INTERVIEW

ムッティーの”マインド”ハシゴ酒 vol.1~おばんざいダイニングこころ 山本 耕大(フレッシュ・コータ)編

2017.04.06

小倉 陽子小倉 陽子

 

 

▼ムッティーの”マインド”ハシゴ酒

ムッティーが気になる人とお酒を飲みながら、気になる人の”マインド”とそのマインドによってもたらされたお店の話、音楽の話を掘り探っていく企画『ムッティーの“マインド”ハシゴ酒』がスタートします!第1回目のゲストは、西院でおばんざいダイニング『こころ』を経営しながら、フレッシュ・コータとしてFRESHMANSなどで音楽活動を続ける山本耕大さん。ムッティーがその居心地の良さに、初めてひとりで行きつける『こころ』。そこに宿る山本さんのマインドに、好奇心でもって迫ります。

 

こころのスポット記事はこちら

 

 

 

 

 

生活のための音楽から、音楽のための生活へ

 

ムッティー:僕、一人で飲みに行くことってしていなかったんですけど、こころには一人で来れるんですよね。

 

山本:そうか!それは嬉しいな。

 

ムッティー:一昨年から自分の店、スタジオIZをやり始めて、店づくりって自分が思う内装とか雰囲気、温度とかを反映させていく作業だと思ったんです。コータさんのこころは居心地良くて出来上がってるなぁって思うんです。きちんとコータさんのマインドが表明されてる店やな、って思うんでその辺を色々伺っていきたいなと。

 

山本:店を一人で切り盛りするって、誰も助けてくれへんし、しんどいもんよな。

 

ムッティー:そうなんですよ、一年半経っても色々不安で。そもそもなんで居酒屋を経営することになったんですか?

 

山本:音楽仲間のお母さんがこの場所で店をやってたから、たまに飲みに来てたんやけど、ある日店を閉める話をしていて。「もったいないし誰か居抜きで入ってくれたら助かるねんけどな」、って言うから、「じゃあ僕やります!」って急にやる気になって。

 

ムッティー:そのときでおいくつでした?

 

山本:37歳ぐらいとかかな。音楽中心に好き勝手やってきて、引くに引けへんようになってて。でも音楽はもう生活のためにするんじゃなくて、音楽することが生活の一部やったから、そこは辞められへん。かといって、前のバイト先で社員にならへんか?って言われてたけど、それも違うなって意地になってて。

 

 

 

 

ムッティー:ちなみに音楽を生活のためにやるんじゃないって思えたのって、どのタイミングでした?

 

山本:紺風少年始めたのが27歳で、そのバンドは音楽で食べられるようになりたいって思って頑張ってたから、解散したときがそういうタイミングやったかな。次に始めたAYA OTO WORLDはインストバンドで、もう食べるためにとは思ってなくて、やりたいことをやろうと思ってたね。

 

ムッティー:紺風少年は何で解散することになったんですか?

 

山本:30歳になる年に、レーベルからCD出しませんか?って声が掛かって。ラストチャンスやなと思っててんけど、そのアルバムが恐ろしいぐらいスベってな。JAMバンドとしての自負もあったのに、CDにするためには4~5分の歌ものに仕上げなあかんとか、求められるものと凄い落差あったりして。そのリリースを経て、メンバーもめっちゃ仲悪くなって解散してん。でもその後メンバーは店にも来てくれるようになって、今は仲良くなったけど。

 

ムッティー:僕今33歳なんですけど、まさに音楽を生活のためにやるんじゃないって思えてるんですよね。でも居酒屋経営に勝算ありました?

 

山本:自分の店やったら自己責任やし、好きな時に店休めるし、音楽も出来るしええやん!って閃いた感じかな。でも休んだら収入無くなるから休めへんことに気付いてんけどな (笑)。とにかくお酒飲むのがめっちゃ好きで、家ではあんまり飲まへんねんけど、外でほぼ毎日飲んでたから、居酒屋はええなと。

 

ムッティー:お酒好きやから店も出来るやろうって感じですか?

 

山本:そやな、でも俺元々どこ行ってもビールしか飲まへんかってんけど、さすがに店始めてこれだけ酒揃えてたら味の話になるから、店に置いてるお酒は一通り飲んだけどね。笑四季 (えみしき) っていう、その右から2番目の日本酒な、あれ飲んで衝撃受けたん。日本酒はワンカップのイメージしかなかったから、初めて日本酒がめっちゃ美味い!って感じた。

 

 

 

 

 

毎日通える気軽さと、毎日を飽きずに面白がれること

 

ムッティー:西院には、こころを始めてから住み始めたんですか?

 

山本:いや、そのちょっと前から住んでたかな。西院って居酒屋も、駐車場代も、色々安いねん。それまで洛西に住んでたんやけど、お金がないから車で西院に来て、西院で飲んで車で寝てから帰る、みたいなことをしてた。

 

ムッティー:僕はスタジオ始めて伏見から引っ越してきたんですけど、このエリアは色々まだ謎なんですよね。西院ってどんな街ですか?

 

山本:西院は面白い街やと思う。大宮にも面白い店は多いねんけど、結構すぐ閉まるねん。西院は結構眠らない街で、そんなに繁華街じゃないのに夜遅くまで空いてる店が多かったりして。それは何となく俺もまだ介入出来ていない西院のヒミツみたいなものを感じるというか。朝10時まで空いてるような店もあるし不思議やなって思うな。

 

 

 

 

ムッティー:こころにはどんなお客さんが来られるんですか?

 

山本:最初は周りのバンドマン仲間にめっちゃ助けられてたけど、それから段々音楽好きな人が見つけてくれるようになって。でも、ただお酒が好きな通りすがりの人とかも来るね。値段が安いから、毎日軽く飲みたいって週5で来る常連さんもいるし。

 

ムッティー:週5って凄いですね……。

 

山本:それこそ、店のコンセプトとして『毎日来られる店』にしたいと思ってるからなぁ。「あの店良いけど、行けて月に一回ぐらいやな」っていう店になるよりは、毎日通ってもらいたいから、ありがたいことに常連さんは多いな。

 

ムッティー:『毎日来られる店』にするためにこだわってることってあります?

 

山本:まず値段が安い、これは絶対外せへん。こころのお客さんの平均単価って1,600円ぐらいやねん。大体、黒霧島・いいちこ・二階堂が360円で最安値なんやけど、チャンスボトルっていって、もうちょっと単価が高いお酒を350円で飲めるシステムがあって。お通しプラス4杯飲んで、1,600円ぐらいやろ?

 

 

 

 

ムッティー:安いっすね!でも僕もうちょい食べるんで、多分毎回4~5,000円は使ってるんちゃうかな?ヤマロンチーノがめっちゃ美味いんですよ。

 

山本:ムッティーめっちゃ食べるもんな。あとは、落ち着く場所っていうのを目指してるかな。

 

ムッティー:コータさんの「落ち着く」ってどんなんですか?

 

山本:あんまり固っ苦しい接し方じゃなくて、良い感じに雑に、かな。かしこまらず、気軽な場所やと毎日来てもらいやすいと、俺は思ってるねん。あとは常連さんの好みとかも意識してるかも。

 

 

ムッティーお気に入りの”ヤマロンチーノ”。うどんを使ったペペロンチーノ風創作料理は素朴だけど、個性的で確かな美味しさです。

 

 

ムッティー:毎日、って面白くなくなってきません?

 

山本:今日は何曜日やから、多分この人が来るんちゃうかな?と思って備えると、その通りにまわることもあるし、予想と全然違うことが起こることもある。それはそれで毎日を楽しんで面白がることが大事やなぁと思うねん。よく飲みにきてくれる常連さんで、来る頻度や曜日は全然違うんやけど同い年の3人が居て。でもその方たちがたまたま同じ日に揃ったら、常連三銃士キター‼って感じで、めっちゃ嬉しい (笑)。そういう楽しみ方をしてるかな。 普通の人みたいに長い休みをとってどこかに行くとかは無理やけど、とにかく毎日が楽しいよね。

 

ムッティー:面白がるってほんまに大事ですよね。でも毎日って……僕スタジオでバーを併設してたんですけど、毎日バーに立つのしんどくて、結局今、表立っては開けてないんです。

 

山本:バー併設ええやん!スタジオ以外の収入得られるし、お酒飲んだらお客さんとの繋がりも広がっていくし。俺も店始めてからめっちゃ広がったもんな。

 

ムッティー:いや、音楽活動続けてる奴のことちょっと下に見てくる人とか、会社の愚痴言いにくる人とか、そういう人がスタジオに酒飲みに来るんがどうしても僕のマインドにハマらなくて……。そこは全然広がらなかったっす。

 

山本:そうか……ここはまぁ音楽好きなお客さんが多いけど、ただ単に会社の愚痴言いに来る人とかもおるな。それはそれで、酒飲んで愚痴って忘れて明日の仕事頑張れるんやったら、ここではなんぼでもどうぞって感じで。ムッティーんとこは、スタジオに音楽しに来る人との繋がりを広げていったらええんちゃうかな。

 

ムッティー:こころでも時々ライブやってますけど、オープン当初からライブ出来る場所にしようと思ってたんですか?

 

山本:いや、始めるときは全然思ってなかったけど、プレオープンの期間中に西院に住んでる知り合いのミュージシャンを呼んでライブをしてもらって、そのときに薄っすらとこれもアリかな、と思い始めた。それから遠方のミュージシャンが関西に来るときにはここでもライブしたいって言ってくれて広がった感じ。

 

ムッティー:ここでライブされるミュージシャンは、コータさんが呼んでくるんですか?

 

山本:例えば、俺青谷明日香さんが大好きで。彼女は俺が紺風少年やってたときから繋がってたんやけど、青谷さんの曲最近めっちゃ聴いてる、ってことをツイッターで呟いてたら、青谷さんからこころでライブやりたい!って反応もらって。すぐ呼んだな。

 

 

“異端児の城”/青谷明日香

 

 

ムッティー:元々はライブするのが目的じゃなかったとはいえ、ライブ会場としての使命感とか出てくるんですか?

 

山本:使命感ではないけど、ちょっとでもまわりで音楽やってる人たちにスポットライトが当たったらいいなぁ、という気持ちは居酒屋ながらにあるかな。若いバンドの人たちってライブハウスでノルマ取られたりするやん。それでも一生懸命頑張って、対バン目当てのお客さんとかに気に入ってもらってどんどん広がっていくっていうのを信じてるわけやんか。この辺で言ったら西院GATTACAは頑張ってるし、僕も出ることあるけど、GATTACAに出てる若いバンドはもっと脚光浴びて、もっと色んな人の目に耳に止まる存在になって欲しいって思ってる。

 

ムッティー:そうやって出会えた人たちをまたこころのライブに呼んだりして。

 

山本:良いバンドやからって、こころでライブしぃや!とまで俺は言えへんけど、こころは音楽で色んな人と出会えた場所やから、それを音楽で還元したいとは思うね。昔はそんなこと思わんかったけどな。若いミュージシャンに対して「俺の方が絶対格好良い!」とか思ってたし (笑)。でも今は本当に、頑張ってるバンドを応援したいって思う。良いバンドが注目されてなかったら、ライブする場所間違ってるんちゃう?と思ってしまうし。

 

 

“ある晴れた空の真ん中”/Indus&Rocksこちらも山本さんおススメのバンド。こころでも2回ライブをされ、そのときがこころ史上一番の爆音だったとか。

 

 

 

音楽好きな人、お酒好きな人と対面で繋がれる毎日

 

ムッティー:今一番やりたいことって何か思いついてます?

 

山本:それは音楽で?

 

ムッティー:音楽でも、音楽以外でも。僕今、音楽でやりたいことがないから困ってるんですよね……。全部何でも楽しいし、飲んだことないお酒飲むのも楽しいけど、ほんで何しよっかな、って感じなんですよね。

 

山本:歳とってくると色んなものを受け入れて楽しめるようになるというか、懐が深くなると思う。俺やったら店が居酒屋であることによって、色んなお酒を知れるやん。スタジオにはスタジオだけの特権……常に音楽に携わってられるって凄くうらやましいと思うし、俺はここを音楽に特化した居酒屋にしたいと思ってる。だからこんなに壁にCD並べて飾ったりしてるわけやし。音楽でやりたいことやったら、今やってるFRESHMANSていうバンドかな。今は店があるから難しい部分もあるけど、本当はもっと新しいことしたいっていう気持ちもあるんやけどな。

 

 

 

 

ムッティー:お店はずっと続けていきたいと思います?

 

山本:俺は基本的に現場を人に任せる社長向きじゃないねん。自分が人と触れ合っていたい。お金持ちになりたいとかもないねん。西院って言ったら”居酒屋こうちゃん”とか一人でずっとやってはるやん。ああいう風にやっていきたいかな。あと、こころは常連さんでも新しく来てくれるお客さんも、大体音楽を好きなお客さんが多いし、やっと来れたって!っていう人も来てくれる。そんな人たちと繋がれるのが嬉しいし、常に人と関わっていたいという気持ちが強いから、ずっと店には立ってたいね。

 

ムッティー:お店をずっとやっていくって、自分でやってるのにやらされてる感出てしまうことありますよね。今すぐやりたいことと、今すぐやらないといけないこととか積みあがるタスクがあって、全部やりたくなくなったりすることがあるんです。今回、コータさんの毎日を面白がるマインドに触れられて、こころの居心地の良さと合致して、僕もスタジオIZを僕の城にしていく勇気をもらいました。また、イベントとかもやりたいですね。

 

山本:それはやろう。あれ前のイベント何やったかな……俺がたまたま散歩してて、IZってここやったんや、みたいな話で立ち寄って。中見せてもらったときにここのスペースでライブやったらおもろいやん!ってなってんな。

 

ムッティー:そうなんです、コータさん出てくれるんやったらイベントやってもいいかな、って思ったんです。僕、ここまで頑張ってもうコータさん呼べるようになったんや!!みたいな。

 

山本:もう、ってどういうこと?(笑)

 

ムッティー:20代のときに憧れてた紺風少年のコータさんやし、その頃の自分からしたら、10年後スタジオ経営して自分で人呼んでイベントやって、なんてしてると思ってなかったから。1年目めっちゃ頑張ったご褒美に自分が見たい人だけ集めて、自分のことを褒めたいみたいな気持ちはありましたね。

 

山本:そういう楽しいことは、またすぐやろう!

 

 

photo by 益戸優

 

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