INTERVIEW

キツネの嫁入りGt./Vo.マドナシ×音楽ライター岡村詩野に聞く – 京都のインディーシーンがもっと面白くなるには –

2018.01.24

キャシーキャシー

音楽ライター・岡村詩野さんが京都に活動拠点を戻して5年、マドナシさん率いるキツネの嫁入りは活動期間が10年になるという節目の年。長く京都の音楽シーンを見てきた2人は今の京都を見てどんなことを感じているのでしょうか。

 

対談によって見えてきたのは、意外にも2人の考えが”違う”こと。それぞれの信じる方法論で京都のシーンを見た時、より豊かにするための道が少しだけ浮き彫りになった気がします。

インタビュー:堤大樹

【マドナシの場合】何故スキマ産業・スキマアワーを開催するのか?

ーー:

詩野さんにとって、キツネの嫁入りやマドナシさんってどんな印象ですか?

岡村詩野(以下:詩野):

マドナシさんとは2012年に『俯瞰せよ、月曜日』をリリースした時に私がやっていたラジオ番組に出て貰ったのがきっかけで知り合ったのですが、キツネの嫁入りの音楽ってちょっとエグさがあるじゃないですか。誰にでも受け入れられるものではないし、『俯瞰せよ、月曜日』もGYUUNE CASSETTEっていう癖のある大阪のインディー・レーベルからリリースしているし。「そういうバンドが受け入れられる土壌が京都にはまだあるんだ」っていうのがとても頼もしかったですね。マドナシさん自身については”どこにも属していない人”という印象。きっと京都にいてもどこか居心地が悪いんだと思うんです。

マドナシ:

そうなんですよ。居心地はよくないですねぇ……。

詩野:

にもかかわらず、京都でスキマ産業とかスキマアワーっていうイベントをやっているじゃないですか。しかもそこに出ているアーティストのほとんどが京都や関西のバンドじゃないっていうのが当時から面白いなぁと思っていました。

マドナシ:

京都のバンドだけ出ててもしょうがないじゃないですか。

詩野:

京都のバンドを中心にしたものにしたくない……という気概は感じていました。キツネの嫁入り自身も京都のシーンに首まで浸かっているタイプのバンドじゃなかったし。マドナシさんが積極的に呼んでいたアーティストってトクマルシューゴくんとか二階堂和美さんとか、全国的に見てもすごく人気はあるけど京都で観るチャンスが限られていたアーティストが多いんですよね。

ーー:

当時、東京のアーティストを積極的に呼んでいた理由はありますか?

マドナシ:

その都度いくつか目的はあって、一つめは、単純に好きで一緒にやりたいアーティストを探したらたまたま東京の方が多かった。二つめは、まだまだ知名度がない中、いわゆるフォーク、いわゆるロックというカテゴリに収まった音楽を良しとしないキツネの嫁入りが京都から知名度をあげてより多くの人に知ってもらうために、じゃあ自分たちでイベントをやろうっていうもの。

 

で、「そもそも“音楽イベント”とは?」ってなった時に「“音楽イベント”って地元のバンドだけ集めて、馴れ合いでやるものではない。それは箱のブッキングで十分だし。」っていうのが当たり前の前提でやと思ってたので、結果的に他の人が、あまりやらないようなブッキングのイベントを主催していたという流れ。三つ目は、やっぱり関西以外にも、カテゴリに収まらないだけで評価されない音楽家がいて、彼らのレコ発やツアーのサポートのために開催しよう。というあたりですかね。

ーー:

マドナシさんが考える”居場所”ってどのようなものでしょうか。

マドナシ:

流行り廃り、売れてる売れてないに関係なく、限りなく身の丈に合った音楽が評価される環境(場所)の事かなぁ。 そんな環境になれば、我々含めた、もっと評価されるべき音楽が評価されると思う、もしくは思いたいというところかね(笑)

ーー:

10年間活動してスキマ産業もスキマアワーも凄い開催数で、キツネの嫁入りもリリースも重ねていて、確実に評価を積み上げていますよね。

マドナシ:

そう言ってくれる人も中にはいるんだけど、実際大して評価されていないのが現実だと思う。まだまだ、いろんな人に聴いて欲しいし、そのためにどうしたらいいかって考えて、そういう大きいイベントをやっていました。それとスキマ産業やスキマアワーを開催し始めた頃は、東京や他のエリアからそこそこ有名なバンドを呼んだちょっと大きなイベントを定期的に行う動きが減ってきたんで、じゃあ自分でやろうかなと。それより少し前は例えばFLUIDとかイベントを主催する人がそういうことをしてて、様々な種類のイベントが沢山あるから京都って面白いなと俺も思っていたから、残念で。

ーー:

だからこそご自身でそういうイベントをされてたんですね。

マドナシ:

あと当時は、地元のバンドと東京のバンドを繋げたいっていう気持ちが、よりありましたね。例えば大阪のASAYAKE01くんとか、大先輩のASTROLOVEさんとか、めっちゃいい音楽してるのに、自己アピールに興味のない人達のために、トクマルさん呼んで一緒にやっていろんな人に見られる場を作ったりとか、そういう発想があった。

ーー:

では、マドナシさんから見た詩野さんってどんな印象ですか?

マドナシ:

詩野さんは、京都である意味閉塞的に活動していたアーティストのレイヤーを一つ上に押し上げてくれたような気がします。詩野さんがいなかったら一生表に出てこなかっただろうなってやつらが何人もいるし。そこはやっぱり詩野さんがやっているメディアの力を感じますね。

詩野:

だからこそ京都には発信するメディアがもっといろいろあったらいいなって思ってるんです。私は京都が独立共和国になる必要は全くないと思う。むしろ京都の独自性・特異性がデフォルメされるためには風通しを良くする必要があって、東京と京都が地続きであるっていう状態が生まれて初めて「京都にはこういう面白さがあるよね」っていうのがフラットに伝わっていくんです。それを00年代後半以降に打破しようとしていたのがマドナシさんだし、スキマ産業やスキマアワーだったと思います。

【岡村詩野の場合】京都に新たな選択肢を与えること

詩野:

メディアの使命って”選択肢を伝えること”なんです。私は、紙媒体とかウェブサイトとかラジオだけじゃなくてイベントもメディアだと捉えていて。例えば私はモグラさんやゆーきゃんや飯田さんと友達だしボロフェスタのことは応援しているけれど、一方でそれに対するいい意味でのライバル関係にある対抗勢力が出てくるともっともっと盛り上がるのに……と思うんです。

マドナシ:

それはわかります。

詩野:

対抗って悪い意味じゃないんですよ。例えば政治と同じで二大政党制だとそこで切磋琢磨する。それが出てこないと絶対活性化しません。『ボロフェスタ』はゼロから立ち上げて本当に凄いと思うし、ここまで続けているのにはリスペクトの気持ちしかありません。このまま良い形で次のラウンドへ進んでいって欲しい。

 

そのためにも対抗勢力……というか選択肢として「『ボロフェスタ』に対してこっちもあるよね」っていうのがもっともっとあるべきだと感じています。『京都大作戦』『ポルノ超特急』『Rainbow’s End』も頑張ってますよね。でももっと全く違うアングルのイベントがあると楽しい。もちろん何も敵対する必要はない。京都の音楽シーンの重要人物みんな仲間だし理解し合おうとしている、とてもいい状況です。この関係性はそのままに、選択肢を増やしていければそれでいい。そのためにも京都以外のエリアの音楽家がもっと京都で演奏するチャンスが持てればいいですよね。それと同じで、我々伝える立場の人間も京都にもっと増えてほしいと思っています。

ーー:

詩野さんはメディアを関西に根付かせるために京都へ来たと聞いています。これまで実際に活動をしてきて、「変わってきたな」という実感はありますか?

詩野:

学生が多い町なのでいつも新しい息吹が吹き込まれているし、実際に若い音楽家や表現者が定期的に現れている印象です。ただ、それを伝える私のような立場の人ももっともっといてもいい。ライヴ見に行ったり作品を聴いたりした上で、それを文章にして伝えるようなことをする人。それも10代、20代にガンガン出てきてほしいですね。世代を超えて共闘していける人がほしいです。新しい音楽に対して好奇心を持てるメディアがやっぱり必要ってことなんですが。そのためには新しい音楽……それは若いという意味ではなく、まだまだ知られていない隠れた才能という意味ですが……そういう音楽をどんどん見つけて出会ってほしいですよね。これは私自身にも常に言い聞かせています。

マドナシ:

新しい音楽を伝えるって、どういうことですか?

詩野:

究極的には批評することだと思っています。批判ではなく批評。対象となる音楽家なり作品なりを相対化させて、文章であればそれを言語で表現する。それをわかりやすく言うと「伝える」ということになるんですけど、そういう意識で音楽に触れる人が増えてほしいと。

マドナシ:

18~19歳でそんなこと考えられる人はなかなかいないと思いますけどね。10代の子は、よりお金もないし、新しい音楽を知る手段も大人より選択肢がないだろうし。

詩野:

そんなことないと思いますよ。自分の言葉で音楽について書きたいと熱意のある若者、絶対にいると思います。ただ、京都……関西にはやっぱりメディアがないから、潜在的にそう感じていても、そういう意識に気づく若者が少ないんだという気がしますね。

ーー:

それは詩野さんが大学の講師として直に触れているからこそよく感じるところなのでしょうか。詩野さんは東京と京都で音楽ライター講座をされていますが、こちらもそれぞれの土地では生徒さんの姿勢が異なりますか?

詩野:

違います。東京の人の方がいろんなものを吸収したいっていう意欲が高い印象があります。でもそれは土地柄ですよね。東京では日々様々な事象が起こり、情報が溢れているし、そういうのを求めてやってくる人が多い。でも、少なくとも京都はガツガツした人が本当に少ない。そこが京都の良さだし、そういう気風だからこそ大都会にはない文化が生まれてきています。私はその良さを、伝えていきたいんです。だから、当たり前ですけど、リスナーが悪い訳でもアーティストが悪い訳でもなく、メディアが意識的に活性化していかないといけないところだと思います。関西中見渡しても、音楽雑誌やメディアって限られたものしかないでしょう?だから本当は私は京都で雑誌を作りたいんです。京都で作る雑誌に東京のceroとかスカートが載るような形にしたいんですよ。

マドナシ:

え、どうしてですか?ceroやスカートは京都でも人気があって、もうみんなが知ってるじゃないですか。

詩野:

私は”載せる=紹介する”だけの機能じゃないと思っているんです。例えばceroやスカートにしたって「ある雑誌ではこういう側面から取り上げている、だったら私はどのように取り上げようか」っていうのが大事。それは別に関西に住んでいるから異なるアングルが出るはず…というものではなく、ただ単純に、いろんな土地にいろんなメディアがあってもいいのにな、というものなんです。全ての都道府県に地方新聞があるのと同じで。どこでそれが作られていたって本当はいいはずなのに、音楽メディアに限っては制作のベースが東京に集中しちゃってる。

 

京都にはレーベルは割とある。セカンド・ロイヤルもシュラインもSIMPOもマイペースに頑張ってるし、それぞれの個性が明確ですよね。それと同じです。異なった”アングル”、多様性を与えていくことの重要性を年々感じるようになりました。だって、今なんてインタビューはメールやネット通話ででもできるし、第一インタビューにこだわる必要もない。要は、スポンサーがいないってことがネックになっている。でも、スポンサーを探していたんでは何年かかるかわからない。行動力みたいなもので突っ走りたいけど、それではなかなか続かないし…というそこのジレンマがいっつも頭をもたげています。

マドナシ:

その結果何が生まれるんですか?

詩野:

多様性の自覚です。いろんな聴き方、音楽の捉え方があるんだという、聴き方のバリエーションが広がりますよね。メディアはそのきっかけにならないといけない。

マドナシ:

だったらあらかじめ「うちのメディアは”切り口”が違うんです」っていうのが伝わらないと、多分名の知れた東京のバンドとかの記事は似たり寄ったりになりがちで、あまり読まれない気がしますね。

詩野:

そうです。だからこそ次に必要になってくるのが、文章力やアングルの見せ方、あるいは表現力になります。「キツネの嫁入りとはこういうバンドだ」っていう出来上がってしまっているイメージを崩す為に、いろんな聴き方のバリエーションが必要。だから『ボロフェスタ』だけでなく対抗勢力が必要っていう話にも繋がるんですけど、それに匹敵するくらいの大きな発信力を持つイベントがメディアとして存在する必要があるってこと。だから『スキマアワー』も続けていって欲しいんです。

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