INTERVIEW

私たちがアンテナをやる理由。

2017.06.01

岡安 いつ美岡安 いつ美

アンテナは2013年フリーペーパーアンテナvol.0の発刊から始まり、今年で設立から気がつけば4年の月日が経とうとしています。日々カルチャーと向き合い、深い歴史と文化が刻まれた京都から情報発信を続けてきました。そもそも私たちは何故カルチャーをフォーカスする対象として選び、京都から発信することにこだわり続けているのでしょうか。

 

それはアンテナの創始者であり、編集長の堤大樹がバンド活動でライブハウスに出入りしていた時に感じたことがきっかけでした。 改めて自分たちが発信するメディアと向き合っているか。また私たちの今の想いをお伝えするだけでなく、これまでを振り返る意も込めて本記事では編集長・堤にインタビューを行いました。アンテナ設立の想い~アンテナの未来像までをお伝えします。

 

 

インタビュー:稲本百合香

編集・写真:岡安いつ美

 

どこ行ってもいつも同じ顔の人見るよね、そんな状況を打破するために

 

――2012年にスタートしたアンテナですが、始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

 

 

僕は大学4回生の時からAmia Calvaというバンドをやっていて、 「何で僕たちのバンドにはお客さんが付かないんだろう」と考え始めたのが最初のきっかけかな。今思えば完全に自分たちの責任で「そら売れねえわ」って感じなんだけど、そんなことをぼんやり考えていたら京都のライブハウスにはいつも同じお客さんばかりが来ていたり、身内のバンドマンが多い状態が気になった。そこから改めて新しいお客さんが増えないことに何の要因があるのか考えたときに、「そもそものライブハウスに来る母数が少なすぎる」って思ったのよ。

 

 

――確かに私もライブハウスに行くと同じ顔しか見ないことが多いですね。

 

 

この悶々とした想いをライブハウスの店長はもちろん、他カルチャーに従事している映画館の館長とかギャラリー関係の方に話してみると、彼らも僕らと全く同じ問題を抱えて、似たような課題を感じていた。例えば京都のミニシアター界隈であれば、『立誠シネマ』『京都みなみ会館』『京都シネマ』とミニシアターが3つあるけれども、どこ行ってもいつも同じ顔の人見るよね、みたいな。そんな状況を打破するために、新しい出会いや発信の仕組みを京都で作ろうと思って始めたのよ。

 

 

――なるほど。「同じ顔ぶればかりが集まる現状打破をしたい」という堤さんの考えが『アンテナ』設立に繋がったわけですね。バンドマンの堤さんが音楽以外の様々なカルチャー取り上げるようになったのはそんないきさつがあったとは。

 

 

僕は人々がジャンルを問わず、アーティストやカルチャーに出会う場所を作りたい。音楽をやっている人で、映画やアートも好きな人が多かったりもするでしょ?クリエイターは特に、自分が制作しているカルチャー以外から影響も受けていることも多い。だから特定ジャンルのカルチャーだけでなく、それらを横断できる何かを作りたかったんだよね。

 

 

――具体的にアンテナが動き出したのはいつ頃なのでしょうか。

 

 

京都のインストバンドsowのGt.吉村と一緒にタッグを組んで開催した“チチカットフォーリーズの夜”というイベントがあって、それが僕が想っていたことを形にする第一歩だったかな。音楽や映像、アートを融合させることをテーマに2回行った。このイベントを開催した後に、当時ライブハウスで働いていた副編集長の岡安とも知り合ったのよ。彼女に「京都でカルチャーを発信するメディアを作りたい」って話をして、彼女も関西にメディアを作りたい想いが元々あったみたいで意気投合してね。そこから岡安と当時声をかけたメンバー数人と一緒にフリーペーパ―の制作に取りかかり始めて『フリーペーパーアンテナvol.0』を発行したと。

 

 

上記はvol.1の表紙。現在vol.5まで刊行中

 

――vol.0を発行して、反響はいかがでしたか?

はじめは全然だったよ(笑)。でもvol.0に掲載していたスタッフ募集に問い合わせがあったり、多少なりのリアクションも感じられたかな。vol.0は冊子ですらなくてぺライチだったのだけど、インクが手にめちゃくちゃ付くという触れ込みで紹介されたりもしたのは苦い思い出だね (笑) 関西には音楽だけじゃなくて、カルチャーを発信する媒体が少ないことを感じていたから、「媒体として僕らが発信をする意味」みたいなことは当初からあったかもしれない。

“アンテナにやって欲しい”って声をかけてくれる人の存在が、今の僕らにとってすごく大事

 

――アンテナはフリーペーパーとウェブサイトの2軸で運営をしていますが、それはなぜなのでしょうか?

 

 

フリーペーパー制作から活動を始めたわけだけど、お金もかかるし、修正も効かない。その上作るにも時間がかかる。やってみて感じた不便なことがたくさんあった。その反面、ウェブサイトなら紙には無いスピード感がある。フリーペーパーを出してすぐに「タイムリーな情報を発信したい!」という欲が高まってきて、3年前の夏にウェブサイトをスタートしたんだよね。 それでも紙のデメリットを感じながら、今もフリーペーパー作りをやめていないのは、ウェブサイトにはない利点もたくさんあるからなんだよね。例えば表紙が気になって手を取ってくれるとか、紙の匂いや紙ざわりの身体性があることもいいし、ページを1枚めくるだけで出会いや発見がいくつもある。ウェブって自分が求めている情報は集めやすいけど、案外意外な出会いってのは少ないのよ。あとは純粋に自分はギリギリ紙世代だったから、紙という選択肢を捨てられないだけなのかもしれないけどね。

 

 

――京都を中心に活動しているアーティスト関連の記事を形にしてきて、京都のアーティストから求められている実感はありますか?

 

 

少しずつインタビューやレポートの依頼をもらえるようになって、ようやく実感が出てきたところかな。アンテナをこれまで支えてくれた存在として大きいのはbedのvo.山口さん。アンテナが活動している過程を初期から見てくれていて、内容をしっかり見てリアクションもしてくれる。多分アンテナのメンバーより、アンテナの記事を日々見ていてくれているんじゃないかなあ。

 

昨年「アンテナにやって欲しい」と、バンドにとって大事な日のライブレポートを任せてくれたことがあって、とにかく嬉しかったんだよね。

 

bedが歌う「僕ら」の話は、今ここにいる内向的な僕らの話

http://kyoto-antenna.com/161127_bed_onemanlive/

 

なんとなくレポートをお願いしたいとかではなく、“アンテナにやって欲しい”って声をかけてくれる人の存在が、今の僕らにとってすごく大事で。山口さんのおかげで、巨大資本に頼らないインディーメディアが何を取り上げるのが正しいか、その判断基準に改めて考え直した瞬間でもあった。依頼は増えてきたけど、編集部の人数も、かけられるパワーも限られているから、それをどう取材対象につぎ込むか。求められるような媒体になることよりも、今はそれを大事にしている。

 

 

アンテナは人生をかけた実験

 

――設立当初はたった2名だった団体が、今ではライター・エディター・カメラマン、デザイナー合わせて20名在籍する団体に成長したかと思います。どんな人が所属されていますか?

 

 

元々の僕の知り合いでメンバーになった人は、アンテナでの僕の活動を見てくれていて「楽しそうだから一緒にやりたい」って人が多いかな。応募をして入ってくれた人は「なにかやりたい」って言って入ってくる人が多いかも。 でも僕の考えとして「メディアをやりたくてアンテナの活動をやっていきたい人はいらない」と思っていて。

 

 

――それはどういうことでしょう?メディア運営をやりたくない人がほしい、ってことですか……?

 

 

例えばこれを知って欲しいから、こういう世界を見てみたいからって人と一緒にやりたいよね。メディアをやりたい、ライターをやりたい、カメラマンをやりたい、と職業単位で志願してくる人とは一緒にやることは無理だと思っていて。その職業になることが目的になってる人とは一緒にいても面白くないから、「何故なりたいのか?」みたいなその先にある理由が大切、というか。

 

 

――その先にあるもの、ですか。

 

 

ライティング経験はないけれども、戦車を愛しすぎて、誰かにこの想いを伝えたくて執筆したい……!という情熱がある子と仕事がしたいというか。その子が書く『戦車好きが書く、戦車のすべて』という記事があったら気にならない?僕はそういう人と何かやりたい。 一般的に戦車に知識がない僕らからすると戦車のことを語られても全然訳も分からんと思うけど、ただ戦車の歴史をだらだら書かれるより「なんで戦車が良いのか。なんでこんなに好きなのか」って想いを込める筆者が戦車のことを全力で書くから面白い記事になると思うんだよね。そういった“何か”に愛を持ったメンバーと一緒にメディアを作れるほうが一緒にやって楽しいんじゃないかなあ。人間性をぶちまけるというか。

 

 

――なるほど。達者に何かができる人よりも、何かへの偏った愛情が必須条件ということでしょうか。

 

 

「ライターとして文章を書いたことはないけど、これでご飯を食べてきたいんです」とか「カメラマンとしてはまだまだだけど、経験を積んでいきたいです」という人も歓迎はしているよ。それをやる理由や愛情が明確な人と一緒にメディアを作れるほうが楽しいし、逆にそういう人とじゃないと続けるのは無理だよ。何か作り続けるのってしんどいもの。別に生きる上で必須なことではないわけだし。

 

 

――アンテナを育てるためには何か特筆したスキルが必要ではないのでしょうか。

 

 

メンバーにアンテナのために何かをやって欲しいとは1度も思ったことがないし、これができないとっていうこともひとつもない。最低限コミュニケーション取れて、好奇心が強ければそれでオーケー。 関西にはクリエーターがやりたいことを実現できる場所が少ないよね。自分の表現や自分の好きを最大限にアピールできる場所として、アンテナを最大限に使って欲しいとも思っているから、何よりも自分の表現したい・伝えたいことがちゃんとあるのかが一番大切。

 

 

――堤さんや編集部メンバーのほとんどが普段アンテナとは別に仕事をしていますよね。仕事とアンテナのバランスってどう保っていますか?やる気やパワーを仕事以外のことに割くのって簡単ではないかなとも思うんです。

 

 

 あまり考えたことないなあ。今やりたいことが増え続けていて、いろんなことをやって当たり前のように思うことが多くなってきた。ひとつのことにガーっと集中しすぎずに、例えばアンテナでやる気がなくなったら仕事をやって、それでテンション上がらなくなったらバンドやってみたいな、バランスが大事だと思っている。 そもそもやりたくてやってることばかりだから、どれも辞めたいと思ったことも考えたこともないし、そういう選択肢がないんだよね多分。でもそうやってやりたいこと、好きなことだけちゃんと集めてたら、みんな人生の変なストレスなくなると思うんだけど。 まだまだ自分の中の「これ好き(面白い)かも」みたいな興味の種みたいなやつがたくさんあるから、それを丁寧に拾っていきたい。

 

 

 

――アンテナとしての直近の目標はありますか?

 

 

音楽が好きな人と何かが出会うってその人の幅が拡がるようなことをしたい。人生にはたくさんの出会いが必要だと思うし、誰かが何かに気軽に出会える場所を作りたいと思っていて。現状、アンテナの拠点は京都だけなんだけど、将来的に京都を軸にして京都以外にもアンテナを作りたいのよ。国内で成功したら日本だけじゃなくて、世界にもアンテナを拡げていきたいなと思っているし、各地方都市のアンテナを拡げて、人と人、場所と場所が繋がるような仕組みを作っていくのもこれからの目標。お互いに文化のインポートもエクスポートも出来る場所を作って、「マーケットは東京だけじゃないんだよ」ってきちんとメディアとして証明したい。こう言ってるとインフラみたいだね。 今、アンテナは2次元的なウェブを主流にしているけど、3年後くらいにはアンテナのホームとなる場所づくりを京都で実現させたいということも本気で考えていて。この場所に行けば誰かがいるとか、音楽や新しいものに出会うえるとかそういうプラットフォーム的な場所を作りたい。

 

最近、大阪のShangri-La建物内にゲストハウスをオープンしていて、あれ、いいよね。 ライブハウス、飲食店、ギャラリー、ゲストハウス、地下にもちろんシアターも欠かせない。その中でもゲストハウスがやっぱり肝だよね。飲食店は地元の人が来るけど、ゲストハウスは外の人が来ることがほとんどだからそこをポイントにしたいっていうのはあるし。どこかにいいパトロンがいればいいだけどねえ (笑)

 

 

――アンテナを建物化するという構想はアンテナ設立時からあったのでしょうか。

 

 

その想いは最初からあったよ。日々わくわく感とか出会いがないと人生面白くないし。最初に話したように、ライブハウスの身内感っていう予定調和だけじゃもの足りないなっていうのはずっと思っていたからね。「あの場所に行ったら何か起きるんだよね」みたいな、たくさんの人がワクワクドキドキできる場所を作りたいなって思ってる。

 

 

――では、最後に。堤さん個人がアンテナに対して持ち続けている想いを教えて下さい。

 

 

アンテナは僕の人生をかけた実験だと思っていて、これからも僕の思ったやり方でいろんなトライをし続けたいと思っている。僕より若い世代の子たちも僕たちの活動を見て「自分たちにも出来るやん」と思ってメディア作りを実践していって欲しいし、メディアとしての指標例になりたいっていう想いもある。誰かが「面白くないやん」とか「失敗したやん」って思って反面教師にしてくれるならそれだけで万々歳。日本、世界レベルで見て文化が豊かになるならなんだっていいのよね。 僕らはこれまで発信を続けてきて、ようやくスタートラインに立てたくらいじゃない。だから今からようやく楽しめるんじゃないかなあ。自分が編集長とか言うのも言われるのも今だに慣れないけど、まあちょっとずつできることをこれからもやっていくよ。あとこれめちゃ生意気なやつみたいになってない?大丈夫かな。

 

 

――ありがとうございました!

 

アンテナの「メディア運営にかける想い、メディアとして今後どこに向かっているか」を感じていただき、これからも私たちが発信するメディアを愛していただけると幸いです。人々にとって日々の生活に欠かすことのできないものは『衣・食・住』ですが、それだけでは毎日の生活が何か物足りなく、寂しいとは思いませんか。京都という1つの街を見ても、まだまだ訪れたことのない場所、ひと、見たことのない景色が誰にでもあると思います。昨日までは知らなかった場所や人、ものに出会うだけであなたの毎日の生活が、見える景色が豊かになってくると信じて。これからも私たちアンテナは京都からカルチャーにまつわる記事を発信していきます。

 

GOODS

トップへ