UrBANGUILD


常に人で賑わう京都の繁華街・木屋町通の中心部に位置するUrBANGUILD。その立ち上げ時は、大工であるオーナーを中心としたスタッフ自ら内装を作り上げたそうです。中でも壁一面に大胆に施されたペイントは、今やUrBANGUILDらしさの象徴となっています。

 

 

入口から向き合って右手にバーカウンターと厨房、中央スペースにたくさんの木の長テーブルというスタイルがどこか英国パブのような印象を与えます。その雰囲気も手伝ってか、いつも国内外を問わず様々な人が集まるとか。イベントのない日は食堂のみでも営業しているだけあって飲食メニューが幅広く、アヒージョやワイン煮込みなど本格的なメニューが味わえるのもここならではの楽しみの1つ。

 


そんなUrBANGUILDの肩書きはライブハウスではなく「多角的アートスペース」。チェリストの即興アンサンブルや演劇、コンテンポラリーダンスなど、ライブハウスという枠にとらわれずに柔軟な発想で幅広いイベントを行うことで、従来よりずっと近い距離からその熱にふれることのできる空間が生まれています。ブッキングの基準は「人の五感を刺激する熱いもの、伝えたいものを持っていること」という点のみです。ジャンルの垣根を取り払うことで違う分野の表現同士がぶつかり合い、新たな魅力を爆発させる瞬間に立ち会うことができるUrBANGUILDここへ来れば、あなたの好きなアーティストの新しい一面を垣間見れるかもしれません。

 

photo:岡安いつ美

 

 

INFORMATION

【住所】〒604-8002 京都市中京区木屋町三条下がるニュー京都ビル3階

【定休日】不定休

【営業時間】イベントにより異なる

【電話番号】075-212-1125

【HP】 http://www.urbanguild.net

 

 

 

廃材から自らの手で作り上げ、今なお進化し続ける、生きた「多角的アートスペース」

 

 

 

――ryotaroさんはUrBANGUILDが出来た当初からいらっしゃるんですか?

 

 

僕は違います。僕が入ったのは2009年だから、オープンしてから3年後かな。最初はキッチン担当だったけど、ブッキングの人間が3か月後くらいに辞めちゃって、そこからブッキングを始めることになりました。「CookingからBookingに変わった」って英語で言うと外国の人に受けます (笑) 。

 

お店を作ったのは元々アンデパンダンという飲食店をやっていた人たち。そこはライブハウスではないけどステージがあって、すごく自由な雰囲気で面白い人が集まってたんですよ。僕もそこでアコースティックライブをやったり、ドラムセットとかスピーカーとか全部持ち込んでライブをしてました。でも、10年以上前にいろいろあってそこを立ち退かないといけなくなって、オーナーの次郎さんが、資本金ゼロで一からUrBANGUILDを作り始めた。次郎さんは大工で、廃材でここを作ったんです。その当時は僕はまだここで働いていなかったけど、顔馴染みで仲が良かったから、工事の途中に差し入れを持って行ったりしてました。

 

 

――UrBANGUILDを作るにあたって、オーナーの次郎さんはどのような思いを持っていたのかご存知ですか?

 

 

次郎さんはUrBANGUILDを「いろんな表現が出来る場所」として作ったと思う。アンデパンダンは飲食がメインだったから土日は基本的にライブが無かったけど、ここは逆にパフォーマンスをメインにしようということで、音響機材とかもきっちり揃えてやり始めたんです。

 

 

――アーティストの表現の自由さや柔軟さを大事にしているんですね。

 

 

そう。次郎さんも「最低限のものは置いとくから自分たちで何か作りこんで欲しい」って言ってる。たとえばこの壁はオーナーとうちのスタッフの絵描きさんが何度も塗り足してるんだけど、雰囲気はありつつ、でも主張しすぎないってところで収めてるのが次郎さんの美学なんだろうなと思います。

 

壁だけでなくお店自体もまだまだ完成されたものじゃなくて、今でも進化を辿ってるところかな。来年あたり、ちょっとびっくりするくらいの変化があるかもしれない。アイデアがあるんです。

 

 

――それ、ちょっとだけお聞かせいただくことはできますか?

 



まず、床に段差を作れる構造にしようと思ってます。今はフロアがフラットで、特にダンスパフォーマンスとか演劇とかが見づらいんですよ。それを、普段は床下に収まってる段差を上げられる感じにしようかなと。

 

 

――舞台をより見やすくするんですね。

 

 

そうすれば舞台がより活きるから。なぜそんなことを考えたかというと、正直京都はライブハウスが供給過多なんです。みんなが少ないお客さんを取り合っている気がする。僕がブッキングを始めた時、次郎さんに言われたことは「クオリティを落とすな、以上」でした。「良い」と思うアーティストだけを呼びたいけど、正直音楽のイベントはなかなかお客さんが集まらなくて、それだけじゃ経営は難しい。うちはコンテンポラリーダンスのイベントとかもよくやってるんですが、実はそっちの方がお客さんが集まるし、現状そういうイベントをするハコがなくなりつつあるから、演劇やダンスのイベントもどんどんやっていきたいんです。

 

それに、よくミュージシャンにも「もっと他の分野と関われ」と言っています。ライブハウスというよりは、多角的アートスペースだと思ってやっていきたい。それがうちの強みでもあるし、そういう方が好き。毎日のように音楽ライブをやって毎回良いアーティストを組める自信なんてゼロですからね。

 

 

――音楽だけでなく、いろいろなジャンルに繋げていくんですね。あるジャンルが好きで遊びに訪れた人が、また別の世界に広がっていくと。

 

 

そう。面白いのが、ダンスのイベントをずっと見ていると、ミュージシャンの単なる演奏の動きがダンス的に見えてくることがあって。上手いミュージシャンは動きが綺麗。しかもダンサーのように意識して作る動きとは違う面白さがあって、だから僕はダンサーの人にもミュージシャンを見て欲しいと思うんです。逆にダンサーの地面を踏む音が音楽的に聴こえてきたりもするんですよ。

 

 

――ジャンルの垣根が取り払われるようで、面白いですね。

 

 

ライブって、見て、聴いて、鼻でタバコや食べ物や人の匂いを感じたり、人が多ければ温度も暑くなったり、そういう五感全体を使って体験するものだと思っていて、それは音楽ライブでもダンスでも一緒なんですよね。

 

 

――ハコとしては、ジャンルの括りはないということですね。

 


全くないですよ。カテゴライズされないもの方が絶対面白いと思っています。でも、わかりやすいものの方が人には受けるっていうのもよくわかる。そこは本当にジレンマですね。

 

 

 

 

 

何かを伝えたい、そういうアーティストを少しでも世に広げるのが僕らの仕事。

 

 

――今までに印象的だったライブや企画はありましたか?

 

 

「チェロナイト」っていう、4人のチェリストが即興で演奏するイベントがすごく良かった。ザッハトルテのヨース毛とか、フランス人の知り合いとかに出てもらって。みんなそれぞれ個性があって面白かったね。あとその流れでやった「f holes」ってイベントでは、ヴァイオリンとかコントラバスとかチェロとかの弦楽器奏者を集めて、京都交響楽団の1stヴァイオリニストの人にも入ってもらったんですが、それも本当に良かったです。うち、そうやって時々完全生音でクラシックの音楽をやることがあるんですよ。みんな普段クラシックの弦楽四重奏とか聴きに行かないでしょう?でも、せっかくなら敬遠して欲しくない。実はオーナーの次郎さんもクラシックが好きで、レコードを沢山持ってるんですよ。

 

 

――それこそクラシックってジャンルは敷居が高いイメージがありますもんね。

 

 

だからクラシック食堂って名前にして、親しみやすくしているつもり。クラシックの人たちも敷居が高いと思われたくないからこそうちに出てくれてるんだろうし、できるだけいろんな人に繋げたいなって思っています。

 



――ジャンルに囚われないという方針がとてもよくわかりましたが、その上で、呼びたいアーティストには何か基準があるのでしょうか?  

 

 

何か伝えたいことがある人。もちろんテクニカルな部分も最低限必要だとは思うけど、表現をしたい衝動とか感覚がない人には僕は全然興味がない。その人にしかない何かがあるはずだと思うから。そういう良い表現を追い求めるアーティストを少しでも世に広げるのが僕らの仕事と思ってるし、そのために常に試行錯誤。三歩進んで二歩下がるの繰り返しです。

 

 

――来られるお客さんは、どういう方が多いですか?

 

 

バラバラですね。観光で来てふらっと立ち寄る外国人も多いですよ。彼ら、何も知らずに来て、日本語の歌詞しかない音楽の中でそのバンドのファン以上にめちゃくちゃ楽しんで帰るんです。旅行先だし自分の興味のあるところに行きたいはずだから、そういう場所にUrBANGUILDが選ばれるのは嬉しいですね。お店としてももう少し外国の人が来やすい環境にしていきたいです。拾得(じっとく)ってライブハウス知ってます?あそこはライブが終わった後に普通に飲みに来る外国人が増えてるらしくて。拾得は造りが日本的だから、外国人受けするんですね。すごくいい傾向だと思っています。うちももっと普通に飲みに来る人が増えて欲しいなと思います。

 

 

 

 

――そのための施策として考えていることはありますか?

 

 

イングリッシュメニューがあります。でも、英語のメニューがあるから来るんじゃなくて「UrBANGUILDに来たい」と思われたいという気持ちはありますね。京都はライブハウスが飽和状態だから、それぞれのお店の個性が出ればいいと思います。

 

今の日本って、若い人が減って上の世代の割合がどんどん増えていて、テレビとかも当たり前のようにその世代への宣伝ばかりして、だから面白くない世の中になっていったような気がします。そういうマジョリティ狙いの経営って終わりに向かってるように思うんです。じゃあどういうところでビジネスを成り立たせるかというと、個性があるとか、ピンポイントに狙ったところをきっちり掴んでいくやり方。それか逆に、もっとグローバルにやるかですよね。

 

 

――音楽も、みんなが同じ一つの何かを聞いてることってあんまりないですもんね。

 

 

良くも悪くも2000年以降、びっくりするくらい変わりましたね。宇多田ヒカルがデビューした頃ってまだCDがすごく売れてたでしょう。でもそれから業界の人たちが次々辞めていくのを目の当たりにして。そのあとインディーズレーベルがどんどん出てきて、今はミュージシャンが自分たちで何かをするのが当たり前になってる。

 

僕UrBANGUILDでラジオをやってて、いろんなアーティストをゲストに呼んでインタビューをしてるんですよ。知られていない良い音楽をもっと世の中の人に届ける方法はないかな、っていうのがラジオを始めた理由。今は何でもやったもん勝ちなんですよ。だってyoutubeに上げるだけで誰でも世界中からアクセスできるんだから。そういうのをやっていかなあかん時代になったなって思うから、ラジオも全部一人でやってるんです。もうかれこれ56組くらいインタビューしたかな。

 

 

――何年くらい続けているんですか?

 

 

3年。ちなみに次郎さんが出た時のやつは「ピー」が入りまくってるよ (笑) 。

 

 

――その次郎さんですが、UrBANGUILDを語る上ではやはり欠かせない存在だと思います。ryotaroさんにとって次郎さんとはどのような人なのでしょうか?

 

 

僕は次郎さんに救われたみたいなところがあるんですよ。アンデパンダンから次郎さんたちがいなくなるって聞いた時は「京都で何かすんのやめよかな」って思うぐらいにショックで、だから次郎さんから「新しいハコを自分らで作るわ」って聞いたときにはめちゃくちゃ嬉しかった。本当に感謝してますよ、UrBANGUILDを作ってくれて。なおかつ、実はここの経営って基本的には成り立ってなくて、次郎さんが他の大工仕事で稼いだ金で持ってるのが現実です。

 

 

――UrBANGUILDのサイトで「大工部」というメニューがありますが、そこから仕事を請け負っているんですか?

 

 

いや、そこからでなくてもとにかく次郎さんには仕事がどんどん来る。すごい大工さんだから。情熱大陸のゲストに出たイタリアンシェフのお店を作ったりもしてたんです。その店はめちゃめちゃかっこいいんですが、高いからなかなか行けなくて。建築もある種の作品だし、そういうものがもう少しいろんな人に開かれて、かつ、もちろんかかった費用はきっちりペイできるような環境になればいいんですけどね。

 

 

――では最後に、5年後10年後にUrBANGUILDをどういうお店にしていきたいですか?

 

 

年後にはきっちり稼げる店になって、なおかつクオリティが今と変わらないっていう状態になってるのが理想かな。極端に何かを変えたいなんて意識は全然ないけど、本当に良いものがきちんと伝わったらお客さんも増えるだろうし。正直な話、1日お客さんがあと10人増えたらいい。でもその10人がいかに難しいかっていうのを年やって感じましたね。何が正しいかは分からないけど、それでも自分が良いと思ったことをやるしかない。アーティスト同士、アーティストとお客さん、お客さん同士の出会いの場になればいいですね。

 

僕はチャンスには弱いけどピンチには強い人間だから、とりあえずサバイブは出来ると思うんですよね。その代わり、大儲けは一切できません (笑) 。でも大儲けできる店ってその時代に特化してるだけだから一時的なものでしかなくて、永遠には続かない。うちは絶対大儲けできない店ではあるけど、さらに先の時代に焦点を合わせたアーティストを見ているという意味では、やる価値はあると思っています。

 

 

――ぶれないクオリティへの思いがUrBANGUILDへの信頼を生んでいるんだなと思いました。

 

 

強がってるだけなんですけどね。

 

 

――その想いを10年ずっと維持できるハコはなかなかないですよ。

 

 

それは次郎さんのおかげですよ。次郎さんの美学。もう必要とされないと感じるようになったら辞めるんじゃないかな。でもまだ必要としてくれるから。この天井も前々から吸音材を入れたかったんだけど、次郎さんの「かっこいい吸音材を入れたい」っていうこだわりでなかなか出来なくて。何か変えるにしてもそれがかっこよくなかったらアウトだからね、ほんと、美学ですね。

 

 

 

 

 

 

 

この記事を書いた人

森下 優月
森下 優月
東京にてキラキラOL (自称) への第一歩を踏み出すかたわら、定期的に京都に高飛びしておもしろいことに首を突っ込んでいます。
将来的にはイギリスに住みたい......と口では言いつつ日本が好きすぎて結局行かないんだろうな、というだいたいいつもそんな感じの人生。

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