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川端安里人アイスランド日記 7~9days

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長いように思えて意外と短かったアイスランドの旅もこれで終わり。毎日が非現実的な、自分の好きな言葉で言うと映画的な風景に囲まれた旅も、3時間後に空港への寄り合いバスが到着した時点で終わる。この日記は、レイキャビクでランドマークになっているハットルグリムス教会の、目の前にある風呂トイレキッチン共同のゲストハウスの中で書いている。この日記がアップされているころには自分は日本に帰ってきているはずだ。

 

 

 

今後ろではK君がすやすやと寝息を立てていて。それ以外の音といえば、たまに外を通る車の音と自分が文章を打ち込んでいるタイプの音、夜遊び帰りの若者の談笑が外の通りを横切るくらい。じゃあ、最後の三日間を振り返ってみるか。

 

 

 

3月16日

 

 

 

 

氷河を抜けた自分たちの車は少しづつではあるが町の方に戻ってきている。アイスランドでは基本的にどこでも英語が通じるので、なまけ癖のある自分はまともにアイスランド語の勉強もせずにここまでやってきた。そんな自分でも覚えたアイスランド語がほんの少しだけあって、“foss”というのがそのひとつ。意味は“滝”

 

 

 

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この日は「途中でfossと書かれた看板があれば寄る」という極めてアバウトなルールの元で、レイキャビクのある西方面に向けて車を走らせた。K君的には目的の氷河を撮り終えたので、「滝のしぶきでカメラに不具合が起こってもまぁいいか」ということらしい。

 

 

 

最初に訪れたのはスコーガフォスとかいう滝。自分は普段日常的にカメラで写真を撮り歩いたりしないので、今回のように一週間以上がっつりと写真を撮り続けるというのは極めて稀だ。そして今回そういう稀な機会を得ることによって、自分の写真を撮るときのポテンシャルがよくわかるようになってきている。

 

 

 

ミッション

 

 

 

やはり自分には映画と音楽という文化が必要不可欠で、例えば普通の人なら「わぁ!すごい綺麗な滝!」と風景写真を撮るところでも、ふっと気がつくと「あぁ、『ミッション』のデ・ニーロが流されていく滝が〜」だとか、「ここのゴツゴツとした岩場がフランチェスコ・ロージの『エボリ』でのルカニア地方の〜」なんてことを思い出してしまう。ある種の中毒症状やビョーキみたいなものだと自覚症状が芽生えるわけで、すごい風景だと感じた次の瞬間には、その風景の中にいる人たちに映画のワンシーンのようなものを振り当ててしまっている。

 

 

 

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スコーガフォスには断崖絶壁の崖の上に鳥の巣があるらしく、大量の鳥が飛び交っていた。ちなみにその崖沿いに階段や道があり、上まで登ることができる。階段にはよく途中で体力が切れた人がゼェゼェと小休止を取っており、断崖絶壁上の道には柵がなく結構スリリングな体験ができる。

 

 

 

次に訪れた滝はセルヤランズフォス。往路でも寄った場所だが、この滝最大の見所である滝の裏側に回り込む道がその時は封鎖されていたので、今回はそっちを通るのだ。K君から借りていたレインウェアを着込み、いざ滝の裏側へ!気心の知れた男二人での旅は恐ろしいもので、京都にいるときの自分では想像できないようなアグレッシブさでどんどんと滝の裏側のぬかるんだ道を進んでいった。そしてこけた。

 

 

 

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二人で泥だらけになったカメラバッグやレインウェアを滝から流れ出た川で洗い落とした。

 

 

 

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宿への道中読み方のわからないfossとかいた矢印付き看板があり、ちょっと寄り道をすることに。おそらく日本にあれば「絶景!〇〇の滝!」と、名所になるような場所がアイスランドでは「一応こんなんもあります」みたいな扱いになっていて、先ほどの二つの滝とは違い、そこには誰もいなかった。他にも滝があることにはあるのだが、どこかの農場の裏庭扱いになっていたりで入ることは断念した。その滝からの帰り道、牧場には馬たちがのどかに陽の光を浴びており、長いアイスランドの冬の終わりを楽しんでいた。

 

 

 

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ちなみにその日泊まった温泉宿は地熱地帯がよく見える温水プール付きというロケーションの割には安く。深夜までオーロラが見えるか楽しみにしながら二人で温泉を楽しむ様子は『サウスパーク』のキャラじゃなくても「ゲイだな」と言いたくなる様子だったであろうことはここだけの秘密だ。ちなみにオーロラは見えなかった。

 

 

 

3月17日

 

 

 

 

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クリスヴィークという地熱地帯を通った後に首都レイキャビクを観光する。道を間違った僕たちは、途中どう考えても封鎖されているところに入り込んでしまい、泥道をバックで戻ることになった。ホラー映画だったらロクなことにならない展開だが、何事もなく解決。早々とクリスヴィークを見て回った後はレイキャビク入り。さよならネイチャー、こんにちはカルチャー。

 

 

 

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ランドマークタワー化している教会の塔に登るとレイキャビクの街を360度見渡すことができる。風景も素晴らしいが、光の具合や街を喜々として眺める人々の方が印象に残る。レイキャビクには自分がどうしても行きたかったレコードショップがある。12トナールという店で、よくシガーロスやビヨークが来るらしいアイスランド音楽の発信源的な伝説のレコード屋だ……。

 

 

 

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中に入ると日本では中々手に入らなかったり、知られていないアイスランドの素晴らしい音楽が置いてある。自分は興奮のあまり写真とかそっちのけで、ガサゴソと棚を漁り始めた。すると店のオーナーらしき男性がエスプレッソをどうぞとやってきた。試聴のできるソファルームがあり、そこでアイスランド映画や音楽が大好きでと拙い英語で会話をしてみる。そうするとオーナーは「君は幸運だ」と言い出した。何事かと聞くと今晩、街のコンサートホールでヨハン・ヨハンソンによる映画の曲をオーケストラがやるらしい。

 

 

 

なんと!ヨハン・ヨハンソン!自分が大学時代に『Englabörn』を買って以降大ファンな!映画『博士と彼女のセオリー』でゴールデングローブ音楽賞を受賞した!自分が今かなり注目しているドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『ボーダーライン』の音楽もやっているあのヨハン・ヨハンソン!

 

 

 

Jóhann Jóhannsson: Englabörn

 

 

 

この出来すぎた偶然には笑うしかなかった。もともとレイキャビクの夜はどこかのライブハウスにでも行こうかと思っていたが、まさかのコンサートとは……あ、もちろんCDは買いました。

 

 

 

どう見ても山帰りの格好で顰蹙を買うかな、と思いながらいそいそとコンサートホールに行くと意外と若者が多くて驚いた。一番上の安い席でよければ昼食兼夕食に食べたナチョス (『デス・プルーフ) でカート・ラッセルが美味しそうに食べてるアレ) &スープと同じくらいの値段でアイスランドではコンサートに行ける。食費が高いのが、コンサートが安いのかはわからないが、アイスランドの文化レベルの高さの理由が少し分かった気がした。

 

 

 

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コンサートではヨハン・ヨハンソンの曲以外にもレディオヘッドのジョニー・グリーンウッド作曲による『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の曲や、ジョン・ウィリアムズの『ジュラシック・パーク』や『E.T.』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の曲を演奏し、拍手喝采の素晴らしいコンサートだった。

 

 

 

アンコールも起こり、曲は『インディー・ジョーンズ』のあのテーマ曲!まるで僕たちにまたアイスランドに冒険に来いよとハッパをかけられているような気分になった。ちょっと出来すぎた話に思えるかもしれないけど、本当の話だ。

 

 

 

インディ・ジョーンズ 最後の聖戦

 

 

 

3月18日

 

 

 

 

この日は最終日なのでバタバタとしていて、朝一でレンタカーを返しに行く。ブリザードやら地熱地帯やら氷河やら色々巡った車は中も外もドロドロになっている。絶対に清掃代をエキストラで取られると思っていたが、超イケメンの車屋のお兄ちゃんは一瞬見て問題なしって感じで清掃代は取られなかった。もしかしたらアイスランドのレンタカー屋は慣れっこなのかもしれない。

 

 

 

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そのあとバスでブルーラグーンに行く。ブルーラグーンは世界最大級の露天風呂である種のリゾート施設。『ホステル2』でロケに使われていて、東ヨーロッパが舞台のホラー映画のくせにいきなりアイスランドの施設でロケしていて、「イーライ・ロスはブルーラグーンに行きたかっただけなんじゃないか」と思ったあのブルーラグーンです。本当に最高な施設でみんなが温泉内にある売店で酒を飲んでいる。1日いてもいいかと思ったけど、酒を飲めない自分は2時間で飽きる。

 

 

 

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そのあと従姉妹家族に会う。従姉妹はガイドやロケの斡旋などをしていて、「アイスランドで映画ロケが増えている理由は映画のロケなら免税になる制度ができたからだ」と教えてくれた。その上にアイスランド映画のDVDを頂いた。その中には『氷の国のノイ』の監督作も含まれていて、見るのが楽しみだ。旦那さんは音楽に夢中で、ストラトがどうとかフェンダーがどうだとか話をしている。自分は音楽を聴くのは大好きだが、演奏することに興味がないのでよく分からないが、以前ドラムをやっていたK君とは結構盛り上がっていた。

 

 

 

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二人の娘たちは日本に来たらすぐモデルに慣れそうなハーフで、彼女達のDNAの何%かは自分とかぶっていると思うと不思議な気持ちになる。ここでは普段は子供から好かれることのない自分だが、異様に気に入られて困った。気がつけば空港に行かなければいけない時間まであと5時間を切っていたので、またアイスランドに来ると約束をしてその日はお開きになった。

 

 

 

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またアイスランドに来よう。自分とK君は帰りの道中何回も何回もこの話をしながら日本への帰路に着いた。

 

 

 

Profile

川端 安里人
川端 安里人
1988年京都生まれ

小学校の頃、家から歩いて1分の所にレンタルビデオ屋がオープンしたのがきっかけでどっぷり映画にはまり、以降青春時代の全てを映画鑑賞に捧げる。2010年京都造形芸術大学映像コース卒業。

在学中、今まで見た映画の数が一万本を超えたのを期に数えるのをやめる。以降良い映画と映画の知識を発散できる場所を求め映画ジプシーとなる。

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