COLUMN

ブンガクの小窓 第十六章 -プロジェクト-

2018.02.05

ケガニケガニ

アンテナ読者のみなさま、ほんとに遅ればせながら明けましておめでとうございます。

今年もどうぞ、当コラムをよろしくお願いいたします。

いつの間にか第16章ということで「虎舞竜」じみてきましたが、のらくらとやっていきたいと思いますので、感想やリクエストなど随時お待ちしております。

(ケガニ)

どういうときに使うか

さて、睦月如月を経て、企業においては新規プロジェクトが始まりつつあるところなのではないだろうか。(そうでない会社の方は昨年の後始末お疲れさまでございます)。

だいたいにおいてプロジェクトにはチーム設立やPCDAサイクル、企画会議などの面倒なステップがついてまわり、早く終われ早く終われと唱えながら各々に定められた期限に追われるのが常、肚から満足できることは稀だ。長期的なものであればあるほど、ずっと小刻みに時間に追われている感じが気味悪く感じられる。

と考えるとプロジェクトは「企画」「プラン」という意味で使われることが多いことになるが、必ずしも常にそうというわけではない。例えば近頃一般化してきたプロジェクション・マッピングとか、プロジェクターという場合の使い方、つまり「投影」という意味のプロジェクトもある。これらの2つの意味は全く異なるようでいて、実は深く関係している。

前に投げる

プロジェクトという言葉は、「前に(pro)」と「投げる(ject)」という2つの部分に分かれる。

プロの部分はたとえば、「前に供する=提案する(pro-pose)」などと同じであるし、ジェクトの部分は「投げ返す=拒絶する(re-ject)」などと共通だ。こうした語源からさっき述べたような、前もって物事を投げかけるという第一の意味と、目の前に光などを投げるという第二の意味とが派生した。一見関係ないように見えた言葉が、根底でつながっていたということがわかる。

(ついでに言うと、プロジェクトをPJと略すのも語源的には正しいことになる)

さて、実はこの言葉もう一つ重要な意味を持っている。それが、「投企」である。もともとはドイツ語Entwurfと、それをフランス語に訳したprojetであるが、どちらもprojectと同じ構造を持っている。

この概念は、「未来へ向かって自らを投げ出す」ということを指す。僕たちは生まれた時から、すでに世界の中に投げ出されている。そのうえ、このことを自分で疑問に持つことができる。なぜ僕たちは生まれて、ここに存在しているのかと。

(これは当コラム最初の回でお話しした「実存」という問題にもかかわっている)。

こうして、自分が投げ出されていることの意味を問うことで、じつは僕たちは投げ出されているのではなくて、自分で自分を投げ出してるのかもしれないと考えることができる。もし運命みたいなものがあるとしても、目の前の未来は自分で切り開け、というのと少し似ている。

 

要するに、プロジェクトを「自らを」「前に投げる」という意味でとらえることで、世界の中に放り出された存在である人間が、自らの可能性を未来へ向かってきりひらくことができるのではないかと考えることができたわけだ。この概念を用いたのはドイツの哲学者、マルティン・ハイデガーであった。彼の名を世界に知らしめた主著こそが、『存在と時間』である。

 

(ただし、ハイデガー自身が「プロジェクト」をポジティブな意味で用いたというわけではない。くわしくは当書を読んでみていただきたい)

 

存在と時間〈上〉

プロジェクトの可能性?

最初に言ったように、プロジェクトというと未来を先取りする予定のようにとらえられることもある。自分の可能性をそのために費やしてしまい、有限な時間を切り売りしているかのように思われることもある。だが本来、そのプロジェクトを選び、自分の可能性を賭けているのはほかならぬ自分自身であり、もしそれが間違っていると思うのであれば、別のプロジェクトを選択することだってできるし、組織を離れたっていい。「投企」の考え方を、このようにポジティブな生き方として実践することもできるのではないか。

 

こたつを出て会社へ行く勇気が出ないとき、こう言い聞かせてみてはいかがだろう。そのプロジェクトは、やらされているのではなく、やっているのだ。さあ、扉を開けて外へ出よう、2018年が待っている。


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