年にはアメリカテキサスでのSXSW、2度目のUKツアー敢行、フジロックフェスティバルに出演。2018年には3度目のUKツアーやアメリカのコーチェラフェスティバルに出演(日本からのアーティストはX JAPANと彼女らのみ!)という、まさに現在進行形でシンデレラストーリーと言っても良いステップアップを果たしている最中である。

 

しかしながらそういった表向きの華やかさとは裏腹に、作品を重ねるごとに深くなる情念、怨念めいた熱量は止まることを知らず、とんでもなく高い次元でそれを閉じ込めたのが本作だと言えるだろう。

 

初期のサイケ、ガレージィな曲調からよりコアな部分だけを抽出していったような現在のサウンドは、Yellow MachinegunやMelt Bananaなど、ハードコアな部分を突き抜けたが故のPOPさを纏っているバンドにも重なる。深く歪ませたファジーなギターを掻き鳴らすよよよしえ、ロックンロールマナーにも則りつつ確かな技術でささえるヒロちゃんのベース、乾いた軽いビートで曲を持ち上げるぽっぷのドラム、そこに野太さと可憐さを行き来してみせるあっこりんりんのボーカルが鎮座する、という絶妙なバランス。

 

「よめのめし」

 

というインパクトあるフレーズを連打したかと思えば、

 

「ドントメイクアLOVE!ダズント!」

 

などの歌詞に呼応するように多用されるキメ、ブレイク、ストップ&ゴー。目まぐるしく駆け巡る展開はさながらあっこりんりんの苛立ちの最中に放り込まれたようなカオティックさをもたらしてくれる。

 

「いやいやいやいやいやいやいうとんねん!」

 

などのフレーズに代表されるように、京都弁(not 大阪弁)ならではのイントネーションを巧みに取り入れながらそれを曲のフックへと昇華していく手法は先だっての作品『あきまへんか』や『いけず』あたりから顕著になってきてはいたが、今作において一つの到達点を迎えたとも言えるほどに完成度とオリジナリティを獲得している。

 

また、今作においてもう一つの大きな進歩はサウンドメイキングだろう。
大阪LMスタジオにて、これまでにCorruptedやMOST、あふりらんぽ、渚にて、少年ナイフなど関西発の重要バンドを数多く手がけてきた須田一平による録音とミックスが施された今作は、パンキッシュでガレージィな音像にとどまらず、ざらついたシャウトと対比させるように少しメロディを乗せたPOPなコーラスを巧みに配置しスリリングさと同時に耳への引っ掛かりを強烈に残すように仕上げられ、おとぼけビ〜バ〜の持つ特異な存在感というものを見事に閉じ込めることに成功している。

あっこりんりんの強烈な歌詞世界はいよいよ他の追随を許さないところまで来ていると言えるが、その特徴的にリズミカルな刻みと反復するフレーズはさながらテンポの良い漫才やCMのフレーズ、こども向けの遊び歌を想起させる瞬間もある。そのキャッチーさでもって聴き手を引き込んだ先に、

 

「セックス しば漬け ロックンロール」

 

などというなんともタチの悪いフレーズが紛れ込んでいるのだから堪らない。

 

そのとどまることを知らないエネルギーの放出源が、情念、怨念、妬み、嫉み、羨望などの感情以外から繰り出される日はいつか来るのだろうかなどとも想像してしまうが、自分以外の人間など信用してたまるものかと言わんばかりの苛立ちと孤独こそがバンドをバンドたらしめている、とも感じる。もはや孤高のバンドへと足を踏み入れ始めているのではないだろうか。

 

そしてそんなあっこりんりんの歌詞に耳を奪われがちだが、メンバー各々が自らの武器やキャラクターを理解した上で、この特異な歌詞、フレーズをバンドサウンドとして自覚的に表現出来るという唯一無二の力を手に入れて来ているのも大きなトピックだろう。

 

これは想像だが、恐らく詞や歌のワンフレーズから曲が生まれていて、それをメンバーで咀嚼して一つの曲に仕上げているのだとしたら、これはもう奇跡的なバランスで成り立っているバンドであると言わざるを得ない。バンド力の著しい向上によって本来持っていた攻撃性と魅力が現時点での到達点とも言える位置で見事に結実した、という意味でも非常に重要なタイミングのリリースであると言えるだろう。

 

このようなキャラクターを持つバンドがまず海外で評価され、逆輸入的に日本で紹介されていく、という現象には歯がゆさも感じるが、おとぼけビ〜バ〜の快進撃はまだ始まったばかり、いや、入り口にすら立っていないかもしれないとすら思わせるだけの圧倒的期待を、この一曲だけで感じさせてくれる。

これからも僕らをあっと驚かせるような、彼女らにしか出来ない活動や作品に胸を躍らせるばかりだ。

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