COLUMN

24時間プチ旅日記 ~ライター 川合&小倉編~

2017.12.04

小倉 陽子小倉 陽子

新たに始まった編集部コラム「24時間プチ旅日記」。第二回は、映画系ライター川合裕之と、音楽系ライター小倉陽子の、世代も性別も生活環境もまるで接点のないデコボココンビでお送りします!

 

文章:小倉陽子

写真:川合裕之

今回の旅のコンセプト

普段は映画を観たり撮ったり、主に映画界隈のライターである大学生の川合と、演者でないもののライブハウスに行ったりイベントを企てたりする、音楽ライターでアラフォーOLの小倉。そんな二人は今回映画でも音楽でもなく、敢えてジェネレーションギャップが垣間見えるカルチャーとして「マンガ」を選び、京都国際マンガミュージアムへGO!

若干「旅感」は薄いものの、そこはなんといっても散歩ニストと家ガールという、インドア要素の高い二人の旅ですから、何卒ご容赦下さい。

まずは国際的な観光地にバトンを繋ぐべく、旅感あふれるベトナム料理のお店で腹ごしらえ。(ラ・パパイヤベール/京都市中京区柿本町405)

川合:

やっぱり旅に帽子は必須ですよね!

小倉:

うん、これ被っといたら見た目は何とかなるかなと思って。川合くんのウインドブレーカーはアウトドア感が高いよね。

川合:

これ、後輩から借りたものを、そのまま拝借しているんです…… 。

小倉:

やっぱり私物じゃなかったんだね (笑) お互い旅慣れてなさがにじみ出ているよね。

それでも見た目だけは観光客っぽさが漂っています。いいぞ。さて、旅ジェニックな写真を撮り、国際的なお味でお腹を満たしたところで、今回のメイン観光地である京都国際マンガミュージアムへ。

京都国際マンガミュージアム

京都市中京区烏丸通御池上ル (元龍池小学校)

 

いまや「マンガ」は世界から注目されているカルチャーのひとつ。この京都国際マンガミュージアムは京都市と京都精華大学の共同事業で、マンガ資料の収集・保管・公開とマンガ文化に関する調査研究、これらの資料と調査研究にもとづく展示やイベント等の事業を行うことを目的とした施設です。

博物館的機能と図書館的機能を併せ持っており、ここで保存されるマンガ資料は約30万点(2016年時点)。

また建物は元・龍池小学校校舎を活用し、当時の佇まいを残したものです。

昭和の建造物である小学校を活用した文化施設と言えば、京都芸術センター(元・明倫小学校)や立誠シネマ(元・立誠小学校、今年7月末で終了・移転)などがありますが、木製の軋む廊下が何ともノスタルジックです。私世代ですら通っていた小学校はこんなに趣きあるものではなかったですが、何だか自分の中の学生時代の色んな思いがフラッシュバックしてきて、時間旅行的な意味合いもあったりして。何ていうのは少々こじつけですが。

さて、たくさんのマンガを目の前にここからが本番。お互いに「じゃあ30分後に!」と別れを告げ、自分のアイデンティティに影響を与えたマンガを数冊ずつ別々に選んでくることにしました。(ちなみに館内は写真撮影禁止のため、中庭でのマンガ鑑賞大会の様子をお楽しみ下さい。)

休日の昼下がり、おだやかな光景です。

【1冊目】小倉『じゃりん子チエ』/ 川合『NARUTO-ナルト-』

川合:

お互い一冊ずつ交互に紹介し合います?

小倉:

”食わず嫌い王決定戦”みたいにね?いいよ!そうしよう……あれ、もしかして食わず嫌い王知らない?

川合:

いや、知っていますよ。じゃあこの中に自分の知らない漫画とか混ぜてやったら良かったですね。

小倉:

本当だ……それはじゃあ次回やりましょう。では私の1冊目は『じゃりん子チエ』です。

じゃりン子チエ (1)
(双葉文庫―名作シリーズ)
※京都国際マンガミュージアム貯蔵のものとは異なります。
小倉:

これはほとんどテレビアニメで見ていてね。マンガは病院の待合い室で読んだりした記憶です。知ってる?

川合:

何となくですけど。

小倉:

大阪の下町が舞台で、「テツ」こと労働しないならず者のお父さんと、家出中のお母さんとの間に生まれた永遠の小学5年生「チエちゃん」とその周りの人たちのお話しですね。滋賀県の田舎で生まれ育った私にとって、同じ関西圏でもここに出てくるコテコテの大阪の風景っていうのは全然馴染みがなくて。テレビではテツの声を漫才師の西川のりおさんがされていたのもあって、ちょっと憧れの世界でした。

川合:

大阪に憧れて、滋賀を出たとかですか?

小倉:

いや、ただ大阪の大学に通ったからその間住んでいただけ。でもストーリーは、チエちゃんのたくましさと登場人物たちの掛け合いの痛快さの中に、家庭環境の闇とか哀しみみたいなものが見え隠れしていて、私としてはとても哀しい……切ない……みたいな、共感があったんですね。うちはそんなむちゃくちゃ複雑な家庭ではないんですけど、小学生の自分には複雑だったんで。小学5年生にしてどこか達観していて、強くたくましく生きるチエちゃんは今でも憧れの存在ですね。

川合:

僕もテレビアニメを無料で観てから、気になったマンガにお金を出して単行本を買う、というまさに広報さんの戦略通りのペルソナ的な子どもでして。で、僕の1冊目は『NARUTO-ナルト-』ですね。

NARUTO -ナルト- 1
(ジャンプ・コミックス)
川合:

小学生の頃に中学受験のために京都市バスで塾まで通っていたんですけど、当時バス代が220円だったのでちょうど塾一回分の往復バス代でこの単行本一冊買えたんですね。なので、お母さんからもらっていたバス代を、1回分徒歩で稼いでそのお金で単行本を買っていたという、まさに僕のマンガの原初体験と散歩の原初体験を象徴するマンガというわけです。

小倉:

なるほど……これが今の散歩ニスト川合に繋がるわけだね!

川合:

僕はあまり雑誌を追いかけて買うというタイプではなかったので、単行本になって出たときに好きなマンガを買うのが楽しみでしたね。

【2冊目】小倉『天使なんかじゃない』/ 川合 『バクマン。』

小倉:

2冊目は、矢沢あい『天使なんかじゃない』です。本当のことを言うと『NANA』がマイベストなんだけど……。

天使なんかじゃない 1
(りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
川合:

『NANA』は知ってます!ただその作品は知らないです。

小倉:

とにかく矢沢あい作品はですね、恋愛においても友情においても女子にはビシバシ突き刺さるフレーズがてんこ盛りなんですよ。女子はおそらく“りぼん“派と“なかよし“派に分かれる、っていうのは世代を問わずセオリーだと思っているんですけど、私は“なかよし“派だったので、本当に小さい頃は矢沢あいを通ってないんです。なので、一番有り余る時間の中で恋だの友情だのわぁわぁ言っていた大学一回生のときに、友達から“天使なんかじゃない“を借りて語り合っていた思い出です。

川合:

僕の2冊目は『バクマン。』です。僕、あんまり友達がいなかったので、単純に友達っていいなって思ったマンガですね。

バクマン。 1
(ジャンプコミックス)
小倉:

これ、タイトルは聞いたことはあるけど中身は全く知らない。

川合:

ジャンプで連載されていたんですけど、結構メタな感じの設定で、中学生の主人公2人が原作と作画を担当して漫画家になろうとしていて、マンガの中でジャンプに投稿したりするんですよ。

小倉:

なるほど。漫画のマンだったのか。

川合:

男二人が熱くモノを作り上げる、っていうのがグッとくるんですよね。あとこれは僕に関する豆知識ですが、登場人物で原作を担当する「高木秋人」が私服でジャージを着ていて、僕も真似して私服でジャージを着ていました。

小倉:

川合くんに関する豆知識は知らんけど(笑)めっちゃ影響を受けているね。

【3冊目】小倉 『うる星やつら』/ 川合『金色のガッシュ‼ 』

小倉:

3冊目は『うる星やつら』。これもどちらかと言うとテレビアニメで見ていた印象が強いんだけど。

うる星やつら 1
(少年サンデーコミックス)
小倉:

今思えば「ラムちゃん」って一途でひたむきでめちゃくちゃ可愛いな……とふと思い出すことがよくある。あと関係ないけど、川合くんって「諸星あたる」っぽさあるよね。

川合:

僕ですか?うそ。

小倉:

高橋留美子のマンガに出てきそう、っていうのがこれを選んだ理由のひとつだから、是非読んで欲しい。

川合:

それってダメ男ってことですよね……。

小倉:

そこは、察して下さい。

川合:

『犬夜叉』っぽいってことかなぁ!

小倉:

「諸星あたる」と、『めぞん一刻』の「五代裕作」を足して2で割った感じがする。

川合:

誰が女たらしでヒモの浪人生や!

金色のガッシュ!! (7)
(少年サンデーコミックス)
川合:

僕の3冊目はこれです。『金色のガッシュ‼』は分かります?

小倉:

全然知らない……世代の壁を感じる。

川合:

これもアニメから入ったんですけど、魔物の王者を決める戦いに参加させられた「ガッシュ」っていう魔物が中学生の男の子とペアになるんですよ。他のキャラも、もちろん人間と魔物のペアばかりです。だからそれぞれに色んな関係性があって、言わば関係性の全部盛りって感じですね。

小倉:

関係性図鑑みたいな。

川合:

色んな魔物と人間の関係性があるんですけど、僕は絶対に7巻がおススメですね。後半の「ダニー」が出てくる回が、結構短編なんですけどめちゃくちゃ良いんです。僕、7巻だけ実家から今の家に持ってきてますもん。

小倉:

川合くんがどこに感動したのか読みたくなった。

【4冊目】小倉『あさきゆめみし』/ 川合『うさぎドロップ』

あさきゆめみし―源氏物語 (1)
(講談社コミックスミミ (960巻))
小倉:

私の4冊目は『あさきゆめみし』。言わずとしれた『源氏物語』の漫画化ですね。

川合:

最近では角田光代が現代語訳をして話題になりましたね。

小倉:

学生時代に友達のお姉ちゃんから借りて回し読みしていたんだけど、古文がちょっと面白く感じられたのはこのマンガのおかげでもあるね。

川合:

僕、古文は苦手でしたね……。

小倉:

あと『あさきゆめみし』に限らず、平安時代の文化には興味があって。笛の音色に聴き惚れて、和歌でプロポーズするとか、どういう仕組み?って思っちゃうよね、そういう時代来ないかな(笑)。

川合:

え、笛の腕に自信があるってことですか(笑)。

小倉:

全然ない(笑)リコーダーを人並みに吹けるぐらいで。女性としての価値を容姿とか人柄とかじゃなくて、笛の音色で判断するっていう潔さとまわりくどさがいいじゃないですか。全部、笛と和歌で表現すればいいと思う。

川合:

これから笛の音色に「#ナイトプール」みたいなハッシュタグをつける新しいSNSメディアが生まれたら、小倉さんの時代がきますよ。

小倉:

うん……まぁまず笛の腕を磨かないとダメなんだけどね。

うさぎドロップ (1)
(FC (380))
川合:

ここまでジャンプ、ジャンプ、サンデーときたので、守備範囲の広さを見せておきたいという意味合いも込めて『うさぎドロップ』です。僕これは5巻ぐらいまでが面白くて読んでいて、その辺りから「りん」が思春期に入ってくると、ちょっと離れてしまったんですけど。

小倉:

映画化されていたよね。

川合:

ちなみにこのコミックス、933円なんですけど、電子書籍だと500円で買えるんですよね。川合に関する豆知識としては、これを安く読むためにiPadを買ったというエピソードがあります。完全に赤字ですね(笑)。

小倉:

でもほら、iPadは色んな事に使えるから。

川合:

そうなんですよね、それで音楽とか作りたいなと思って、ファミマの入店音をEDM風にしてみましたみたいなやつ、あれなら出来るだろうと思ってKORGのiPad版入れてやってみたんですけど、全然出来なかったですね。

こういう感じ

小倉:

川合くん、音楽やっていたの?

川合:

いいえ。だからこのときiPad手に入れたのがきっかけでやり始めようと思ったんです。

小倉:

なるほど!『うさぎドロップ』が音楽制作への入口だったんだ!

川合:

でも向いてないな……って思ったんで辞めましたけどね。『うさぎドロップ』は音楽への入口であり出口でした(笑)。

【番外編】川合『青い花』

川合:

どうしても紹介したかったんですけど、ここには置いていなかったのが志村貴子のマンガです。

青い花(1)
川合:

川合豆知識としては『青い花』を去年くらいに読み直しまして、それに影響を受けた短編映画を撮りましたね。

小倉:

マンガって絵で全て表現出来るけど、映画となると場所や人物を実際調達しないといけないから、ハードル上がるし大変だろうね。

川合:

そうですね。しかも割とセクシャルな表現を含んでいるので、いくら監督とは言え僕が撮影することは世間が許さなかったんで(笑)同性のカメラマンの子に撮ってもらったというエピソードがあります。

川合裕之監督短編映画のスチール
小倉:

では、公開を楽しみにしていますね。

川合:

いや、公開はしません、ただ撮っただけなので。

小倉:

でも志村貴子の作品は川合くんにとって、映画を撮りたくなるぐらいクリエイティブな何かをくすぐる作品だったってことよね。

川合:

そうですね!描かれている人間関係とかストーリーが美しいし、絵もすごく綺麗なんですよね。セクシャルな表現に注目されがちなんですけど、人間関係の描写に必要だからそういう表現にしているってだけで、発表する媒体に応じて色んな表現の仕方が出来る作家さんなので、僕たちwebライターに通ずるところもあるなって思っています。

最後に、お互いの選んできたマンガを読んで、川合と小倉のプチ旅は終了。旅の定義から厳密にいうと今回は「旅」ではないかもしれないですが、マンガを探したり読んだりしている時間は「生活」から少し離れた感覚があって、旅らしさがあるなと感じていました。お互いの知らなかった一面を知れるというのも、誰かと旅をする醍醐味のひとつなんじゃないかなと。(『金色のガッシュ‼』ダニーの回はちょっと泣けました。)

GOODS

トップへ