INTERVIEW

きょう、つくる人 第2回 – grasspool・小西弘恵

2015.11.06

岡安 いつ美岡安 いつ美

京都には個人で制作活動されているクリエイターがとても多い街。なぜクリエイターが多いのか?その理由はクリエイターたちが活動しやすい土壌が築かれていること、京都は芸大が多くて、クリエイター人口も多くて、それを発表できる場所が大小揃っていること、量販店には並んでいない“自分だけが知っているもの”に価値を見出すお客さんが京都にはたくさんいること……挙げだしたらキリがないほどの理由が揃っているからだと、私は考えます。

 

今回は京都で布雑貨を制作されているgrasspoolの小西弘恵さんにお話を聞きに行きました。「よく見たら何かの形に見える」という“もしもシリーズプロダクト”を軸に、現在は山をモチーフにしたトートバックやポーチを制作されている女性です。

 

grasspoolのプロダクトを手に取る度に感じるわくわくが、使うことやそれを持つことの楽しさを教えてくれます。そんなものを作り上げる小西さんは何を思い、制作に励んでいるのか。好きなことを仕事へすることへの覚悟、でも「ゆるく生きていきたい」という気持ちのはざまで揺れている彼女は、とても人間味にあふれる素敵な女性でした。

「それが一個あるだけで景色が変わるようなものを作りたい」 - 彼女の創作意欲の原点について

ーー:

grasspoolをはじめてどれくらい経ちますか?

小西弘恵(以下、小西):

始めて4〜5年経ちます。展覧会やイベントなどに出すようになったのは本当に最近ですね。

ーー:

それまでは作品を作ってストックしていた感じでしょうか?

小西:

それもありますけど、わりとぼんやりしていたんです(笑)バイトばっかしている時期とかもあって、『これでいっか』と思うこともあったんですけど。最近は気持ち的に覚悟できてきたところはあります。

ーー:

これでやっていこう、と。

小西:
揺らいでいた部分が固まったというか。趣味の延長くらいに捉えていたことに本腰を入れようと思えるようになりました。
 
最近は紹介でいろいろなところに誘ってもらえるので、紹介してもらえた手前やらないと!っていうことが続いていて。人に紹介してもらったおかげで自分を奮い立たせている部分はありますね。自分ひとりだったらもう辞めてたかもしれません。
ーー:

小西さんに作るものって、ありそうで見たことないようなものばかりでとてもユニークだと思うんです。作るものの形とかは自分で考えて形成されるのでしょうか?

小西:

何かに影響された、ってわけでもなく……布の端切れとかを触っていると意図してない形が出てくるんですよ。『コレなんかに使えるかも』っていうところからスタートしている作品が多いですね。

ーー:
トートバックを使わせてもらっているんですけど、とても実用的でがしがし使わせてもらっています。丈夫だし、物も入る。形も珍しいので持って歩きたくなるんですよね。自慢したい、というか。そういったものが実用的ってすごく魅力的で。そんなgrasspoolの商品について教えていただきたいです。
小西:
このポーチは山の稜線を見ていて、山にファスナーをつけたらポーチになるかなと思って。あとは布を何気なく触っていた時にこの形が出来上がって山に見えるなと思った2つきっかけがありました。手作り市に出品するために作品作りをしていて出来たものです。
 
この前カラスで合同展示をしていた人がシルクスクリーンもやっていて、模様も付けてもらおうと。オリジナルテキスタイルを作ったのはこれが初めてでした。10月の展覧会で柄を増やす予定です。
小西:

最初は角をマチとして折り畳んでいたものを出していたんです。でもそれを知り合いがぺこぺこっと出して使っていて、「これのほうがいいやん!」となりました。そのあとに、展示会を見にきてくださっていた方とかが、催事で出しませんかと声をかけてくれた商品で。せっかく出させてもらうなら、ということで改良を重ねて今の形になりました。

ーー:

grasspoolの商品はユーザーの意見が色濃く反映されているのですね。

小西:

作品というよりかは商品なので。使ってもらわないと嫌だし、使うことは想定して制作していますね。形が面白いからそれで良い、のではなくて。この形だから使うときこんな楽しさがあるなぁとか。そのバランスは考えて作ってますね。使いづらかったら使ってもらえないので。

ーー:

grasspoolが掲げている「もしもシリーズプロダクト」というコンセプトは昔からあった観点なのでしょうか。

小西:

昔からですね。布を触って形を作った時に、何に見えるか考えるんです。それで模様を付けたりします。今は山ばっかりなんですけど、ストーリーを作れるようなものは作りたいなとずっと思っていて。あとは誰でも知っているものをモチーフにはしたいと思っています。

ーー:

想像しやすいものの方が愛着わきますしね。

小西:
それが一個あるだけで景色が変わるようなものを作りたくて。
 
でも奇抜すぎてもいけない。鞄から出して恥ずかしくなるような突拍子もない感じよりは、言われたらああ見える、みたいな話の種にもしてもらいたいですし。そういったバランスを大切にしたいとは思っています。

アート作品ではない、商品づくりへの想い

ーー:

小西さんはものづくりの魅力はなんだと思いますか?

小西:
作ったものに責任を持って、商品として人が欲しいと思えるものを作れた時は嬉しいです。評価してもらって嬉しい、というよりかは、そういった感覚です。これ好きだから作りました、ではなく、それを作ったことによって誰かの日常に入り込めるならいいなと思っていて。
 
私が作っているものはアート作品ではないんで、展示品ではない。使ってもらう人がいることをよく頭にいれて。使ってくれているところを想像できるかどうかで商品になるかならないか、だと思うんです。人と共有できる部分がないのであれば良いものとは言えないのではないかなぁと。自己表現だけで完結しちゃダメだから。自己完結で終わってしまって、自分が伝えたかったとこが伝わってないな〜というときもあるので。そういう時はどんだけ自分がよいと思っても間違ってたな、と思うし。
ーー:

いろんな作家さんと話していて、ここまで消費者に寄り添う人のお話が聞けてなかったのでなんだかとても新鮮です。自分の作ったものが世に放たれた先を考える感じはデザイナー気質なんですかね。

小西:
前職が職人系の仕事だったので、自分の主張というよりかは、相手がいて要望があって、その中で自分の手で作れる範囲でやりたいというか。面白ければなんでもいい、とは思わなくて。
 
私は道具を作る人間なんですよね。そこから外れたら自分の作品になるかもしれないですけど。今作っているものを美術館に置こうとかは考えてないから、自分だけが良ければいいではダメなんです。
ーー:

自分のやりたいことをやるために仕事を辞める、という選択って勇気のいることだと思うんですが、その踏ん切りってどうやって付けられたのでしょうか。

小西:

私は物理的に仕事を辞めないと京都に来れなかったのが大きかったですね……。京都に仕事場があったら仕事を辞めずにgrasspoolをやっていたと思います。でもどこかで踏ん切りをつけないといけない、とは思っていたので。

ーー:

仕事は大変でしたか?

小西:

仕事は大変でしたが、とても好きでした。物を作ったり、裁縫をしたり。それをずっとやってくかってふと考えた時に「これは一生やっていかないな」と思ったんです。それならやりたいことを早めにやっておこうと。

ーー:

そこに一歩踏み出す勇気が、すごいなと思うんです。

小西:

やっぱ誰かを見ているんじゃないんですかね。誰かモデルになる人が身近にいて、やってる人いるしやってみよってなるんじゃないんですかね。意外と開拓者はいない、というか。私もそうだったので。自分ひとりでは何ともできないので助けてもらってきました。こっちに出てくるときも悩んでいたんですけど、悩んでいたことはお金のことだけで気持ちは京都にいっていて。そんなことを友達に相談していたら「お金はなんとかなるし、一回来てみたらいいじゃん」って言われて出てきました。なんとかなるし、なんとかなるようになっていると思うんですよ。裕福とかを目指さなければね。

ーー:

最低限の生活が営めれば、ですよね。

小西:

おしゃれがしたいとか、旅行したいとかは難しいかもしれないけど、好きなことをやりながらなんとか生活するっていうことは不可能ではないと思うんです。そこが覚悟なのかと思いますよ。

ーー:

しんどいときとかもありますよね。

小西:

夜とか眠れないときもありますよ(笑)

ーー:

ひゃ〜(笑)

小西:

老後どうなるんだろ、とか考え出したらもう(笑)守られていない感じがね。でもそこを考えて今を選ぶか、それでもやりたいってなって好きなことをするか。両方手に入れることはなかなか難しいことだと思うんです。

ーー:

いやあ、わかります。

小西:

私もそこで悩んではいるんで大丈夫だと思いますよ。あるじゃないですか、同世代の友達が就職しているし、ちゃんと働いていて、結婚もして、子育てもしているような世代なんで。今この状況に劣等感を感じる瞬間もあります。でも今更無理や、と(笑)そしてこのまま変なおばさんになるしかないんだと。

新しい方法を探る未来へ

ーー:

今後の展望はありますか。

小西:
とりあえずこれで食べていけるようにはなりたいです。
 
最終的には自分のお店が欲しくて。そこを目指していきたい。自分が作っていることが武器になるようにしたくて。今は仕方なく、自分で作るしかないから自分で作っているところはあって。手を動かすのは好きなんですけどね。それを続けて行けるようなやり方を見つけて行きたいなとは思っています。
ーー:

現状運営していて難しい点はどんなところでしょう?

小西:
今のやり方は正解ではないと思っていて。どこかに発注して作ってもらったら、空いた時間で新しいものを作ることができるので。そうするためにも自分の中でどう整理を付けていくか、それが整理がついたらもっと動けるかなと思っています。
 
置く場所もとても難しいです。クラフト系の中に入ったら気付いてもらえなくて。手づくり市でペンケースを3000円で売ることはありでも、大手の量販店で売ってもらおうとすると高い、と。なんでこんなに高いの?って聞かれるんです。自分で作ってるんで、というと目を丸くされます(笑)発注出して、安く売れよ、みたいな。
 
その上、今売っている商品が手作りであることが良さにもなっていないので。
ーー:

たしかに手作りの商品には見えないです。

小西:

そのへんがとても難しいですけどね。がんばります。

ーー:

ありがとうございます。それでは最後に京都の魅力ついてお聞かせください。

小西:
京都の人ってプライド高い、とか言われるかと思うんですけど、単に自分の住む土地に誇りを持っていることだと思っていて。でも懐が深いので受け入れてくれるし、意外と優しいと思っています。外から見てるときついかもしれないけど、一度中に入ってきたら受け入れてくれるし。
 
あとは川、ですかね。鴨川、桂川とか川の近くに行くと落ち着きます。川の近くにあるパン屋さんでパンを買って川へ行くと、橋の下でトランペット吹いている人がいたりして。人はいるけどがやがやしすぎない感じがとても落ち着くのでのんびりするのがおすすめです。

grasspool 小西弘恵

 

テーマは「もしもシリーズプロダクト」。「もしも◯◯が△△だったら…」という発想をもとに誰もが見覚えのあるモノや風景をモチーフにしたプロダクトアイテムを展開しています。

 

アイテムは全て、京都のアトリエにて手作業で製作しています。モチーフの形の特徴やイメージを取り入れる事で生まれる必然的な機能性やデザインを活かしたアイテム作りを目指しています。

 

何でもない日常に彩りを添えられるような、使っていて楽しくなるようなアイテムを作り続けていきたいと思っています。

 

1985年 香川県 生まれ
2008年 京都嵯峨芸術大学デザイン学科 卒業
2008年 徳島の椅子製作所勤務、ミシン縫製を担当
2011年 活動の拠点を京都に移動 、 grasspool始動

 

https://www.grasspool.com/

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