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俺の人生、三種の神器 -山田 克基 ② 表現の素編-

 

▼俺の人生、三種の神器とは?

人生の転換期には、必ず何かしらきっかけとなる「人・もの・こと」があるはずです。そのきっかけって、その当時は気づけないけれども、振り返ると「あれが転機だった!」といったことはありませんか?そんな人生の転機についてアンテナ編集部で考えてみることにしました。それがこの「俺の人生、三種の神器」。

折角なのでもっとアンテナ編集部員ひとりひとりのことを知ってもらいたい!そんな気持ちも込めたコラムです。これから編集部員が毎週月曜日に当番制でコラムを更新していきます。どうぞお楽しみに!

 

 

前回何書いたっけと振り返ればすでに3か月前。アンテナのメンバーも増えて一周回ってくるのもかなり経つなぁと。俺の人生三種の神器という事で、人生の中で転機になった事柄を取り上げているこの連載、2回目何書こうかなと思って色々考えていたんだけども、僕はどちらかというと出会いに大分と恵まれてきたように思う。冷静に考えると3回とかじゃ書ききれないという事に今更気づいてしまった。

 

 

もちろんそんな中でも絞って書かなければならないのは分かっているので、今回は前回の池谷先生の衝撃の発言から色々舞い込んだ中学時代の出会い、そして僕の表現の素になっているものについて書いてみようかと思う。

 

 

 

文章の素ー村上春樹

 

僕には恩師と呼べる先生が何人かいるが、小学六年生の頃の担任の加藤先生もその一人である。加藤先生もまた僕が他の子とあまり上手く行かないことを察してか、良く声をかけてくれた。加藤先生は小学六年生の僕に村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を貸してくれた。しかもハード。それまであまり本を読む子でもなく「なぜ僕に本を貸すのか、しかもこんな分厚い本を」と思いながらも読み進めてみたものの、小学校の僕にはどうしても理解が出来ずに返してしまった。

 

 

中学に上がって前回の池谷先生との出会いによって文章というか、言葉にとても興味を持った僕は思い立って他の小学校に異動になっていた加藤先生を訪ね、もう一度本を借りた。冷静に考えれば本屋で買うか図書館で借りれば良かったのだけど、加藤先生に借りなければ意味がないと思っていた気がする。

 

 

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

調べてみたら初版1985年。僕よりも年上だったことに今更驚く。

 

 

中学になってからもう一度読んだそれは、衝撃だった。文章の表現はもちろんながら、この世界の表現を言葉にする事が出来る人がいるのかと驚愕するばかりだった。もう目から鱗何枚落ちるか分からない位ぼろぼろ落ちた。ここに関しては詳しく書きたいのだが、人と共有する事が難しい。僕は本を読むことは人に会う事だと思っている。一対一の対話のようなものだから、その距離感が大事になるのでその会話の内容を共有するのはとても難しいのだ。分かる分からない、または好き嫌いに拘わらず一度読んでみてほしい一冊。

 

 

 

ギタースタイルの素ー松下先生

 

おいおい、また先生かよと思った諸君。その通りだが大事なので付き合ってほしい。僕がギターを始めたのは中学に上がってから。当時周りに楽器をしている人は少なく、僕を含めて学年に三人しかいなかった。そのうちの一人の八木 (ちなみにこれ以降八木はもう出てこない) に誘われ、家の近所のヤマハのギター教室に通う事になったのだが、そこで講師をしていたのが松下先生だった。

 

 

ギター教室というのは、音楽理論やらスケールやらいろいろ習うのだが、松下先生はその辺りは少ししか教えてくれなかった。もちろん課題曲は持ってきてはくれるのだが、基本的には教科書には沿わず、かっこいい小技が効いたフレーズの練習やかっこいいコードの流れがある曲かを持ってきた。 (そのせいでヤマハの課題曲であるDeep PurpleのBURNの習得に1年かかったが) 理論は覚えてもいいけど、ギタリストはかっこよくギターを弾ければそれだけでいいというスタンスの先生だった。

 

 

とにかくぶっ飛んだ先生で、ギターでできる面白い遊びや雑学を教えてくれた。レッスンで使っていたギターは1万円位のギターだったけど、自分で削って20万位のギターの音に改良していたり、1円玉でできるピックの作り方を教えてもらったりした。先生は今思い返しても僕の人生の中で一番かっこいいギタリストだった。先生は大して弾けもしない初心者の僕にいきなりセッションをさせたり、曲を作らせたりした。僕は今では割と稀有なギタリストで、そういった環境 (周りにギターを弾く人がいなかったというのも大事な状況) でギターを始めたため、ほとんどコピーをした事がなくひたすら曲を作り続けていたし、先生もそれをすごく喜んでいた。先生が凄かったと感じたのはずっと先の事だけど、先生のような音を今でも探し続けているし、ライブで使うアンプもYAMAHAなのは結局あの音が一番かっこよかったと思っているからである。

 

 

僕の愛用アンプ。ちなみに下のもYAMAHAのヴィンテージアンプ。

 

 

ライブの素ー尾崎豊

 

時を同じくして、僕はとあるきっかけから尾崎豊にはまった。これまでに書いた通り中学時代大分拗らせていた事もあって、僕は完全に陶酔した。ライブパフォーマンスの原点は完全に尾崎豊である。コピーをほとんどしなかったと書いたが、松下先生にお願いして譜面を起こしてもらって人前で初めて弾き語りをしたのも尾崎豊の”Forget-me-not”という曲だった。僕にとって尾崎豊は自由の象徴で、人と違う僕を認めてくれたような気がしていた。こんな僕でも何かを表現しても良いのだと教えてくれた大事な人だった。

 

 

正直この点については書くかどうかも迷ったのだが、ちょうどこれを書いている前日に決定打があった。仕事中にラジオを聞いていると、尾崎豊に似た声が聞こえてきた。正確に言うと尾崎豊の特徴的なしゃがれ方や音程の上げ方と母音の残し方なのだが、どう考えても尾崎豊に似ている。

 

 

すぐに調べた。というか、すぐに分かった。尾崎豊の息子だ。10数年ほど前に尾崎豊のトリビュートでポエトリーリーディングをしていたのは覚えていたが、時が経って歌を歌い、こんなに特徴が似ているとは。

 

 

 

もう、泣ける。泣けるよ私は。もう……。書きだしたら多分あと1万字位書ける。しかし分かっている、それは完全にただのオタクコラムになってしまうということを。まぁ、どれだけ似ているかはこの曲だけだと分からない人もいると思うが、youtubeで検索したら何本か出てくるので、見てほしい。二世論争で毎回持ち上がるような話題だが、きっと彼にも尾崎豊の影が付きまとう。それでも歌を歌う事を彼が選んだのであれば、僕は全力で応援したいと思う。彼の父が僕に教えてくれたように、きっと彼が誰かに教えてくれることもたくさんあるのだ。そんな連鎖があれば、もう少しいろんなものを信じてもいいんじゃないかと思ってしまうのは、まだ僕はキッズのままだからなのだろうか。

 

 

▼他の人の転機

 

堤大樹

①初めてのひとり旅

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この記事を書いた人

山田 克基
山田 克基
動物好き。

Baa Baa Blacksheepsとsynchronized circusでGt.を弾く

今日と明日の間がとても曖昧な時に、お酒を飲みながら本を読み、文章を書くのが好きです。

多趣味ですが、ひとりぼっちの趣味ばかりです。

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