COLUMN

アンテナ景察 / 川合裕之

2017.09.25

川合 裕之川合 裕之

アンテナ若手、映画ライターの川合です。

さっそく自慢なんですけど、この企画は第一回を書いていたイラストレーター兼デザイナーの多美さんの発案ですが、<アンテナ景察> というタイトルは僕が考えました。

 

カッコイイ~!センスある~!

 

さて、企画概要をもう一度振り返ります。

>>たとえば私にとってありふれた風景も、あなたなら、思いもつかない素敵なものを見つけるかもしれない。

>>さて、編集部の面々はどんな思いで、どんなふうに世界を見ているんでしょう?
各々が見つけてきた「街の中の気になる風景」を写真とともに語り、その感性をひもときます!

いやいやいや。余裕余裕余裕余裕!!

サンポ―」という散歩をするメディアにも寄稿している僕。こんなの片手間で滅茶苦茶に面白いコラムを書いてみせますよ!ということで僕はまず一眼レフのライブラリを見ました。

うん。あーなるほどね、うん。はいはい。オッケーオッケー。

 

うん……うん…………

 

駄目だ、全然駄目だ。何も書けない。こんなんじゃ1文字も書けやしない。

>>どんなふうに世界を見ているんでしょう?

……と多美さんはこの企画を説明しました。しかし僕は実はどんなふうにも世界を見ていなかったのです。中身はポートレート、スナップ、サンポーの取材。取材、取材、ポートレート。そんなんばっかりです。

 

「センス良いと思われたい」「面白いと思われたい」「尊敬されたい」「あわよくばモテたい」

 

この時、写真は僕にとって<世界を見た結果>ではなく<世間から見られるツール>であることが判明しました。なんだ、なんて薄っぺらい人間なんだ僕は。現在時刻は午前2時。歳は今年で22歳。夜の深さと自分の若さがちっぽけな自尊心に刺さります。そもそもウェブでライターなんてしている時点で僕は自己顕示欲の塊みたいなものですよ。
承認欲求お化けですよ、もう。ほら冒頭も見てください「僕がタイトル考えたんですよ」ですって。ああ~いやらしい!阿呆か。阿呆ですよ阿呆。

 

この企画どうしよう。編集長に頭下げて保留にしてもらおうかな。日向くんにゴーストライターしてもらおうかな、一応年下だし……。

 

そんな邪悪な考えがぶくぶくと湧き上がる中、素晴らしいアイディアが。幸いにも僕はiOSを7年近く使用しています。さすがに「承認欲求お化け川合」も7年のデータベースを遡れば1枚くらい「ピュアピュア少年かわい」だった頃の写真が出てくるはず。何も考えずに無意識に「あ」とシャッターを押した瞬間が画像データに封じ込められているはず。はず……!

 

写真を遡ること数分。親指が擦り切れてしまうのではないかというほどスクロールにスクロールを重ねた結果みつけた写真がコチラです!

 

 

 

2015年10 月7日。
兵庫県は西宮市、甲東園。当時の下宿から大学までの道です。

 

青い空、微笑みのような秋の陽ざし、遠く伸びるたった一本の道、彩る爽やかな緑。歩きながら適当に撮ったのでしょう、画角も別に格好良くも何ともないですね。

その時なぜ僕がシャッターを押したのか、今の僕にはわかりません。ただ綺麗だったから。きっとそんな単純な理由だったのではないでしょうか。

当時大学2年、西宮に引っ越してから初めての秋でした。その頃の僕には10月の空気――まるでホテルのベッドのシーツのような、夏が終わった安心感と冬を迎える緊張感の入り混じるパリッとした空気――が新鮮だったのかもしれません。

 

日常の全てが楽しかった。

 

歩いて大学に行く、授業に出ない。部室で64のスマブラをする。酒を飲み、すっかり寝静まった西宮の街を歩いて帰る。散らかった部屋で映画を見ながら眠りに落ちる。そんな毎日でした。未来や将来に不安を感じる余裕すらなかった。

 

22歳、大学生。内定なし。あまりに強すぎる自我に溺れライターになる未来を、その頃の僕はまだ知らない。

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