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俺の人生、三種の神器 -稲本 百合香 ② Gulliver Get編-

 

▼俺の人生、三種の神器とは?

人生の転換期には、必ず何かしらきっかけとなる「人・もの・こと」があるはずです。そのきっかけって、その当時は気づけないけれども、振り返ると「あれが転機だった!」といったことはありませんか?そんな人生の転機についてアンテナ編集部で考えてみることにしました。それがこの「俺の人生、三種の神器」。

折角なのでもっとアンテナ編集部員ひとりひとりのことを知ってもらいたい!そんな気持ちも込めたコラムです。これから編集部員が毎週月曜日に当番制でコラムを更新していきます。どうぞお楽しみに!

 

 

2回目の投稿を前に再び自分の転機を思い返していたのですが、やっぱり音楽との出逢いが大きいと実感しました。むしろ私が音楽やバンドにどっぷりハマっていなかったら毎日の生活も今とはガラリと変わって、人生違う方向に傾いていたのではと思うほどです。

 

前回の投稿では私が『音楽を好きになったきっかけ』をGARNET CROWの出逢いとともに紹介しました。もうひとバンド私には出逢えたことが転機だと思える存在がいます。

Gulliver Getという京都を中心に活動していたバンドについて今回紹介をしたいと思います。

このバンドに出逢ったこと、解散を機にお別れをしたこと自体が本当に私の転機だったなと思います。それほど私にとってとても大切な存在です。

 

 

 

音楽への挫折

 

Gulliver Getとの最初の出逢いは前回のチーム連載『フラッシュバック・エモーション』でお話しをしていました。( こちらも併せて読んでいただけると嬉しいです。 )

そのときファンになった大きなきっかけを今回の編集部コラムで紹介すると予告をしていましたね。まずはその出来事についてお話をしようかなと思います。

 

それは高校2年生の春。ある日曜日の出来事でした。

当時私は吹奏楽部に所属していて、休日も関係なしに朝起きては部活に行く生活の繰り返しでした。その日ももちろん1日中部活があり、合奏練習の日でもありました。

私はどちらかというと全体の中では花形のトランペットパートを担当していました。その為、嫌顔にも自分のコンディションが万全なときも悪いときも合奏中には目立ってしまいます。

その日は生憎コンディションが悪い日。自分でもその状態を分かりながら合奏練習に臨みました。

同じパートには絶対的に演奏が上手い先輩がいて、少しでもその先輩に近付きたい気持ちと負けてたまるかのライバル精神で正直いつもいっぱいいっぱいでもありました。だからこそ、この日のように調子が悪い日にはやるせない気持ちに溢れていました。こういった気持ちもコンディションの悪さも自分の中で隠していたつもりでした。

それでも、顧問の先生には合奏中にその状態がバレた上にこんな言葉をかけられてしまったのです。

 

「あなたは先輩に頼りきらないと演奏ができないのか」

 

この言葉を聞いた瞬間に自分の中の糸が切れた感覚が走ったのです。

 

 

 

ラジオから流れてきた1曲

 

「音楽辞めてしまおうかな」

部活から帰宅して初めて感じてしまったその感情にすら、私は落ち込んでいました。顧問の先生の言葉の本当の意味を大人になった今では分かるのですが、当時はまだまだ精神状態も子供だったんでしょう。

ぼんやりと凹みきっている中、眠りにつく前になんとく流していたα-STATIONのラジオから、このフレーズが聞こえてきたのです。

 

「時を越えてよみがえるのは幸せばかりじゃないのだけれど

立ち止まりそうになった日さえも愛しく想える私は強くなった」

 

ひどく落ち込んでいた私の中に、スッとそのフレーズが入ってきて気付いたら聴き入っていました。同時にあまりに感動して泣いていました。このフレーズがGuliver Getの“桜の木の下で”という楽曲のサビの一部分だったのです。当時、毎週日曜日の夜の30分間α-STATIONで番組を担当していたのがGulliver Getだったんですね。バンドの存在自体は知っていましたが曲をじっくりと聞いたのはこの日が初めてでもありました。

この曲を耳にしたことがきっかけで気持ちを持ち直すことが出来たのです。「音楽の力ってまさにこういうところにもあるよな」と強くこの時に実感をしました。この楽曲このフレーズは私の中でこの日以来とても大切なものになりました。今もこの楽曲をライブで聴くと出逢いの瞬間を思い出してウルっときてしまいます。

 

 

 

 

 

バンドとライブハウスの楽しみ方を知る

 

ラジオから流れてきたこの1曲との出逢いをきっかけにこのバンドのことが、さらに気になるようにもなりました。併せて、この楽曲が収録された作品のリリースフリーライブを筆頭に少しずつライブを観に行くようになりました。最初に彼らのライブを観たのはVo.とGt.の2人編成でライブ会場もショッピングセンターでのステージだったのですが、その後メンバー5人全員のライブを彼ら本来の活動フィールドでもあるライブハウスに観に行くようになりました。

最初に5人でのステージを観たときも、それはそれは衝撃で。何が衝撃かって、バンドとして一体感とCD音源とはまた違った楽しみ方が見える演奏とアドリブ力凄かったんです。彼らのライブを観るまでは正直ライブハウスに足を運ぶということが滅多にありませんでした。だからこそ、私がバンドとしてのライブサウンドを本当の意味で知ったのは彼らのおかげで様々なライブハウスに行くようになったのも彼らがきっかけでした。

「この楽器パートがこの日はこんなふうに入ってきた」とか「このフレーズや唄いまわしがかっこいいな」とかその日ごと、その瞬間しか観れないライブの醍醐味が彼らのライブにはたくさんたくさん溢れていました。それまで私は1パートごと、1フレーズごとに注目して音楽を聴くよりも、メロディーや歌詞全体を重視する音楽の聴き方をしていました。彼らのおかげでまた深い音楽の聴き方、楽しみ方を教えてもらったと思っています。

ライブハウスに頻繁に行くようになり、対バン形式のライブというものも初めて知ったので沢山のアーティストとの出逢いにも恵まれて、触れる音楽の視野も以前よりも広がったように思います。

 

 

 

 

悔しさを覚えた、最愛のバンドの解散

 

たくさん音楽やライブの楽しみ方を教えてくれた彼らでしたが2010年12月03日、彼らのホームである 京都Live Spot RAGでのワンマンライブで解散を発表し、2011年02月26日に解散を迎えました。

 

 

本当にこんな日が来てしまうのだなと。解散発表のライブに帰宅してから次の日になってもこれでもかっていうくらい私は泣きました。好きなアーティストの解散に直面するのも初めてで心にぽっかり穴が開いたのはもちろんだったのですが、私が流したのは悲しい涙より悔しさの涙でした。解散したのは「バンドとして思うところに手が届かなかった」という理由だったから余計に。東京ドームのような規模でライブができるアーティストになることがバンドとしての目標だったのです。

誤解を恐れずに書くならば、「彼らが売れない世の中なんておかしい」と私は当時から思っていましたし、今も本気でそう感じています。

よく「バンドにとってファンは誇りであり宝物です」というようなコメントを目にすることがあると思うんです。それと同じように私にとってGulliver Getは誇りだと思っています。私はこのバンドのファンであることを出逢ったときから解散して数年経った今もこれからもずっと本気で誇りだと思っています。

「純粋に音楽をすること」って簡単なことじゃないのかなとも感じました。私はバンドマンとしては表舞台に立ったことがないので、分かったようなふりになるかもしれません。ですが、少なくとも彼らのライブを何度も観てきて、良いバンドだって最高にかっこいいバンドだって知っているからこそ、こういった感情が湧いたのだと思っています。私はファンの立場ではありますが、本気でとてもとても悔しかったんです。

 

 

 

私がライターを目指し始めた理由

 

このバンドの解散をきっかけに「良いものやことをもっとたくさんのひとに知ってもらえるきっかけを作りたい」「良いものやことが埋もれていかないように少しでも誰かや何かの力になりたい」という気持ちを抱くようになりました。

だからこそ、私はライターを目指すようになり、今こうして言葉を綴っています。私がもう少し早くライターとして活動できていたなら、少しでもこのバンドの力になれたかもしれないって今でも思っています。

彼らのライブレポートを私が形にできなかったことがライターとしての最大の後悔だと思っています。ですが、このバンドの悔しさとこのバンドへの感謝の分まで私はできる限りこれからも言葉を綴りたいと思います。素敵なもの、こと、場所など少しでも多くのひとに届けられるライターでありたいと思っています。

 

 

 

▼他の人の転機

 

堤大樹

①初めてのひとり旅

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②音楽

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山田和季

①シンパシー

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②自己が無になった話

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岡安いつ美

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②舞台に立つ

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川端安里人

①映画との出会い

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②真夜中

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則松弘二

①H君

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山田克基

①池谷先生

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②表現の素

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稲本百合香

①GARNET CROW

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①Kさん

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森下優月

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高石瑞希

①ノート

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齋藤紫乃

①ウォーターガールズ

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この記事を書いた人

稲本 百合香
ライター。なぜか「ライブに行くのが意外!」と言われがちですが

休みの日はもっぱらライブで現実逃避!

「メジャーインディーズ問わず良いものは良い!」

という想いを抱きながら日々、素敵なもの(音楽・アーティスト)を

探し求めて、アンテナにて奮闘中。

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