COLUMN

俺の人生、三種の神器 -川端安里人 ②真夜中編-

2017.04.10

川端 安里人川端 安里人

 

 

▼俺の人生、三種の神器とは?

人生の転換期には、必ず何かしらきっかけとなる「人・もの・こと」があるはずです。そのきっかけって、その当時は気づけないけれども、振り返ると「あれが転機だった!」といったことはありませんか?そんな人生の転機についてアンテナ編集部で考えてみることにしました。それがこの「俺の人生、三種の神器」。

折角なのでもっとアンテナ編集部員ひとりひとりのことを知ってもらいたい!そんな気持ちも込めたコラムです。これから編集部員が毎週月曜日に当番制でコラムを更新していきます。どうぞお楽しみに!

 

 

まぁ、今回はこの曲かけながら文読んでってくださいよ

 

 

 

原始人から気付かされたこと

 

 

人類創世

 

 

1981年の『人類創世』という映画があります。英語のタイトルは『Quest for fire (火の探索)』この映画は原始人達が主人公で、「ウホッウホッ」とまだ言語すら持ち得ていない僕たちのご先祖さんたちが荒野や草原を旅しながら火を求めて旅をするというお話。人類学者の歴史考証を元に作られたこの映画の中で火を起こす技術を持ち合わせていない彼らにとって落雷などによって自然発生的に起こった炎は夜を明るく照らし、闇夜を徘徊する野獣たちを追い払うまさに神の所業であり、その炎を維持させることはすなわち人類の命を維持させることと直結していた。

 

いやいや、別にこの原始人の映画が僕の人生の中に特別な何かを与えたわけではないけれど、この映画を高校生の頃初めて見たときに自分自身の中にストンと何か腑に落ちる感覚が湧いた。

 

「おそらく我々人類の先祖の中には少数精鋭で夜間炎を守るために夜通し起きていた者たちがいて、彼らの夜に強いというDNAは脈々と密かに受け継がれているに違いない!」自分の名前は川端安里人、幼少期より筋金入りの映画好きなのは前回の三種の神器を読んでもらえばわかるはず。そして自分の知り合いなら皆知っているだろうけど、夜行性だ。

 

夜更かし、夜行性、朝に弱い、宵っ張りにNight owl、言い方は色々あるだろうけど要するに朝太陽と交代で眠りにつくような、そんな生活を延々と続けている。「朝は寝床でグーグーグー、楽しいな」おばけかと自分でも突っ込みたくなる時もあるけれど、訳あって早起きようものなら頭痛もするし、AMの間は機嫌が悪くなる。別に大学を卒業して映画漬けの自堕落な生活を送っていく間にこんな生活になってしまった訳でもなく、考えてみれば幼少期から夜更かし好きの子供で朝は苦手だった。日光を浴びても発火しないので多分吸血鬼のDNAは入っていないはず。となると先ほどの火守り人説が濃厚になってくるでしょ?おかげさまで海外旅行に行けば時差ボケもなくスッキリです、どうもどうも。

 

 

 

真夜中の精霊

 

 

で、今回の三種の神器なんですが、そんな内に眠る夜行性のDNAを呼び起こさせたんじゃないかという一冊。といっても絵本です。タイトルは『トムテ』。ちなみに、自分の母親は画家なんですが、そういった関係で絵柄の素敵な絵本をよく幼い頃に読んでもらっていました、その中でもこの一冊は本当に特別。多くの素敵な絵本たちが映画をはじめとした雑多な記憶にまみれて忘却の彼方に旅立ってしまった中、未だに心の本棚で面だしされているやつです。

 

 

トムテ

 

 

「しんしんと ひえる まふゆの よぞらに、ほしが つめたく またたいている。もりに かこまれた のうじょうでは、すべてが ねむりに ついている。つきは しずかに そらを あゆみ、やねや きぎに つもった ゆきを、さえざえと てらしている。めを さましているのは、こびとの トムテただひとり。」

 

こうして始まるこの小さな物語には昼よりも夜を、夏よりも冬を、都会より田舎を、騒乱より静寂を、映画好きになる以前の、一人の人間としての自分自身を形作った全てのエレメントが入っていると言ってもいいでしょう。スウェーデンの詩人ヴィクトル・リードベリによって書かれた詩を絵本化したものなんですが、この絵本は正直幼少期よりも大人になったふとした瞬間に脳内に蘇ってきた時こそ効果があるような、深く哲学的な内容の絵本です。

 

「だが ひとは、どこから くるのだろう。こどもが おやになり、また その こどもが おやになる。にぎやかに たのしく くらし、としおいて、やがて いってしまう。だが、どこへ いくのだろう。」「むずかしすぎる。わしには やっぱり よく わからん。」

 

数百年間もの間、人々の寝顔を眺め、ツバメや犬たちと会話をしてきた精霊トムテ、おそらく彼が孤独や真冬の寒さに押しつぶされなかったのはこの素朴だけれど、深く決して答えのない問いを考え続けているからでしょう。それこそ子供時代なんかは「しんしんとひえる~」とこの本を暗唱していたっけ、ませたガキだな。でもね、北欧の方では年末にラジオで音読されるような国民的な詩の上にハラルド・ウィーベリというスウェーデンの絵本作家の人が描いた素朴で素敵な絵、北欧文学の名翻訳家山内清子さんの訳も本当に美しくて、是非一度目を通して欲しい、それこそお子さんがいる人は読んであげてほしい一冊です。

 

 

 

文化的夜行性人間の思うこと

 

 

これからのシーズン、長い冬も終わり、寒さも遠のき、やれ花見大会だ、ゴールデンウィークだ、それが終わればやれ海開きだなんやらかんやら……さぞかし楽しいでしょうよ。でもね、たまには夜中に一人芸術や哲学に向き合うのは人間絶対に必要だと思うんですよ。確かに今の時代火を守るなんてことは無いだろうし、夜中に徘徊して哲学してたら不審者扱いですよ!でもそう言った思索こそが人間を、文化を育んできたものじゃないのかと思うんですよね。

 

夜行性の人と聞いて何を思い浮かべるでしょう?クラブでナンパ?BARで飲酒?いやいや、そんなこと僕はしませんよ。やることといえば本を読むとか映画を見るとかそんなことです、お酒飲めないしね。たまに音楽かけてドライブには出かけるけどね。海外に行った時だって、香港のクラブに友達と行った時も一人で早々に切り上げて真夜中の尖沙咀を徘徊していましたよ。クラブで酔い潰れるよりも数多ある香港映画で幾たびもその舞台になってきた香港の夜景をこの目で観て覚えておきたかったから。アイスランドの真夜中も素晴らしかった。それこそ、そこらへんからトムテさんが出てきそうな雰囲気の中オーロラを見ましたよ。友達とコーヒー飲みながら穏やかに語り合うのもいいよね。

 

別に夜行性になれなんて言いませんよ、大切なのは穏やかな夜に心をニュートラルにして文化に触れて思索すること。自分みたいに毎夜映画漬けになればもはや妖怪みたいなものだけど、人間そんな夜も必要だと思います。

 

 

 

▼他の人の転機

 

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①初めてのひとり旅

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①映画との出会い

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②真夜中

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