アジトオブスクラップ京都


 

烏丸丸太町に、素敵な「アジト」があるのをご存じだろうか。そこは、カルチャーの町・京都に作られた「非日常」の世界への入口である。

 

「リアル脱出ゲーム」という言葉なら一度は耳にしたことがある人は多いのでは。この「アジトオブスクラップ京都」は、リアル脱出ゲームを運営する株式会社SCRAPの京都店舗だ。株式会社SCRAPは全国各地の店舗や特設会場、東京ドームやUSJなどでもリアル脱出ゲームのイベントを行っている。プレイヤーたちはそれぞれのイベントの世界観の中で、制限時間内に数々の謎を解き、難題からの脱出を目指す。ネタバレ厳禁なイベントの性質上、詳しいことはここには書けないのだが、正直に言って、びっくりするほど面白い。

 

SCRAPは元々、京都でフリーペーパーを発行するところからスタートした。活動を立ち上げたのは、京都の代表的なDIYフェスイベント「ボロフェスタ」の主催者の1人でもあった加藤隆生氏。そんな経緯もあって、数ある全国の店舗の中でもこのアジトオブスクラップ京都は特別な位置づけにあるという。ここでしか開催していないイベントもあり、初めての人もそうでない人も、他では味わえない選りすぐりの「非日常」に大満足できること請け合いだ。アジト、行こうぜ!

 

 

INFORMATION

 

【住所】〒604-0815 京都府京都市中京区山中町540番地ワキサカビル3F

【定休日】月・火曜日

【営業時間】公演次第

【電話番号】 075-275-1988

【HP】http://realdgame.jp/ajito/kyoto/

 

 

 

「リアル脱出ゲーム」、京都から始まったって知ってた?

 

 

――本日はSCRAP関西エリアを担うお二人にお話を聞かせていただきます。まずは自己紹介をお願いします。まず、松田さんから。

 

 

松田:僕はSCRAPの関西エリアマネジャーをしています。関西には、アジトオブスクラップ京都、アジトオブスクラップ大阪ナゾビル、大阪ヒミツキチオブスクラップ、あとは3月で閉店してしまいますがアジトオブスクラップ心斎橋OPA店の計4店舗があって、僕はそれらの店舗の統括と、全国ツアーイベントの関西公演のプロデュースなどをしています。

 

 

――プロデュースとは具体的にどのようなことをしているのですか?

 

 

松田:たとえば京都だと京都新聞文化ホールとかKBS京都、他にも関西のいろいろな会場で、モンスターストライクやモンスターハンター、名探偵コナンなど様々なコンテンツとコラボした公演を行うんですが、そのスケジュールを決めたり運営管理をしたりしています。

 

 

――では、続いて土田さんお願いします。

 

 

土田:僕はアジトオブスクラップ京都 (以下京都アジト) の店長をしていて、京都アジトの公演スケジュールを決めたり、入っているコンテンツに責任を持って演出面などの管理をしています。

 

 

――土田さんはいつ頃からSCRAPで働いていらっしゃるんですか?

 

 

土田:4年前くらいですね。当初はイベントのボランティアで参加させてもらっていました。その後、実際にSCRAPに入社したのは半年前くらいです。

 

 

――SCRAPのイベントでは、ボランティアを募集しているんですね。

 

 

松田:してますよ。ボロフェスタと仕組みは一緒です。というのも、ボロフェスタを立ち上げた人たちがやっている会社ですからね。その都度募集したり、一回応募してくれて連絡先がわかっている人に改めてお願いしたりしています。

 

 

――松田さんはかなり初期からSCRAPのメンバーだったそうですが、いつ頃から関わっているんでしょうか?

 

 

松田:二回目のイベントくらいからですね。実は最初はリアル脱出ゲームもフリーペーパーの一企画としてスタートしたんです。加藤が京都のカフェで脱出ゲームを初めてやって「面白いな」ってなり、その後大阪のHEP FIVEの上にあるHEPHALLでも「やりましょう」って話が出て、その頃から僕は関わるようになりました。

 

その頃東京でOTOTOYをやってた飯田 (※1)が「リアル脱出ゲームを東京でもやらへんか」という話を持ちかけてきて、やってみたらそこでバン!と盛り上がりまして。1.2年くらいで「東京ドームでやりましょう!」っていう規模にまでなり、会社になった、という経緯です。

 

 

――今では、リアル脱出ゲームは誰もが一度は耳にしたことのある大きなイベントになりましたが、SCRAPは脱出ゲーム以外の事業はされていますか?

 

 

土田:リアル脱出ゲームを軸にした、謎解きを扱う様々な事業を行っています。昨年、出版部ができたんですよ。そこが謎解きの本を出してますね。他にも、結婚式で謎解きをしたり、謎解きをメインにした企業のプロモーションなんかもしています。企業の懇親会や、研修で謎解きをしたりとか、コミュニケーションを取るのにも最適なんですよね。最近だと、たまごっちのWebプロモーションなんかもうちがやってます。

 

 

 

「謎を作る」という唯一無二の仕事

 

 

――今回はSCRAPの中でも京都アジトの紹介なのですが、そもそもSCRAPの店舗は全国に何店舗くらいあるんですか?

 

 

土田:日本全国に14店舗あります。その中でも京都アジトは他の店舗と比べてもちょっと特殊なお店で、実はここでしかやっていない公演があるんです。「パズルルームからの脱出」と「魔王城からの脱出」っていう公演は京都でしかできないんですよ。

 

 

――できない、というのは、技術的に不可能なのか、敢えてしていないのかどちらですか?

 

 

土田:後者です。やろうと思えば他でもできます。けど意図的にやらないっていうブランディングをしています。だから京都アジトには地方からのお客さんも多いんですよ。ちなみにお店でどの公演を行うのかは、店長を筆頭に現場のスタッフが自ら体験して選んでいます。次の公演は、プロジェクションマッピングを使ったイベントなんですよ。

 

 

――こうしてお聞きしていると、インタビューでは脱出ゲームの中身にまで詳しく言及できないっていうのがもどかしいですね。

 

 

土田:そう、それがリアル脱出ゲームの困ったところなんです (笑)

 

 

――それぞれのイベントの謎はどのようにして作っているのですか?

 

 

土田:東京にいる10人くらいのコンテンツ製作チームが全ての公演を作っています。謎の作り方は、まずタイトルから決めるんです。たとえば今回行うファイナルファンタジーXIVのイベントでは、まず「バハムート」っていうキャラクターをプッシュするために「大迷宮バハムートからの脱出」っていうタイトルを決めます。次にキャッチコピー。進撃の巨人とのコラボを例に取ると、「その日あなたは支配される恐怖を知る」ですね。謎は最後です。先にお客さんに体験をして欲しいストーリーを考えて、そこに謎を入れていくっていう感じですね。

 

 

――謎を考えるのってすごく面白そうですよね。どういう人が作っているんでしょうか?

 

 

松田:主要な人は、初期のフリーペーパーの頃から関わっている人たちです。リアル脱出ゲームを作るノウハウって加藤にしかないから、加藤とどれだけ近いかが重要なので。……ただ、唯一、謎を外注してる人が一人いるんですけど。

 

 

――「謎を、外注」ですか!?

 

 

松田:その人は本来ボードゲームとかを作っているセンゴクさんっていう人なんですが、SCRAPの初期からずっと一緒に作ってきた、とても頼りにしているおじさんです。面白いのが、その人に「謎製作費」っていうギャラを払うんですけど、うちの会社の税理士さんから「謎製作費なんてものを扱ったことがないので、どうやって処理していいかわからない」って言われたことがありました (笑)

 

 

――確かにそんな勘定項目は聞いたことないですね (笑)。あと私が体験した時に思ったのは、謎がかなり難しいなっていうことです。難易度はどうやって設定されているんですか?

 

 

土田:謎は、脱出率10%くらいを目安に作っていることが多くて、リアル脱出ゲームを長年やってきた経験上、これくらいがちょうどいいと加藤が設定した値なんです。脱出できなくてもいいから、あと一歩のところで「あれさえわかっていれば脱出できたのに…!」ってめちゃくちゃ悔しい思いをして欲しい。もちろん脱出できた人は満足できるし、でも1時間の制限時間なのに30分で脱出できちゃってもそれはそれでつまらないので、ギリギリのところを目指しています。

 

 

 

僕がSCRAPの人間じゃなかったとしたら、リアル脱出ゲームをしに行かなかったかもしれない。そう思うからこそ、知って欲しい

 

 

――お二人は、提供する側として、リアル脱出ゲームの魅力はなんだと思いますか?

 




土田:「物語の主人公になれること」ですね。ストーリーの中に自分が入り込む体験は、リアル脱出ゲームでしか体験できない独自のものだと思います。

 

 

松田:このイベント自体が、お客さんが主役のイベントなんですよ。音楽イベントだったらアーティストが主役だし、演劇だったら舞台の上の役者さんや舞台美術とかが主役になりますけど、脱出ゲームはお客さんが主役。それぞれのイベントごとに設定があって、たとえば、進撃の巨人ならお客さんは調査兵団の一員に、魔王城からの脱出だったら自分が勇者になるんです。お客さんがスムーズに入り込めるためには、当然ですがまず我々がその世界観にしっかり入り込まなきゃならなくて、ベテランのスタッフはそういう演出がめちゃくちゃ上手いんですよ。

 

 

――なかなかないですよね、そういう、現実を忘れさせてくれる、非日常の世界を体験できるところって。

 

 

松田:そう、言うならばディズニーランドみたいな世界を目指してます。

 

 

――リアル脱出ゲームは1回のプレイを10人前後のグループで行いますが、知らない人同士が集められる場合と、最初から知ってる人だけで集まって遊ぶ場合とでは、実際どちらが多いですか?

 

 

土田:知らない人同士になることの方が多いです。

 

 

――では、そこで新たな出会いが発生するわけですね。そういうコミュニケーションの面は大切にしていらっしゃいますか?

 

 

土田:はい、していますね。緊張を解くためにまずゲームを始める前に挨拶の時間を設けて、仲良くなれるきっかけを作っています。お互いに気軽に喋り合うことができないと、その後ゲームに入って何かに気づいても、その情報を仲間と上手く共有できないので。このゲームは助け合わないと解けないし楽しめないんです。1時間本気でやってもらわないと脱出できないので、コミュニケーションはめちゃくちゃ大事ですね。

 

 

――私はその1時間のゲームの間に、一緒にプレイしたメンバーとぐっと仲良くなれました。挨拶の時点ではまだ少しぎこちなかったのが、やっているうちにどんどん距離が縮まって、帰る頃には「またね!」って言い合えるようになって。

 

 

土田:それはとてもありがたい感想ですね。しっかり世界観に入り込んでくださった証拠です。と言うのも、たとえば「あと一時間でこの部屋は爆発します!」って言われても「どうせ嘘でしょ…」って思ってしまったらお互い喋らないし仲良くもならないんです。でも、仮に本当にエレベーターに閉じ込められてどうしよう開かない!ってなった時には絶対必死で喋って協力するでしょ?それと同じで、是非本気でストーリーに入り込んで楽しんで欲しいですね。

 

――では、今後この京都アジトをどのようなお店にしていきたいですか?

 

 

松田:あそこに行けば友達ができるよ、っていう場所になればいいなと思います。あと、京都って変なお店が多いじゃないですか。僕は「変なお店やな」って思われたくて。「何かあの店ずっとあるよな?行ったことある?」って言われるお店にしたいです。

 

 

――お客さんは、どんな人に来て欲しいですか?

 

 

土田:学生さんですね。やっぱり学生さんは新しいことや面白いことに対して敏感だし、京都の学生は特にそういうことに敏感な人が多いと思います。アンテナのサイトを見ている人たちにもそういう学生さんが多いでしょうから、これを機にたくさんの人に知って欲しいですね。

 

 

松田:個人的には、僕がたとえばSCRAPの人間じゃなかったとしたら、もしかしたら、リアル脱出ゲームに積極的には行かなかったかもしれないなって思うんです。

 

 

――それはどうしてですか?

 

 

松田:元々、脱出ゲーム自体にそんなに興味があったわけではないから。僕は音楽が好きでライブには行くし、演劇を元々やっていたので演劇も見に行くし、そういうカルチャー全般には興味があるんです。でもリアル脱出ゲームはカルチャー的にはちょっとライトですよね。ただ、ライトだからこそ僕はアンテナ読者の方に知ってもらいたいと思っていて。というのも、実際にやってみたらすごく面白かったんですよ。リアル脱出ゲームって、「誰でも楽しめるイベント」なんですね。たとえば音楽や演劇って、お客さんを選ぶじゃないですか。そういうのがリアル脱出ゲームにはないんです。こんなに普遍的で誰でも楽しめるイベントって、他にはあまりないと思います。

 

 

――その一方で、リアル脱出ゲームって、カルチャーの入口としてもすごく良いですよね。ゲームの世界観の中で役割を「演じる」ことになるじゃないですか。自分以外の自分になれる、みたいな。それって、自己表現の入口にもなると思うんです。

 

 

松田:そう!だから僕はリアル脱出ゲームを一つのカルチャーにしたいんです。リアル脱出ゲームの中には、実はいろんな要素が入ってるんですよね。コラボイベントだと好きな漫画やゲームの世界観に入れるっていう魅力もあるし、そういう演劇的な要素もあるし、もちろんゲームを解くっていう楽しさもあるし。是非お店に来て体験してみて欲しいですね。

 

(※1:SCRAP取締役。音源配信サイトOTOTOY (オトトイ) の編集長でもあり、自身もLimited Express (has gone?) というバンドのギターボーカルを務める。京都のDIYフェス、ボロフェスタ主催者)

 

 

 

photo by 岡安いつ美

 

この記事を書いた人

キャシー
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Twitter:@cathyletter
京都発アートパンクバンド、my letterの元ドラマー。
現在名古屋在住のアンテナ遠距離組。最近のマイブームはカセットテープのジャケ買いと、グランパスくん。