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京都のひと 第1回–ラス×ムクヨミドリ【前編】

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「京都の人はよそ者に冷たい」なんてたまに聞きますが、実際のところはそんなことないと私は思います。かくいう私は関東から京都へ越してきて3年の新参者。京都の中に入ってみると京都出身の人ってそんなにたくさんいるわけではありません。『大学で京都にやってきてそのまま住んでいる』って人や、私のように『なんか京都って良さそうだし』なんて理由だけでこの土地に住んでいる人も結構います。京都は純粋な京都人も、よそ者たちもみんなが切磋琢磨しながらお互いのアイデンティティを磨くことのできる大きな器のようなモノに思えます。 

そんな京都で生活を営み、カルチャーにかかわる人は実にへんてこで面白い人がたくさんいます。そんな人はなぜ京都に集まり、京都に基盤を置いているのか。京都には一体どんな魅力があるのか……?そんなことを掘り下げたくてこの企画を立ち上げました。 

さてそんな企画の第1回。大阪出身、京都在住の絵描きで唄うたいのラスさんへのインタビューを行いました。音楽界隈、アート界隈、演劇界隈さまざまなコミュニティに顔出す彼女。私がこの企画を思いついた時に一番に話を聞きに行きたいと思った人物です。先月よりラスさんのコラム『思い耽る瞬間』もアンテナでスタートしています。 



今回は彼女の生い立ちや活動から、人格形成した理由を探ってみました。そして、そんなラスさんにご紹介いただいたのは
ムクヨミドリというギャラリー。hotel chloeのギタリスト・奥野さんが立ち上げたギャラリーで、ラスさんが4/18より個展を行う場所。

前編となる今回はラスさんという人物に迫ります。  

 

 

ラスをしている

 

2

 

ーーラスさんと出会って結構経つのですが、ラスさんは一体何をメインに活動されている方なのか……聞いてもよいでしょうか? 

 

 

ラス(以下:ラ):はい、きた。さっそく難しい質問がきた() 

 

 

ーーラスさんには京都の至る場所で会うし、色々なことをやられていて……いまいちラスさんとは何者なのかを掴みきれていなくて。 

 

 

奥野(以下:お):そういや俺も全然知らんわ。 

 

:うちのことをあんまり知らん人には少しは具体的に言うで。絵も描いてて、歌も歌ってて、仕事ではデザインをしています、みたいな感じを。でもなんかそこら辺わかってる人には『ラスをしてる』って言うけど。 

 

 

ーーラスをしている。 

 

 

:そう『必死にラスをしてる』って言うかな(笑) 

 

 

ーーラスをするというのは具体的には……? 

 

 

:簡単に言うと、やりたいことをやる、ってことかなぁ。 

 

 

ーーラスさんをあまり知らない人に対して言う「絵も描いてて、歌も歌ってて、仕事ではデザインをしています」というのはラスの一部でしかないということですか? 

 

 

:一部、かなあ。できることならデザインの仕事はしたくは、ない、ですが……(笑)

 

 

:でた、いきなりカットや() 

 

 

ーーフリーのデザイナーという立ち位置が正しい表現ですか? 

 

 

:いや、会社に所属してます。ライブハウス3つ、スタジオ、串カツ屋を経営しているWILL MUSICって言う会社の全部のデザインをしてます、そこのwebも全部してます。 

 

 

ーーどんなきっかけでその会社へ? 

 

 

:うちがライブハウスに入ったというところまで遡るなぁ。今のとこではないけどね。短大卒業して仕事もせずにバイトを探そうとしたら、高校時代の仲良い子に『お父さんがライブハウスするねん、バイトせーへん?』って言われて、ライブハウスっていう界隈に入り込んだって感じ。 

 

 

ーー当時はバンドはされていたのですか? 

 

 

:ライブハウスのスタッフがメンバーのバンドで、カバーバンドをしてました。ちまめっツ♡っていう()グループサウンズとかのコピーカバーバンド。それまでは高校生の時にバンド組もうよって言ってバンド名だけ考えて、スタジオ入れず、みたいなんが何個か。 

 

 

ーー音楽は元々好きだったわけですね。 

 

 

:音楽は好きやったけど、音楽やりたい!って訳でもなかった。 

 

 

ーーライブハウスで働き始めた時からデザインの仕事をされていたのでしょうか? 

 

 

:いや、それこそ初めは受付とかバーカンにいて。そこから芸術系の短大でてるしパソコンさわれるやろ?ってことで事務所に上げられて。そこからデザインを始めた感じ。 

 

 

:キャリア始まった。 

 

 

:そう、そっから始まったかな。マンスリー作って入稿をするにはこうする、ってとこ学んだり。最初のライブハウス辞めて、今働いているWILL MUSICから何年後かに声がかかったんよね。 

 

 

ーー何年くらい勤めているのですか? 

 

 

:今のとこは、8年くらいかなぁ……ライブハウス界隈には短大卒業してからで、掛け持ちしてたり、一瞬働いてない時期もあるけど……16年位おるんかなぁ。 

 

 

ーーこの界隈に16年! 

 

 

:最悪やな!(笑) 

 

 

ーー()ラスさんのもうひとつの側面である“ばきりノす”の活動はいつ頃からスタートされたのですか? 

 

 

:“ばきりノす”は12年前、2003年から。 

 

 

ーー今の会社で働き始めたくらいから? 

 

 

:最初のライブハウスを辞めてから、今の会社で働くまでにちょっとだけ雑貨屋で働いていた時期があって。そこで出会ったのが、“ばきりノす”の相方のがっきー。 

 

 

ーーええー! 

 

 

:同じ日に2人ともバイトとして入ってん。 

 

 

:うおおおお! 

 

ーーすごい!それで“ばきりノす”になったと。

 

 

:そうそう。がっきーはがっきーで大学のサークルで音楽をやってて。で、うちがブルガリア民謡を「良くない?」って聴かせたら、「いいやん!」って盛り上がって(笑)これコピーしよか、って始まったのがばきりノす。 

 

 

:同じ日にバイトに入って、趣味まで合うとか普通ないよ。 

 

 

ーー運命ですね……。ラスさん若い頃からブルガリア民謡が好きだったのですか? 

 

 

:うちは民族系の声が好きで、特に好きなんはブルガリア民謡とかケルト民謡….人で言うと、芸能山城組。芸能山城組は映画のAKIRAのサントラをやっている軍団ね。あの人らは元々合唱団でいろんな民族のコピーとかカバーをしてるねん。民族系の声の出し方がすごい好き。ミクスチャーとかグランジとかも好きやったよ。ダイブはせぇへんけど、モッシュはしてた(笑) 

 

 

ーー想像できない!見てみたいです() 

 

 

 

 

基本楽しみながらずーっとやってる

 

 

 

3 ▲ラスさんの手がけたLive House nanoの壁画

 

 

 

:ラスの謎、解けてきた?(笑) 

 

 

ーーいや、まだです()絵はずっと描かれているのですか? 

 

 

:ちょろちょろやけど、ずっと描いてる。中学高校の時も好きやったと思う。マンガとかをメチャ描いてるわけではなかったけど、同級生に絵の学校行ったって言ったら納得される感じ。 

 

 

ーー絵を描くようになったきっかけがあれば教えてもらいたいです。

 

 

ラ:初めの始めのきっかけ、というのは覚えてないなぁ。進路考えてる時に姉が「絵描くのん好きやったら芸大行けば?」って言ってきて、あ、それもいいかもって芸術系の学校に行くのを決めたので。それがきっかけって言ってもよいのかもねぇ。 

 

 

ーーラスさんの画風はずっと今のような感じなのですか? 

 

 

:ずっとではないなぁ。短大卒業してからこの感じの大元は出てきた感じ。その前までは……目は描いてたかな、相変わらず。人とか描くのがへたくそで目だけ描いてたなぁ。短大を卒業した当時はもっときもい絵を描いてたと思う……(笑) 

 

 

ーーきもい絵。 

 

 

:あるやん、『私ちょっと頭おかしいって言われたい』みたいな時代。 

 

 

ーーああー、ありますね() 

 

 

:首つった絵とかめっちゃ描いてた(笑) 

 

 

ーー今みたいに絵の依頼や仕事をもらうようになったのはいつ頃だったのでしょうか。 

 

 

:初めて絵を描いてって言われたのは最初のライブハウスで働いてた時かなぁ。ラスっぽい絵でポスターを描いてって言われていた時期はちょろちょろあったけどね。うちは、目が入っているものがうちの絵、っていう認識がなんとなくあって。ぐにぐにっと描かれているけど目のないものは、うちの絵のテイストだけど、うちの絵ではないという感じ。友達のnilescapeってバンドのCDのジャケットと歌詞カード全部描かせてもらったけど、もしかしたら最初かと思えるくらいにがっつり描いたのはそれかなぁ。

 

 

ーーそれまでは絵で食ってこう、とかはなかったのですか? 

 

 

:うち、それがずっとなかったのよね。これでこうやっていくぞ!とかはないのよなぁ。なんとかなるんじゃない?っていう楽観主義者やから。 

 

 

ーー今でも? 

 

 

:いや、さすがに最近はやらなな、とは思うのだけれども() 

 

 

ーーラスさんはこれだけ絵が描けて、でも仕事ではデザインをされていて……それがとても不思議で。私の中でラスさんは絵を描いている人っていうイメージなので。絵一本でやっていこうと考えもしてなかったとは意外な感じです。 

 

 

:今は絵一本にしたいかも~とかも思うよ。そんだけ描いてなかったんかもしれん。音楽もやってたし。絵一本でやっていこう!と思うくらい描き詰めてなかったから、ライブハウスで働き始めてばたばたしてたしね。昼に出勤して、デザインやって、受付やって、照明やって……ってぐるぐる回ってたから。絵を描く時間が取れんかった。最初のライブハウスは絵が描けないストレスで辞めた感じなんかな。やりたいことができない、絵が描けないって思ってぽーんと。 

 

 

ーー絵が描きたくて仕事を辞めたんですね。 

 

 

:うん。当時はうちの描く絵が気持ち悪すぎてあんまり描いてって言われんかった気がする()でも、フライヤーのデザインしてとは言われることは結構あって。今やったら割り切ってできるけど、昔はできひんかったんよなぁ。自分の絵描かれへんけど、デザインやってるみたいなのが自分の中で許せんくて。んで家帰ったら疲れて絵描かれへんし。ストレスやったんかもねぇ。 

 

 

ーーラスさんは仕事がとても早い方なので、絵が描けないとか想像できないです……。今はそのバランスが取れているわけですね。 

 

 

:今は区切ってできてるかな。デザインでもうちの絵を入れてって時もあれば、全く入れないものもやってる。なので、最初の方にやりたくないと言いましたが、デザインのお仕事もお待ちしております(笑) 

 

 

ーーラスさんは誰かの影響って受けてますか? 

 

 

:ないねんなぁ()よく聞かれるけど。好きな画家ぱっとでてこーへん……あ、フンデルトヴァッサーは好きかな。舞洲にあるゴミ焼却場の色とかが好きで。でもそれがめちゃめちゃ好きってわけでもない(笑) 

 

 

ーー今の色使いは描き詰めてく中で固まっていったのですか? 

 

 

:まず、水彩絵の具が好きではないねん、アクリル絵の具が好き。そんで色と色を混ぜるのが面倒で原色を使う。そんでどんどん色を増やしていって今の感じに落ち着いたと。てきとーやなぁ(笑) 

 

 

ーー昔から一貫してこんな画風なのかと思ってました。 

 

 

:色付けたら派手にはなったけど、昔は気持ち悪かっただけだしなぁ…()絵が下手でリアリティがないからグロくはないけど。丸尾末広とかが好きな時期もあったなぁ。首がぐにっとなりすぎてるけど、リアルではないからグロくはない、みたいな。オルタナティブ決起集会のやつとか、鳥っぽいのんの足変やん。 

 

 

4 

 


▲オルタナティブ決起集会のフライヤーやTシャツに使用された絵

 

 

 

ーー鳥の足、多いですね。

 

 

:あんな感じで少しは元になるものがあるけど…..それが少しポップになって見やすくなったのが今かな。音楽でも誰の影響っていうわけでなく、ブルガリア民謡とかからやし。 

 

 

ーー“誰々っぽい”とか形容できないですよね、ラスさんの作りだすものは。今なら音楽でも、絵を書かれている人とかでも誰々っぽいとか言えるものが多い中で。

 

 

:まあ、民謡とか民族系とか好きな人からすれば一発でわかるみたいで、言われることもあるよ。

 

 

:そういう民謡ものはどこから入ってきたの? 

 

 

:芸能山城組はAKIRAの映画から。ブルガリア民謡は普通にCMとかでも使われてたりするし、NHKの壮大な景色の裏で流れている音楽、とかを調べて探してたかなぁ。もっと小さい頃はみんなのうたと音楽の教科書と童謡が好きやった。 

 

 

ーーみんなのうたで一番好きなうたって何か挙げれますか? 

 

 

:ベタなもので言えばメトロポリタンミュージアムとかまっくら森の歌とか。音程的に良いのは雪祭り、あがり方がすごくいい。うちらはカセットの時代やったから、みんなのうたが流れたらテレビの前に行って録音して。それをずっとずっと聴いて、歌えるようになるまで聴いて。そんなんで覚えた歌やから忘れへんのね。車でよく歌ってる() 

 

 

ーールーツが他の人とずれてる感じがひしひしと伝わってきます……()。ラスさんはこれから自分主体の何かで食べていきたいとお考えなわけでしょうか。

 

 

:そういう方が面白いなぁと最近思ってて。うちの絵も伝統工芸みたいにならんかなぁ……とか思ってる()。描き続けている状況とか楽しいねんなぁ。

 

 

ーー絵は楽しみながら描き続けていると。ラスさんはなぜ絵を描くのか、その理由を教えてもらいたいです。

 

 

 

ラス

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1978年 大阪府出身、京都在住。

すぐ近くのどこかにいるモノたちを描いています。

CDジャケットや、壁画、ポスター、チラシなどの制作や、

アクセサリー、マグカップ、地下足袋、靴などのラスグッズを制作しています。

唄うたい「ばきりノす」の1人でもあります。

http://www.ibashiyo.net/

ばきりノす

http://www.bakirinosu.net/

ムクヨミドリ ▶OFFICIAL HP

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〒601-8471
京都市南区八条町452

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●アクセス

  • 京都駅八条口から 西へ徒歩 11分
  • 市バス「六孫王神社前」 すぐ

※駐車場はございませんが、近くに有料パーキングがあります。

 

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