トップページ > 読みもの > 俺の人生、三種の神器 -則松弘二 ①H君編-

俺の人生、三種の神器 -則松弘二 ①H君編-

oreno_eyecatch

 

▼俺の人生、三種の神器とは?

 

人生の転換期には、必ず何かしらきっかけとなる「人・もの・こと」があるはずです。そのきっかけって、その当時は気づけないけれども、振り返ると「あれが転機だった!」といったことはありませんか?そんな人生の転機についてアンテナ編集部で考えてみることにしました。それがこの「俺の人生、三種の神器」。

 

折角なのでもっとアンテナ編集部員ひとりひとりのことを知ってもらいたい!そんな気持ちも込めたコラムです。これから編集部員が毎週月曜日に当番制でコラムを更新していきます。どうぞお楽しみに!

 

 

僕の人生を語るには絶対に外せない「人」がいて、今回はその人物の話をします。

 

 

中学生の時、その時は2年か3年だったと思う、2009年くらい。周りの同級生とどうしても差をつけたいという気持ちでどんどん音楽を聴き始めていた時期で、こんなとこで書いて良いかわからないけど、その頃には雑誌文化は消えかかっていて、代わりにYOU TUBE等の動画サイトの黎明期だった。

 

 

そんな中、僕には年が離れた兄と姉がいたので90年代の音楽雑誌全盛期の情報を得るのは簡単な話。それで、兄や姉の部屋にあったロッキンオンやスヌーザーを読んで、それを動画サイトで聴いたり、借りに行ったり、CD屋に買いに行ったりもしていた。

 

 

そんな影響をモロに受けたため好きになったアーティストは洋楽ならNIRVANAからの流れでsmashing pumkins、ソニックユースやR.E.M等、他にはフガジやハスカードゥなどのハードコアパンク。邦楽ならミッシェル、ブランキーそしてbloodthirsty butchersだった。

 

 

特にブッチャーズはオルタティブロックのすかした感じと生を感じるハードコアパンクをうまく折衷したバンドだと僕は思っていて、吉村秀樹が亡くなる前に一回くらいライブに足を運んでみたかったと今でも思うくらい大好きなバンド。

 

 

 

 

私立の中高一貫校の上、部活動も先輩との折り合いの悪さから辞めたこともあって、時間は死ぬほどあった。何もしてない時間を埋めたかったっていうのもあるけど、好きなジャンルだけ、オルタティブロックだけはどんどん掘りさぐって聴きまくって、学校の授業中はノートの端に「Smashing pumkins」という文字列やベンジーの歌詞の一部を書いたり、誰も周りに居ないのを確認してから「bloodthirsty butchers」と呟いたり、事態はどんどん深刻になっていった。そんな生活を2、3年ほど続けていた結果、則松少年はクラスメイトには嫌がらせのように自分の好きな音楽を聴かせて、その上よく分からない音楽知識 (ギターを齧ってて、他の学校の生徒とかともバンドを組んでいたのもあってコード進行やソロの話) を捲したてる、とても香ばしいティーンエイジャーに成長してしまった。もしかしたら、成人した今でも変わっていないかもしれない。

 

 

しかし、高校1年の終盤にある人物と出会い、色々と状況は変わって行った。

 

 

「則松っ、ミッシェルとブランキー好きなん?」と違うクラスから、H君が僕に話しかけてきた。彼とはそれまでは中学一年の頃に同じクラスにはなっていたが、スクールカーストの違いからか (言うまでもなく、彼はスポーツ万能でカッコよかったので最上位。僕はキモいので最下位)、ほとんど絡みがなかった。そんな彼にいきなり喋りかけられたので物凄くきょどり、いつものようにかなり早口で「さ、最近好きなのはジェフ・バックリィってソロのひ、人でア、アルバム一個しかないからお、お得だよ」と質問の答えにもなっていない、気持ち悪い受け答えをしてしまった。しかし、そんな状況でも彼は目を輝かせて、僕と喋ってくれた。その時、僕は「コイツに影響を与えて、弟子的な存在にさせよう」などと、これまた香ばしい事を思っていた。

 

 

 

 

二年生になり、H君とは同じクラスになって、彼とは休み時間の度に音楽談義をずっとしていた。僕の真似をしてギターを始めて2ヶ月ほどで僕より上手くなったり、バンクシーの映画を2人で観に行ったり、美術館のポップアート展に行ったり、彼は音楽だけじゃなく、サブカルチャー全般に興味を示していって、徐々に音楽面でも嗜好も僕とも別になって嬉しかったのを覚えてる。

 

 

クリスマスには、お互いにCDをプレゼントしようと2人で心斎橋に赴いた。僕はやっぱりブッチャーズにしようと「未完成」に、彼はオシリペンペンズの「猫が見たライブ」に決めた。しかし、その時僕はバイトもしてなくお金が無かったため、両方のCDを彼に買わせた挙句、「『未完成』をiTunesに入れたい」とか言って、結局二つとも持って帰った。いまだに返してない。ごめん。

 

 

未完成

 

 

そんな学園生活を1年ほど過ごすうちに、H君はどんどんサブカル界に飲み込まれていった。その時期から、彼の奇行が目立ち始めたのを覚えている。町田康と中島らもの著書を学校内で大声で朗読したり、元々長かった髪をペンペンズの石井モタコよろしく伸ばしまくったりなど、彼は完璧に「奇人」の烙印を押されていた。やはり、僕も様々な奇行に付き合わされて周りから白い目で見られていた。

 

 

このコラムを書くにあたって、昔を思い出してみると、僕がH君に影響を与えていたんじゃなくて、H君が僕に影響与えていたんだな感じた。彼との時間は本当に、僕の人格や趣味嗜好に変に作用したと思う。

 

 

彼は大学では軽音サークルに入って、現在もエキセントリックなパフォーマンスを続けているそうで、この前はカッターで体を切って17針も縫ったらしい。そこまでして、自分のやりたいことや鬱憤や怒りを表現できるH君を今では完璧に尊敬している。形から入ってばっかの僕だけど、表現することに関してはやっぱり負けたくない。彼が大好きなINUを聴くたびにそんなことを思い、僕の胸はキュッと締まるのです。

 

 

 

▼他の人の転機

堤大樹

①初めてのひとり旅

http://kyoto-antenna.com/column/turning_point_tsutsumi_1/

山田和季

①シンパシー

http://kyoto-antenna.com/column/turning_point_kazoo_1/

岡安いつ美

①Peelander yellow

http://kyoto-antenna.com/column/turning_point_okayasu_1/

髙橋知里

①私だけのギターヒーロー

http://kyoto-antenna.com/column/turning_point_cathy_1/

小倉陽子

①家ガール

http://kyoto-antenna.com/column/turning_point_iegirl_1/

川端安里人

①映画との出会い

http://kyoto-antenna.com/column/turning_point_arito_1/

則松弘二

①H君

http://kyoto-antenna.com/column/turning_point_norimatsu_1/

山田克基

①池谷先生

http://kyoto-antenna.com/column/turning_point_coney_1/

この記事を書いた人

則松 弘二
則松 弘二
USオルタナに色々狂わされました
最近のマイブームは日本のハードコアバンドのライブ音源等を様々な方法で発掘することとモグワイの曲に歌詞を付け足すことです

最新記事