INTERVIEW

下ネタを、人間ドラマで見せる!?旗揚げ約20年のニットキャップシアターが送る最新コント公演『That’s enough!!』について

2018.03.18

岡安 いつ美岡安 いつ美

1999年旗揚げ、来年で活動20周年を迎える京都の劇団・ニットッキャップシアター。人間ドラマを描いた舞台に定評がある彼ら、最近では民族楽器の生演奏などを取り入れて、従来の演劇とは違ったアプローチで観客を魅せる舞台を作り上げている。この約20年間、劇団とともに年齢を重ねる劇団員のライフステージに合わせて、劇団自体もどんどん変わってきたと、話を伺った。老舗には老舗にしか出せない味があるのは間違いないのだが、彼らは他の老舗とはそういった意味でも一線を画す存在であることは間違いない。

 

そんな彼らの新しい挑戦のひとつとして2014年から行われているコント公演シリーズの第三弾が、来る3月28日、29日、木屋町UrBANGUILDにて上演される。今回の公演のテーマはずばり「下ネタ」。なんならフライヤーには「止められても、やる」とまで言い切っている。今の彼らは、何を考えて活動しているだろう?なぜ活動20年を目の前にここまで攻めたことができるのか?純粋に話を聞いてみたく今回のインタビューをお願いした。これまでのコント公演のことや、もちろん今回のコント公演のことについて、今のニットキャップシアターについて少しでも知るべく、演出・澤村喜一郎さんと、企画・仲谷萌さんにお話を伺ってきました。

カジュアルに、来やすい場所で、もっと気軽に楽しんでもらえる公演を。ーー旗揚げ約20年の老舗劇団の始めた取り組みとは?

ーー:

今回澤村さんが企画・演出をされるニットキャップシアターコント公演『That’s enough!!』ですが、昨年3月に行われたコント公演と合わせても2回目、ということで間違いないでしょうか?

澤村喜一郎(以下、澤村):

いえ、1回目に公○食堂で行った時からコント公演も僕が企画・制作・演出しています。

ーー:

そうなのですね!1回目はサイトに「企画・演出 ニットキャップシアター」とあったので、実際にはどなたが演出されていたのかと、気になっていました。

澤村:

僕単独で企画・演出に名前を載せるのが怖かったので(笑)、ニットキャップシアターとしていたんです。実際は俳優の高原と2人で、それぞれがコントに出ている時はもう片方が見て、という風にしていました。

ーー:

怖かった、のですね。

澤村:

単純に僕は役者しかやっていなかったので、企画・演出という役を担うことは怖かったですね。元々本公演のない時期に「みんなで何かやろう!」というコンセプトでコント公演がスタートして。結局みんな出るし、みんなでやるし、クレジットはニットキャップシアターでいいか、となったんです。

ーー:

初心者質問で恐縮なのですが、舞台の世界では演出家が一番責任が重い、と捉えてよいのでしょうか。

澤村:

そうですね。映画でいえば監督、音楽でいうとプロデューサーでしょうか。

ーー:

なるほど。そんな澤村さんが演出を担当されているコント公演第1回目が公○食堂、前回と今回が木屋町UrBANGUILDと……いわゆる劇場ではない会場での公演となります。何か理由はあるのでしょうか?

澤村:

ニットキャップシアターは来年で旗揚げ20周年を迎えます。僕らのお客さんのメインは、僕らと一緒に歳を取ってきたような30代〜40代の人が中心で。若い子からしたら「名前は聞いたことあるけど、見たことはない」って感じの劇団だと思うんです。特にうちはチャンバラがあるとか、古典をやるとか、ドタバタコメディをやってるとかっていう感じでキャッチーで分かりやすい感じではないので、とっつき辛いのかなと思っていて。

 

ただこのままだと、お客さんも一緒に歳を取っていくので(笑)、先細りしていくだけなのではないかと常に危惧はしています。

ーー:

20年選手だからこそわかることでもありますね……

澤村:

なのでまずはカジュアルに、来やすい場所で、もっと気軽に楽しんでもらえる公演をしよう、と動き出したのが2014年でした。コント自体は昔からうちはやってたので、ひさびさにコント公演を復活させるのが良いのじゃないのかってなって、新しいコントシリーズを始めました。

ーー:

新しい層が来やすいために。

澤村:

はい。イギリスでは飲みながら演劇見る文化とかもあるんです。そういうカジュアルさをもっと取り入れたいなと思っています。なので会場選びでは飲食をしっかり提供できる場所を指標にしていました。

ーー:

実際に過去2回行って、手応えはありましたか?

澤村:

わかりやすく若い人や、音楽界隈の人を中心としたジャンル違いの人が見にきてくれました。UrBANGUILDでやった時には、普段UrBANGUILDに飲みにくるような人や、ふらっと入ってきたスーツ姿のサラリーマンや、外国の方までいて。こんなことがあるんだね!と素直に喜べました。

ーー:

予想以上にいい結果があったわけですね。

澤村:

外国の方とか、多分言葉わからないのにゲラゲラ笑ってたんですよ(笑)

ーー:

いいですね。コントにしているのも、わかりやすさを重視しているから、でしょうか?

澤村:

そうですね。うちの場合は特にコントの方がわかりやすい、ということもあるので。あとは単純に笑える、ってことはいい感触で帰れるということもありいい事づくめなんですよね、コント公演は。なんなら次の日「めっちゃ笑ったけど、内容あんま覚えてない」とかでもいいんです。

ーー:

いい思い出として、自分の中に蓄積されますしね。

澤村:

ひいてはこれが演劇への入り口となればよいなと思っています。

ーー:

私はずっと音楽畑にいる人間で、演劇って「どこから入っていけばいいんだろう?私が入っていっていいのかな?」と思っていたところがあって。

澤村:

音楽はCDレンタルして、Youtubeで動画見て……とか入り口がたくさんあるけど、演劇ってまず実際に来ないと始まらないんですよ。

ーー:

今お話を聞いててこんなに歩み寄って、入り口を広げて待っていてくれる劇団があったとは、という気持ちでいっぱいです。

仲谷萌(以下、仲谷):

昨年のコント公演をやった後、本公演で2人芝居をしたんです。そのときもいろんなジャンルの方と関わる公演にしたい、ということで京都のカフェの方とか、ぬいぐるみ作家、ミュージシャンを招いて公演を行ったんです。

ーー:

太秦おかげサマー』ですね。

仲谷:

いろんなジャンルの人が集まって、出会って、交流できる場作りをしたいと思っているんです。SNSでも演劇に興味のない人がひっかかればいいな、という思いを込めて運用をしています。試行錯誤の毎日ですが……。

ーー:

そういう何かしらのきっかけひとつで踏み出せたりしますしね。

澤村:

SNSは内容の質を上げるために試行錯誤してますね。稽古場の写真とかはとにかく地味なので(笑)、よりわかりやすくするために動画をアップしたりもしています。これで結果が出るかよりも、何が宣伝方法として最適か、実験をしているような感じです。

ーー:

自分たちの状況を客観的に捉えて、挑戦する姿勢が、老舗らしくない感じがしないなあとお話を聞いていて思いました。

澤村:

昔から、変化を楽しめる団員が多いからでしょうか。公演の内容も20年でだいぶ変わりましたけど、それをみんなで楽しみながら出来ています。老舗として変わらぬ味を、という思想で何かを続ける人もいると思うんですけど、うちはコロコロ変わる。でもそれでいいんですよね。

下ネタを人間ドラマで見せるのが、ニットキャップシアター

ーー:

今回の公演、テーマが『下ネタ』ですが

澤村:

自主規制が多い世の中になって、最後の聖域が演劇だと思っているんです。お金払って見に来ているんだから……いろいろ自己責任ですしね。あ、こんなこと言ったら怒られるかな?(笑)

クレームがきたら困るから、あれは言うのはやめよう、この表現はやめようっていうことがどんな界隈でもあると思うんです。「どこまでやっていいのか?どこまでできるのか?」という線を世の中に合わせていたら、表現者としては終わりだと思うんです。だからこそ、挑戦したいテーマとして掲げました。

 

あと、うちの下ネタは下品ではないんですよ。

ーー:

今日稽古を拝見させてもらって、それは思いました。こんなに振り切ってやられたらむしろ清々しい!と。

澤村:

ちゃんとした表現としてまとまっていたら、見れるものだと思うんです。もちろん下、だけだったらダメですけどね。ネタとして機能しているものに仕上がっていることと、下品でないことに自信があるので、攻めたテーマでもクオリティを担保できると思っています。

 

ただ、売り上げが下がるかもしれないけど、とは思っていますけどね(笑)

ーー:

テーマを「下ネタです!」って言い切るのってすごく挑戦的だなぁと思っていて。

澤村:

違うことやっていくのが楽しい、という気持ちもあります。

ーー:

なるほど。フライヤーのキャッチコピーにある「止められても、やる」にはそんな意味があるんですね。

澤村:

イエローカード出てますけどね(笑)

That's enough!!フライヤー
仲谷:

私正直なところ、下ネタって苦手で……。

ーー:

実は私もなんです……!

仲谷:

でもごまさんの下ネタコントってすごく人間味があったり、その人が生きていく上で必要なことだったり、何かにぶつかってそれに対して必死になって立ち向かってる姿とか……女性としても嫌な感じがしないんですよね。なので自分でも面白がりながら参加できているところはあって。

ーー:

事前にお預かりしていた台本と、フライヤーだけ見ていて正直私で大丈夫かな……と思っていたんです。文字だけで見るとぎょっとするような言葉も並んでいるので。

澤村:

ある種のうまさがないと、下ネタは言ってはダメなんですよ。

ーー:

うまさ、ですか。

澤村:

それがないと嫌われるだけなんです。おっさんとか。

ーー:

なるほど。はじめ今回「下ネタをテーマにやりたい!」と他の方に言われた時、どんな反応でしたか?

仲谷:

はじめから劇団員からはとても好感触でしたよ。

澤村:

企画を通す時が、一番ドキドキしましたね。

ーー:

(笑)

仲谷:

本公演では取り扱いにくいテーマも、コント公演ならチャレンジしやすいので、だからこそ振り切れたとも思います。

澤村:

どうせやるなら、思いっきりやろう!と。

ーー:

今日稽古を拝見して、根底に流れるニットキャップシアターが表現したい人間ドラマを垣間見れたので、新たな一面が今回の公演で見れると思うと今から本当に楽しみです。お客さんがどんな反応するかも楽しみですね。

 

ひとつお伺いしたいのですが、アンテナにはまだ演劇を見た事ないような方もいらっしゃいます。そんな演劇初心者が一歩演劇の界隈に踏み出すために演劇を楽しむコツってなにかありますか?

澤村:

演劇は体験型なので、一期一会、その場でしか楽しめないことがたくさんあるので、まずそこを体験してもらえればと思います。その次の段階でこの人が出てるから、っていうので楽しめるようになっていけばいいのではないかなと思っています。

仲谷:

コント公演だと顕著なのですが、お客さんの反応で舞台上の雰囲気がガラガラ変わっていきます。一緒に時間と場を共有して、舞台と客席が呼吸しあう空気感は他では味わえないものだと思います。そんなものを味わってもらえたら。

澤村:

お客さんが入って完成、みたいなところもあるしね。ある種の共犯関係になるわけですし。

仲谷:

私、昔は演劇見るのが少し苦手だったんです。見ている自分を見られている感覚や、目が合う瞬間にドキドキしてしまって。はじめは自分が見ているのに緊張してしまっていて。そういうのが癖になったりもします。

ーー:

最後に「毎日を戦うあなたに見て欲しい」この意味を教えてもらえますか。

澤村:

同性同士で、2年後くらいに「私昔こんなん見たんよ」って話せるくらいの内容だと思うんです。多くの人が共感できる部分もたくさんあると思います。これは俺だ!私だ!と思ってもらいやすい内容になっています。あるあるの状況を描かれたコントで笑い飛ばせることでより自分ごとになります。ぜひとも「ビール飲めるし野球見にこうか」くらいの気持ちで来てもらいたいです!

ーー:

ありがとうございました!

ニットキャップシアター
芝居/語り/ダンス/民族楽器の生演奏/歌/仮面や布などのマジカルグッズ…… 
様々な舞台表現と「言葉」とを組み合わせて、イマジネーションあふれる作品を生み出す京都の劇団。
『ガラパゴスエンターテインメント』という言葉を大事に創作を続けている。 
劇団名はムーンライダーズの楽曲「ニットキャップマン」より。
劇団HP→ http://knitcap.jp/

Knit Cap Theater presents 「That’s enough!!」

INFORMATION

日時

2018年3月28日(水)〜3月29日(木)

各日 2ステージ
[1st] 19:30- (open 18:30)
[2nd] 21:30- (open 20:45)

場所

UrBANGUILD

チケット

¥2,000 (前売・当日とも) + 1drink ¥600

特設HP

http://knitcap.jp/thatsenough/index.html

お問合せ

090-7118-3396 (劇団)
info(a)knitcap.jp 

※ (a)は@に置き換えてください

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