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俺の人生、三種の神器 -山田克基 ①池谷先生編-

 

▼俺の人生、三種の神器とは?

人生の転換期には、必ず何かしらきっかけとなる「人・もの・こと」があるはずです。そのきっかけって、その当時は気づけないけれども、振り返ると「あれが転機だった!」といったことはありませんか?そんな人生の転機についてアンテナ編集部で考えてみることにしました。それがこの「俺の人生、三種の神器」。

折角なのでもっとアンテナ編集部員ひとりひとりのことを知ってもらいたい!そんな気持ちも込めたコラムです。これから編集部員が毎週月曜日に当番制でコラムを更新していきます。どうぞお楽しみに!

 

 

どうも、こんにちは。アンテナ二人目の山田です。音楽界隈ではこにーと呼ばれていたりもします。アンテナではライターや編集をやっている僕ですが、バンドでギターを弾いたり、時には一人でお話をしたり、ライブの演出をしたり、イベントを作ったり。様々な活動をしていますが、基本的には全て創作・表現活動という一つの事をしていると個人的には思っています。

 

 

そしてそんな創作・表現活動をするに至ったのにはキッカケになった人やモノがあって、今でもやっぱり思い出す頻度が多い。僕はそんなものを未だに引きずりながら、表現をし続けているような気がする。そんなキッカケを紹介したいと思うんですが、こんな文章があなたにとってまた別の何かのキッカケになればと思っています。

 

 

 

普通の町で育った変わった子

 

 

僕の生まれた町は本当に「普通」の町だった。普通というと難しいがとても平均的な町で、企業の新製品が出る時はまず僕の町で試されてから全国展開をするし、基本的には町から出る事もない。今は少し変わってきているようだが、大学で町を出た人もほとんどの人が卒業後は帰ってくるほど地元が好きな人が多い。さらには少し髪を伸ばして電車に乗ると白い目で見られるし、少しでも他の人と違う考えや行動をする人は仲間に入れないようなとても息苦しい町だった。

 

 

そんな町で生まれて育った僕は物心ついた頃から周りの人や環境に違和感はあったが、生活をしていくには順応することが何よりも大事だった。何とか「普通」に生きるべく努力をしていた僕だったが、中学に入る前後には内と外の自分の差にその違和感がピークに達し、まんまと拗らせた子が育つことになる。周りからは「変わった子」だと言われていた。

 

 

 

一編の詩

 

 

中学に上がった僕の最初の担任は国語を教えていた池谷 (いけや) 先生という女の先生だった。池谷先生は毎朝僕たちが登校する前に黒板に詩を書いておくのが日課だった。毎日書かれる黒板の詩に関しては特に思う事もなかったが、それとは別に一年間廊下に貼りだしていた一つの詩があった。正直どんな詩だったのかぼんやりとしか覚えてなくて、そのぼんやりした記憶を頼りに調べてこれだろう (けど、訳がもっと堅苦しかった気がする) という詩を見つける事が出来た。

 

 

▼アメリカ・インディアンの教え▼

 

 

批判ばかり受けて育った子は非難ばかりします

 

敵意にみちた中で育った子はだれとでも戦います

 

ひやかしを受けて育った子ははにかみ屋になります

 

 ねたみを受けて育った子はいつも悪いことをしているような気持ちになります

 

心が寛大な人の中で育った子はがまん強くなります

 

はげましを受けて育った子は自信を持ちます

 

ほめられる中で育った子はいつも感謝することを知ります

 

公明正大な中で育った子は正義心を持ちます

 

思いやりのある中で育った子は信仰心を持ちます

 

人に認めてもらえる中で育った子は自分を大事にします

 

仲間の愛の中で育った子は世界に愛をみつけます



 

「アメリカ・インディアンの教え」加藤諦三 著 ニッポン放送出版 より引用

 

 

僕はこの詩を見つけてからというもの半年以上は昼休み中ずっとこの詩の前に立って、誰に話しかけられてもあまり答えることもなく「僕はどう育って、どんな風な人間になるのか」という事をただひたすら考え続けていた。今思い出してみてもこんな中学一年生がいたらかなり引くわ。先生もさぞかし面倒だったに違いないが、あまりに僕が考えるもんだから、きっとその詩をはがせなかったのだと思う。ごめんよ、先生。でもこの詩のおかげで、こんな風に育って僕は今言葉を書いています、ありがとう。

 

 

 

池谷先生からの衝撃の一言

 

 

中学に上がると他の小学校からも生徒が来て、新たなコミュニティが作られる。特に一年生はその中で上手くやっていけるのかというのを先生はしっかりと見ていないといけない。どこの学校でもあったと思うが、一年になってしばらくすると授業や友達には慣れたかを確認するのに、先生との二者面談が順番で行われる。そしてもちろん廊下に立ちすくむ少年にも順番が回ってくるのだった。

 

 

普通であれば、「中学校生活は慣れてきた?」みたいな話で入るようなところだが、先生はまっすぐ僕の方を見て言ってきた。

 

 

 

「あなたには友達ができないと思う」

 

 

 

あの時の先生の顔を僕は忘れられない。多分僕は「そうですか」位の答え方だったと思う。「やっぱりか」という意識の方が強かった。冷静に考えると、中学で友達100人できるかなみたいなテンションの状況のはずの一年生に対して開口一番伝えるような事実ではない気がするが、僕はこの言葉を聞いて随分ホッとしたのを覚えている。普通に育って、普通に友達を作って、普通に生きていかなければいけないと思っていた僕に先生は「ここで無理に友達を作る必要はない」と言ってくれたのだった。これは僕にとっては別の意味で衝撃の一言だった。

 

 

 

僕が求めていたもの

 

 

僕はどうしても「普通」と言われる生き方を強要される環境が性に合わなかった。だけれども、「普通」以外のものが認められないし、みんな (その時点ではその地域のコミュニティの人しか知らなかったので、それがみんなだと思っていた) は僕と違う。僕一人だけみんなと違うという恐怖のようなものをずっと抱えていた。抽象的な言い方を最後にしてしまうのはどうかと思うが、僕は顔のない人たちの中で生活をしていた。だから、僕には僕を見つけられなかった。僕が僕を見つけても良いという事を教えてくれたのは、池谷先生だったように思う。

 

 

その時は必至で僕は僕を探していたんだと思う。タイミングよく他の事も重なったんだけど、そういう中で僕は創作することや表現することを選んだ。先生がそうしてくれたように、今度は僕が誰かの事をその創作や表現の中で見つけてあげられるようになりたいと思っている。

 

 

 

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この記事を書いた人

山田 克基
山田 克基
動物好き。

Baa Baa Blacksheepsとsynchronized circusでGt.を弾く

今日と明日の間がとても曖昧な時に、お酒を飲みながら本を読み、文章を書くのが好きです。

多趣味ですが、ひとりぼっちの趣味ばかりです。

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