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WORK (SHOP) IT OUT!ーヨーロッパ企画 大歳倫弘さんインタビューー

 

アンテナ編集部が3チームに分かれて、それぞれ内容の異なった連載を週替わり掲載することになりました!今週は山田克基 (こにー) 、小倉陽子 (家ガール) 、則松弘二チームの「WORK (SHOP) IT OUT!」です。年齢も性別も違う三人が連載するのはワークショップについて。

 

そもそもワークショップって何ぞや?という方も中にはいるかもしれません。行きたいけど行ったことがない人もいるかもしれません。触れたことがある人も触れたことがない人も、今一度ワークショップに目を向けて、楽しんでみてはどうでしょう?「同じ阿保なら踊らにゃ損々!」精神で突撃していきます。

 

第三回となる今週は、前回お邪魔したワークショップにて講師を務められた、ヨーロッパ企画の大歳倫弘 (おおとしともひろ) さんへのインタビュー!開催者視点でのワークショップについてや、現在ヨーロッパ企画で劇作・演出などをされている大歳さん自身のヨーロッパ企画との出会いの話まで、色々聞いてみました。面白いことの原動力って、実は自分のすぐ隣に潜んでいるのかも。

 

 

 

 

 

「どうしよう!」困ったことを乗り越えようとすることが芝居を面白くする

 

 

――先日はヨーロッパ企画の演劇の作り方を少し体験することが出来て、私自身は役者を目指しているわけではないのですが、とても良い刺激になりました!先日の明倫ワークショップは、割と演劇経験のある方が集まっておられる感じでしたよね。

 

明倫ワークショップはそもそも地域住民に開かれた企画なので、今まではそれこそ近所のおじいちゃんとか、演劇を経験したことが無い方が参加されることが多かったんです。あんな風に経験者が沢山参加される回の方が珍しいかもしれません。もっとゆっくりじっくりやるつもりだったんですけど、すぐディスカッション出来ましたね。

 

――ワークショップ当日の参加者を見て、その日のやり方をジャッジされるのですか?

 

僕が担当するワークショップは、今回のように基本的にはエチュードを体験してもらうやり方が中心ですかね。ヨーロッパ企画が開催するワークショップのスタンダードでもあるので。初心者の方が多い場合は半分ぐらい出来上がっている台本をお渡しして、最後の部分をエチュードで作っていったりもします。

 

――最初にやったグループワーク (背中に有名人の名前を書いて、他の参加者に質問をしながら自分の背中に書かれた人物が誰かを当てる) は、どんな効果を狙っているのですか?

 

まず参加者の皆さんが初対面なので、緊張をほぐしてなるべく早急にコミュニケーションを取ってもらうためですね。あとは後にグループに分かれてお芝居をつくるときに、メンバーを引っ張れる人か、ついて行く方が向いている人かみたいな適性を探る意味合いもあります。

 

――アンテナのライター則松 (連載第二回の体験記を担当) の適性は、大歳さんとしてはどう感じられました?

 

彼は多分面白いことがすごく好きで、日常から面白いことを見つけるのが得意な方だと思ったんですね。所謂ツッコミが出来るタイプというか。だから、役割としては途中から敢えて逆になるように指示しました。突っ込まれる側になる方が、彼の日常にあまり無い困った事態が沢山生まれて芝居が面白くなると思ったんです。

 

 

 

 

――困った方が面白い、というのがまさに「何気ない日常を面白く見せる」ということですね。

 

「どうしよう!」と思う出来事があった方が、みんなが色々考えるし何とかしようとするし、面白いと思うんですよね。難しい問題にぶつかった時に、「難しいから、もういいや」って避けて通ることも出来るじゃないですか。そうじゃなくて面白がって「難しくて面白そう!どうしよう!」という、考えたくなる問いを与えるのがワークショップにおける僕の役割ですかね。

 

 

 

演劇って、もっと気軽で面白いものだと知って欲しい

 

 

――今までで一番大歳さんの印象に残っているワークショップってどんなものですか?

 

実際に僕のお芝居に出てもらう人を探すために、オーディションを兼ねるような形でワークショップを3週連続やったことがあって。その中から実際に公演に出演していただきました。

 

――それは初心者の方ですか?

 

ええ、全く未経験の方です。そういうワークショップがあっても面白いかなと思って。

 

――ワークショップに参加する時点で、参加者もひとつ殻を破っているとは思うんですけど、それがそのまま実際舞台に立つところまで実現するって凄いことですよね。

 

ワークショップって、僕たち作家にとっても出会いの場なんですよ。役者同士って色んな作品を通して交流が深まったりしますけど、作家って自分の公演という場をつくることはあっても、外に出会いに行くきっかけが中々ないので。

 

 

 

 

――明倫ワークショップ以外にも、ヨーロッパ企画や大歳さんがワークショップをされることってあるんですか?

 

ヨーロッパ企画の本公演が年に1回あるんですけど、公演をする都市に事前に行って、キャンペーンのような感じでその都市でワークショップをしています。あとは各県で高校演劇の合宿が毎年あるところもあるんですけど、そちらに講師として呼んでいただくことがあります。

 

――高校生を対象にしたワークショップだと、また違う作用がありそうですよね。

 

他の部活……例えばサッカーとかなら大人になっても仕事しながら続けたりすることってあると思うんですけど、演劇を大人になっても続けるのは中々難しいんですよね。それこそ大学に行く時点で辞めてしまう子も沢山いる。そんな中でワークショップで関わった子たちが「これからも続けていきます!」なんて僕が喜ぶようなことを、気を遣って言ってくれるんですよ (笑) 。今の高校生ってみんな空気が読めて凄いですよね。

 

――いやいや!高校生が大歳さんにそんなに気を遣わないでしょう (笑) 。でも演劇のワークショップと一言で言っても、参加するものによって与える影響は違うでしょうしね。

 

出来るだけ間口を広げたいというのはあるんですよ。演劇ってやっぱり例えば映画のように気軽に観に行けないイメージというか、どうしてもハードルが高いと思われがちだと思うんです。もっと演劇ってものがシンプルで楽しいものだと伝わったらいいなという気持ちで、それこそ遊びの延長線上にあるものだよっていうことをワークショップで伝えたいんです。もちろん、本気で役者のスキルを上げたいという人が来られるワークショップをするなら、もっと理論を突き詰めたりする必要があると思うんですけど、明倫ワークショップに関してはとにかく間口を広く、ということを心掛けています。

 

 

 

役者たちとどんな面白い空間がつくれるか

 

 

――ところで、大歳さんは大学生でヨーロッパ企画に入られるとき、劇団だって全然知らずに入られたって本当ですか?

 

そうなんですよ!当時のヨーロッパ企画の大人たちは、演劇とか劇団って固いイメージを持たれてて、劇団って言ってしまうとどうも人が来ないぞ、っていうのがあったみたいで。そのときは「企画集団」ヨーロッパ企画って言って「劇団」とは言ってなかったんです。まさに、それに引っかかったという感じですね (笑)

 

――最初に劇団ですよ、って聞かされていたらヨーロッパ企画には入っておられなかったかもしれないですか?

 

そうですね。当時配ってた勧誘のビラを最近見直したんですけど「大学一おもしろサークル」って書いてあって (笑) 。旅行に行ったときの楽しそうな写真とか載ってたんですよ。それ以外の情報は一切なくて。

 

――それがアンテナに引っかかった大歳さんも、既に選ばれし人ですよね (笑)

 

いやーそんなことはないと思うんですけどね (笑) 。何人か一緒に入団したんですけど、今残っているのは僕一人ですね。

 

――でも最初に劇団であるということを伏せて大歳さんの興味を惹いた上田さんやヨーロッパ企画の大人の方たちはかなりの策士ですね。

 

だから僕は、演劇を全く知らない立場から、演劇に足を踏み入れて面白いなってところまで自分自身で味わえているので、もし当時の自分がこのワークショップで、演劇に初めて触れたとしても興味持ってもらえるように意識していますかね。

 

――そんな大歳さんが「演劇って面白い!」って思えた瞬間ってどこらへんだったんですか?

 

僕高校のときはサッカー部だったんですけど部活自体は全然面白くなくて。でも授業が終わってから部活が始まるまでの何てことない準備の時間とか、終わってから部室でわちゃわちゃ話している時間がめちゃくちゃ好きで。だから続けられたところがあるんです。学祭でも準備しているときが一番楽しかったりするじゃないですか。演劇に携わることになって、準備しているときとか稽古終わりとか、あのときの感覚に似ているなと思って。しかもプロとして人に見せられるものを作っている大人たちがそこには居て。ああ、大人になってもこういうこと出来るんだな、っていうのが、今思えば演劇に憑りつかれた理由だと思います。

 

 

 

 

――そこから役者ではなく劇作家を選ばれたのは何故なんですか?

 

やっぱりその何となく人が集まる、あのわちゃわちゃした空間をつくれるのは劇作家だなと思ったんです。面白い役者を集めて面白い空間を作りたい、そのためには面白い脚本を書けばいいんだ、という考えのプロセスですよね。

 

――やっぱり演劇の世界では珍しいですよね、大体劇作家になる方って「こういう世界が描きたい」みたいなものがある方が多いと思うので。

 

僕はこういうものを描きたいっていうのは無いので、今どんなことをやったら役者が面白がってくれるかな、っていうことを考えていますね。だから僕の作品をアーカイブで並べると一貫性が無いって言われがちなんですけど、そのとき出会った役者とどんな面白い空間がつくれるかということを常に考えています。

 

――そうやって出来た作品を実際公演して、観客からの反応で変化する部分ってありますか?

 

お客さんの反応が良いと、役者さんたちのムードが良いんですよね (笑) 。お客さんに面白いって思ってもらえることによって役者やスタッフがハッピーになって、観劇の空間自体がハッピーであることを目指している感じです。

 

――やっぱり生ものだからですかね?映画とかってそういう感覚は少ない気がします。

 

映画とかだと作品として残るということを意識しているからでしょうね。

 

――映像作品を作られるときはまた意識していることが違うんでしょうか?

 

アイデアによって映像で見せる方が面白い、というものがあるんですよ。映像にするためにつくるとか演劇にするためにつくるというより、その面白い空間がどうしても映像でしか表現できないから映像にしたい、って感じですかね。料理と同じで、新鮮な鯛が入ってきたらそれを刺身にするのか煮つけにするのかを考えるというイメージです。

 

 

 

社会のメソッドや他の表現と接点を持ち、常に新しく居続けること

 

 

――これは夢というか理想なんですけど、例えば音楽をやっている人が演劇のワークショップを受けたり、演劇をやっている人が映像のワークショップを受けて、それぞれのアートやカルチャーを突き詰めている人たちが新しい刺激を受けて交流するために、もっとワークショップが活用されたらいいなと、我々アンテナでは思っているんです。

 

それ面白いですよね!僕もバンドをやっている友達がいるんですけど、ずっと一緒に何かやりたいねとは言っていて。でもまだ明確な答えは出せていないですけど、お客さんを楽しませたいというポリシーは同じなはずなので、手は繋げると思いますし、むしろ2倍になれるはずだと思っています。

 

 

 

 

――ヨーロッパ企画ってそれこそ、京都を代表する優秀な劇団、というイメージが勝手にあったんですけど、知れば知るほど手広く色んな事をされていて、本当に企画集団なんだなって思います。

 

でも全て意図してそうなったわけではなくて、必要に迫られてなんですよ。東京だとすぐ近くに分業出来る人や団体が沢山居て、でも僕らは自分たちでやるしかなかったというか。ラジオ番組なんかも自分たちで機材を組んで録音までしたものを納品してるんです。

 

――そうなんですか!でもそれを全てやれているから、凄いですよね。

 

いや、やれていないこともあるんですよ。やれたことだけが残っているだけで (笑)

 

――今までで一番大変だったことって何ですか?

 

1ヶ月間喫茶店をしたんですけど、それは大変だったと思います。飲食店なんてやったことなかったんで。

 

――喫茶店経営ですか (笑) 。それは何のためにされてたんですか?

 

『曲がれ!スプーン』が映画化される際に、舞台となる喫茶店を実際につくってみたら面白いんじゃないかと思ったんですけど……もう当分やりたくないですね (笑) 。そのときに一番学んだのは「シフト表つくるの大変やな」ってことですかね。

 

――シフト表 (笑) 。何か演劇にフィードバックはありましたか?

 

そういうことをやると、活動が演劇っぽくなくなってくるんですよ。社会の色んなメソッドを学べるというか。一般企業のやり方を演劇に取り入れていくということは、演劇自体の風通しを良くするためにも必要なんじゃないかと。

 

――なるほど。ヨーロッパ企画さんって以前から京都の演劇界隈から見ると少し異端な感じでしたもんね。

 

どうなんでしょうか、近年では演劇以外の表現をされている人たちともシームレスな交流を持ちたくて、文化祭的な『ハイタウン』というイベントを2年に1回開催しています。近年のヨーロッパ企画を一番象徴しているイベントではないかと思います。

 

――これからも「演劇」や「劇団」に捉われない、面白い企画を楽しみにしています。アンテナとも是非面白いことを一緒に出来たらと思います。ありがとうございました!

 

 

WORK(SHOP)IT OUT!第一回座談会

WORK(SHOP)IT OUT!第二回ワークショップ体験記

 

 

 

大歳 倫弘(ヨーロッパ企画・劇作家/演出家/構成作家)

’05年、ヨーロッパ企画に参加。

以後、作家として、ラジオの構成や、ドラマ・映画の脚本を数多く手がける。

また、舞台の脚本・演出も行っており、’09年から「ヨーロッパ企画 イエティ」名義で、プロデュース公演を定期的に上演している。

ヨーロッパ企画

テレビゲームを思わせるトリッキーな地形や、SF・ファンタジーめいた世界観の中で、登場人物たちがモソモソと日常会話をつむぐ、といったスタイルの群像コメディを得意としており、年1回ほどの本公演ツアーを行っている。近年では「企画性コメディ」の名のもとに、特殊な劇構造や大がかりな仕掛け、誰もやらなさそうな思いつきといった「企画性」に根ざした、珍しいコメディを模索している。

 

本公演以外にも、いろんな企画公演を大小とわず行っており、また、イベントや映画祭、DVDやテレビ番組制作、ラジオ、WEB企画、携帯アプリ、雑誌連載など、多方面にわたってコンテンツ制作を展開。

 

劇団でありながら、本広克行監督とともに「サマータイムマシン・ブルース(’05)」「曲がれ!スプーン(’09)」といった舞台作品の映画化に取り組んだり、「ヨーロッパ企画です。(’12)」では北海道テレビの藤村・嬉野氏とともに過去の短編コメディの映像化を試みたり、また、「タクシードライバー祇園太郎(NHK・Eテレ)」などのテレビ番組を自ら企画・制作したり、京都の小学校をつかってフェスティバル「ハイタウン」を開催するなど、演劇の枠にとらわれないユニークな活動ぶりで、独自のフィールドを開拓しつづけている。

 

この記事を書いた人

小倉 陽子
小倉 陽子
文章を書く人、音楽を聴く人。引きこもり系人見知りの割に、どこへでも飛んで行きたがり誰とでも話したがります。

座右の銘は「何かを始めるのに遅過ぎるなんてことはない」

だいたい家かライブハウスかカフェに居る、永遠の家ガールです。

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