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関西の映画シーンの今後は?「地域から次世代映画を考える」レポート

2018.03.01

川合 裕之川合 裕之

先月27日、京都文化博物館にてローカルと映画に関するシンポジウム「地域から次世代映画を考える」が催されました。このイベントは立命館大学映像学部創立10周年を記念して開かれ、同大学映像学部教授の川村健一郎さんらが中心となって実施されたものです。
様々な境遇、様々な視点、さまざまな意見から関西の映画シーンというひとつの大きな議題に向き合いました。

「やらなくてはいけないこと」――映画製作への情熱と、立ちはだかる現状

第一部では製作者による「作る側の視点」からのトークとそれに先立って各登壇者が自主制作で監督した作品を上映。本イベントは2部構成ですが、この映画上映を含めると実質の3部構成であったと言えるでしょう。

◇登壇者と上映作品◇

 

佐藤零郎(大阪)『月夜釜合戦』(予告編)
塩崎祥平(奈良)『茜色の約束』
香西志帆(香川)『しまこと小豆島』
酒井健宏(愛知)『右にミナト、左にヘイワ。』

インディペンデント映画(=自主制作映画)の、職業・労働としての制作ではなく「やらなくてはいけないこと」としての映画製作の思いを語りました。これは義務的なものではなく、カルヴィニズムの謂うところの予定説的な天職としての文脈で映像制作への熱意を言い交わしました。

一方で職業としてこれらの活動が興行的には効率的でないというウィークポイントもため息混じりに紹介。

四国地方を中心にクライアントワークもこなす香西さんは登壇者4人の予算などには比較的余裕があるようですが、本職は副業禁止の銀行員であるため利益収入を手にすることは出来ないという皮肉な状況も吐露。それでも満足だと香西さんは語りますが、当然クリエイターがこうした中大規模の予算で安心した制作に取り組める環境を整備したいというのが一般的な総意のようです。また、制作に留まらず広報活動や配給までしっかりと一貫してエネルギーを注がなければいけないという課題も指摘されました。

良質な作品をより多くの人に届けるために

第二部は「上映する側の視点」としての座談会。関西を代表するミニシアターの支配人4名をはじめ有識者総勢7名が登壇。Recordedな媒体である映像作品をいかに長く生き永らえさせることができるかという課題について話し合いました。

◇登壇者一覧◇

福永信(小説家)
松村厚(フリー映画宣伝・第七藝術劇場元支配人)
土田環(早稲田大学 専任講師)

山崎紀子(シネ・ヌーヴォ支配人)
林未来 (元町映画館支配人)
吉田由利香(京都みなみ会館支配人)
田中誠一(出町座支配人〉

「興行的な安定が欲しければ、今なら例えば『人生フルーツ』を流しさえすれば問題ない」と語るのは七藝の元支配人の松村さん。極端な例で会場の笑いを誘った上で、しかしそれだけがミニシアターの使命ではないと主張します。

 

クリエイターを育て、映画文化を深く広く根付かせ、時に新たな視点をもたらすような映画作品を多くの観客に提供することが大切だとそれぞれ語りました。

現在ミニシアターの収入など現状を確認した上で今後の展望として各映画館支配人たちによる「関西次世代映画ショーケース」の創設を宣言。各映画館がオススメをピックアップしそれを発信していくとのこと。

興行の芳しくない映画は選ばれていないのではなく知られていないのではないかという分析から映画を観客に伝え届けることに重心を置いて生存戦略を計ります。

 

「次世代映画」という言葉運びの経緯としては自主映画、インディペンデント映画という用語がこれまで持ってきた複雑で多義的な解釈を許す曖昧な文脈を断ち切り新たなプレーンな表現をしたかったからだそう。

 

「え〜がな500」(注)に次ぐさらなる関西のミニシアター同士の結束が期待できます。この「関西次世代映画ショーケース」の第一弾として打ち出されたのは以下の4作品。それぞれの支配人が思い入れを持ちプッシュしたいと考える作品が発表されました。

(注)5月と11月に各映画館で2人連れの学生の映画鑑賞料が500円になるキャンペーン。2016年より開始。

『FORMA』坂本あゆみ監督(出町座・田中氏推薦)
『鉱 ARAGANE』小田香監督(シネ・ヌーヴォ・山崎氏推薦)
『月夜釜合戦』佐藤零郎監督(みなみ会館・吉田氏推薦)
『ハッピーアワー』濱口竜介監督(元町・林氏推薦) 

土田さんからはauthorizeしてしまうことの問題点も指摘されましたが、大きく反対しその影響に警鐘を鳴らしているというわけでもなく、会場全体の雰囲気としても概ねこの取り組みには許容的な様子。こうした映画のピックアップのアーカイブを進めていき、また将来的には映画祭のような形でのイベントも視野に入れているとのこと。

それぞれの熱意がダイレクトに伝わりやすい生の空気と距離感を大切にしていきたいと表明しました。

ローカルは考える。ここから映画文化は広がっていく

映画を制作する側、そしてそれを伝える側の双方が綺麗事に終始せず決して良好とはいえない現状も打ち明けた上でそこに浮かび上がる課題を直視する建設的な会でした。非常に意義のあるシンポジウムであったと筆者は感じています。

 

ミニシアターに限らず映画そのものが斜陽産業となりつつある昨今ですが、決して悲観するほどの惨状ではありません。国内外で数多の映画が日夜制作され、発表されています。新たな視点、新たなスタイル、新たな取り組みで時代と場所にあった映画興行の盛り上げ方を模索する今後の関西の映画シーンに目が離せません。

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