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俺の人生、三種の神器 -小倉陽子 ②舞台に立つ-

 

▼俺の人生、三種の神器とは?

 

人生の転換期には、必ず何かしらきっかけとなる「人・もの・こと」があるはずです。そのきっかけって、その当時は気づけないけれども、振り返ると「あれが転機だった!」といったことはありませんか?そんな人生の転機についてアンテナ編集部で考えてみることにしました。それがこの「俺の人生、三種の神器」。

 

折角なのでもっとアンテナ編集部員ひとりひとりのことを知ってもらいたい!そんな気持ちも込めたコラムです。これから編集部員が毎週月曜日に当番制でコラムを更新していきます。どうぞお楽しみに!

 

 

 

夢はでっかく、でも志が低かった

 

 

振り返るとどんよりするくらい、どんなこともあまり掘り下げたり継続したり出来ていない私の人生なのですが、どうやらずっと芸術・文化に関することに興味深々だったということだけは確かです。ハタチぐらいまで、私が口走っていた将来の夢の歴史をなぞってみると、

 

歌手(これが小2ぐらいで、このときの歌手というのは「歌を歌う人」ではなく「テレビに出るような人」くらいの意味だと思います)→漫画家→小説家→脚本家→映画監督

 

クラスの女の子たちが挙げていた、お嫁さんやお花屋さん、看護師や保育士、みたいな夢を一切描いたことがなく、典型的に地に足ついていないふわっふわの子どもだったのでしょう。いやまあ、今も自分で自分が心配になるくらいふわふわしている故に、どれも叶っていないし続けていないのですが。

 

 

 

本当は映画が撮りたかったのに、気付いたら舞台に立っていた

 

 

そもそも高校生のときには、「映画監督」と呼ばれる人に成りたいと、憧れだけで放送部に所属していたのですが、実際映画を撮る気概はありませんでした。既存の音楽のミュージックビデオもどきを勝手に作ったりしてのほほんと過ごす日々。

 

どこかで勉強すれば成れるやろう、ぐらいにも思っていて。学校の授業が大嫌いだったので、大学進学も親の手前四大に行きましたという事実だけ獲得したくて、選んだのが「芸術の学べる大学に行く」ことでした。大阪の某大学の芸術学科にギリギリ進学し、とりあえず「芸術」と名の付くところに所属出来て、私としてはもう満足。何か分からないけど浮世を離れられたことで達していたんですね。そこでは映像の勉強はほんの数コマしかなくて、ほとんどが「舞台芸術」の勉強でした。あんまり舞台には興味が無かったものの、目の前にあるそこそこ楽しいことは、深く考えずにそこそここなしていくタイプで、気が付いたら映像のことは忘れて舞台のことに夢中になっていました。しかし一緒に勉強する同期たちは、高校演劇でブイブイ(?)言わしてきたセンス溢れる人ばかり。高校時代のほほんと部室にあった業務用カメラで遊んでいただけの私は、何の志もなく気後ればかりの毎日。

 

 

 

あなた何でそんなに自信がないの?

 

 

私が習ってきた演技の勉強はルコックシステムと言われるメソッドらしいですが、ここでは専門的なことは割愛。まずエチュードと呼ばれる即興劇を中心に、セリフは与えられず状況設定だけが与えられて、全て舞台の上で自分たちが考えていくという訓練を、授業では主にやっていました。大学生になるまで、舞台役者というのは決められたセリフを覚えて、非日常的なテンションで感情を過剰に発するもんだと思っていたので、なんかこっぱずかしい……と思っていたところはあります。要はよく知らないくせに見下していたのかもしれません。先生から何度も言われたのが、説明するな、嘘つくな、喋るなというようなことで、本当に目からウロコでした。演じるって、嘘ついて違う自分に成ることだと思っていた私は、そのエチュードでの丸裸にされるような感覚が、痛々しくて怖くて仕方なかった。でもセンスの良い同級生たちのエチュードを観ているとなんて面白くて無限な世界なんだろう、とも感じていました。

 

そんなある日、気後れしまくる私に先生が一言

 

 

「あなたなんでそんなに自信がないの?」

 

 

そう言われればずっと自信がないし今もそうかもしれないな。自分でもずっと何だか分からないもどかしさと不自由さを抱えていて、それの正体が自信のなさだと、ハッキリ言い表してもらった初めての瞬間。100点の正解を出さなければ人に嫌われてしまうと思うあまり、正解かどうかを探り探り生きている節は未だにあります。

 

ある日の授業で、ふと演じている自分の中の感覚が変わるのが自分でも分かる瞬間がありました。きっかけは特にありません。自信ってなんだろう、心を開くってなんだろう、とずっとそれは考えながら授業を受けているうちにふと。言葉では説明しづらいのですが、相手役のことが怖くなくて、自分の中身を素直に差し出せているなと思う瞬間。例えていうなら「心を開く」の心の扉みたいなものがあるとして、それがもう3段階ぐらい「ガバッと」開くんや!?ということに気付くみたいな感覚。先生が同級生達に私のこと指して言います。

 

「ほら見て!今あの子めちゃくちゃ開いてる!自信あるねんよ」

 

 

 

人として育った時間

 

 

演技論的なことは置いておいて、大学時代に舞台に立ったことは、人としての感受性と表現力を養われたのだと思っています。今、舞台の上でした選択、抱いた感情が演技の行く末をコントロールしていて、舞台の上では超絶クズ人間でも根暗でもオタクでも、光る瞬間がある。クズ人間と真面目人間が2人きりで密室に閉じ込められたりしたら、もう面白いことしか起こらないと思いませんか?どういう人格が正しいとか、正解はないのだから、いっぱい感じていっぱい発していけば良い。

 

 

随分と大人になった今でも、時々年齢不相応な自意識過剰や恥じらいに包まれることがあります。そんなときは、人生で数回ながらも舞台に立って、思いきり自分の内部を開いて解き放ったほのかな感覚を呼び起こしてみよう。そうしたら、例えば会話が嚙み合わない面白さみたいなものを、客観的に楽しめそうだな、みたいなことを最近また思い出して楽しくなっています。

 

 

 

▼他の人の転機

 

堤大樹

①初めてのひとり旅

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齋藤紫乃

①ウォーターガールズ

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この記事を書いた人

小倉 陽子
小倉 陽子
文章を書く人、音楽を聴く人。引きこもり系人見知りの割に、どこへでも飛んで行きたがり誰とでも話したがります。

座右の銘は「何かを始めるのに遅過ぎるなんてことはない」

だいたい家かライブハウスかカフェに居る、永遠の家ガールです。

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