トップページ > 読みもの > つちのこアーティストを探せ! 第2回-真寛

つちのこアーティストを探せ! 第2回-真寛

tuchinoko_2

 

 

 

みなさん、こんにちは。ツチノコアーティスト研究家のカジワラコウジです。関西で活躍するツチノコアーティストをご紹介するこのコラム。今回も魅力たっぷりなツチノコアーティストを発見したのでご紹介したいと思います。

 

 

 

と、その前に。今一度ツチノコアーティストとは一体ぜんたい何なのかと申しますと、

 

 

 

見た瞬間に「この人はなぜこれをやろうと思ったのか?」という疑問が真っ先に浮かんじゃうアーティストのこと。

 

 

 

ライブハウス界隈をうろついていると実に様々なアーティストを目にします。一風変わったことをやるのは思っているよりも簡単で、しっかりとした柱のような物を持ってやれるかどうかが実は一番難しかったりするのです。そんな柱をしっかりと持った方を今回も見つけました。

 

 

 

ツチノコアーティストNo.002 「真寛」

活動拠点:全国のお寺やイベント会場など

出身地:滋賀県

ライブ取材日:2016/6/12

取材場所:京都祇園SILVER WINGS

 

 

 

 

 

 

ここがツチノコ!①「浄土宗の劇団ひとり!?」

 

 

tsuchinoko_2_1

むかーしむかしのまたむかし……と語り始める真寛さん

 

 

 

ぼんやり明るくなったステージにまるでもうひとつステージがあるような大掛かりなセットの中央で「むかーしむかしのまたむかし……」。そう語り始めた心地よい声の持ち主こそ今回紹介するツチノコアーティスト、浄土宗の劇団ひとり「真寛」さんです。何を隠そう真寛さんは現役のお坊さんでありながら人形劇や紙芝居をされています――ってもう浄土宗って言っちゃってるわ、何なら前回と同じ流れだわ!

 

 

 

左右上下飛び出すアトラクションばりの人形劇から、そもそも現役のお坊さんがなぜ人形劇をされているのかという疑問まで今日は真寛さんの魅力に迫っていきたいと思います。

 

 

 

 

ここがツチノコ!②「こんな巨大なセット見たことない」

 

 

 

 

真寛さんの舞台を見るのは実は2回目でして、前回は紙芝居をされていましたが今回は人形劇。なんと人形劇は8年、紙芝居は10年のキャリアがあるとのこと。まず驚いたのはその道具の多さでしょうか。他の出演者の方がリハーサルをやっているそのステージの前で手際よく準備を始める真寛さんの回りを見てみると、道具が入った大きな袋が5つほど、人形やその他の小道具が入ったプラスチックの衣装ケースが2つ、その他にポールのような長い棒が数本。テントでも立てるのだろうかと思うほどの大荷物です。

 

 

 

それらを駆使して組み上がったのは人形劇用の巨大なセット――今考えるとその写真も撮らせていただいてたら良かった! 人形劇と言えばNHK教育のそれしか知らなかった私は、人形劇にそんなセットが必要だという当たり前のことに気付かず、ただただ呆然とその様子を眺めていました。

 

 

 

tsuchinoko_2_2

次々に仕掛けが飛び出す巨大セット

 

 

 

 

ここがツチノコ!③「しゃべりが上手すぎ」

 

 

 

 

この日の人形劇は「三枚のお札」というお話。とあるお寺の小僧さんが山の中で鬼婆に遭遇してしまい、和尚さんにもらった三枚のお札でピンチを切り抜けるというスペクタクルアクション。ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 

 

人形作家さんに作っていただいたという愛嬌のある小僧さんと和尚さんの人形を操りながらお話の世界に入っていくのですが、人形劇って完全3Dじゃねえか! とつまらないことを考えていた私にもしっかりストーリーが伝わってくるのは真寛さんのしゃべりが上手いから。

 

 

 

取材をさせていただいたこの日は前回紹介した尼さんアイドル愛$菩薩さん主催のイベント「菩薩ソニック」。出演者のみなさんが自分のステージで主催である愛$菩薩さんを巻き込むのが恒例となってまして、たとえば愛$菩薩さんとコラボして一緒に歌ったり彼女に大喜利をさせたりと、とにかく出演者が手を変え品を変え「愛$菩薩」を絡めようとしてくる日。

 

 

 

真寛さんはどこで絡めてくるんだろうと思っていると、いきなり「三枚のお札」の導入部分から挟み込んできます。和尚さんにお使いをたのまれた小僧さんが山へ出かけることになるのですが、そのお使いというのが「愛$菩薩さんが来るからきれいな花を摘んできなさい」。もちろんお話はそのまま進んで行っちゃう。

 

 

 

あらかじめストーリーが決まっている人形劇に小ネタを挟み込むのってたぶん難しいと思うんです。けれど真寛さんはそれを逆手にとってストーリーの大筋とはあまり関係のないところでこれでもかと小ネタを挟み込んじゃう。大筋とは関係ないから物語の邪魔にならず、聞いていて心地良いんですね。いや、お見事。

 

 

 

とはいえ、実は真寛さん自身もお話の中に小ネタや笑いを挟むのを迷ったこともあったそうです。「でも面白い方がいいじゃないですか」と終演後にそうあっけらかんと笑って答えてくれた真寛さん。そんな人柄が余すこと無くステージで出てましたよと伝えると、興味深いことをおっしゃってくれました。

 

 

 

「大人の人たちはカジワラさんみたいに僕の表情やしゃべり方が面白いと言ってくれるけど、子どもたちの前でやると僕の顔なんてひとつも見てないんです。真剣に人形だけを見てるんですよ。子どもと大人って見てることが違うんです。ね、面白いでしょ?」

 

 

 

いやはや確かに。もちろんどっちが正しいとかではなく、どんな人が人形を動かしているんだろう? どんな顔でやっているんだろう? と思わず見てしまうのは大人だけなのかもしれないですね。

 

 

 

tsuchinoko_2_3

人形だけを追いかける子どもたち、人形の奥にいる真寛さんにもついつい目がいってしまう大人たち

 

 

 

ここがツチノコ!④「たくさん笑って元気出たでいいじゃない」

 

 

 

そもそも真寛さんはなぜこういう人形劇や紙芝居をしようと思ったのか。お寺に生まれた真寛さん、初めはお坊さんになるつもりはありませんでした。それでも一応、まるで車の免許を取るような感じでお坊さんの免許を取り(ってそんな感じで取れるの!?)、それから芝居の世界に飛び込みました。なぜ芝居を選んだかというと、何よりも人前でしゃべるのが得意だったからとのこと。

 

 

 

オーディションを経て入団した劇団はシェークスピアをやるようなしっかりした劇団で、芝居の稽古に加えて日舞やバレエなんかの練習もあり、当初は「何でこんなこと……」とほとほと嫌だったそうですが、今考えてみるとその時の経験が生きているんですって。たとえば真寛さんの遠くまで響くきれいな声は発声練習のたまものであるのはもちろんのこと、真寛さんの人形劇は驚くほど大きな動きが多いのですがこれは日舞やバレエで身体の動かし方を知ってこそできるもの。何でもやってみるということに無駄はないんですね。

 

 

 

tsuchinoko_2_4

ステージを目一杯使って動き回る真寛さん。

 

 

 

それから劇団を辞めた真寛さんは親戚の方の会社で働くことになります。その会社が舞台やイベントの制作をしていた会社で、たとえばマジシャンやピエロ、大道芸人さんたちのステージを舞台の裏方として支えました。そしてやっぱりそこでも「一人でやるというのはこういうことだ」というのを彼らから学べた良い経験だったとおっしゃいます。

 

 

 

そんなあるとき、真寛さんは紙芝居をやってみたらどうだと勧められます。しかも場所はなーんもない駅前。普通なら「ムリムリ!」と断るこの状況で真寛さんは「やってみます!」と言っちゃいます。まさに見た瞬間に「この人はなぜこれをやろうと思ったのか?」という疑問が真っ先に浮かんじゃうツチノコアーティストが生まれたのはこのとき。自分が面白そうだと思ったらすぐに飛び込んじゃうツチノコアーティストたちのこういうことろがたまりません。

 

 

 

そしてこれがまさかの大ウケ。真寛さんが「これいけるじゃん!」と思ったのは言うまでもなく、それから紙芝居や人形劇をされることになりました。

 

 

 

tsuchinoko_2_5

ステージ前のお客さんを巻き込み始める真寛さん。

 

 

 

現在では、知り合いのお寺でバイトとしてお坊さんとして働きながら(ってさっきから時々出てくるお坊さん事情よ!)、お寺やイベント会場で紙芝居や人形劇をされたりしているとのこと。

 

 

 

「もちろん仏教の教えを伝えるというのも大事なのですが、最近何だか元気ないなという方が僕の人形劇や紙芝居を見て、ああ笑って元気出たって言いながら帰っていってくれたらそれでいいんです」

 

 

 

その言葉を聞いて改めてツチノコアーティストだなあと確信。いやいや、そんな背景は抜きにして、まるで子どもに返った気持ちで人形だけを真剣に追いかけてみるのはどうでしょうか。きっと帰るころには元気が出ていることでしょう。人形劇・紙芝居「真寛」、ぜひあなたも目撃してください。

 

 

 

ここで目撃できる!

 

 

 

全国を飛び回っている真寛さん、ぜひあなたの町に来た時は目撃しに行ってみてはいかがでしょうか?

 

 

 

7/18(月祝)15時 @ 奈良県葛城市 西光院 「子どもの会」

 

7/31(日) 11時 @ 滋賀県大津市 大津市民会館 「大津演劇フェス」

 

いいだ人形劇フェスタ2016
8/5(金)14時,
8/6(土)10時、 14時20分



8/23(火) @ 大阪府堺市 観音院「地蔵盆」

 

 

 

Profile

カジワラ コウジ
カジワラ コウジ
別府生まれ温泉育ち。京都のバンドフルヤマンズでドラムを担当するかたわら、コントや司会、大喜利講座、ミュージックビデオの監督など隙をついて活動。2015年からは自らが書いた文章を朗読するという活動も始める――とプロフィールを書いている途中で自分もツチノコアーティストだったことに気づく。

最新記事