COLUMN

マグナム本田の妄想続編 〜今度は戦争だ!~『グリーンルーム』

2017.05.02

マグナム本田マグナム本田

 

ある休日の午後、「もし自分が芦田愛菜ちゃんであったなら、どんなわがままを言って周りの大人たちを困らせてやろうか」というテーマを掲げ妄想していたところ、どこで私のことを知ったのか、ある男から連絡があった。男は京都のカルチャーを発信する、とあるウェブ媒体の編集長であると名乗り、「貴君の妄想力を見込んで連載をお願いしたい」といった旨の連絡であった。詳細を聴くと「京都で公開前の映画を観てその続編を勝手に妄想し、それを記事にしてくれたまえ」とのこと。これを聴いた私は「やったー!公開前の映画を観たって映画好きの友人知人達に自慢できるー!」と思い、即連載を引き受けた。

 

少しだけ私のことを説明しておこう。私は”マグナム本田と14人の悪魔”というグループの中心人物、マグナム本田でありシアトリカル・テクノ・ポップ、通称TTPというごくごくありふれたジャンルの音楽を演奏しており、京都のアンダーグラウンドではそこそこ知られているが、その知名度の大半は悪評であるという、簡単に言えば売れないミュージシャンである。

 

私のライブ演奏は映画から多大なる影響を受けていることもあり (意味がわからないであろうが、一度ライブを観てもらえればわかる) 、今回のオファーに関して白羽の矢が立てられたのであろう。

 

 

 

映画『グリーンルーム』のあらすじ

 

 

というわけで私は送られてきたDVDを嬉々としてプレイヤーにセットした。作品は京都みなみ会館で5月6日より公開されるサバイバル・スリラー『グリーン・ルーム』である。所謂ジャンル映画と呼ばれるものが大好物である私は公開されたら普通に観に行こうと思っていた作品なので、それを京都でいち早く観賞できる喜びでルンルンとした心持ちでスタートボタンを押した。実際に「ルンルン」と声に出していたかもしれない。

 

以下は公式サイトによる『グリーン・ルーム』あらすじである。

 

 

 

売れないパンクバンド”エイント・ライツ”は、ようやく出演が決まったオレゴンの僻地にある名もなきライブハウスに出向く。しかし、そこは狂気のネオナチ集団の巣窟だった—。 殺伐とした雰囲気の中、なんとか無事に演奏を終えたバンドメンバー達だったが、バックステージで運悪く殺人現場を目撃してしまう。冷酷なネオナチのボスは全ての目撃者を消すことを部下たちに命じ、メンバー達は全員命を狙われるはめに。状況は圧倒的に不利、人数も武器の数も絶望的に負けている。恐怖におびえるバンドメンバーたちは、楽屋に閉じこもり時間を稼ぎながら脱出を企てるが、重装備のネオナチ軍団が次々に襲い掛かり、メンバー達を血祭りに上げていく……。

 

HP:http://www.transformer.co.jp/m/greenroom/

 

 

補足しておくと作中に登場する”ネオナチ集団”とは所謂”スキンズ”と呼ばれる集団であり、坊主頭でナチスや南北戦争における南軍旗のワッペンをつけたMA-1などのミリタリージャケットを愛用し、足元はドクター・マーチンの8ホール、タイトなジーンズに戦うボディーをねじ込み、思想的には左の翼の折れたエンジェル、つまりは外国人排斥、白人至上主義などの極右思想を掲げ、そういった内容を歌うハードコアパンク (ナチパンクと揶揄される) を好む集団であり、暴力沙汰も辞さないことから世界的に危険視されている集団である。98年の映画『アメリカン・ヒストリーX』を観てもらえればより理解が深まるであろう。

 

 

 


パンクロック!暴力!かわいいワンちゃん!と、大満足の観賞後、私は本連載の趣旨である続編『グリーン・ルーム2』の妄想を始めたのだが、ここである問題にぶち当たった。事前に編集長から「公開前作品であるからして、くれぐれもネタバレだけは避けてくれたまえ!」と釘を刺されていたからである。本作『グリーン・ルーム』はサバイバル・スリラー、つまり誰が生き残るかが重要であり、続編に1作目の登場人物を配した場合ネタバレになってしまうのである。が、私はそんなことでは動じない。ここは『プレデター2』方式でいこうと決めた。大人気シリーズ『プレデター』は1作目と2作目では舞台設定、登場人物が全く違うので『グリーン・ルーム2』もこの方式で行くことにした。

 

 

本作の重要な点は「パンクス vs スキンズ」の戦いがライブハウスという限定空間で行われるということである。この部分は続編でも継承することとして、今回はパンクスとスキンズの立場を逆にしてはどうかと考えた。

 

というのも実際のアメリカのライブハウスシーンにおいてはリベラル寄りのパンクスの方が圧倒的多数であり、ナチスのワッペンでもつけたMA-1なんか着ていこうものならパンクス達に袋叩きに遭うという。つまりスキンズの方が暴力沙汰の被害者になることが多いというわけで、今回は主役と悪役を交代させるというファミコンにおける”ドンキーコングJr.”方式を採用した (わからない人はお父さんに聴こう)。

 

 

 

スティーヴン・セガールを主役に推したい3つの理由

 

 

さて、主役である。1作目ではX-メンシリーズでプロフェッサーXを演じたパトリック・スチュワートが悪役のスキンズの思想的リーダーを演じている。本作の前情報を聴いたとき彼の頭髪事情を鑑みて「パトリック・スチュワートがスキンズか……なるほどな!」と思ったものだが、これを受け、今回の主役たるスキンズのリーダーは誰にすべきか……

 

ここで私はスティーヴン・セガールを推したい。なんてことを言うと「いいかげんなことを言うな!スティーヴン・セガールといえば豊富な頭髪を結わえている、もしくはオールバックにしているイメージではないか。スキンズと真逆ではないか!」と怒りだす方もおられようが、ぜひ「セガール 髪型」で画像検索して頂きたい。これ以上言うと大阪十三方面から命を狙われることになるので口を噤むが、私の言わんとしていることを理解して頂けると思う。

 

 

 

 

セガールを主役に据える理由はまだある。彼は本作『グリーン・ルーム』のような限定空間における戦いに滅法強いのである。セガールの名を世界に広めた”ケイシー・ライバック”シリーズの1作目『沈黙の戦艦』では戦艦、2作目『暴走特急』では走行中の列車という限定空間で戦いを繰り広げ、『暴走特急』では杉本哲太似の中ボスを倒した後に「キッチンで負けたことはないんだ!」と言う通り、本人もそのことを自負している。

 

また本作『グリーン・ルーム』は主人公達がその場にあるものを工夫して戦いに利用するのも見所なのだが、これもセガールの得意分野である。セガールは漂白剤やベーキングパウダー、ヤシ油などのキッチン用品で爆弾を作ることもできるし、携帯電話などなかった頃にApple社製のPDA (電子手帳のようなもの) を切断された電話線に繋ぎ、外部にファックスを送るなどハイテク分野にも強い。ライブハウスにはアルコール類や洗剤はもちろん、アンプなどの爆発しそうな機器がたくさんだ。セガールやりたい放題である。

 

そしてセガールを『グリーン・ルーム2』の主役に据える決定的な理由がある。この記事をご覧になっている方でギター雑誌”Player”のバックナンバーをお持ちであれば2005年12月号を開いてほしい。現れるはずである、愛用のヴィンテージギターを抱えたセガールの姿が。そう、スティーヴン・セガールという男、知る人ぞ知るギターの名手でもあり、かのスティーヴィー・ワンダーとも共演したりしている。そんなセガールにとってライブハウスなど庭も同然だ。

 

 

 

音楽の力で姪っ子の笑顔を取り戻す!

 

 

さて、ここからは『グリーン・ルーム2〜沈黙のラスト・ギグス〜(仮)』の具体的なストーリーについて考えていこう。セガールの役どころは”元・アメリカ軍特殊部隊のスキンズ”やはりこれだろう。別に”元・CIA特殊エージェント”、”元・FBI特別捜査官”でもいい。とにかく「特」という字の付く肩書きがセガールには似合う。

 

セガールは特殊部隊の隊長として同じく特殊部隊隊員の弟と共にベトナム、ソマリア、アフガンと戦場を渡り歩き、各地で功績を上げた。しかしこの戦場を最後に引退するつもりでいたイラクで悲劇が起きる。弟と共に自爆テロに巻き込まれたのである。弟はセガールを庇い、爆発をもろに受け戦死。セガールも頭部に重症を負い意識不明の重体で病院に担ぎ込まれる。

 

セガールが昏睡状態から目覚めたのは7年後であった。軍は除隊扱いとなり、故郷のミシガン州の病院の一室で体にたくさんのチューブをつなげられている自分の姿を見て7年前の悲劇を思い出し、悲しみと後悔にくれていた。

 

そこにセガールが意識を取り戻したことを聞きつけた弟の娘、つまり姪っ子が現れる。小さい頃はセガールによくなついていた姪っ子であるが、なにやら様子がおかしい。セガールに対し怒りの表情すら浮かべている。弟の死のことを聴いていたセガールは納得した。弟はセガールのために死んだも同然だからである。たいして言葉も交わさず去っていた姪っ子の背中を見送りながら、戦場を駆けぬけてきた我が人生に虚しさを覚えるセガール。「平和のためにオレ達は戦ってきたのに……有色人種の奴ら、全然わかってねえ!」そしてセガールは決意する。世に白人至上主義を訴えることを。拳ではなく、音楽の力で!姪っ子の笑顔を取り戻すために!

 

東洋医学に造詣の深いセガールは医者の言うことを無視し、お灸や不思議な動きのトレーニング、よくわからないお茶などによりかつての肉体を取り戻す。医者が止めるのを振り切って退院したセガールはスキンズ右翼パンクバンド、「グリマーマン (“気付かれることなく一瞬で敵を倒す男”という意味)」を結成する。セガールはもちろんギターボーカルだ (ベースとドラムはブルース・ウィリスとケビン・スペイシーあたりがいいだろう。理由は訊かないでほしい)。7年間の昏睡状態故に頭髪のメンテナン……いや、調整をしなかったので、なにもせずとも自然にスキンヘッドだ (専属の頭髪関連のスタッフ雇わなくて済むので撮影経費も浮くであろう)。

 

 

 

もちろんここからはいつものセガール映画のパターン

 

 

全米各地の小さなライブハウスを周るツアーに出るグリマーマンの面々。機材を乗せたバンはサンフランシスコに到着する。もともとリベラルな土地柄に加えて左翼パンクバンド「デッド・ケネディーズ」の牙城であるこの地はグリマーマンにとってアウェー以外のなにものでもないが、そんなことよりもセガールには気がかりなことがあった。小さい頃に「ゴールデン・ゲート・ブリッジを見たい」と言っていた姪っ子をサンフランシスコに招いていたからである。


今夜演奏するライブハウスに着くとマイナー・スレットのTシャツを着たいかにもリベラル風のオーナーが出迎える。敵であるオーナー役はケビン・ベーコンがいいだろう。ケビン・ベーコンが悪役を務める映画は間違いないからである。

 

そしてグリマーマンの出番がやってくる。ステージ前はTシャツに短パンの貧乏臭いガキ共ばかりだ。スキンズルックに身を固めたグリマーマンは登場しただけでブーイングの嵐。セガールは唯一できる演技「やれやれだ……」といった表情を浮かべながらメンバーに耳打ちする。そしてセットリストにはなかったSpirit of 88の”White Power Skinheads”のカバーから演奏をスタートする。

 

左翼共のブーイングにまみれながらも演奏を終えたセガールが楽屋に戻ろうとすると、楽屋口には姪っ子の姿が。姪っ子はどうやらグリマーマンを気に入ってくれたようだ。荷物をまとめ、姪っ子と目当てのゴールデン・ゲート・ブリッジ見物に出かけようとするが、忘れ物に気付くセガール。姪っ子とメンバーをフロアに残し楽屋のドアを開けると、なんとそこではオーナーでありパンクスのリーダーでもあるケビン・ベーコン含む馬鹿な左翼共の内ゲバ殺人が起きていた!(アメリカの左翼が内ゲバをするかどうか知らないが、私を含めたセガール映画愛好家は「左翼=内ゲバ」といった短絡的思考の持ち主なので気にしないだろう)

 

目撃者を消すべくセガールに襲い掛かるパンクス達。しかし合気道をベースにした拳法「セガール拳」十段であるセガールにとっては敵ではない。次々とパンクス達を血祭りに上げるセガールであったが、楽屋に閉じ込められてしまう……。

 

ここからはいつものセガール映画パターンである。ギターのピックアップを切断された電話線に繋いでモールス信号を送ってもいいし、酒と洗剤とかを混ぜたものをレンジに突っ込んで爆発させてもいいし、ビリヤードの球を手ぬぐいでくるんで殴られたら痛そうな武器を作ってもいい。肩を銃で撃たれるも平気な顔して「貫通しているから撃たれたうちには入らない」と言って観客を一切ハラハラさせないのもいい。

 

そしてラストは取り置きリストから特定した姪っ子を人質にとるという、セガールの前で最もやってはいけないことをした左翼パンクスのリーダーをギタギタにし、脳天にナイフを刺して頭をブラウン管に突っ込んで大団円だ。

 

 

『グリーン・ルーム2〜沈黙のラスト・ギグス〜 (仮)』の監督はこの人

 

 

いやあ、セガール映画の魅力を一つにまとめた、我ながら実に見事なシナリオだ。なんてことを言うと「ユダヤ系が多くリベラルなハリウッド映画界がこんなゴリゴリの右翼礼賛映画の製作を許すわけがないだろう!こんなことを書いているお前は実生活がうまくいってないのを社会のせいにして、問題に立ち向かうならまだしも、自分よりも弱いものを攻撃して鬱憤を晴らしている”ネトウヨ”とかいうやつに違いない。そんなだからお前は童貞なのだ。ここまで読んで損した。時間を返してくれ」という人が出てくるだろうが、ちょっと待って欲しい。私はネトウヨではないし、ちゃんと考えがあってこのシナリオを書いているのだ。こんな企画がすんなり通ると思うようなバカでは……あっ!あと断じて言うが私は童貞ではない!ペッティングだって結構している!

 

『グリーン・ルーム2〜沈黙のラスト・ギグス〜 (仮)』をただの右翼礼賛映画にしないための鍵、それは監督の人選である。私はこの作品を大傑作『ロボコップ』のポール・ヴァーホーベンに監督してもらうつもりだ。ヴァーホーベンはかつてロバート・A・ハインラインのゴリゴリの右翼SF小説『宇宙の戦士』の世界観を忠実に描きながらも、たっぷりの皮肉を込めて思想的には全く逆の主張をした『スターシップ・トゥルーパーズ』を監督し高い評価を得ている。彼ならばこのシナリオを一見普通の、脳細胞を1ミリも働かせずに観られるセガール映画と思わせながら、実は深読みすると苦いユーモアが垣間見える、含蓄ある作品に仕上げてくれるだろう。これならハリウッド映画界も納得するはずだ。

 

 

 

 

おお、考えれば考えるほど『グリーン・ルーム』はスティーヴン・セガールが続編を演じる為に作られた企画であると思えてならない。制作会社様には続編制作が決定した際はぜひ私にご一報頂きたい。脚本執筆の準備はできている。

 

というわけで『グリーン・ルーム2 〜沈黙のラスト・ギグス〜 (仮)』 (制作・公開未定) をお楽しみ頂く為にも、5月6日京都みなみ会館にて公開される『グリーン・ルーム』にぜひ足をお運び頂きたい!

 

 

上映情報

 

 

上映期間:2017.05.06〜

 

HP:http://kyoto-minamikaikan.jp

 

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