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たかいしのやわらかブーメラン 緑の炎に包まれるおっさん編

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ハロー!デザイン班のたかいしといいます。芸術の秋に向けてアンテナのアート面を強化すべく、地に足つけぬフリーなWebコラムを発信していこうと思います。よろしう。

 


さてさて、気になる今回のテーマは学校、公園、市民広場など様々なところで見かけるブロンズ像(銅像)。「なんで少女が全裸で鳩を追いかけてるんだろう……?」と心がザワザワした幼い頃の思い出が蘇りますね。実はアレ、金属にもかかわらず作る工程で透明になるらしい。これは目撃するしかない!ということで、たかいしのWebコラム第一回目、なんとブロンズの鋳造におじゃましてきました。おや、初回から体張りすぎ感が否めないぞ。第二回はシャーペン分解レポとかにしよう。そうしよう。

 
 

そもそもブロンズとは銅とスズの合金で、1200℃を超える高温で熔かされたこの金属は「汗一滴で部屋ごとふっとぶ」と言われるほどデンジャラス。耐熱加工された防御服(銀のエプロン)とヘルメットで全身を守りますが、昔の技術者たちはタンクトップみたいなカッコで同じ作業をしていたらしい。いかつすぎやないか。そうした危険な作業のためか、業者や作家さんに依頼した場合の相場は全身立像で約700万円から数千万円。己の銅像を地元の公園に建てるためには1000万くらいポンと出せなきゃいかんということです。故郷に錦を飾れ!ファイト!

 

 
 

今回は古い作品をリサイクルして材料にし、膝の高さほどの作品を鋳造します。延べ棒などに交じってただ熔かされるのを待つおっさんの表情はどこか穏やか。

 

 
 
ドラム缶型の溶鉱炉は二層構造になっており、外周の燃料で熱してサラサラになったブロンズを注ぎ口からバケツに、バケツから耐火石膏で出来た型に注いで成型するという仕組み。言葉で説明すればシンプルな工程ですが、相手はいわば溶岩。一瞬たりとも気の抜けない命懸けの作業なのです。
 
優しい笑顔をたたえたまま緑の炎に包まれてゆくおっさんと、その仲間たち。燃料の石炭が放つ紫の炎とのコントラストは実にこの世のものとは思えないほどサイケデリックで蠱惑的。感傷に浸る間もなくおっさんは金属棒でこっぱみじんにされほどなく炉の中へ消えてゆきました。七色の火影のなかに世の刹那を感じる。切ないぜ。
 
 

 

材料がすべて熔け切ったところでお鍋のアク取り。オロと呼ばれる不要物をロングおたまですくっていくと、強烈な蛍光オレンジ色をした液面に顔が映ります。恐ろしく美しい。ただしものすごい熱気。カメラのシャッターを切る私の指の毛も焦げて灰になりました。

 
 
 

点火から約二時間、鋳造作業はクライマックスへ。適温チョイ上まで熱されたブロンズを溶鉱炉からバケツに移します。型いっぱいに注ぎきるまでは一刻を争うスピード勝負。

 

 
 
石膏型に開けられた注入孔。ここからブロンズが全体にいきわたります。温度や環境によっては型のすみずみまで満ちきらないときもあるそうで、ただのオジャマムシである私も祈るような気持ちでぎ
ゃーぎゃー叫びながら見守っていました。
 
 
 

そして待ちに待った瞬間、この光景。見て見て!肌が灼けつきそうな熱気を放ちながらひとすじに注がれる透明の金属!壮麗すぎてヨダレがたれちゃいます(大爆発)。

 

 



 

 
 
しばらくの間まばゆい光を放っていますが、温度が下がっていくとともにあの渋い銅像の色になってゆきます。本当に夢のような一瞬の出来事でした。鳩を追いかけてたあの少女もこうやって緑の炎立ちあがる溶岩から生まれて来たのね……!『鋳造観にくる?』とライトなお誘いに乗ってみたら、とっても感動的な光景に出会うことができました。

 



取材にご協力いただいた京都市立芸術大学彫刻科のみなさんの展示が同大学にて開催されています。気になる完成作品の全貌はこちらでどうぞ!

 

 

彫刻三回生展「ニュードーナツ」


宮木 亜菜  君嶋 紗帆 
五十川 命  堂本 佳澄
川瀬 鮎美  楠井 沙耶
御厨 阿未  

 

2014年10月14日(火)~10月19日(日)

9:00~17:00

京都市立芸術大学 大ギャラリーにて

Profile

高石 瑞希
高石 瑞希
アンテナのデザイナー / ライター / カメラマン etc。育ちは良いがしつけが悪い。牧歌的なバンド、Easy YokeのBa / Voもやっています。Twitter『たかいしのノート (@radiotakaishi)』では、珠玉のしょうもないイラスト作品を日々更新中。幼い頃からよく見るのは『洞窟に泊まる』夢。

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