INTERVIEW

台風クラブは「ロックンロール」か?

2017.10.11

ケガニケガニ

台風クラブという名前が全国で聞かれるようになったのは、少し前のことだ。2016年11月3日「レコードの日」、漫画家・本秀康氏のレーベル「雷音レコード」から、7インチ『ずる休み』が鳴り物入りで発売された。以前から京都で評判を集めていたバンドサウンドは、アナログレコードのふくよかな音質とうまく調和していた。日本語のルーツロックをソースとしながらも、幅広い音楽性と確かな演奏技術に裏打ちされた「信頼できる」バンド。これからどんどん活躍の場を広げていくことだろう。

 

さて、今回アンテナ編集部は、そんな台風クラブが出した最新アルバム、『初期の台風クラブ』の成り立ちについて、ボーカル石塚淳氏にインタビューを行った。録音などの作成秘話から、前アルバム『12月14日』以降の曲作りについてなど、リスナーはもちろん、プレイヤー目線で聞きたかったことを石塚氏にぶつけてみた。浮かび上がってきたのは「ロック的なもの」との絶妙な距離感だった。

「遠くに届く」ようなアルバム

ーー:

まず、アルバムの曲順についてですが、どのように発想したのでしょうか。

石塚:

”台風銀座“ 始まり ”まつりのあと“ 終わりというのは決めてました。”台風銀座“ はどちらかというと異質な曲で、リズムも裏打ちだし、凝った転調なんかなくてRancidの”Hooligans“みたいな曲を作りたかった。作ったときはアルバムの構想も無かったけど、アルバムとなると一曲目はあえてこれかなぁと。「全部シングルA面」を目指して作ってるので、一曲目らしい一曲目で、メインまでつなげてという作り方をしたくなかったんです。どこを切っても同じ味というか、THE ROOSTERSのファーストみたいに「金太郎あめ」みたいなファーストが理想やと思ったんですね。今回はバラードもないし、全部ミッドテンポで踊れる曲にしようとしてました。好きやけど、そのためにあえて外した曲もあって。

ーー:

アルバム・ミックスは渚のベートーベンズの江添さんですが、どんなミックスでしたか。

石塚:

ミックスは、僕と(ドラムの)イナ君とが立ち会いで3回、「6時間、6時間、16時間」、みたいな感じでしたね。最終日は朝から行って、「終わったら打ち上げにしようぜ」って始めたんですが、終わったのが朝の3時半とかで、「こら無理やな」と(笑)。今まではミックスは自分でやってたんですが、これまでより曲調も曲数も幅があるので、プロに任せようとなったんです。江添さんにお願いしたのは、タイミングもあって。5月の「三面楚歌」というツアーのとき(※渚のベートーベンズ、本日休演、台風クラブの三つ巴ツアー)、名古屋から京都に帰る車の中で、助手席で酔っぱらった(渚のベートーベンズの)しほう君に聞かせてもらった新しいCD(『Oyster』)がすごく良くて。ちょうどアルバム作ろうと言い出した時期だったので、これは江添さんに頼もうとなったんです。

ーー:

前作『12月14日』とはだいぶ違う音像にしようというのはあったんですか。

石塚:

前作はフィールドスタジオ(※烏丸のリハーサル・レコーディングスタジオ)の一つの部屋で一発録音やったし、ベースも壁にかかってたやつを急きょ使ったりで、全然いい環境じゃなかった。ある意味でほんまにガレージバンド的な録り方だったのかもしれません。今回はドラムだけフィールドで録って、それ以外はほぼ宅録(※スタジオやエンジニアを使わない自宅録音)で個別録音。マイクは自分のコンデンサを使おうと思てたんですが、6曲くらい歌録り終わった段階で、気づいたら波形が画面で羊羹みたいになって音割れしてて。納期がやばいとなって、スタジオのSURE 58(※スタジオなどの比較的安価なスタンダードマイク)で録音したんです。

ーー:

歌全部58で録ったんですか!

石塚:

そう、しかも誰が使ったかわからんようなやつで(笑)。だからマスタリング・スタジオですごい解像度のスピーカーで聞かせてもらったときに、エアコンの音とか「サー」って入ってて。エアコンすら切ってなかったんですね。エンジニアの方に「なんでこんなSN比(※雑音と信号の比率のこと)悪いんかね」って言われたり。

ーー:

東京のマスタリングは初めてなんですか。

石塚:

マスタリングまで江添さんにしてもらおうかと思ったんですが、今回アナログ化を含めていろんな使い方しようと思ってたので、専門の人を見つけてもらたのが吉川さんという人やって。飛び交う用語や技術が並大抵じゃなかったですね。結局ミックスからはレーベルにお金出してもらってたんでそういうこともできたんですけど、録音にかけた費用がたったの4万円くらいやから普通逆ですよね。

ーー:

4万円って相当安いですよね!

石塚:

そう。でも、仕上げの面ではインディーでローファイを目指すんじゃなくて、「遠くに届く」ような、一般にも聞いてもらいやすいような、それこそオカンでも聞けるようなものをと。『名探偵コナン』のエンディングになってもいいくらいの感じで。前作はオブスキュアな(ぼんやりした)音で、そういうのも好きなんですけど、こないだ特典音源用にリミックスしたとき改めて聞くと「イコライジングめちゃくちゃやな」と。本気でやっていいもの目指してそれだったんですけどね。

ーー:

今回は前作(『12月14日』)とは違って、ギターを結構重ねてますよね。

石塚:

今回は左右に必ずバッキングを鳴らしてるし、3人やから3トラックでという気持ちは無かった。でも逆に、ホーンとかキーボードは絶対入れへん、みたいな。ファーストを作るなら竿もの(ギター、ベース)とドラム、そういうのが一番かっこいいって思って。アコギすら入れてないんですよね。アコギ持ってないんやけど(笑)。ジャンルに寄せるならもっと入れてもいいんやろうけど、どうせボーカルが「イモい」から。どれだけ華やかなもの作っても僕がマイク持って歌ったら「イモ」なので、ゴージャスにするよりはと。ほんまは”42号線“ でナカジンさん(※京都のパブロック・キーボードボーカリスト。元SHAKIN’ HIP SHAKE)に弾いてもらえたりしたら最高だったんですけど。

ーー:

ギターの音色は今回クリーンとかエッジの立ったものが多いですが、どんな意図だったんですか。

石塚:

前作はどっちかというと「記録音源」だったので、機材も余裕がなくて。今回もエフェクターつないでラインで録音しましたけど、音質はフェンダー系の音を目指していて、フェンダーのデラリバ(※同社の代表的なギターアンプ、Deluxe Reverb)とか、ヤマハのF(※同社の名機、Fシリーズ)とか。

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