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つちのこアーティストを探せ! 第1回 – 愛$菩薩

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このたびこちらでコラムを書かせていただくことになりましたカジワラコウジと申します。誰かの琴線に触れるようなものが書ければと思います。 

 

 

 

さて、京都のライブハウス界隈をうろつき始めてもう何年たったでしょうか。自分の対バンや知り合いのバンドの対バンまで含めるとその数は計り知れません。それだけ多くのアーティストが存在していることに驚き、また彼らの表現方法が何ひとつ同じではないことに驚かされます。もっとも「ジャンル」という少し乱暴な言葉を使ってみれば彼らをカテゴライズすることは簡単です。もちろん「俺たちはポップでもロックでもねえ!」なんていうふうに、ジャンルに縛られることを拒むアーティストもいるでしょうし、私も闇雲に彼らを何かしらのジャンルに縛りつけたくはありません。 

 

 

 

ところが私はかつて見てきた数多くのアーティストたちの中に、あるひとつのジャンルが存在していることに気付いたのです。いや、これはジャンルというよりも「種」と呼ぶほうが正しいかもしれません。ではその「種」とはいったいどんなアーティストたちなのか。簡単に伝えるならばこう言うより他はないでしょう。 

 

 

 

見た瞬間に「この人はなぜこれをやろうと思ったのか?」という疑問が真っ先に浮かんじゃうアーティスト 

 

 

 

歌いたかったんだなとか、楽器を弾きたかったんだなとか、誰それみたいなことがしたかったんだな、などと彼らを推し量ることは不可能、ただただ見た者たちを「何だこれは!?」と驚愕させ、「本当にいるの!?」と混沌の渦に巻き込んでいく唯一無二の存在。そう、たとえるならまさにツチノコ! ツチノコアーティスト!そうやって「ツチノコアーティスト」というひとつのジャンルにカテゴライズして観察してみると (もちろん勝手にやってます) 、「この人はなぜこれをやろうと思ったのか?」と真っ先に浮かぶ疑問にも実はきちんとした答えが存在していることが分かってきました。 

 

 

 

自分が発見したものを発表したくなるのは人の常。天文学者が新しい星を発表するならば、昆虫学者が新種の昆虫を発表するならば、私はツチノコアーティスト研究家としてこれまで目撃してきたツチノコアーティストたちの知られざる活動を発表しなければ!そんな使命感にも似た情熱でじっくり観察した至極のツチノコアーティストたち。ぜひみなさんにも知っていただければと思います。 

 

 

 

 

 

ツチノコアーティストNo.001 「愛$菩薩」

活動拠点:奈良、京都のライブハウスやお寺

出身地:奈良県

ライブ取材日2016/3/13

取材場所:京都ライブハウスAFTER BEAT

  

 

 

ここがツチノコ!①「本職は現役の……

 

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檀家さんの家でお経を上げてから来ましたという愛$菩薩。移動手段は鹿。

 

 

 

「今日も檀家さんのお家でお経をあげてからやって参りました」

 

 

 

頭は螺髪(らほつ) 、眉間には百毫(びゃくごう) 、背中からは後光が差すという姿で颯爽と登場しそう言い放った彼女こそ記念すべき一人目のツチノコアーティスト、愛$菩薩です。何を隠そう彼女は奈良県のとあるお寺で副住職を務める現役の尼さんでありながらアイドルとして活動しています。 

 

 

 

現役の尼さんがこんなことをしていいのかと思ったあなた。正解。そして大丈夫、そのうちツチノコ慣れしてくると「へえそうなんだね」って言うようになるから。かく言う私も初めて愛$菩薩を見た時は見た目のインパクトやらなんやらと情報の処理が追い付かず、この稀代のアーティストをどう受け止めれば良いのか分かりませんでした。いや、正直言うと今でも理解し切れているのかどうか。それでも、なぜ現役の尼さんがこのスタイルでライブ活動をしているのかというのは分かってきましたのでお話したいと思います。 

 

 

 

ここがツチノコ!②「曲はお経」

 

 

 

愛$菩薩の曲に『四誓偈 (しせいげ) 』という難しいタイトルの曲があります。聞きなれないこの言葉の意味を彼女に超簡単に説明していただいたところ、『四誓偈』とは阿弥陀仏という仏様が衆生を救うことを誓われた内容で、無量寿経というお経の一部とのこと。ああ、本当に尼さんだ! 

 

 

 

もちろんお経ですから「我建超世願……」というふうに始まるわけですが、愛$菩薩はこのお経をそのまま歌うのです。しかもジャジーなテクノサウンドのトラックに載せて。ええ、振付けもありますとも!ただこう書いてしまうと、意地悪な言い方になりますが「尼さんの単なる余興なのでは?」と思われるかもしれません。ところがそこを一歩も二歩も超えてくるのが愛$菩薩。彼女はこの曲をまるで普段お寺や檀家さんのお家であげるそれとまったく同じ心構えで歌います。いやきっとそうなのだと思えるのです。その様子は歌い手というよりまずは尼さんとしてといった印象。なぜそう見えるのかというと、ライブの冒頭で彼女が言ったこんな言葉が頭をよぎるからでしょうか。 

 

 

 

「若い方がお寺にお参りにくることは少ないので、仏様とのご縁を結んでいただくきっかけになればとライブハウスで活動しています」 

 

 

 

つまり愛$菩薩はあくまでも「仏様とのご縁を結んでいただくきっかけ」のためにライブをしていて、彼女自身は一歩後ろに下がった位置にいるのです。これがものすごく興味深くて、初めて見た人にも何をしようとしているのか分かりやすいし、ともすればふざけてるだけなのかもと思われてしまいそうな見た目のインパクトですらそういう目的があるならこうでなきゃねと思わせちゃう。その証拠にこの日の『四誓偈』終わりでは私の横にいたお客さんが手を合わせていました。ってここライブハウスですよお客さん!なんて突っ込むのも憚られるほど。その不思議な雰囲気は一見の価値あり。 

 

 

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写真の説明:『四誓偈(しせいげ) 』を歌う愛$菩薩。 

 

 

 

ここがツチノコ!③「MCは法話」

 

 

 

それから愛$菩薩のライブに欠かせないのは彼女のMCでしょうか。この日は「他人に対して慈しみを持って接しなさい」というお釈迦様のお話でした。毎回彼女のライブにはこのようにして仏教を分かりやすく説いてくれる時間があるのですが、ええそのとおり。もうこれは彼女自身も言っているように完全なる法話。お盆に親戚の家に集まったときなんかはついつい話半分に聞いてしまうお坊さんの話も、これがどうしたことか愛$菩薩が話せば思わず聞き入ってしまうのだから見事。そんなことを考えているとひょっとしてこの法話というMCが愛$菩薩のライブの中で一番重要なのかもしれないという気もしてきます。 

 

 

 

それも前述のように愛$菩薩が「仏様とのご縁を結んでいただくきっかけづくり」としてライブを行っているならば、この日の法話の内容を私はしっかり覚えているのですから彼女がやっていることは成功以外のなにものでもありません。恐るべし愛$菩薩! 

 

 

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2500年前のお釈迦様の話をわかりやすく話してくれる。 

 

 

 

ここがツチノコ!④「やっぱりツチノコ」

 

 

 

と、いろいろ書いて今さら気付いたのですが、お経があって法話があるってこれ法事じゃねえか!と。ライブハウスで法事やっちゃってるじゃねえか!と。というか始まる前に「ライブは法事」って本人が言ってたわ!と。こういうことか!と。ただこれだけで終わるなら、若い人にもぜひお寺に来てもらおうと一風変わった工夫で悪戦苦闘するとある副住職の日々、みたいな感じでドキュメンタリーにでもなりえるかもしれません。ところがどっこい、そうはいかないのがツチノコアーティスト。まさに「この人はなぜこれをやろうと思ったのか?」という疑問が真っ先に浮かんじゃうアーティストの悲しい性とでもいいましょうか、この尼さん最後の最後にやっぱりツチノコっぷりが出ちゃう。 

 

 

 

ステージ前にいたお客さんに愛$菩薩と書かれた法被は着せ始めるわ、$マークの形をした眼鏡をかけ始めるわと好き放題やり始め、しまいには「菩薩音頭でシャバダバダー!」と『菩薩音頭』なる歌を歌いながら、お客さんやその日の出演者みんなと輪になってステージ前をぐるぐる回るという大技をやってのける始末。 

 

 

 

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『菩薩音頭』を踊るフロア。 

 

 

 

これは新しいモッシュに違いない、尼さんによるモッシュ、尼モッシュだ! そう自分を納得させながらいざその輪の中に入ってみると自然と笑みがこぼれ、もうなんか真面目に分析しようとしていたのがどうでもよくなって一緒にシャバダバダー。最後に法被を着てくれたお客さんに参加賞として愛$菩薩のサイン色紙を渡し、「遺影を持つみたいに持たないでください!」と尼さんジョークを言って颯爽と去って行く愛$菩薩。その後光の差す後ろ姿を見て神々しささえ感じ、地元に帰った時は墓参りに行こうかな、なんて思っている私。 

 

 

 

曲はお経、MCは法話、ライブは法事。この唯一無二にして稀代のツチノコアーティスト、愛$菩薩。世間が見つける前にいち早く目撃してはいかがでしょうか。 

 

 

 

ここで目撃できる!

 

 

 

そんなツチノコアーティスト、愛$菩薩のレコ発があります。あの王様からセーラー服おじさんまで豪華メンツで繰り広げられる一夜、行かない手はありません! 

 

 

 「菩薩SONIC7 ~略してボサソニ~」

2016612日(日)

会場:祗園SILVER WINGS (京都)

時間:開場17:00 開演17:30  (閉演2200)

料金 :【炊き込みごはん付】前売2300+1drink 当日2800+1drink

前売チケットとアルバムを同時ご予約の方は、ボサソニ7限定の菩薩プロマイド (サイン入り) 贈呈!

 

LIVE : 王様 / ジョン・松平 / TU-KO / 愛$菩薩

PERFORMANCE : 山添真寛 (人形劇) / カジワラコウジ (司会&大喜利講師) / SHUHOEVE (ダンサー) / セーラー服おじさん / AMD48 

DJ : グル―ヴあんちゃん / どろぼう猫 (ハンメ&AK8)

SHOPミカヅキ

 

Profile

カジワラ コウジ
カジワラ コウジ
別府生まれ温泉育ち。京都のバンドフルヤマンズでドラムを担当するかたわら、コントや司会、大喜利講座、ミュージックビデオの監督など隙をついて活動。2015年からは自らが書いた文章を朗読するという活動も始める――とプロフィールを書いている途中で自分もツチノコアーティストだったことに気づく。

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